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---85--- 新魔法開発 王族紋章付与

 突然眼前の景色が夕暮れ時の渓谷河原風景に変わりシアキは少し焦る。

 流石に今日はラフェル達に説明してから拠点外に出るべきだと思っていたので、こうして今すぐ連れて行ってくれとは言って欲しいとは伝えていないと思いながら苦笑いを浮かべる。 だが結果的に無断外出した事には変わりないので、どんな理由にせよ後で仲間達からの厳しい追及は避けて通れないと考え、何か良い言訳を考える。


 ここでシアキは、たかだか(・・・・)仲間になっただけの、赤の他人(・・・・)に対してこんな回りくどい根回し等を何故に考えなければいけないんだ。 そんな自分以外の他者等、全員心を縛り巧みに弱みを突いて型に嵌めて思い通りに動かせば、事が楽に進むではないかと思ってしまう。


 実際この移動は、自分の意思では無く、ダンが勝手に連れて来た事である。

 これを理由に、まずダンの心に枷を付けてしまえば良い。

 そして納得しない仲間である者達には、言葉巧みに言い包め、別の策に嵌めてしまえば、何も悩む事の無い、実に簡単な事ではないかと思考してしまっている。


 この世界に転生してから「コノ感情」は自分の我儘で集めた仲間達誰一人として向けて考えた事が無かった感情なのにどうしてっと疑問に思うと共に今とんでもない仲間達に対して裏切り行為に似た感情を向けて思考し実行しようとした事に嫌悪感が生まれた。


 コレは確実に元の世界と同じ感情で、他者を駒や道具としてしか考えず、巧妙に策に嵌め、掌で自分の気分一つで弄び転がしていた時の自分に確実に戻っているとシアキは悟る。

 恐らくリルム()に体の構成を変えられたとされる際、思考を弄られた可能性があると思考し終え少し苛立ちを覚える。


 だがその苛立ちも見えない何かに強制的に排除されたように消え、再度この後に起きるであろう事を思考だけで何通りもの策と案が生まれては消え最善の結果が勝手に導き出された。 そして思考し終わると同時に予想していた通りの結果となった。


 眼前に思考だけで導き出した通りの人物が、予想通りの恰好と行動をしているのだ。

 思わずその仲間の姿を見てシアキは、ニヤリと実に嫌らしい不敵な笑みを浮かべる。


 現れたのは、仲間のルルだ。何故か最初シアキの方を見る事なく遠く、東側の河原に目を向けている。

 気配感知で何かが隠れこちらを窺っているのを察知したと言った素振りを見せているのでまた数日中に何か厄介事が起きるであろうとシアキは予想する。


 今ルルが感知している者が居る距離は此処から約二十キロメートル離れた個所だ。勿論この距離はダンの気配感知可能範囲外だ。

 それ位の距離を取って離れた程度では、ルルの気配感知網からは逃れられない。


 気配感知している人物が人族である事を認識し終えると、少しだけその物に向け殺気を放ちその場で動かなくなったので脅威ではないと判断し一切興味をなくし、シアキの方を向き腕組みをして笑顔を見せる。その間数秒程度だ。


「シアキ~どうして約束守れないかな~!向うでラフェルちゃん凄い怒ってたよ~「ダン様!もうシアキさんを何処に連れてったのよ~」って凄い怒って吠えてたよ~。

 まぁ~一応宥めておいたけど相当「黒ラフェルちゃん」が出てたよ~あの冷ややかな目は久々に見たよ~。

 それは置いといて~、何しに、こんな所に来たの~?」


 それを聞きシアキは「何言ってんだ?俺が自由に動いて何が悪い」と心の中のもう一人の自分が言っている事に、また少し苛立ちを覚えながら自分の黒い部分を必死に抑え、ルルに対し、いつも通りの態度と表情で、この状況を説明する。


「ん!食事後にでも、ダンさんに新しい魔法生成実験を少し手伝って欲しいな~って頼んだら、すぐに転移で連れて来てもらって、こうなった」


 頼んだら考え無しに連れて来られたと言っている事に、ダンは少し自分の行動が軽率であったことを悟る。


 しばらくは、あの魔族(ラフェル)の怒りの感情の熱りが冷めるまでの間、あの拠点には近づかないでおこうとダンは心の中で密かに誓うのであった。


 一応納得が出来ないので、シアキとのやり取りの内容を思い返すが、確かに「今すぐ」等の発言は無く「後で良いので」っと言う発言内容だった事を思い返し苦虫を噛潰す思いで自分が先走り行動したのだと認めざるを得ないと諦める。


「そっか~強制的にココに連れて来られたんだね~それはシアキは悪くないね~。後でラフェルちゃんに、ちゃ~んと説明してあげるから安心していいよ~。

 それより、私もその魔法実験見学していいかな~凄く興味あるから見たいな~」


 両者のやり取りを見ていたダンは、反論する意思を無くす。 嵌められた、いや、ココで反論すれば確実に身動きの取れない様にされてしまうと野性的な直観がそう告げている。

だが釈然としない気持ちがあるので、精一杯抗議はするぞとダンは思うのだった。


「儂は悪くは無いぞ、あの時、夕食後と伝えておけば良いではないか・・・あの魔族(ラフェル)に言い、儂を悪者にしたければすればいい。 どうせ儂は用事が無い限り、当分あそこには近寄らんからな。


 そんな事より小僧、早速始めるぞ。 小僧は儂に何を手伝わせるつもりなのだ?。 それよりどのような魔法を生成するつもりなのだ?」


 悪態付いて自分は悪くないと言ってはいるが、相当あのラフェルの目を見た事で恐怖があるのだろう。 (やま)しい気持ちがあると、あの目と視線を合わせた事のある者は、余計当分近づきたくないと思う気持ちになって当たり前だっと、シアキとルルの両名は思い、うんうんっと頷き合う。


「ん!あ~そうだな!一応生成しようと思ってるのは、相手の魔法や術を、その波動ってのも含めて、全て完全複写し複製する魔法を作ろうと思ってるんだ!。


 だから今、ダンさんに協力して欲しいのは、純粋に誰の術も掛かっていない個所で、ダンさんの領域結界術ってのを、俺の足下に俺が入れる位の大きさだけで生成して欲しいんだ。


 それを今から俺が完全複写して魔導書に生成し直し覚えた後、任意の場所に展開し、それがダンさんのと全く同じ波長の物であるかを確認して欲しいんだ」


 さらりと、危険な発想を口にしている。

 もしそんな物を生成され世に出回れば、悪用する者が確実に出て戦争が彼方此方で勃発してしまうだろう。


「何を言っておるんだ小僧!そんな危険な魔法が仮にも生成出来たとして、もし世に出回れば、彼方此方で戦争勃発の引き金になるぞ。

 いや確実に魔族達、「ラ」「ア」「セ」の三神族間を巻き込んだ大戦争が始まってもおかしくないぞ」


「あ~大丈夫ですよ。

 悪用防止の為の条件付けも生成時に考えますし!。

 まず正規のルートで手に入れ、覚えない限り、発動すらしないようにするから、そこは安心してくれ。


 俺の魔法生成物は完全無詠唱に出来たり、条件を満たさないと発動すらさせられないって事が実験で分かってるから、そんな戦争の引き金になる様な馬鹿な事はさせないから安心していいぞ。


 今は俺自身か俺が認めた者しか使用出来ない様にする予定だし、そうですね~同じ魔法を、もし今すぐ覚えさせる人物として名前をあげるなら、ダンさんの娘達である「ルル」と「レレ」の両名だけですね」


「駄目だ、覚えさせるなら、「ラ」の一族である娘の「ルル」だけにしろ。

 決して「ア」の一族である娘の「レレ」には覚えさせるな。


 それに気になっていたんだが、何故、小僧の事をレレは「おにいさま」と呼んでいるんだ?」


 その(ダン)の発言に素早くルルが答える。


「レレちゃんはね~生者であるシアキの「ぎまい」になるって、誓いを立てて宣言したんだよ~」


 発言内容は実に耳を疑う物だったようだ目を見開き驚いている。

 そんなに驚く様な事かと思うが、実際レレの態度やルルの反応を見てきてレレと言う人物は相当家族内でも特殊な扱いを受ける程の人物だと予想はしていたが、まさか此処まで親に驚きを与えると程の反応をさせるとは正直思っていなかった。 やはり危険な奴であるのは間違いない様だと再認識する。

 だが、もうレレは仲間と同じであり自分の義妹なのだ。 裏切りる可能性はあるが、それを含めて全て受入れるのが義兄と言うものだとシアキは思っている。

 裏切ればその分策に嵌め後悔させたりして、反省しているレレの表情を見るのも、また冒険の一つであるとシアキは心の中で笑うのだった。


 それよりも眼前に居るダンを少し揶揄って遊ぶ方が今は面白いかも知れないと思う。

 

「そう言う事です。レレは俺の義妹なので、そうですね~これからは俺の事は義理の「息子」とでも呼んでいいですよ。

 ダンさんが望むなら俺は「お義父さん」と呼びますよ!」


 不意に「お義父さん」っと言われダンは寒気を覚え身震いする。

 幾ら自分より強者であるからと言っても、人族である者からそう呼ばれれば、きっと周囲から劣等種からそう呼ばせ喜んでる変な神族として見られ後ろ指を指され、一族の頂点として君臨している自分の威厳が損なわれると瞬時思考し終える。


「そんな呼び方を今後一切するな、今まで通りで良い!。

 しかし、あの生者をあれ程憎み嫌悪するレレの口からその様な発言が飛び出すとは小僧は何者なんだ全く。

 アレ(レレ)が、「ラ」の一族に対して何もせず大人しくしている分には、儂等「ラ」の一族は一切干渉も詮索もしないと決めておるから、そのまま聞かぬ方が良いか。


 さぁ~それより始めるぞ。 小僧の魔法生成方法全て観察させてもらうぞ」


 地面に手をかざし、無詠唱で領域結界術をシアキの足元に生成させる。


「ほれ、足元に小僧が入れるだけの小型の領域結界術生成してやったぞ」


 足元を見るが何の色も変わっていない。 ただの砂利がある地面だけしか確認出来ない。森の中での時同様に、ソコに何かあると言う気配みたいな物は感じる。


 しかしコレでは展開している際、第三者への視覚効果が無いので実に味気ない。

 実際完全複写して展開させる際は、何らかの視覚的効果が生まれるように魔法陣やその国の紋様等を出し、見た目上演出した方が良いかも知れないと考える。


 前提条件を考える。


 指定方法で作られた魔術書以外で生成された物以外ではこの術は一切発動しないものとする。

 指定する魔術書は【レトロ調魔術書生成】で生成された物のみとする。

 この魔法会得には【会得用魔法陣】魔法の魔法陣内に入らなければ会得出来るものとする。


 第三者が会得する際、必ず許可を必要とする。

 許可を与える者は、魔法生成者本人と任意の神族一名とする。

 生成者である「マムラ・シアキ」本人は全ての条件を除外とする。


 これで条件付けは終わりとする。


 発動条件を考える。


 魔法発動開始は、一定の【発動呪文】と【魔法名】を唱えると発動するものとする。

 魔法発動時のみ精神力が消費するものとする。

 魔法発動持に、必要精神力に達していない場合、発動しないものとする。

 魔法発動後は、空間から魔素を自動供給されるものとする。

 魔法発動終了は、終了を念じた際任意の時で終了し魔素供給も停止するものとする。

 魔法発動者が死亡又は気絶した場合魔法は維持されず魔法発動終了とする。


 魔法発動中は、必ず任意の場所に所属国の紋章が魔法陣として出現するものとする。


 これで発動条件付けは終わりとする。


 魔法生成条件を考える。


 魔法生成時呪文を唱え終ると「魔術記録書出し」不要で自動で魔術書の生成を開始するものとする。

 魔法生成時、空の魔術書を魔法や術が掛けられている個所に触れさせ、一定の【生成呪文】を唱えると、そこにある「魔法や術の全て、波長、術の癖、魔法の性質、特性、特徴」を魔術書に完全複写し生成出来るものとする。

 魔法生成時、魔法名を任意で決めれるものとする。

 魔法生成された魔法を会得すると、複写した通り「魔法や術の全て、波長、術の癖、魔法の性質、特性、特徴」を使用出来るものとする。

 この魔法は発動時必ず足元に所属国の紋章が魔法陣として浮かび上がるものとする。


 これで魔法生成条件を終える。


 あとは呪文だがどうするか悩む。こう言ったセンスはシアキには全くの皆無で絶望的と言っていい程のセンスだ。

 だから、殆どがイメージして発動出来るようにし無詠唱で発動させている。

 あのレトロ調の空の魔術書も魔法として魔導書に替え覚える際、「レトロ調魔術書生成」と念じイメージするだけで既に作れるように生成したその日の夜にこっそり覚えて使用している位だ。


 仲間全員に、呪文等があった方がそれなりにカッコいいですよと説得されたが、何が悲しくて無詠唱イメージ一つで発動出来るのに、今から魔法発動しますよと相手に啖呵を切って決め台詞的なものを、さも堂々と言い、相手に逃げる機会や対抗手段の準備時間を与えなければならないのだと思って今まで開発した魔法には呪文は一切付けていない。


 だが今回生成するモノは、一応使用する条件と使う想定場所が限られるので、それなりの呪文を用意しておいておく方が後々良いだろうと考えている。

 もし後で不便があるとの声があれば、その部分を削除し新しい物にすればいいのだ。


「ルル、今回のは、それっぽくする為に魔法発動時に呪文を唱える形にしようと思うんだが、発動呪文って何が良いかな?、何か良い呪文の言葉とかないか?」


「う~ん今回は呪文付けるんだね~。

 発動時か~魔素系魔法なら「万物の素である魔素に我名を持って意味を与える」って言った後に長々と色々付けるけど~。

 これは一応魔法構成に必要な事を呪文で置き換え魔素を練る為のものだしね~。


 シアキのは元が違うし、ただの発動言語ってだけでしょ~それなら好きに付けた方が良いよ~変に似せるとそこで呪文が重なり発動して違う物になるかもだしね~」


 確かに魔法は呪文が無いと発動しないのが世界の常識。

 無詠唱で出来てしまう魔法に対し下手にこの世界の魔法構成呪文を被せたら違う魔法になりかねない。


「そうだな、それも有るか!じゃ~好きに付けるか・・・」


 【生成呪文】【発動呪文】の呪文を考える。


 生成呪文を「我名において命ずる、我が欲する物を完全複写せよ」と唱えた後、任意で付与する魔法名を唱え終わると、呪文詠唱終了とする。

 生成された魔法を発動させる発動呪文を「我名において命ずる、我が欲する形となり発現せよ」と唱えた後、任意で付与する魔法名を唱え終わると、呪文詠唱終了とする。


 これで全ての条件を終了し、この魔法名を【完全複写】とする。


 早速手に無詠唱にしてある【レトロ調魔術書生成】で、縦二十センチ横十五センチ程度の表紙部分がレトロ調で、三百頁程ある中身が無地の分厚い本の魔術書を生成する。

 足元に展開しているダンの領域結界術が展開している地面に生成した魔術書を当てて【完全複写】魔法の生成呪文を唱える。


「我名において命ずる、我が欲する物を完全複写せよ、【王族領域】」


 唱え終ると凄い勢いで頁が捲れていく。 約八割の頁が消費された。 生成した魔術書の中身を確認する。 すると魔法のランクに関して勉強した内容とは一致しないランクが設定されていた。


 それをルルとダンに見せ、どういう事なのかを確認する。


「ちょっとコレ見てくれ。ランクが俺の勉強して知り得たのと違うモノが設定されてるんだが?。 このランク表記は何だと思う?」


 両者は表紙を開き魔法の概要項目を閲覧する。

 それを見たルルは目を見開き、慌てて横に居たダンを躊躇する事なく後方へ払い除け吹き飛ばした。 素早くシアキから魔術書を奪い取り真剣な表情をし、シアキを庇う体勢で吹飛ばしたダンの方を見て警戒をする。


 この世界に存在する最高位習熟度を要するランクは「AA」だが、見せられたランクは見た事が無いがそれ以上であると推測される「AAA」だったのだ。


 こんな物を見せられたら自分の父親(ダン)であればシアキを屠ってでも手に入れ研究しようとするのは目に見えている。 何故なら逆の立場であれば自分ならきっとそうするからだ。


 案の定吹き飛ばされたダンは転移しシアキの後ろに素早く移動し手刀をシアキの首元に這わせている。


「こらこらルル、儂を甘く見るな。それを大人しく見せなければこの者の命を奪うぞ。

 どうせそれは儂では覚えられないように小僧が細工をしておるに決まっているだろうが。

 それを奪い取ってお前の認知不可能な空間に転移して研究に明け暮れても良いんだぞ。


 今回は小僧の事だ、恐らくそれを持ち出せば儂の命を刈取る術をそれに施しているに違いない。

 だから、それを素直に儂に見せたと考えられる、別に儂は小僧を取って食おうとは考えてはおらん。


 内容を少し見せてくれるだけで儂は満足する。見せぬと言うなら少し手荒な事をしたくなるかもしれんぞ」


 喉元に当てられているダンの手刀からは全然殺気が籠っていない。ただ手刀の形をさせて当ててるだけだとすぐ分かるものだ。 そしてルルの行動は恐らくダンがそれを奪い取って研究させる事を避ける為に行った行動だとすぐに分かった。 この二人は行動がめちゃくちゃだが、やはり親子だと思うシアキであった。


「ルル、それはダンさんに奪われても覚えられないし、あと少し細工してあるから大丈夫だ。

 俺の事を守ってくれて、ありがとな。

 あとダンさん、その殺気の籠ってない手刀は下げてくれ。


 それより、二人共、そのランク「AAA」ってなんだ?誤表示って訳じゃないんだろ?。

 俺が勉強して知り得た限りでは「最高位習熟度を要するランクは「AA」」って事だろ。

 その上がこの世界に存在するって事か?」


 手刀を下げダンが語りだす。


「そんな習熟度ランクは存在していない。 恐らくだが規格外という枠組みだろう。 世界がそう決めたとしか思えん。 しかし小僧そんなものを生成して、よく気絶せぬものだ。

 小僧もしかしてだが、儂に念話魔法を与えたくないから嘘を吐いておるのではないだろうな?」


 流石はダンだ、見事に、アレはあしらう為の嘘だと薄々気付いたようだ。

 だが、初めて作る物はどうしても精神力を大量に消費するので、今の状況を生成時に起きる現象だとダンに誤認させておく必要があると思い何食わぬ顔で説明し返す。


「そんな事ないぞ、生成時には結構精神力を持ってかれるんだ。

 今もコレを生成するのに、精神力を半分以上は持っていかれてヘトヘトだしな、何なら今俺の精神力量を調べてくれたら嘘じゃないって分かるぞ」


 そのままダンは手をかざし、シアキの体を調べる。


「精神力?そんな物で魔素系の魔法が生成出来る訳がないだろうが?。

 ・・・・確かに小僧の魔力量は、かなり減っている様だな、疑ってすまん。

 しかし、小僧!何故そんなややこしい言い回しをしているんだ?。


 それでは知識を知らない馬鹿者だと思われてしまう危険性があるぞ!。

 今や、小僧は国王であるのだ、誤解をされる行為は止めた方が良いぞ!」


 一応、精神力が減っている事を感知し納得した様だ。

 そして魔法生成や使用時に減るのは、この世界では精神力が減るとは言わず魔素系の魔法と聖素系の術でそれぞれ呼び方が違う。魔素系は魔力を消費すると言い、聖素系は聖力を消費すると言う。

 正確には魔素力と聖素力と言うらしいのだが、この世界の殆どが魔力、聖力で通していると仲間達に何度も聞かされて知っている。


 だがどうしても魔力と言うようにと心掛けようとはしているのだが、何分ステータス値が精神力で表示されているので、何度も言い換えようとしたが、以前の「レベル」という表現がない時に「習熟度」と言い換えようとした時と同じで、意識しない時はすぐ「レベル」と口にしてしまうのだ。もうこれは治らないものだと諦めている。


 仲間達には、この変な言い回しや知ら文言が出て来たら、これは癖みたいなモノだと既に認識してくれているので問題はない。


 何も知らないこの世界の者が聞けば、変な言い回しや造語を言っていると捉えられ、場合によっては知識を知らない者として、どんなに威厳のある地位にいても馬鹿だと扱われるそうだ。


 だがシアキは、逆に相手に馬鹿者だと誤認させられるならこんな都合の良いものは無いと考えている。

 何かの策で相手を嵌める為に、馬鹿者であると思わせておく方が不利になる事もあるが大半は有利に事を進めるのにはこれ程好都合な事は無いと経験上知っているのだ。


「あはは、良いんですよ。 これは俺の口癖みたいなものですしね。 今更変えても変ですしね。 それに相手に馬鹿者だと思われてる方が、事を成す際有利ですし、相手を調子に乗らせてボロを誘いやすいですしね。 このままでいいんですよ。

 

 ルル、その魔術書の中身を確認するなら早めにしてくれ。 それを覚えて発動してダンさんに確認をしてもらわないと駄目だからな。

 それに、そろそろ本格的に帰らないと、ラフェルに大目玉食らいそうだから、確認するなら早めで頼むな」


 両者は、魔術書を開き中身を確認していく。


 内容項目頁欄をまず最初に確認する。

 各種使用に際しての様々な条件の説明が書かれているが見ているだけで頭が痛くなる。

 どれもこの世界ではありえない事が書かれている。

 なので、もう考えるのを両者は止め次の項目にドンドン目をやる。

 取得可能、習熟度ランク「AAA(-1)」となっている。


 生成されたシアキの魔術書、聖術書、魔聖術書、魔導書、聖導書、魔聖導書等全て、それ自体が習熟度判定水晶の役割を持つようにシアキはしている。

 手に持った者に合わせて習熟度が変化し知らせる仕組みになっている事を知っているルルは、自分でもこの魔法はマイナス表示が出る事に少し驚きを隠せない。

 そして初めて見るマイナス表示を見て、ダンは、これは何なのかという表情をする。


「このマイナスは何だ?初めて見るぞ!」


「シアキの生成する物はね、私達の概念が通用しないのよ~。 それ自体が習熟度判定水晶の役割を持ってるのよ~。

 実際私達神族が魔術書を覚えられないけど、こうして反応して自分の習熟度ランクを知る事が出来るのよ~。 このマイナスが出るとその分威力や使用回数に制限が掛かるらしいのよね~。 だから今は私が持ってるから~私に合わせて~内容自体も調整されているんだけどね~ふふふ、これで「AA」の魔術書に成ってるのよ~凄いでしょ~」


「・・・全く理解出来ん!、だが実際その様にマイナスが出るからそうなのだろうな」


 両者はお互い一度頷き合って再度魔術書に目を通す。生成者名、生成者の職、生成魔法名【完全複写】術で生成した【王族領域】と言う魔法名が付けられた魔法である事が書かれている。


 そしてまたダンはその中で全く聞いた事も見た事も無い項目を発見する。


「何だ?まじゅつし・・「魔術士」とは何だ?」


「あ~ダンさん俺の職は希少種みたいですので、気にしないでください。

 そう言うものだと今後思ってもらって良いですか、正直これに関しては不明なので」


 両者のやり取りなど気にも留めずルルは更に頁を捲っていく。壱頁目から全く理解出来ない魔法公式の嵐が続いていた。

 この壱頁目だけでも良いので、今日一日時間の許す限り熟読し理解をしてみたいと知識欲を大いに刺激される。

 そして雑にパラパラと中身を確認し頁を中程迄捲り終えると、「バン」っと音を立てて魔術書を閉じてシアキに手渡す。


「これ以上見てたら読み込みたくなるから早くそれ覚えちゃって~」


 実に名残惜しい手放したくないまだ読んでいたいっというオーラを出しながら、魔術書を手渡してくる。

 渡された魔術書を躊躇する事なく魔導書に変換し会得し、生成した新たな【王族領域】魔法を早速発動させる。


「我名において命ずる、我が欲する形となり発現せよ【王族領域】」


 呪文詠唱終了後、足元に手の甲にある紋章と同じ紋様の魔法陣が生成された。


「ダンさんコレが今回、完全複写で新たに生成したものです。

 波長等は、俺には分からないので同じかどうか調べてもらえますか?」


「その必要は無い、発動してから儂の術の波長が感じ取れるからな。

 ただ儂にもそれが儂の領域結界術であるとは、まだ断言は出来んぞ。

 それは、波長だけを真似て、ただ誤認させておるだけやもしれん。


 試しに、娘に紋章が刻めるかやってみるがいい!、儂は小僧なら許してやる!さぁ~儂の前でやって見せよ」


 確かに波長を誤認させている可能性はあるので、実際に試し確かめるしか無いだろう。

 そうなるとルルがここに来てくれていて良かったと思いルルに目線を合わせる。


 実に嬉しそうにルルは前に立ち、右手を差し出してくる。 まるで指輪の交換儀式か何かをする様な感じだ。 もう目をトロ~ンっとさせ、今か今かとソワソワしている様子を見せる。


 右手の甲に触れ、紋章を与える呪文を唱える。


「我名、マムラ・シアキの名において、我国、マムラ王国、第五領域迄の侵入を許可する」


 呪文を言い終えると同時に、王族紋章がルルの右手の甲には綺麗な幾何学模様の紋章として刻みこまれた。

 それを嬉しそうに、まるで婚約指輪を眺める花嫁の様な乙女の目をしながら、うっとり眺めている。


 きちんと付与が出来た事を確認しダンは改めて驚く。


「本物のようだな、完全複写か!本当に恐ろしい魔法を平気で生成するとはな。

 それがあれば、紋章をどこででも付与と剥奪が可能になると言う訳だな。


 ただな、小僧!それを決して悪用するんじゃないぞ。

 それを紋章を持たない者の足元に展開すれば、不正侵入者を故意に仕立てる事が出来る事に成るからな、絶対悪用するんじゃないぞ」


 その使い方もあるかっと思い不正侵入者扱いにして捕縛して、身柄を助ける事も可能だと知り、これを策略的に使うのもありだと考えるが口にはしない。


「これは気に入った人材をその場で確保する目的で作ったから、悪用は考えてないから安心してくれ」


「では儂は、これで役目は果たしたな。

 明日の城の説明が終わったら、殆ど会う事も無くなるだろうな」


「いやいや、ダンさんには明日から国に駐在し国民達を守ってもらう為、働いてもらうからね」


「何を馬鹿な発言をしている!。何故そのような事を儂がしなくてはならん。

 国の加護者ではあるが、神族である儂に劣等種族達を守らせようとでもいうのか?どの国の加護者も、いや加護者をしておる神族誰一人としてその様な馬鹿げた事はしておらんぞ」


「あ~これに関しては、もう決定事項だから拒絶は認めない。

 納得出来なかったら加護者を辞めてくれていいよ。


 ただそれをすると、やはり「ラ」の一族は気まぐれで、加護者を頼むのは良くない種族だって言われ「ラ」の一族の名に傷が付くでしょうね。


 それに俺の国直下の同盟国であるフジイデ王国の加護者には、既に国に駐在させ、そこの国民達を守らせてるから、実例は既に作ったから「聞いた事が無い」は通用しないからね、諦めてくれ」


 先手を打たれ嵌められた事を悟るが、事実一度加護を引き受けた以上その国が滅亡するまでは加護者を辞める事は、恥に繋がる。

 途中で理由を付けて止めるにしてもそれは国王が絶命した場合を理由に辞める方が傷は浅いのだ。

 「ラ」の一族の面子の為にも安易に辞める訳にはいかないのだ。それ位の覚悟を持って引き受けたのだ。


 そしてシアキは先程、雑に考えていた国の展望等をダンとルルに話す。


「・・・確かに、ソレだと儂に利点が多いな。

 だが儂がその様な事をすれば、他の「ラ」「ア」「セ」の一族である神族達もやりだしてしまうのではないのか?。

 もしそうなると、小僧の国より賃料の安い国に商人達が移動してしまうのではないか?」


「その点は大丈夫だと思いますよ。

 今はルル達が、その力登録なるものをしていない以上。

 この世界でダンさんは最強ですし、その者が加護をする国の商品と言うだけで、どれだけの間抜けな見栄だけで生きている貴族達が挙って己に箔を付ける目的で見栄だけで商品を買い込むと思います?。


 どの世界でも、一流の商人達は一般人をほぼ相手に商売は考えてないんですよ。

 この世界では貴族、王族、各種権力者に商品を売る事で利益を上げているはずです。

 そしてココが肝心なんです!、俺の国以外に流出する商人は所詮「二流商人」だったという烙印を商人や権力者間で押し合う事になるんですよ。

 そんな事になりたくないから必死に踏み留まろうと商人達はするはずです。


 まぁ~ダンさんより強い方が居るでしょうからその方の国も同じ事をやりだすでしょう。そこの商人達間の見栄戦争なるモノが生まれ競争原理が働き、金、物資、人材、連絡網、流通網等がこの世に必要になり、この世界が活性化していくんですよ。


 俺はね、元の世界で嫌と言うほどそう言う汚い者達を陰で操り世界を動かして来たんですよ。 だから分かるんですよ、こう言う事だけはね。 何もダンさんは心配せず俺に踊らされて楽しんでくださいよ」


 最後不気味な笑みを見せられ、ダンはこの男は恐らくその先以上の事を真顔で汚い事を平気で熟せる人物だと認識し恐怖を感じるのだった。


「シアキそれって、リルムちゃんの望みを叶える為?」


「いや、これは前段階だ、アイツの望みはソコじゃ~ないからな、叶えるとしても当分先だろうな。

 多分、今は状況が少し変わったし、少しアイツも急かしては来るのは予想されるが、いやもう既に急かされているって言っても良いか!。


 まぁ~俺も一応国王になって国民達にある程度の仕事とかは与えてやらないとって考えてこれが手っ取り早いから選んだだけだ。

 基本俺達は彼方此方冒険するんだし、その際使える人材確保も兼ねて動いた方が楽しいだろ。


 不便を少しずつ便利にしておけば、俺達が一通り冒険し終わった際、きっと裏切る国とか、不敬な考えを持つ国とか一杯出てきて、それに対処するとかさ~、少しやる事が無いとツマラナイしな!」


「あははは、冒険し終わるって~まだ始めたばっかりなのに~シアキらしいね~。

 でも私はこれ以上計画を教えないでね~知っちゃったらワクワク出来ないし~面白くないし~ね」


 両者のやり取りを見ていてダンは逆らわず、この男マムラ・シアキと言う人物の考える事を知らず、手の平で踊らされている方が幸せなのかもしれないと思う。

 計画を聞き出し知れば知る程、先手を打たれ身動きを取れなくされ、最後には気付かぬ間に自分の城から一歩も出られなくさせるのではないかという、言い知れぬ恐怖を感じるのだった。


「儂も、それ以上先の計画は聞かせるな!その都度で良い!。

 儂は今生まれて初めて戦わずして小僧に恐怖を覚えたぞ」


「ははは、大丈夫か。こんなの序の口の計画の前段階だぞ、それを少し聞いただけだぞ。

 本気で動いたら恐らく二年でこの世界の文明を最高習熟度へ達成する道筋と、種族等の訳の分からない見栄や考え等を変える道筋位は付けられるだろうな。


 まぁ~今は、この不便極まりない世界を、楽しく仲間達と冒険する事しか頭にないから、やる気は無いけどね。


 さぁ~帰ろう。絶対ラフェルが怒ってるから、ルル弁解擁護してくれよ。

 ご飯抜きとか言われたら俺明日の朝まで空腹で過ごす事になるし、頼むぞ!。

 あの美味しい料理を、ただ指を咥えて眺めるだけはしたくないからな」


「大丈夫だよ~ラフェルちゃんきっと・・あ!うんうん面白いこと思い付いちゃった~ふふふ。じゃ~戻ろう」


 最後の「あ!」って何?何を思い付いたのかを聞き返そうとしたが、もう時すでに遅しだ。

 転移により拠点外に設置された釜戸の前で、肉や野菜を焼き調理しているラフェルの前に連れて来られた。

 調理しながら、物凄い冷ややかな背筋に冷たい物を感じさせる様なジト目で見られる。


「シアキさん!私、約束しましたよね!。今、私少し怒ってますよ・・・」


 その冷ややかな目で見ないでください。っとシアキは心の中で悲鳴を上げそうになる。

 少しでも(やま)しい気持ちがある時にあの目を見ると罪を認め、謝罪し倒さなければと思わせる。

 震える声でシアキは謝る。


「ご、ご、ごめんなさい・・・・」


 しおらしく頭を下げ、シアキが謝っているのを見て仲間全員神妙な態度で見守る。

 だが、一人その行動を見て、すぐさまラフェルの後ろでひれ伏し声を掛ける者が居る。


 声を掛けられ振り向くと、地面にひれ伏している者を発見し、すぐさまその者を立たせるべく行動する。


「止めて、リムちゃんお願い。それだけはシアキさんの前で絶対しないでお願い。

 もう私、怒ってないからね、ね、お願い、立って・・・あぁ~シアキさん」


 自分の行いで生じた事が原因で大切な仲間であるリムに屈辱的ともいえる仲間の前でひれ伏させてしまった事を、シアキは後悔すると同時に、この現状ラフェルの怒りをその行為により鎮めてくれた事に深く感謝する。

 そしてこれ以上その行動をさせ続けるのは看過出来ないので、すぐさま止めさせる。


「リムありがとう。でも今後それはしないでくれ。

 俺がラフェルとの約束を守らず行動した事が悪かったんだ、これは俺の責任であって、リムが謝る必要は無いんだ」


「ご主人様の行動に悪い個所など一切ありません。

 ラフェル様、ご主人様を責めないでください。 全ての責めは、私がお受けします」


 尚もひれ伏しているのでコレでは納まりそうにないので、リムに命令する。


「リルム・リム、お前の主人として命令する。

 今後俺の行いで生じた事に対して仲間達に謝る事を禁止する」


 潤んだ瞳でリムは見上げなら頷く。


「分かったら、さぁ~立って土を払って、手を洗って、調理再開してくれ、ほら!、お肉が焦げて来てるぞ。 その焦げたモノは全部俺の所に持ってこい、それは俺が責任もって処理する。


 あと絶対焦げたモノを選って食べず、ちゃんと丁度良い感じに焼けたモノだけを食す事、これも命令だ」


「はい、ご主人様の命令は絶対守ります」


 立ち上がり衣服と手に付着した土を払い。手を洗いった後、調理を再開する。

 その間、サジュラとビデアが、一時的に調理から抜けた、リムとラフェルに変わって黙々と調理している。

 そして弁解擁護を頼んだルルは約束等もう忘れているようで、焼かれたお肉を次々口に運び頬張ってモグモグ美味しそうな表情をしながら咀嚼している。


 その横でフェンラとレレも同じく美味しそうに肉を頬張っている。

 もうこの三名は、お肉が提供されたら、それしか見えなくなるのだと諦める。


 そしてラフェルは釜戸前に戻り調理を再開する。数秒後その手が止まりルルの右手を掴み引き寄せ目を丸くしている。


「ふぁふぃ?ふぁふぇふふゃん!・・・何?ラフェルちゃんどうしたのかな~」


 もう顔がこれでもかと緩みきっている表情をみせながらルルはラフェルを見る。

 全員その引き寄せられている、ルルの右手の甲にあるモノを見て、目を見開き驚いている。

 そこにはシアキの右手の甲に刻まれた王族紋章と同じ紋章がくっきり刻まれているのだ。


「ルルちゃん、コ、コ、コレ!」


「何じゃルル殿!嘘ではないのかソレは!」


「シアキお兄さんいつの間に・・」


「お姉様!・・お義兄様、(わたくし)にも紋章を刻んでください。さぁ~今すぐ国に参りましょう」


 凄い威圧感だ。そんなに紋章一つで此処まで殺気立たなくてもよいではないかと思う位全員の目線が集まる。


「ふぃふふぃふふょふふぁふぁふぃふょ・・・改めて、行く必要は無いよ。

 コレ何処でも紋章を与える為の新魔法をシアキが生成実験した時に付き合った際のご褒美でやってもらったから~。


 もう此処でも紋章はシアキは自由に与えてられるよ~。

 ふふ、これで私は名実共にシアキの国の王族で第一王妃だよ~これからルル殿下って呼んでもらってもいいよ~ふふ。

 良いでしょ~コレ!」


 まるで指輪を見せびらかすように右手の甲を全員に見せる。

 その手を全員目で追った後、ルルの発言を聞いた仲間達は、飢えた肉食獣が獲物を見つけた時のようなギラギラした目線を向けてくる。


 その間リムだけは肉や野菜達が必至に調理しているが、一人になった為、鉄板の上でドンドン焦げ行きモクモク黒い煙を上がる。

 このままでは美味しい料理を食べる前にあの丸焦げ食材達を食し口一杯に炭の味を味わう破目になると思い、今すぐ全員に紋章を与え、調理を再開してもらわなければ、楽しい食事が台無しになる危機感が生まれる。


「よし、皆に今から俺の国の国民である紋章を与えるぞ、まずラフェルからな。

 「我名において命ずる、我が欲する形となり発現せよ【王族領域】」」


 呪文詠唱終了後、足元に手の甲にある紋章と同じ紋様の魔法陣が生成された。

 移動しても足元に魔法陣が付いて回る。ラフェルの前に立ち右手の甲を向けるように伝えるが、出そうとしない。


「どうした?」


「私はそのあの・・・・・」


 本当は欲しいと言う表情をしながら手をもじもじして出そうとしない。この様子からして、もしかすると与えてはならぬ行為なのではないかと不安になる。

 まだこの世界がどのような仕組みか、王族等の仕組みを全くもって理解はしていないので、フェンラに念話でこの行動の理由を尋ねる。


『フェンラ、ちょっと良いか?少し分からないんだが教えてくれ』


『ん?どうしたのじゃ?念話でしなければならぬのか?』


『一応な!教えて欲しいんだが、ラフェルの行動からして、俺が紋章を与えるのは何か不味いのか?』


『紋章の種類によっては少し不味くは成るじゃろうが問題ないのじゃ』


『すまん、その種類って王族紋章を与えると何か不味かったりするか?少し簡単に説明してもらえるか?』


『!お主、ラフェル殿にも、その様な物を与えるつもりなのか・・・!。

 ははは、流石にシアキ殿、鈍感にも程があるのじゃ。でも、お主は知らぬのじゃな。


 少しだけ簡単に説明するとじゃな。

 この世界では王族紋章を持つ者は世間からこう思われるのじゃ!


 同性に王族紋章を与えると、義理の家族に迎えたと思われるのじゃよ。

 異性に王族紋章を与えると、少し意味合いが変わって、その国の国王の王妃として迎えたと思われるのじゃよ』


『ん?王妃?王妃・・つまりは嫁って事か!』


『今更そこを聞き返えされるとは、我も思ってもみなかったのじゃ!。

 平たく言うと他の者から見たら、マムラ王国の王妃として迎えるという意味合いに捉えられるって事じゃ。

 じゃから我等は先程、シアキ殿がルル殿を妃に向かえたと思ったのじゃよ!』


『つまりはあれか!俺は今、堂々と二股宣言しようとしているって事か!。

 うわぁ~最低男じゃん俺・・流石に不味いなソレは!、今ラフェルに凄い俺、”女たらし”野郎と思われてるって事か!・・・』


『何を言っておるのじゃ!。国王が妃を一人しか選ばぬとシアキ殿は思っておるのか?。

 もう国王なのじゃ、第二王妃、第三、第四...と王妃を幾らでも増やしても問題ないのじゃぞ。


 まぁ~そんなに気にする事も無かろう、シアキ殿は我等を妃に向かえても、変な事をする訳でも無かろう?。

 あとはシアキ殿次第じゃよ!』


『はぁ~気付かない内に結婚してたのか~。

 まぁ~王族紋章だから何だって話だよな、別に(やま)しい事する訳じゃないし。


 よし、あのモジモジもなんとなく分かった。

 はぁ~だからか~ルルがあの時「良いこと思い付いた」と言いたのか!。

 どうしよう揶揄うか・・・でも機嫌を損ねるよなきっと。当分食事は焦げた物になるかも・・』


『何!食事が焦げた物じゃとそれはならぬ、我の食事いやお肉達が美味しく焼かれるかの命運が掛かっておるのじゃ。

 あ~見よ、あのお肉が既に炭に成ってしまいそうじゃ!。

 シアキ殿もう悩まず、ラフェル殿は王族紋章で良いではないか!。

 早急に終わらせて、お肉達を助けるのじゃ!あ~焦げて来ておるのじゃ』


 パーティー内では、やはりお肉は絶大の支持を有するのだと改めてシアキは認識する。


『フェンラ!ありがとな教えてくれて、美味しいお肉は俺に任せろ-念話終了-』


 鉄板の上で焦げ始めている肉に目を向けた後、ラフェルの右手をそっと掬い上げ優しく持ち、素早く紋章呪文を詠唱する。


「我名、マムラ・シアキの名において、我国、マムラ王国、第五領域迄の侵入を許可する」


 詠唱終了後、ラフェルの右手の甲にマムラ王国の王族紋章が刻み込まれた。

 刻まれた紋章を、目をトロ~ンとさせて、うっとりしながら眺めている。 もうあっちの世界の住人になっている。

 早く呼び戻し、鉄板の上にいるお肉達を救いだしてもらわねばならないので、がっしり両肩を掴み目線を合わせる。


「良いか!ラフェル。 すまんが調理を再開してくれ、ラフェルが抜けているだけで、鉄板の上にある食材達が焦げ始めてる。

 紋章を観賞するのは、後にしてくれないか?」


 その文言を聞き鉄板の上の食材達に目線を向け、目を見開き慌てて調理を再開する。

 少し焦げたモノ、もう炭になってるモノ全て一つの皿に盛られ除けられる。


「すみません、私とした事が、これは畑の肥料に使うので皆さん食べないでくださいね」


 そしてシアキは次々仲間達に少し質問をしてた後に王族紋章を付与していく。

 後の付与順はこうだ。>「レレ」>「フェンラ」>「サジュラ」>「エラル」>「ビデア」>「アイ」。

 全員凄く驚いた表情をし、女性陣達は凄くうっとりと自身に刻まれた紋章を眺めている。


「よし次、リムだな。右手出してくれ。お前にも俺の国の紋章を与えるからな」


「はい、ご主人様」


 今まで同様自分は奴隷の為、最下位の紋章を与えられるだろう。 この紋章は目には見えない。 唯一の確認手段は関所等の検問時に知らされる位だ。 全員の様に王族になり目視で確認出来たらさぞ嬉しい事だろうと、少し自分が普通の身で王族になり主人の横で妃として立っているのを想像し妄想の中で叶わぬ恋を楽しむ。


 奴隷の身では一生経験することのない事を想像しながら、せめて与えられた瞬間その妄想力で見え無いはずの紋章を見ようと考えながら、右手を主人に差し出す。


「リム、お前は俺の事どう思う?」


 急に質問され、前後の脈略等がないその質問の意図が全く分からない。

 どう思うと聞かれ、先程妄想していた感情が主人伝わったのかと一瞬思い口から心臓が飛び出してしまうのではないかと思う位心臓の鼓動は早くなるのを感じる。


 思わず「好き」っと口を滑らせ言いそうになる。


「ご主人様、す、凄く優しい方です」


 何かを、はぐらかした感を覚えながら、話の途中で、シアキは目を見据え呪文を唱える。


「我名、マムラ・シアキの名において、我国、マムラ王国、第五領域迄の侵入を許可する」

 

 詠唱終了後、リムの右手の甲にマムラ王国の王族紋章が刻み込まれた。

 何が起きているのか全く理解出来ないが、自分の右手の甲に紋章刻まれている、妄想力で見ている訳では無くはっきりと見えているのだ、それをうっとりしながら眺める。

 いや、もうすぐこの間違いに主人やその仲間達が気づき、すぐに剥奪されるので、その前にこの夢みたいな事を記憶して明日の糧にしようと、この幸せを噛みしめる。


 だが一向に主人もその仲間達も自分に刻まれた場違いな紋章を目にしても誰も指摘しない。

 ここに居る全員、常識が通用しない方達なので、当たり前と思っている可能性があると判断し、コレはコレだけは確実にしてはいけない事であるので、消えるのは惜しいが、断腸の思いで自己申告しようと意を決し喋ろうとするが、それより先に主人から声が掛かる。


「リム、それ!間違いじゃないからな。

 俺の専属奴隷をしてくれてるから、リムには王族紋章を持ってもらうぞ。


 これは俺が決定した事だ。もしお前の事を奴隷として蔑むような奴が居たら、俺を侮辱したとみなしていい。

 躊躇なく、そいつを引っ叩いてやれ!」


「・・・ほ、ほ、本当にご主人様、良いんでしょうか?私が王族紋章をこの身に刻んでいても」


「?嫌か?嬉しくないか?」


「嫌じゃないです。凄く、凄く嬉しいです」


「じゃ~問題ない、さぁ~夕飯食べるぞ~ジャンジャン焼いてくれ。 シャボちゃんおいで~」


 近くに寄って来たモンスターであるシャボちゃんにまで、シアキは例外なく王族紋章を付与した。


 それを目撃しても誰も指摘をしない。

 未だ信じられないので、リムは右手の甲を左手で擦り消えないかを確かめ本物である事を再度認識する。

 今すぐにでも、この場で跳ね上がり体で喜びを表現したくなるのを抑え、釜戸に戻り調理の手伝いを始める。


 その後全員やはりシアキが居るのと居ないとでは食事の楽しさが違うと感じながら、思い思い食事を堪能する。

 お昼を少し回った辺りで一度食事をしているシアキは、一足先に食べ終わり、風呂に行くと言い先に天空露天風呂に向かって行った。


 ある程度食事も終盤なので調理する食材も残り少なくなてきているので、女性陣達は女子トークに花を咲かせている。


「お義兄様は何を考えておられるのか、さっぱり理解出来ませんわね。

 恐らくコレはただの飾りか何かだと思っておられるのでしょうね。 モンスターにまで与えてましたし。


 本当にどう言うつもりで全員に王族紋章を与えられるのでしょう?しかし王妃を一日でこれ程増やすモノですの?」


 このレレの一言をキッカケで、女子達は話しに花を咲かせる。

 ニターっと微笑みながらルルはラフェルを見ながら話す。


「ね~ラフェルちゃ~ん良かったね~」


 もう既に王族紋章をその身に刻んだ辺りから頭の中でピンクな妄想に入りかけているラフェルは墓穴を掘る。


「まだ子供だなんて~、ほら鈍感なシアキさんですし、コレは気付いてなくやった事ですきっと・・・・」


 誰もそこまで踏み込んだ事を口にしなくてもっと思うが、もうラフェルはクネクネしながら何やらピンクな世界の住人になっている。 実に面白いとルルは思いフェンラにウィンクして追撃を要求する。 それに応えるように軽く頷き言葉を紡ぐ。


「ラフェル殿、シアキ殿に紋章の意味は我が先程念話で説明をしておいたのじゃ、子も恐らく早い段階で適うやもしれぬのじゃよ」


「あれ?フェンラちゃんって~念話は、まだ貰ってないはずだよね~」


「先程ラフェル殿がモジモジしておる時にシアキ殿が念話でアレはどうしてじゃと訊ねてきたのでな。 本当にシアキ殿は鈍感王と言っていいのじゃ、紋章の事をそれとなく教えても気付いておらぬようじゃったしの。


 シアキ殿は策略家である様で何処か抜けておるのじゃと痛感したのじゃ。アレも演技の内かもしれぬがの」


「ちょ!フェンラちゃん何て何てシアキさんに吹きこんだんですか?」


「安心するのじゃ、王族紋章の意味をそれとなく説明しただけじゃよ」


 この二人はラフェルを当分このネタで揶揄い倒そうとしいると、他女性陣達は思うのだった。 それから数分雑談や女子ならではの軽い猥談をした後、後片付けをし、全員お風呂に向かう。


 お風呂に入った後は、各々またラフェルの部屋に集まり少しだけ女子トークをした後、割り当てた部屋には誰一人戻る事なくそのまま眠りについた。

 もうこのパーティー内ではラフェルの部屋で雑魚寝するのが定着しているよになってきている。

--- 85話目のみの後書き----------------------------------------

85話目最後まで読んでくださりありがとうございます。

どうでしたか?楽しんで頂けたならうれしいですが。


---余談---

 王族紋章の意味を知らずにシアキはルルに与えました。


では、次86話目で、お会いしましょう。

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