---83--- 国王の証 国境結界付与
拠点リビングに、レレ組全員戻って来きたが、他の仲間達の姿を誰一人としてリビング内で確認する事が出来なかった。
すぐさま人族のサジュラ以外全員周囲の気配を探る。
各々探知で切り領域が異なる。
今この場に居る仲間で、周囲の気配感知可能範囲を昇順で並べるとこうなる。
魔族の「アイ」は、自己周囲半径百メートル前後が感知可能。
空族の「フェンラ(第一武装形態時)」は、自己周囲半径百五十メートル前後が感知可能。
魔族の「ビデア」は、両者よりは広範囲で、自己周囲半径三百メートル前後最大感知可能。
神族の「レレ」は、自己周囲半径十キロメートル前後が感知可能。
各々仲間の気配を自分の感知可能範囲内で、それぞれこの場に居ない仲間達を捉え確認し終える。
拠点家屋外裏手側にある畑に、人族の「リム」、モンスターの「シャボちゃん」を気配感知で捉え確認をする事が出来たのが、アイとフェンラだ。
もう少し広範囲まで気配感知可能なビデアでも、流石に拠点家屋から森の中までは感知出来ないので、範囲内にそれ以上の者を感知出来なかった。
そして、レレは全員の位置を全て把握し終え、知り得た情報を話す。
「お義兄様は、お姉様と、ケモノ娘と共に、南の森の中に居ますわ。
連れて来た虫達と何か話しているようですわ。
お姉様のお気に入りの魔族は、単独で北方面の森の中でモンスターを討伐していますわね?。 恐らく、お姉様から課せられた修行をしているのでしょう。
あと、この家のすぐ裏手辺りに、お義兄様の奴隷と、モンスターが居ますわ」
その内容を聞き、台所を少し覗き食材置き場を確認したサジュラは、今誰がどのような目的で行動しているのかを瞬時に理解する。
「すみません、レレ様、お手数ですが、ラフェル様の所に行って頂けますか?。
恐らく、ラフェル様は、お肉確保の為、食材モンスターである「ジャイアントラービット」を狩っていると思われますので、転移でココまで食材を運んで来てもらえませんか?。
早く解体しお肉に成形しないと、この時間からでは、お肉の準備が間に合わなくなると思われますので、お願い出来ますか?。
今、台所の食材置き場に食材が一つもありませんので、食材調達されているとみて間違いないと思いますので、ご協力お願いします」
深々と頭を下げ協力要請をされる。
その提案を聞き実に嫌そうな表情をみせる。
「わ、私がですの?・・・」
「レレ殿、我からもお願いするのじゃ。
三日間も何も食しておらぬ、シアキ殿は、恐らく腹を空かせておるに違いないのじゃ。
我もラフェル殿と共にシアキ殿の為の肉を調達したいのじゃ。
すまぬが、転移術は、この面子の中じゃとレレ殿しか使えぬゆえ、出来れば我も一緒に連れて行ってはくれぬかの~」
手を合わせお願いされレレは少し天井を向き考える。
―― 恐らくお義兄様は、目覚めた直後食事は一度済ませているはずですわ。
しかし、人族とはそんなに頻度よく日に何度も食事をするものなのですの?。全くこの点は理解出来ませんわね。
でも、フェンラがあの様に頼んでいる以上、ココは聞いてあげるべきなのでしょうね。
お肉確保数を、お姉様のお気に入りの魔族より、フェンラが多く確保すれば、私に対するお義兄様の評価も上がると言う訳ですわね。
「良いですわ。連れて行って差し上げますわ。
但し、トカゲっ娘、約束なさい。
絶対お姉様のお気に入りの魔族よりも多く、短時間でその食材を確保するのですわよ」
「レレ殿、そこは食べ切れる量にしておかなければ、シアキ殿が怒るで、約束は出来ぬのじゃ」
態とらしく、口角をあげ歯を見せて、作り笑顔感丸出しの微笑みを向けた後、小首を傾げて見せながら話している。
「・・・そうですのね、難しいですわね。
兎に角、お姉様のお気に入りの魔族より、貴女が優れていると、お義兄様に知って頂く良い機会なのですわ。
これは、修行をみた、私の評価にも繋がる事なので頑張るのですわよ。
そして貴方達三名も、私の派閥組なのですから、私に協力するのですわよ」
「レレ殿、このパーティー内で派閥を作っては駄目なのじゃ。
仲間同士で争うのは、シアキ殿は望んでおらぬのじゃ、それに我はラフェル殿とは争う気はないのじゃ。
じゃから、レレ殿、こればかりは許してくれなのじゃ」
また、態とらしく、口角をあげ歯を見せて、作り笑顔感丸出しの微笑みを向けた後、小首を傾げて見せている。
この行動は、この二人間で事前に決めた行動の一つで、「実行しようとする内容は、止めるべきだ」と知らせる為の行動である。
「・・・仕方ありませんわね。
派閥の話は無しですわ、貴方達、忘れなさい良いですわね。
さぁ~トカゲっ娘行きますわよ」
すんなり、自身の発言を撤回し、フェンラと共に転移し消え去った。
二人の行動を見た仲間達は、やはり昨日何かあの二人の間に合ったのだと理解する。
あまりにもレレの態度が急変し過ぎているので、後で何があったのかをフェンラに聞きたいと言う欲求が生まれるが、ココは敢えて聞かない方が身の為かもしれないとの思い至り全員お互いの顔を見て苦笑いを浮かべる。
「では、ビデア様、レレ様が持って来られ、ジャイアントラービットが届いたら、出来る範囲で結構なので、解体作業とお肉の成型を、お願い出来ますか?。
私は、畑へ行き、リムさんに今日の献立を聞き、野菜収穫を手伝ってきますので、それが終わり次第、私も手伝いますね。
あと、アイ様、すみませんが、薪を少し用意して貰って良いですか?」
「サジュラ様、分かりました、薪は任せてください」
「私が野菜収穫出来ればいいんですが・・。
申し訳ありませんが、戦闘以外で、素面時で、その・・・まだ解体作業はちょっと・・。 正直一人でやり遂げるのは・・・・、早く、早く戻って来て下さいね」
死霊族であるが、中身はグロ耐性のない人であるので、出来る限り食材と分かっていても解体作業等はしたくないのだ。
申し訳なさそうに四本の腕を器用に合わせサジュラに拝んで訴えている。
戦闘時ビデアは魔法を己に掛け、感情全て遮断し戦闘を行ってい切り裂く等は平気で行えるのだが、今回のように戦闘時でない場合、特に料理の際(主に解体時)に同じ様にしない。
何故しないのかは、最初の料理の際、ジャイアントラービットの解体作業があったので、魔法で感情を殺して解体作業の手伝っていたのだが、その際、そんな事をしては食材に申訳がないと、こっぴどくラフェルに怒られたのだ。
それ以降ラフェルに、感情を殺して迄、食事を作る事を固く禁止されたのだ。
何よりも、シアキの食事を調理する時のラフェルは、ルルより怖い、偉大な母的存在と化すので、この冒険者パーティーの料理調理班の中では、料理に関するラフェルからの指示や指摘は絶対に守るべきものとなっているのである。
そして野菜収穫に何故ビデアが出来ないのかだ、彼女は味覚の無い生活を百年間過ごしてきた為、野菜を見ても、未だに何度収穫を手伝っても、雑草と野菜の区別がつかないのだ。
「こればかりは、ビデア様の体質ですし仕方ありませんよ。
徐々に馴れていきましょうと、ラフェル様も仰ってましたし、もし無理ならそのまま待っててください。
では、急いで、リムさんの所に行って、必要な野菜の収穫を手伝ってきますね」
そう言い残すと台所に入り、勝手口から外に出ていった。
「では、ビデア様、私は薪を置き場に行って参ります」
器用に前の触手二本少し折り、お辞儀をして見せた後、薪を取りに行く為、玄関から外に出ていく。
一人取り残されたビデアは、取敢えず台所に向かい調理器具を使いやすい最適な位置に配置する。
もうすぐ、この台所はこの冒険者パーティーの料理調理班と食材達との壮絶な調理戦場の場と化すのだ。
また少し時を遡り、拠点家屋外南の森の中を目指しているシアキ達を見てみよう。。
ガレガレ荒野から連れて来られた昆虫族の昆虫人達が一時避難的に集められている個所にシアキ達は向かっている。
昆虫人達の眼前に、獣人族の獣人の娘、この地に連れて来た金髪の神族の女性、そして自分達を自国の民に向かえると宣言した人族の男が現れた。
男を中央に、右横に神族、左後方二歩下がった位置に獣人と言う布陣で全員の前に現れている。
「すまん、昆虫人の皆、私用で少し動けず、約束期日に来る事が出来ず、伸びて今日となってしまった」
人族の男が頭を下げると、左に後方に居た獣人も頭を下げる。
流石に右横に居る神族は頭を下げる気配は無くじっと人族の行動を観察している。
昆虫人族で構成されている部族内の代表が最奥からゆっくりと前進しながら声を掛ける。
その行動を見た全昆虫人達は片膝をつき道をあけ頭を下げる。
「どうか、マムラ国王様、下げた頭をお上げ下さい。
私達の方こそ、私の部族全員を、このような快適環境である地に連れて来て頂いた事を、感謝も伝えず今日まで過ごしていた事、大変申し訳なく思っておりました。
改めまして、この感謝の気持ちを、マムラ国王様の御前で、ご挨拶させて頂いても宜しいでしょうか?」
優しい女性の声を聴き、シアキは頭を上げ、前方からゆっくり自分の方へ近づいて来る、その者に目を向ける。 目線の先にいる者の姿を見て、目を見開きみるみる顔が青ざめていき硬直する。
目にした人物はこんな感じのものだ。
顔は蠅取蜘蛛そのもので、複眼で、口は鎌状になった独特の鋏角がある。
身体は略人で蜘蛛特有の頭胸部、腹部の構造が人のそれに近い進化を遂げ、臀部に名残で出糸突起が収まる楕円形の袋がついている。
手に進化したとものが六本。脚に進化したとものが二本。
手は物を掴めるように先端が節ある三本指になっている。
胸は残念ながら、有るのか無いのかは、衣装の膨らみが全く確認出来ないので恐らく存在していないと思われる。
衣装は、凄く綺麗な和服のような衣装を身に纏っている。
この蠅取蜘蛛を擬人化した様な者を見た、シアキは心の中で「蜘蛛、クモ、くも、蜘蛛、クモ、くも」と連呼する。
近づいてくる、その蠅取蜘蛛を擬人化した者から無意識に距離を取ろうとし、青ざめた表情をしながら数歩後ずさる。
その、シアキの行動を見た、蠅取蜘蛛を擬人化した者は、その場で足を止め、深くお辞儀をして見せた後、ゆっくりと全ての手を後ろ手に回し敵意が無い事を示す。
「マムラ国王様、大変申し訳ありません。
人族の方には、我々の容姿は恐怖の対象なのでしょうが、私達には一切敵意は御座いません。 こうして手を後ろ手に回しておきますので、どうか恐れないで下さい」
蠅取蜘蛛を擬人化した者が喋る度に、口にある鋏角が動いている。
大の蜘蛛嫌いであるシアキにとってはそれを目にするだけで、全身に寒気が駆け巡る。
だが、相手は言葉を喋る昆虫人族で知的生命体である。
今の自分の態度は、凄く無礼な行動であると自覚しているので、一度生唾を飲み込み深呼吸をし精神を落ち着かせ、眼前の者は蜘蛛では無く、昆虫人の蜘蛛姫だと言い聞かせる。
そして無礼な態度をとった事を謝ろうと声を発しようとした瞬間、ルルが吹き出す。
「ぷふぁはははは、もうダメ~、本当にシアキって蜘蛛が駄目なのね~あははは、もう可笑しすぎるよ~何そのカクカクした動き~そんなに嫌なら~私がその蜘蛛を退治してあげるよ~」
その発言を聞き昆虫人内の戦闘部隊が一斉に立ち上がり、蜘蛛姫を守る為に取囲み、やらせまいと攻撃姿勢を各々ルルに向ける。
「やめなさい!「ヒ・カキリ」「ガ・イブリ」「エ・ティティ」アナタ達攻撃部隊長がその様な行動を取っては、この交渉が無になってしまいます。今すぐその攻撃姿勢をやめなさい!。
そして少し行動前に考えなさい、私達は屠るなら宣言する必要は全く無いでしょう。
この方達は種族の垣根を超え、私達の境遇を知り、態々この恵まれた地に連れて来て下さる方々です。恩義を仇で返してどうするのです。
それに神族様は、私達のその無礼な態度を見ても攻撃姿勢を取られておりません。
これらを考慮し今の神族様の言動は、そちらの人族のマムラ王国様の緊張を解される目的で、態とあのような、ご冗談を申されたと、アナタ達は何故理解出来ないのです?。
この場において、無用な争いになる様な真似は今後しないように、分かりましたか?。 理解出来たら下がりなさい」
自分を守る為に取囲んでいる同胞達に悟りを開いた後、元の位置下がらせる。
「へぇ~結構思考出来るんだね~シアキに似てるね~。フェンラちゃん危うしだね~。
まぁ~いいや、そうそう蜘蛛さんの言う通りだよ~。
でも~・・・今のキミ達はマムラ王国の民でもなければ、私達の仲間でもないから、正直、キミ達の生命とかに、私は一切興味ないんだよね~。
だ~か~ら~次その行動を私の前で見せたら本気で怒るよ~」
殺気こそ出していないが、ギロリと睨むような目線を全体に舐めるように向けている。
「おいルル止めろ、昆虫人族の皆すまん。
えっとその・・・俺は蜘蛛がその凄く苦手なんだ。
だからさっき、混乱状態になって、あんな無礼極まりない態度をとってしまったんだ。 本当にすまなかった。
もう君の事は昆虫人族の蜘蛛姫様って思って納得したから、先程俺が取った無礼な態度と、仲間の対応に関して、全て許してほしい。 あとその手は普通に戻してくれ」
綺麗にシアキは頭を下げ謝る。
その発言と態度を見聞きし、蜘蛛姫と言う通り名を付けた、蠅取蜘蛛を擬人化した者は手を普通に戻す。
「私は全然気にしておりませんので、マムラ国王様、下げた頭をお上げ下さい。
誰にでも不得意なものはあります、たまたま私の容姿がソレであったっと理解しました。
それに、その「蜘蛛姫」とは私の事ですか?。
何と良い響きなのでしょう。大変良い通り名を付けて頂き感謝します」
頭を上げるのを確認した蜘蛛姫は軽く会釈程度のお辞儀をみせ右腕全てを胸の位置に当てて見せる。
「では、改めまして、私の自己紹介をさせてください。
私はこの昆虫人だけで構成されたハオムク部族の部族長を務めております「イリオレア・ハオムク」と申します。
私の事は、先程懐けて頂いた、通り名の「蜘蛛姫」か「イリオレア」又は「ハオムク」と呼んで頂ければ幸いです」
自己紹介後再度軽く頭を下げこちらを見てくる。
「では、イリオレアさんと呼ばせてもらうね。
こちらも改めて自己紹介をしておかないとですね。
俺の名は「マムラ・シアキ」で、見ての通りの何処からどう見ても人族です。
一応「全種族間交流国家、マムラ王国」って国の国王をやってます。
そして長い間、イリオレアさん達を、この地に留めて本当に申し訳ない。
早速で悪いんだが、俺の国の民になって暮らすと言う件の結論を聞かせてもらえないか?。
長い間待たせた事に対し、こちらは、そちらの要望等を無理のない範囲で聞き入れ、取り入れると約束するので、この遅れた件に関しての謝罪はそれで果たした事にして欲しい」
もう結論は出ている。
「その件なのですが、皆で熟慮した結果、マムラ国王様の国の民になる事を辞退させて頂きます」
事前に予想していた内容と違う返答が返って来た。
あれ程「助けてオーラ」を出していた連中なので、民になるが、回答期日に現れず散々野ざらしで待たせた事を交渉材料に、色々無理難題を突きつけてくると思っていた。
どうして辞退なのか?何か裏がある様な気がするので、その理由を尋ねる。
「そっか辞退か!因みにどんな話し合いで、その理由に行きついたか説明を聞かせてくれないか?」
「はい、正直、私達は、マムラ国王様やそちらの神族様が居られる国の民になると言うのは身の安全を考えれば凄く魅力的で、出来れば辞退はしたくはありませんでした。
ですが、私達の中には、手そのものが鋭い鎌のような者や、全身の毛が毒針のようになっている者達もいます。
他種族の方を故意では無く偶然にも傷付ける可能性がありそれを発端に諍い事が生まれると思われます。
先程の神族様の冗談を真に受け、考え無しに故意に戦闘行為をしようとする者も少なからずいます。
恐らく早い段階で、そう言う事態が起き、私達は国外追放処分を受けると容易に予想出来ます。
これでは、マムラ国王様の慈悲で助けて頂いた恩義を仇で返す事になると全員で考え抜いて結論を出し、この度は心苦しいのですが、辞退させて頂くはこびとなりました」
確かに今言われた内容は、昆虫人族の身体的特徴とかで起きえる事だろう。
では、辞退を素直に受けて、「はい、そうですか、では、さようなら」っと言えるかと言うと、助けた以上出来る訳が無い。
少なからずこの者達の事情を知りここまで連れて来て、既に十分すぎる程係わったのだ。
アノ不毛の地に戻せば、数年と経たずこの者達は死に絶え絶滅しているに違いないと容易に想像出来た。
みすみす絶滅する可能性が分かっているのに、このまま返した際、口伝えや噂でこの種族が絶滅をしたと知った場合、どれだけ目覚めが悪く心に後悔の念が残るだろう。
それなら、民として迎え入れ囲ってしまう方が、偽善でも心の平穏に繋がると言うものだ。
もう、係わりを持ったからには是が非でも民にしてやると、シアキは一瞬の間に色々策を思考する。
「そっか、理由は何となく分かった。
でも、辞退するという事は、アノ地に戻ると言う事になるがそれでも良いのか?。
正直、俺には、キミ達の行動は、集団自殺行為にしか思えないんだが?」
その言葉を「待ってました」っと言う感じで、イリオレアはある提案をしてくる。
「そうなのです。 流石はマムラ国王様です。 仰る通りです。
このまま再度あのガレガレ荒野に戻り私達が暮らし続けた際、いずれ・・いえ、近い将来、私達の種そのものが絶滅すると思われます。
そこで、これは凄く図々しいお願いなのですが、出来れば、このまま、この森のある地に私達を放置し、私達の事を忘れて頂けませんでしょうか?。
この地は私達にとって、食料、水分、土、湿度、どれも完璧で恵まれた環境でして・・・我儘を申しているのは、重々承知しております。
民にならないなら、ガレガレ荒野に戻れと申されるのは、覚悟はしておりますが、何卒その前に、ご検討して頂けませんでしょうか?」
その表情は読み取れないが、行動と言動一つ一つが事前に組み立てら、最終目的に何としても誘導してやろうと言う少しだけ自分と対峙している様な嫌な感じを受ける。
この眼前に居る昆虫人を束ねる長の「イリオレア・ハオムク」と言う人物が強者ではないが、敵の行動を二手先程度までなら思考するだけで導き出し行動出来る策士の才能があると直感する。
こう言う者を自国の民として迎え、国運営の一端を担わせれば、どれ程の利点が生まれるかを瞬時に考え思考を終了する。
「すまんが、その提案を聞き入れられない。
もしその提案内容はキミ達には利益が大きいが俺には不利益となる要素が多い。
国民にならないのであれば、俺の領地外である、キミ達が居た元の居住地に戻ってもらう他ない。 すまんが、こればかりは、どうにも出来ないと思ってくれ」
その発言を聞き、今後この森内で暮らせるかもしれないと一部淡い期待があったのだろう。 またあの不毛の地に戻り生活しなければいけないのかと、全員、ガックリ肩を落とし落ち込んだ様子を見せる。
「まぁ~全員そんなに気を落とす事も無いぞ。
一応、この森自体は俺の領地領域宣言をしているから、領地拡大をして先程の提案を受け入れても良い。
でも、そうすると、戦闘が起きた際、散らばってるとキミ達の生命保護面を考えると正直面倒なんだ。
だから逆に提案だが。 種族的な居住環境を欲するなら、それを国内に用意してやる。
ただ、森の木々達は、俺の仲間でもあるから、勝手に傷付けてとかは、許可出来ないんだそこは諦めて欲しい。
それと身体的特徴で誤って相手を負傷又は殺傷してしまうような事案が起きても、それが故意じゃないと俺が判断出来るものであれば、全て許すしその相手にも俺から事情を説明して謝ってやるから安心しろ。
そして負傷した者、死亡した者が居たら、俺の仲間に頼んで回復や蘇生をしてもらうから合わせて安心しろ。
でも国民になって国内で他種族間との故意に争い事を起こす事だけは、許さないからな。
話し合い等で、和解出来ない場合は、俺の判断で、国から国外永久追放、又は、その種を完全抹殺も有り得るって事だけは、覚えておいてくれ。
まぁ~キミ達は、まだ俺の国がどんなのか知らないだろうし、今日、今から全員で一日泊まって国を見学して来るってのは、どうだ?。
そう結論を焦る事は無いだろうしな、その眼で一日通して観て感じてから、国民に「なる」「ならない」は、決めると良い。
結論はそれからでいいんじゃないか?」
話された内容に、昆虫人達は違和感を感じる。
森自体を領地領域宣言しているとはどういう事か?森の木々が仲間とはどういう事か?、回復や蘇生する?故意じゃ無ければ許す?コレだけで、凄く胡散臭い匂いがプンプンしてくる。
そして出された条件があまりにも好条件過ぎる。
このままこの者の国に二つ返事で着いて行けば、確実に全員皆殺しにされ薬にされるのではないかと感じ、イリオレアはやはり民になると事は断わり、同じ死ぬなら住み慣れたあの不毛の大地で死ぬ方が良いと思い、返答を返えす。
「すみません、やはり辞退を・・・」
丁度拠点家屋内に、レレ達が戻って来た事を気配を感知し、イリオレアの会話を遮るようにルルが話し掛けてくる。
「シアキ、今日は、国を見に行かないって約束したよね~約束破るなら、少し恥ずかしいお詫びを皆の前でさせるからね~。
この後、皆で何するか分かってるよね~もうレレちゃん達、今帰って来て、皆、準備するため動いてるんだよ~。
もういつもいつもそうやって思いったたら行動して無茶する~。
今日くらい大人しく、ゆっくり体を休めてよね~。
それに、まだ、国境結界に対する許可紋章を受け取ってないでしょ~。
連れて行っても、今は何処の関所に着いても、この子達は誰も出入り出来ないよ~。
私は絶対頼まれても連れて行かないし、この子達に対抗術とか施さないからね~。
アレはパーティーの仲間にだけしかしないんだからね~」
「シアキお兄さん、私もルルお姉さんの意見に賛成です。今日は、あまり動かず無茶されるのは、どうかと思います」
振り向くと、エラルを背中側から抱きつく様にし、頭に顔を乗せてルルは頬を膨らませ少し怒ったぞ、アピールをしている。
頭を乗せられているエラルも、少し怒っているように見える。
尻尾は、ルルにモフモフされ握られているので、動きで感情が分からない。
確かに国を明日見に行く予定だ、約束した以上破ると後で、今度はどんなお詫び行動をさせられるかと思うとこれ以上今日に限っては「精神攻撃される精神疲労はしたくない」っとの思い至るのだった。
でも、ここで昆虫人達を、国に一度は連れて行き国内の様子を見させた方が話は早い気がしている。
自分で連れて行くのは諦め、ココはダンに全員を連れて行かせようと思うのだった。
「そうだな、今日は、ゆっくり休息しないとだな。
じゃ~ダンさんに全員連れて行かせよう。少し話しつけるか・・」
話すタイミングを逃した昆虫人族の長のイリオレアは、丁度マムラ国王が沈黙しているのでココが話す機会だと口を開いた瞬間、獣人と神族二人に睨まれ首を横に振り右手人差し指を口に縦に当てて静かにするようにと言う仕草を見せられる。
理由は分からないが、ここで話し掛けると、眼前の人族の機嫌を損ねかねるのだと思い状況を黙って見守る。
自国の加護者である「ラ・リリルルフェ・ダン」をイメージしながら、シアキは念話を繋ぐ。
『ダンさん、聞こえるか?、俺だ、マムラ・シアキだ、これは念話魔法ってんだ。
心で俺と会話している様に念じてみてくれ』
『・・何だ!小僧、吃驚したぞ。
いきなり頭の中に直接小僧の声が響き渡ったのでな・・・約束していた聖術書より、この魔法の聖術書をくれないか?これは戦闘時役に立つ。是非、儂に生成して譲ってくれ』
もしこの念話魔法を、ダンに渡せば戦場で指揮を効率よく見方に送り、適切な布陣で攻めるだろうと容易に想像が出来た。
渡しても良いが、もし自分達の敵に回った際の事を考えると絶対譲りたくない相手だ。
それにまだお互い信頼関係が密ではない状態だ。今はルルに屈服したから従ってくれていると言っても良い。渡したら、すぐにでも国の加護者を飽きたとか言い辞めてしまい、最強部隊を編成し直し、自分達を巻き込んで、ルルと再勝負する可能性が高くなると容易に想像が出来た。
『もう約束の聖術書は報酬用として既に生成済みで保管してあるんだぞ。
正直、聖術書は一冊生成するのに、俺は人族だから結構消費して疲れ果てて、しばらく動けなくなるんだ、こればかりは、すまんが勘弁してくれ』
一度使用した魔法を、聖術書、魔術書、魔聖術書に生成するだけなら、今の習熟度が上がった状態のシアキにとっては、精神力は少し消費する程度で幾らでも数秒で生成出来るようになっている。
この便利な魔法を今の関係性で渡す義理はないと思っているので平気で嘘をつく。
『そうだな、人族が聖術書を生成出来るだけでも軌跡なのだ。
そう何冊も生成すると疲れ昏睡状態になり絶命したら、今後儂が見た事も無い様な物が入手出来なくなる可能性をここで潰しては元も子もないな。
儂は目新しい魔法を体験し、少し欲を出しすぎたようだな、すまんなかったな小僧。
で、小僧!何用でこの様な方法で儂に連絡してきた?』
納得し用件を訪ねてくる。
『そうそう、用件ってのは、国が出来たんだろ、ルルから聞いた。
明日にでも全員連れてそっち行くから、城の案内を頼もうってのが一つと。
今、俺の国の民になる候補予定者達が居るんだが、そいつ等を一日泊まらせ国内の見学をさせようと思ってるんだ。
でも、まだ国の許可紋章ってのを貰ってないから、ルルに連れてけないって言われたんだ。
すまんが、こっちに来て、予定者達を連れて行ってくれないか?。
俺は今日そっちに行くと明日の楽しみが無いからさ、お願い出来るかな?もし無理って言うなら、北関所側まで俺が連れて行くから、そこで仮の許可紋章でも与えてくれないか?』
『それは駄目だ。
まず最初に国王である者に紋章術を渡さねばならんのだ。
各紋章の取り扱う者の選抜等も、国王である小僧自らが行うものなんだぞ。
そして何故、儂が劣等種達の為に動かねばならんのだ。
良いか!儂は小僧に屈服したのではないぞ。
あくまで娘に力負けし、娘に屈服はしたのだ。
娘が、小僧を気に入っているから、儂も気に入っただけど思え。
それと、儂は、いつでも小僧達を屠れる事を忘れるな、あと間違っても儂が加護する以上、小僧も儂に恥をかかせぬよう行動しろ良いな!』
まさかダンの口から他者の目を気にするような発言が聞けるとは思っていなかった。
これで何となく対策が見えたこう言う人物をどう取り扱うか、どうやれば激高してくれるか熟知している。
そして口振りからすると、今言われた二つの事柄は他人任せに出来ない事案であると推測される。
だが、ココはダンの激高した状態のダンを、昆虫人族の前で屈服させるのを見せ、昆虫人族達がより安全に成るように仕向けた方が良いかも知れないと考え、丸投げ発言をし激高したダンをこの地に誘い出す為、発言する。
『まぁ~俺はそんなのに興味ないし面倒臭いから、国民の獣人族の「ホクス・ヒュヒュク」って奴に細々した説明全てしておいてくれ。
取敢えず、・・・・』
案の定、念話途中だが、このまま話していても埒が明かないと思ったのだろう、少し怒った表情をしながらダンが転移して来た。
胸倉を掴み、引き寄せられる。
「小僧、いくら何でも他人任せすぎるぞ。
小僧の行動一つで、他の加護者達に儂が馬鹿にされるのは我慢ならん!。
この「ラ」の一族の儂が加護を務めているんだぞ、最低限小僧は儂に恥じをかかせぬように行動せんか!」
その発言を聞き、昆虫人達は慌ててひれ伏そうとする。
それを素早く感知した、ダンは昆虫人達に怒鳴るように話す。
「お前達、娘が・・いや小僧の前で、今後、ひれ伏す行動は許さん。そのまま普通に立っておけ!」
怒鳴り声に昆虫人達は、ビックっと体躯を跳ね上げ言われた通り、普通に立って成り行きを見守る。
「へ~ダンさん、俺の事、少しは理解してくれてて助かるよ。
でも、さっき「ルルの前だから」って言いそうになったよね?まぁ~ダンさんらしいからいいけど。
あと、そろそろ手を離してくれると助かるんだが?。」
掴んでいた手を離し、ダンは三歩下がり適切な距離を取る。
「あ!そうだ!ダンさん、今日飯の後になるけど、少し時間空けておいてよ、一緒に俺と風呂に入いらないか?」
脈略なく話を替えられ更に怒りが生まれているのだろう。蟀谷辺りに青筋が立っている。
「小僧!話しがめちゃくちゃだ!。何を企んでいるか知らんが、儂は入らんぞ。
全く小僧と居ると調子が狂うわい・・。
今から、儂が使う、領域結界術の波動の紋章術を渡してやる。
さぁ~さっさと利き手を差し出せ!」
少し風呂を入ろうという事を断られた事に対して不服そうな表情をダンに向けながら、利き手を差し出す。
そのシアキの表情を見て怒りを更に覚える中、差し出された手の甲に人差し指をダンは当てると、ソコを起点に、綺麗な幾何学模様の紋章が刻まれた。
しばらく手の甲に刻み込まれた紋章を観察するが消える気配が全くしない。
「これって消えないのか?」
「当り前だろ!それが国王の証でもあるんだぞ。
よし良く聞け、儂が加護する国の国王「マムラ・シアキ」よ。
これで、儂の国境結界内であれば、呪文等により、他者への許可紋章の付与と剥奪が可能になった。
次に・・・」
此処で素直に説明を聞いたら、ダンに仕事をしたと言う満足感を与え蓄積した怒りを消化されてしまうので、話を途中で無理やり中断させる。
正直説明をすべて聞いて把握はしたいが、これは仕方ないのだ。
「あ~もうダンさん、説明が硬い、硬い。
説明は今は要らないわ、また分からなかったら、その都度聞くから、今は眼前にいる昆虫人達が国民に成る候補の者達なんだ。
コイツ等に今すぐ許可紋章を与えるから俺の代わりに全員、国に連れて行ってくれよ」
この発言を聞き、ダンの蟀谷辺りに青筋が更に増えた。
見せ場である説明を中断させられた事への怒りと、その他もろもろの不満が募りに募って、今にも爆発しそうな表情をしている。
そんなのは、お構いなしに、ルルは嬉しそうにシアキの前に右手を差し出す。
「シアキ、シアキ、はい、まず最初に、私に紋章刻んで~。私、シアキの国の王族になりたいな~」
嬉しそうにルルは右手を差し出し、エラルはそれに追随する様に右手を差し出してくる。
ココで紋章は与えられないのをルルは知っているが敢えて手を差し出している。
「あ~狡いです。ルルお姉さん。私も国民の証が欲しいです」
早速紋章を試しに二人に付与して確認しようと思うが、さっぱりやり方が分からない事に気付く。
「・・・どうやって与えるんだ?」
首を傾げ「早く教えてくれ」っと眼で訴えながら、ダンを見る。
その行動を見て一発位は殴ってきそうだったが、ルルの顔をチラッとみて、必死に我慢をした様だ。
なかなか「ラ」の一族は言うほど気まぐれでは無く我慢強いのではないかと思ってしまう。
「だから、それを先程説明する所だったんだろうが!。話しは最後まで聞け!。
それにココでは付与出来ないんだ。 言ったであろう国境結界内《領域結界術内》で無ければ成らないと!。 あ~小僧と接しているとイライラするわい。
良いか、もう今から儂が説明終了と宣言するまで、小僧は喋るな。
今度話を遮ったら少し痛い目を見てもらうぞ。本気だぞ。
ココは儂が加護者としての威厳を見せつける場だ、黙って聞いていろ、良いな!」
眼が真剣だ。ちょっとおちょくり過ぎたかっと思い少しクールダウンさせよう。
この状態なら、もう少しけしかければ、自ら戦闘に持ち込み、馬乗りになってでも説明を聞かせてくるだろう。そこを、一気に力を見せつけ屈服させても良いが、屈服後、拗ねて説明はしないと言いかねないので、大人しく聞く事にする。
「分かった、説明終わるまで静かにしているよ」
「最初から静かにして居ればいいんだ。全く・・。
では、最初に、領域結界術《国境結界》の強度の説明をするぞ。
城内を中心に、五段階の強度を設定している。
これの結界強度の強い順に、国民の棲み分けを行うのが一般的だ。
第五結界強度の範囲には、王族階位の者達が暮らす王宮城がある所だと思え。
第四結界強度の範囲には、貴族階位の者達が暮らさせるといい。
第三結界強度の範囲には、市民階位の者達が暮らさせるといい。
第二結界強度の範囲には、平民階級の者達が暮らさせて、商店等は、この強度の位置に出店させるといい。
第一結界強度の範囲には、貧民階位と奴隷階位の者達が暮らさせるといいだろう。
この結界強度制限は小僧で自由に幅を変更出来るから後で自由に変更するといい。
あと偽装紋章という物が存在するので、コレの対策は儂の国には恐らく必要ないと思うが、高度な偽装紋章であれば、第三結界強度の範囲までは頑張れば侵入出来てしまうので覚えておくように。
また儂より強者の神族であれば、結界内に侵入し対抗術をすぐ生成し無効化するので、第五結界強度の範囲でも安心はするんじゃないぞ。
現に昨日儂の娘で「ア」の神族に覚醒した「ア・リリルルフェ・レレ」が小僧の仲間達を引き連れて来よって、難無く対抗術を構築していきおったからな。
それに小僧、儂の愛娘二人を手玉に取りおってレレが何故・・イヤこれは後にするか。
雑談などしている場合ではないからな、次に、各種許可紋章の与え方等を説明するぞ。
まずは許可紋章を「物」に宿した「物」には、一般衛兵なら誰でも使用出来る「許可紋章付与物」と、王設秘書等の王設機関の者と、衛兵団の長しか使用が出来ない「来賓紋章付与物」という入国を一時的な許可を与える物がある。
許可紋章付与物に与えられる、結界強度は、最高で結界強度四迄の物しか作れない。
これは、関所一箇所につき、各強度に対応した許可紋章付与物を三つ迄しか作れないぞ。
よって関所一箇所に各種三つづつで、最大十二個しか置けないから覚えておくように。
来賓紋章付与物に与えられるのは、結界強度五のみしか作れない。
これは、一国で最大三つ迄しか作れないので覚えておくように。
取扱を誤ると命を狙われるので、城前の詰所に一個置き、後は生成せず放置するか予備で生成するなら城内に厳重に保管しておけ、良いな!
次に、「許可紋章付与物」「来賓紋章付与物」を、どうやって作るかを説明するぞ。
まず、判職人に付与物専用のクリスタルに自国の印章でも彫らせた物を用意し、それに向けて呪文を唱える事でその物品に許可紋章を付与する事が出来る。
呪文は「我名、マムラ・シアキの名において、無機物に意味を与える。 我国、マムラ王国、第○○領域迄の一時侵入許可を与え、触れた者へ魔法陣を示し付与せよ」だ。
これで、許可された職(一般衛兵、王設秘書等の王設機関の者、衛兵団の長)の者が持てば、それぞれ許可された範囲で第三者に付与する事が出来るようになる。
また、「第○○」の個所は、結界強度の数字を入れ唱えるんだぞ、分かったか。
これによる許可を受けた者は、一度でも国外に出れば、その効力を失うから、一々剥奪する必要は無いから覚えておけ。
次に、直接、国王である小僧自ら許可紋章を付与する方法を説明するぞ。
これは、先程の「許可紋章付与物」「来賓紋章付与物」と性質が違う、付与すればずっとその身に宿す事が出来る。
まぁ~これが国民の証というわけだ。
付与するやり方は二つ方法がある。
まず一つ目は、対象に手を翳し、呪文を唱え、小僧と同じ手の甲に自動付与する方法だ。
次に二つ目は、対象の好きな身体箇所に触れ、呪文を唱え、その触れている個所に紋章を刻み込み付与する方法だ。
そして呪文は「我名、マムラ・シアキの名において、我国、マムラ王国、第○○領域迄の侵入を許可する」だ。
許可紋章付与物の時同様に「第○○」の個所は、結界強度の数字を入れ唱えるんだぞ。
この方法で第五結界強度を許可すると、付与した位置でお前と同様可視化し続ける。
それを見れば一目で王族と分かると言う仕組みになっている。
これをこの世界では通常「王族紋章」と呼称されているから言葉位は覚えておけ。
それともう一点、第四結界強度迄は不可視化状態だが、小僧と王族紋章を身に刻んだ者はその者達を見るだけで、どの強度を与えて者か目視で分かる様になるぞ。
次に許可紋章の剥奪方法を説明するぞ。
これは実に簡単だ。
与えている者に手を翳すか、直接触れても良い、その状態で剥奪の呪文を唱えるだけだ。
呪文は「我名、マムラ・シアキの名において、我国、マムラ王国への侵入権を剥奪する」だ。
最後に、最初も言ったが、各種許可紋章を与えるには、儂が構築した、小僧の国の領域結界術内、いや違ったな国境結界内でしか付与する事は出来ないから忘れるな良いな。
説明は以上だ、さぁ~やってみろ、儂が特別にこの場に小さな領域結界を作ってやるから、獣人の娘には、第二結界強度の紋章で、愛娘であるルルには、望み通り王族紋章を刻んで見せよ、これは特別に許してやる」
言い終わると少し空間に揺らぎを感じる。
今聞いた内容で結界強度の幅が自由に変えられると聞き、その割合を考える。
そして奴隷がどの辺りまでの結界強度に対応した紋章まで与えられるのかが気になる。
フジイデ王国の王宮にリムが入れている事から見ても来賓紋章付与物というのを与えられるのは確実だ。
紋章を刻む前に、最後に、直接ダンに、奴隷が王族紋章をその身に宿すという屈辱的な事を認識させ怒りを引き出そうと考える。
一応他者の眼を気にし、奴隷に対して嫌悪感を持っているダンであれば、コレを聞けば一発で怒り狂い襲って顔面に一発入れようとするだろう。
「ダンさん、印章決めてない段階で、ルルに王族紋章を刻んだら、印象を決めた後にもう一度刻み直さなきゃいけないのか?」
「大丈夫だ、印章登録完了後、自動で変わるから心配するな」
うんうんっと納得したっと言う表情をしてみせ、少しダンの周りを魔聖素で包む準備をし、本題となる爆弾への着火発言を口にする。
「あ!あと、もう一つ重要な事を聞いていいか?。
奴隷でも、その第五の「王族紋章」は与えられるのか?」
仲間達はやっぱり聞いたかっと言う顔をしている。
その提案を聞き、ダンと、昆虫人達は、眼をこれでもかと見開き驚いている。
「何、馬鹿な事を考えているだ!。
そんな事をすれば国として馬鹿にされるではないか!、いくら小僧が奴隷に寛大でもそれはしないでくれ、儂の沽券に関わる」
予想された行動では無かった。きっちり口頭で返答が返って来た。
少しダンの心の怒りの着火剤が湿っていたかと思い駄目押しの着火発言をする為、満足だという表情をシアキは浮かべたならが、これでもかと冷たい目線をダンに送る。
「そっか出来るんだな。よし、これでリムを俺の傍で暮らせる事が出来るな。
あと俺には、ダンさんの沽券とか見栄とか興味ないし関係ないので、俺のやり方が気に入らないなら、引き受けてくれた国の加護者は辞めてくれてもいいですよ、他を見つけ頼みますし。
しかし、ダンさん、まだ俺の事を全然理解してくれてないんですね、そこが知れて良かったですが、非常に残念ですね・・・はぁ~」
この文言とふざけた態度を見せられ、怒りが頂点に達したのだろう、ダンが大声で吠える。
「ふざけるな!儂は小僧に力負けをした訳ではないんだぞ。
そこを勘違いするな、下手に出てれば調子に乗り・・・」
予想では飛び掛かって来ると思っていたが罵声だけとは少し自制をしてくれているようだと少し感心する。
だが、その罵声だけでも十分攻撃するキッカケにはなるので、シアキは仲間にも見えるように、ニターっと悪戯っ子がするような微笑みを見せる。
威勢よく啖呵を切っているダンを躊躇する事なく、魔聖素でその身を包み込み束縛し、一気に上から耐えられない程の重圧を掛け、人差し指でツンっと胸を突き倒す。
そのままゆっくりダンは仰向けに倒れ、地面にめり込む形で身動きが取れない状態で倒れたままになる。
一瞬で身動きを全く取れなくされ、何故か一切術が使用出来ない状況に陥り、少し焦った表情でダンは辺りをキョロキョロ見渡す。
その状態のダンを笑顔でシアキは仁王立ちで見下ろしながら溜息をついて見せる。
「はぁ~ダンさん、これで分かりましたか?申訳ない、力を隠してて。
これで名実共に貴方は、俺に力でも負けした事になりますね。
良いですか?ちょっと力を使って、人差し指一本で胸を軽く突いただけで、その有様です。
本気で俺が攻撃に転じたらどうなるか、力を信じる貴方ならこれ以上言わなくても分かりますよね?。
貴方とは、もっとこのまま歪な力関係を装って良好な関係で居たかったんだが、俺がニコニコしている間に、理解してくれるとありがたいんですがね」
嫌な笑顔を向けたままダンの体に態とらしく触れ、魔聖素の拘束と重圧を解除する。
解除され、地べたに寝たままダンは笑い出す。
「はははは、小僧、儂の完敗だ、何だあの手も足も出ない状況は原理が全く理解できん。
・・・あぁ~何だこの悔しいが清々しい気分は!。
儂より強い人族とは、実にふざけているが、良いだろう小僧の力の一端を味わってこれなら儂は納得せざるを得ない。
これで儂は名実共に小僧に力負けした訳か、はははは」
素早く立ち上がり真直ぐシアキを見つめる。
「ダンさん申し訳ない。貴方に力を隠し通す形で騙してた。
お詫びに、今より強くなるキッカケを与えても良いがどうだ?」
「小僧、何故、急にそんな気になった?。
あと何故今になって、このような圧倒的な力量差を儂に見せつけ、儂を力で屈服させた?。おかしいぞ、何を企んでる?」
「ははは、やはりダンさんはただの力馬鹿って訳じゃないんですね少し安心しました。
そうですね、企んでますよ。でも、今は話せません。その強くなるキッカケ件は、また今度話しましょう。
今日は取敢えず、そこに居る昆虫人達全員を俺の国に一泊させたいので、申し訳ありませんが、獣人達同様、ダンさんが認めた感じで結界内に入れてあげてください。
それと、ダンさんその後で、良いので拠点に来て下さい。
拠点の一部にダンさんの領域結界術でしたっけ、それを構築してください。
そこをココで紋章を与える正式の場所にしたいのでお願い出来ますか?。
あと今、少し病み上り状態で、力を使ったせいか、疲労感が凄くて、今の状態で転移往復は無理そうなので・・・、今の件、お願いします。
では、イリオレアさん、その人が俺の国に連れて行ってくれるから。
国についたら獣人族の「ホクス・ヒュヒュク」って人を呼んで、国の成り立ちとか聞いて、色々国内を見ててください。俺達も明日そっちに行くので、返事はその時に聞かせてください。
ふぁ~駄目だ~力を使いすぎた~また少し眠くなってきたので、拠点に戻らせてもらうわ~・・あとダンさん宜しく~」
そう言うと欠伸交じりでシアキは手を振り忽然とその場から消え去った。
「え!シアキ、今、結構疲れたって言ったよね、やっぱり無茶してたんだ・・・もぉ~」
あとを追うように、ルルはエラルを連れ転移し、同じくこの場から姿を消した。
取り残された、神族のダン、昆虫族達はお互いこの状況が理解出来ず立ち尽くす。
「・・・」
「仕方ない、小僧の言う通りお前達を儂自ら連れて行ってやるとするか!」
手を昆虫人達の群れに翳し、取り残しが無いように集団をギュッと周りから圧を掛け集める。
そして気配探知をし、他に居ない事を確認し、ダンは昆虫人族の一人に触れ、全員を連れ転移し消え去った。
--- 83話目のみの後書き----------------------------------------
83話目最後まで読んでくださりありがとうございます。
どうでしたか?楽しんで頂けたならうれしいですが。
では、次84話目で、お会いしましょう。




