---82--- レレ組 修行2 思いがけない珍客襲来
下位魔族相当の「大口」十六体と、低位魔族相当の「手」六十四体は、サジュラ、ビデア、アイの三名で手分けし数分程度で殲滅する事が出来た。
中位魔族相当の「無顔」四体が思いのほか強く、魔法等を嫌な程使用してくるので、全てを殲滅するのに、すっかり夜の帳が降りた頃になってしまった。
街並みは戦闘の抓痕が彼方此方家屋を破壊したりし無残な姿となってしまったが、国民全員、迅速な避難誘導が出来たため負傷者はゼロであった。
死傷者が誰一人として居ないので、レレは自分で家屋等に修復術を掛けるのが面倒だと思い、次元に縫い付けたダンを解放し街を元通りに戻させた。
流石に全員疲労困憊と言った表情を浮かべている。
当初予定していた以上に時間が掛かったので、上位魔族相当を出して修行させる事は、今の状態では無理と判断する。
予定通り拠点に戻らず、一旦修行場所としている研究用実験空間に戻り休息を取らせようと思う。
だが、眼前に居る仲間達は、アノ空間で過ごす事に嫌悪しているのは見ていて分かっているので、ココは自分が折れる理由を作り、敢えて選択させようと考える。
「トカゲっ娘!今日はここまでにして置きますわよ。
良く頑張ったご褒美に、一つ選択させて差し上げますわ。
このままココで夜を明かすか、研究用実験空間に戻って夜を明かすか選択なさい」
アノ気配を全く感知出来ない完全な闇が支配している嫌な空間で、この疲労しきった状態で一夜を過ごすと、恐らく気が滅入ると思われる。
こうして、今、風の音、獣人達の声、森の木々と葉が風と共に奏でる音、大気中の魔素を感じとれる方が精神的に休まる。
恐らくレレ的には、生者の居ないアノ空間の方が精神的に落ち着くと思われるが、仲間達の眼を見ると休むなら絶対ココが良いと眼で訴えている。
「レレ殿、すまぬのじゃが、我等は出来れば、此処で休みたいのじゃが」
その返答を聞き少し目元をピクピクっと痙攣させ、ゆっくり瞼を瞑り一つ深呼吸をした後、瞼を開け引き攣った笑顔を向けられる。
相当我慢しているそんな表情だ。
「トカゲっ娘が、それが良いと言うのなら仕方ありませんわね」
ゆっくり四人の前にレレは近づき手を翳し回復術を施す。
「ココは生者達が蠢いて虫唾が走るので、私は、生者の少ない、あの城の中に居ますわね。
あとはトカゲっ娘の指示に従い今日は適当に休んでおきなさいなさい。
明日は上位魔族相当との戦闘を予定していますわよ」
言い残すとフワリっと浮遊術で浮き上がり、城の方へ飛んで行ってしまった。
その後姿が少し悲しそうに感じたフェンラは、仲間全員に指示を出した後、自分は城へ行きレレに謝らなければと思い至る。
「サジュラ殿、アイ殿、ビデア殿、すまぬが後は各々ダン殿かヒュヒュク殿に、休める部屋を借りて、休んでてくれるかの。
我は少しレレ殿に明日の事で用が有るゆえ、朝迄は自由行動という事で良いかの~・・では、すまぬが、これで失礼するのじゃ」
全員の返答を聞く前に、指示だけを出し、早々に城のある方角へフェンラは走って行ってしまった。
城に到着し城内に入る。早速レレの気配を探る。だが城内にレレの気配を全く感じる事は出来ない。
自分からレレに対し種族を越えて互いを信頼し合い、親友の様に成りたいと言ったのに、先程の自分のレレに対する対応に嫌気が差したのかもしてないと思うと心が痛む。
あの場合、親友となってくれた者が最も嫌悪感なく過ごせるよう配慮し選択肢を選んであげなかった事に後悔の念が生まれてくるのだった。
しばらく全く気配を感じられない城内を歩き中央庭園らしい個所に出る。
綺麗に石畳で舗装され、中央に噴水が設置されている。
その噴水の中央に、シアキが半裸で腰に布だけを股間部分を隠すように巻いた状態で、水瓶を横にして右肩に担ぎ持つ石像が設置されているのに目が留まる。 その水瓶の口から水がコンコンと流れ落ちている。
惚れた男が石像ではあるが、半裸と言う姿に少し見惚れニヤケ顔で見ていると、後ろから急に声を掛けられる。
「トカゲっ娘!それは石像ですわよ」
振り向くとレレが立っていた。今の行動と表情を見られた事がとても恥ずかしくなり赤面してしまう。
「ち、ち、違うのじゃ、これは、その、石像の作りがあまりにも良い出来じゃな~っと見ておっただけなのじゃ、決して疚しい気持ちで見てなどおらぬのじゃ。
そうじゃ、レレ殿に、レレ殿に用があって来たんじゃ、うん、うん、用があったから来たのじゃよ、今のは、見なかった事にして忘れてくれなのじゃ」
手をブンブン振って少し焦った様子で必死に弁解している。
「誰も責めておりませんわ。
それより用とは何ですの?、早く用を済ませ、皆の所に戻り和気藹々雑談をしながら休んできなさい。
明日は今日よりもっと過酷で怪我をする危険性もありますわよ、休める時に休んでおくのも修行ですわよ」
表情は、凄く嬉しそうな表情をしているように、フェンラには見える。
傍から見れば不愛想で無表情、しかも目に全く生気が感じられないので、目を見て感情を読み取ろうとしても何を考えているのか判断出来ないが、フェンラにはそう見えたのだ。
「そうじゃった、用じゃな、用・・・その用はじゃな・・」
正直用などない。用は無いが、先程選択した内容についてきちんと謝りたいとそれだけでここに来たのだ。
「すまぬのじゃ。レレ殿、用は無いのじゃ。
ただ、先程の我が選択した内容で、レレ殿を不快にさせてた事を謝ろうと思って来たのじゃ。
あの選択は親友としては失格じゃったと思う。本当にすまないのじゃ」
急に頭を下げられ謝られた事に、少し自身の生者に対する嫌悪感が生まれるこの体質を嫌になる。
「頭を上げなさい、トカゲっ娘!。私は、そんな事は気にしてませんわ。
これは神族全般、どんな形であれ、劣等種達と対峙する時、抱く(嫌悪感、苛立ち等)感情なのですわ。
私は、私が認めた生者意外の生者と同じ空間に居ると嫌悪感を持って虫唾が走る、ただそれだけですわ。
今後は、そんな体質だと思いながら、私と接するといいですわ。
さぁ~用も済んだのでしょ~皆の所に戻り和気藹々和んできなさいですわ」
「レレ殿、我と居ても、その嫌悪感等は無いのじゃろうかの?」
その問い掛けに悩む時間など勿体ないと言う表情で即答する。
「無いですわよ。何故でしょうね?お姉様、お義兄様とは違う感情で、これは私も初めてなのですわ。 まぁ~気まぐれが起きたとでも思ってくださいまし」
「では、レレ殿、その・・・今日は一緒に語り合わないかの。
ほれ、我等もルル殿やラフェル殿のように成る為に、早く我はレレ殿とそうなりたいのじゃ。
一応、ルル殿がラフェル殿と今のような仲になったのは、一晩雑談をしならが、シアキ殿の事についてお互い語り合ったのが、キッカケじゃったそうなのじゃ。
恐らくじゃが、その際二人だけにしか分からぬ「行動」「仕草」「言葉遣い」「合図」等を決めたのかもしれぬと我はあの二人を見てそう思うのじゃ。
じゃから、我等も語り合い、真似をしてみてはどうかと思うのじゃが、どうじゃろう?。
今程、最適な時間はそうそう無いと思うのじゃよ。
拠点に戻れば皆も居るし、そう簡単に二人で語り合うのは出来ぬと思うのじゃが?」
「確かに今程、二人で決め事をするには、丁度良い時間ですわね。
やはりお姉様は、あのお気に入り魔族とその様な事をしていたのですわね。その提案良いですわ乗りましょう」
それから、二人は他愛も無い話から恋愛の話し、種族的な特徴や価値観等、様々な事を夜通し語り合った。
そして三日目の早朝、ジルベル魔人国、現女王「レフェア・ラミューラ・ジルベル」の命で、マムラ王国殲滅の為に放たれた精鋭上位魔族達が率いる軍勢がマムラ王国の北関所側の河原に到着する。
河原を挟んだ反対側に陣を整え、どう攻め込むかの策を練っている。
一睡もせず、早朝まで語り合ったレレとフェンラの両者間で、ある程度の決め事が纏まった頃、突如レレは少し苛立った表情をみせ立ち上がり北側の方角を見据える。
雑談している最中も自分の気配感知能力は全開で感知し続けていたのだ。
そして、その感知に引っ掛かる不快な者達を感知したのだ。
マムラ王国の北側河原付近に、上位魔族が四名と中位魔族二十名、下位魔族五十名、低位魔族百名と、他国と戦争する際、十分すぎる程の戦力となる魔族の群れが居るのを感知する。
感知した内容をフェンラに聞こえるように声を出し指示を出す。
「・・・全く不愉快ですわね。
外に上位魔族四、中位魔族二十、下位魔族五十、低位魔族百余りが攻めて来たようですわ。
これ位の規模なら、お父様の結界であれば容易に侵入は出来ないでしょうね。
・
・(思考中)
・
ふふ。これは丁度良いですわね。
これを利用すれば、今日は習熟度がグングン上がりそうですわね。
さぁ~トカゲっ娘今から実践戦闘に行きますわよ」
転移で体を休めている仲間三名の下へ移動し叩き起こす。
「起きなさい、修行開始ですわよ。今日は昨日同様実践戦闘ですわよ。
ただ今日の敵はお義兄様の国に、本当に攻め込んで来た不届き者の魔族達を相手にしますわよ。
負の生命体を使う実践演習ではなく、これは本戦ですので、各々の愛武器、魔法、能力等を使用しなさい。
これは今日の修行の代わりですので、張り切って全てを殲滅しますわよ」
「レレ殿、それは流石に、ルル殿に連絡をしておいた方が良いと思うのじゃが?。
あと敵の魔族は、恐らく、ラフェル殿の国であるジルベル魔人国から来ている者達じゃと推測されるのじゃ。
その場合、誰一人殺さず無力化して追い払う方が良いのじゃ」
「無力化?それは何故そうなりますの?」
「シアキ殿はラフェル殿を女王に復帰させる際に色々策を考えておるのじゃよ。
その一環として、面倒じゃが、その国の者を誰一人として殺さないと言うのをやっておるのじゃ。
じゃから、殲滅は止めて、殺さず怪我程度をさせて無力化し、追い払うと言う内容に切り替えて欲しいのじゃ」
「お義兄様が・・・分かりましたわ、そうしましょう。
トカゲっ娘のお陰で、私は、お義兄様に怒られずに済みますわね。
その調子で、私にドンドン意見してくださいましね」
少し、レレとフェンラの距離が無くなった感を感じる仲間達であった。
恐らく昨日何かあったのだろうと思うが、演習ではなく本戦であると聞いた以上気合を入れて、戦闘の準備を黙って開始する。
空間接続をし、ビデアは愛用の【命の巨鎌】柄の先にヤギの頭蓋骨があり、その後頭部から生き物の心臓の様なモノが鼓動している巨鎌を取り出し、次に【命のランタン】怪しくゆらゆらと青い炎が揺らめき輝きを放つ、ランタンを取り出し、次に【知識の書】表紙に魔法陣が刻まれた鉄色の分厚い本を取り出し、次に【改変水晶球】動物の頭蓋骨の上部を刳り貫き、水晶球填め込まれた物を取り出し各種手に持ち装備する。
今回、戦闘時にあまり必要のない【知識の書】【改変水晶球】は置いていくべきか悩み、置いていくと決断し空間内に戻す。
全員戦闘準備中にも拘わらず、サジュラは、いまだ上半身を起こした状態で半分寝ている。それを見かねたアイが代わりに昨日使用していた武器等を準備してあげている。
念話をルルに繋ぎ今の現状をレレは伝える。
『お姉様、朝早く申し訳ありません。少し宜しいですか?』
『どうしたの~レレちゃん何かやらかした?』
『いえ、違いますわ。
今、お義兄様の国にジルベル魔人国という箇所から来たと思しき大量の魔族が攻めて来ておりますの。
それを、私達の修行の一環で、トカゲっ娘の提案で誰も殺さず無力化して追い払う事にしましたのですわ。
そこで、お姉様の方も参加されるかをお聞きしたいのですが、どうされますか?』
『う~ん今日はラフェルちゃんとエラルちゃんの修行が大詰め何だよね~。出来れば行きたくないかな~。
ジルベル魔人国の魔族達は、ラフェルちゃんの国の国民達だから絶対殺しちゃダメよ~それだけちゃんと約束出来る、レレちゃん?』
『出来ますわ。トカゲっ娘が、その点をちゃんと教えてくれましたので、大丈夫ですわ』
『じゃ~私達は参加しないから~魔族の件は、そっちに任せるね~頑張って~』
あまりにも、あっさり任せられた。少し拍子抜け感はあるが、念話を終了する。
「トカゲっ娘、お姉様側は、今日あのお気に入りの魔族とケモノ娘の修行が終盤のようですわ。 こちらも負けていられませんわよ」
「そうじゃな、ルル殿とラフェル殿達には負けられないのじゃ。 我等も頑張るのじゃ」
何故かレレとフェンラがお互い目線を合わせ頷き合っている。
結界外では、この世で最も最高ランクの偽造紋章である物を用意し、偵察部隊がその身に刻み、今、「ラ」の一族で最強者が構築した領域結界(国境結界)を通り抜けようとしている。
最高ランクと言っても、ダンの結界では何ら無意味である。もし用意するならもっと上の超が付く様な偽造紋章となる物を用意しなければ到底侵入などは出来ない。
マムラ王国の加護者であるラ・リリルルフェ・ダンは、自身の結界に偽造紋章を身に宿している者達が結界に触れている事に気づき、侵入しようとしている者の前に転移で移動する。
見る限り下等な魔族達で相手にするのも面倒臭いが、この者達がマムラ・シアキと言う人物の仲間で有る可能性も考えられるので、一応素性を尋ねる。
「お前達は何者だ?」
必至に結界内に進み入ろうとしていた者達が、眼前に、髪は金色で短髪、口髭を生やし、右頬と右瞼の上に傷があり、肩幅が異様に広く錨の様な肩をしていて、衣装は白いベールの様な物を右肩で結びドレスの様にスッポリ着た、瞳が淡い紺色で顔立ちも目鼻立ちがゴツゴツしていて淡泊と表現するに相応ししい顔付で胸板が厚く筋肉ムキムキの身長百八十センチ前後のゴリゴリのマッチョ親父と言った感じの人族と思われる男が姿が現れている。
後方で、同族魔族達が結界を通ろうとしている姿を見ていた指揮官役の者が発言する。
「我等は、ジルベル魔人国の者だ。
貴様の国王は、我が国に侵入し我国の罪人を故意に逃がし、我国女王レフェア・ラミューラ・ジルベル様の命を狙った重罪を侵した者達を匿っている。
重罪人であるマムラ・シアキ国王を速やかに引き渡せば、この国の民の命だけは助けると我国女王レフェア・ラミューラ・ジルベル様は約束された。
引き渡しに応じなければ、実力行使を開始する。今より三時間の猶予をやろう、じっくり検討し返答せよ」
内容を聞きダンは笑い出す。
「はははは、小僧は既に種族間戦争を仕掛けておるのか!実に面白い儂も少し暴れてみたくなってきたぞ、下等生物共達よ!」
踏み込もうとした瞬間、後ろから殺気が流れてくるのを感じダンは振り返る。
後ろに、レレが微笑みながらフェンラ、サジュラ、ビデア、アイを引き連れやって来た。
未だ何故、娘のレレがこの者達と引き連れ行動を共にしているのか理解出来ていないが、ココで理由を尋ねるのは得策ではないと判断する。
「お父様、臭いですわ、さぁ~邪魔ですわ、私の視界を塞がないでくださいまし。
その者達は、お義兄様の獲物で、私達以外、勝手に手を出し、屠る事は許しませんわよ」
ギロリっと睨まれる。もう既に自分の領域結界術に対する対抗術をやってのけ最深部で活動して見せているので、確実に愛娘のレレも自分より強者であると認識せざるを得ないので道を譲る。 道を譲らせ満足そうな表情をしながら、レレ達は前に出ていく。
魔族達の眼の前に以下のような面々が現れた。
漆黒のベールの様な物が幾重にも重なり合い作くられた、漆黒のオフショルダーのドレス身に纏い。
腰辺りまでサラサラした綺麗な銀髪を伸ばし、肌の色は艶のある肌色で、何故か生気を全く感じない。
瞳は淡い紺色で、胸は、慎ましいが双胸は自己を主張し、全体的に少し幼さが残る独特な妖艶な熟れる前の美その物を封じ込めた感じの身長百五十五センチ前後の人族と思われる女。
黒と紫を基調とした、ゴシックロリータ風の衣装を着用し、スカートの下にズボン穿いて身を纏め。
黒髪のショートヘアーで、肌の色は褐色。額に第三の眼が有り、額の眼以外は、爬虫類の様に縦に瞳孔が割れ、右目が淡い緋色、左目が黄色、あと額の眼は、黒目のみと此処バラバラの瞳の色をしている。
胸は、ささやかだが、その存在感を双胸共しっかり自己を主張し、身長は恐らく百三十から百四十センチ前半と小柄な人族と他種族のハーフと思われる女。
受付嬢専用の一般制服を着込んだ、黒髪のロングヘアーで、容姿は凄く目鼻立ちが整っており、双胸は大いに自己を主張し、腰もキュッと括れが有り、ヒップラインも中々の自己主張をした。
身長が百六十センチ前後で、十人中十人が、この者は美人であると答えるような人族と思われる女。
フード付きのシンプルな四本腕用の長袖のローブ服を身に纏い、髪は血で染めたようなに真っ赤で、それをツインテールに結ばれ胸元に掛かるようにし、足元は大型草食動物の様な獣の足が、ローブ服の無い個所から覗かせている。
容姿は丸顔で少し何処となく幼さを感じさせてはいるが、眼球が唯一左目だけしかなく、強膜が白ではなく、真っ黒で、瞳の色は血の様な赤黒さで、死人の様な輝きの無い眼をしている。
腕が四本あり、その手に柄の先にヤギの頭蓋骨があり、その後頭部から生き物の心臓の様なモノが鼓動している巨鎌と、怪しくゆらゆらと青い炎が揺らめき輝きを放つ、ランタンが握られている。
胸はその存在感をこれでもかときっちり双胸共に大きく盛られ自己主張をし、身長は恐らく百五十四から百五十七センチ前半と割りと小柄で完全に魔族と思われる女。
五十センチ程の球体の略全部が大きな一つの眼球だけで他には、申し訳程度の口が一つあり、球体下には触手が四本あるとだけで、十人中十人が異形種で魔族と答える者。
この中の銀髪の女が、更に一歩前に出てくる。
「皆様、ご機嫌麗しゅう存じますわ。
本日は、私の、お義兄様であるマムラ・シアキ国王に何用でしょう?。
事と次第によっては、私の親友と、お義兄様の仲間達が貴方方のお相手をする事になりますが?」
口振りからしてマムラ国王の妹で有ると思わる銀髪の女が、ドレスのスカートの両端を両手で軽く持ち上げ、一度屈伸運動をし華麗な挨拶をして見せる。
それを見た魔族達は口々に罵声等が飛んでくる。
「何だ人族風情の銀髪女はお呼びじゃね~んだよ。
やはり人族の国の王は所詮こんなもんか!交渉に女を遣すとか馬鹿なのか?」
「それより見ろよ、後ろに居る魔族を!アレは俺達の国の者達じゃね~か!」
「あいつ等、レフェア・ラミューラ・ジルベル様を裏切ったんじゃね~か?」
「おいおいアイツ等って、目玉の方は誰か分からないが、確か魔眼族って国内権力序列五位だろ。
あの死霊族って死霊族内序列一位のビデア領現当主「ビデア・ゼゼル・ビデア」本人じゃね~か?。
確か死霊族って国内権力序列八位だろ、何でこんな所に居るんだ?」
集まっている魔族達が口々にヒソヒソ話しで隣の者と話し合い騒めいている。
自分の創造した魔族が、自分を前にしても、誰一人としてひれ伏さず、立ち尽くし、事も有ろうに罵声を発している事に対し苛立ちが頂点に来る。
「・・・・ば・・・か・ですって・・・」
最初に馬鹿呼ばわりした魔族の後ろに一瞬で移動し軽く蹴り上げる。
上空に跳ね上がった後、その魔族の前に瞬時に移動し躊躇なく上空にて脳天締めで鷲掴みにし力を込め握りつぶそうとする。
「レレ殿、我慢じゃ!ココで我等が、一人でも魔族を手に掛けては、シアキ殿が不利になり計画が狂うのじゃ!」
下からフェンラの声が掛かり我に返り掴んでいた魔族を軽く放り投げ元居た位置に戻って来る。
「何の有益性を感じない生者で、私が創った玩具達に、演技をして見せているだけでも虫唾が走りますのに、本当にお姉様はこのような実に難しい事をやり除けているとは流石ですわ!。
しかし、助かりましたわ。トカゲっ娘の指摘が無ければ、危うくお姉様やお義兄様に怒られるところでしたわ。
まぁ~屠っても蘇らせれば良い気もしますが、それでは駄目なのでしょうね、難しいですわね」
今のは何だ、っと魔族の間でヒソヒソ声にて確認を取り合っている。
その騒めきを無視し、魔族達に背を向け、レレは仲間に指示を出す。
「では、今日は、あの玩具達を使って、お義兄様の国の防衛戦を開始しますわよ。
但し今回は、お義兄様があの者達を殺傷しないと決めておられるので、殺傷は禁じますわ。
まぁ~もし誤って殺傷しても、あとで蘇生させ、お姉様とお義兄様には、それで納得してもらいますので安心してくださいましね、ふふふ。
出来れば、私的には、良い声であの生者達の鳴かせてくれると、嬉しいのですが。
私は、上空で、戦いを観戦させてもらいますわね。
では、トカゲっ娘が中心になって全員に指示を出して、戦闘を始めなさい」
空間に座るようにし上空に上がり見下ろす。それを合図にフェンラが魔族の前に一歩前に出る。
「お主達、我等はお主達と交戦する気は今の所ないのじゃ。怪我をせぬうちに、国へ戻る事を・・・」
話の途中だが、瞬時に距離を詰められフェンラの後ろに上位魔族の一人が回り込み、強烈な打撃を叩き込み、魔族の群れの中に吹き飛ばした。
強烈な一撃を食らったが、防護の加護をその身に受けているので殴られた衝撃は感じるものの痛みを全く感じていない。
本来なら敵の狙いとしては、中位、下位の魔族達に取り囲まれる最悪とも思える状況に追い込んだと思っているのだろう。全員ニヤニヤ不気味な笑みを見せ武器を持った手を振り回したりしている。
「やれやれ、最後まで話しもさせてくれぬのか!。
やはり、レフェア・ラミューラ・ジルベル女王とやらは、全くもって部下の教育がなっておらぬのじゃな」
自国の女王の名を貶す言葉を聞いた中位下位魔族達は一斉に攻撃を仕掛けてくる。
「幾ら殴ろうと、今の第一武装形態時の我に、お主ら程度では傷一つ付けれるのじゃ、少しそのまま気が済むまで攻撃でもして待ってるのじゃ!」
各種武器で殴られたり、斬り付けられたりしているが、そんなのは気にせず、仲間達に指示を出す。
「ビデア殿、サジュラ殿に群がる敵を全て蹴散らして欲しいのじゃ。
サジュラ殿は出来る限り無理せず、着実に倒せるものを見極め行動してくれなのじゃ。
アイ殿、すまぬが、一人で残りの雑魚と中堅と思しき者を見定めて受け持ってくれのじゃ。
我は、この周りの雑魚共を蹴散らしてから大将全てを受け持つのじゃ」
「「「分かりました、フェンラ様」様」さん」
全員了解し各々行動を開始する。
次々襲い掛かっている魔族には目もくれず、フェンラは精霊魔法の呪文詠唱する。
「契約せし土の精霊よ、我の呼び掛けに応じ、その力を示せ【石刃】」
唱え終ると両手に、全長二十四センチ程度の黒い鉱石物で出来たブレードナイフが生成された。
生成された武器を素早く逆手に持ち構えると、目にも止まらぬ速さで移動し次々と攻撃してくる魔族の武器を破壊し最奥に居るこの軍勢を指揮する上位魔族の者の下へ走り抜け一人の上位魔族の喉元にピッタリとナイフ這わせて睨みつけている。
もう眼が戦闘時特有の冷酷な獲物を狩る者の眼をしている。
刃を突き立てられている魔族は最大限の侮辱行為を受けた事で怒りで周りが見えなくなる。
後ろに素早く跳ね飛び、フェンラから少し距離を取り激高する。
「上位魔族であるこの俺にそのような侮辱行為をしやがって、許さん許さんぞ~。
劣等種の分際で、少し邪眼を使えるからと言って調子に乗りやがって~」
「何を勘違いしておるか分からぬが、我はまだ邪眼を一切使用しておらぬのじゃ。今のは挨拶程度じゃぞ?
お主達魔族は少し頭を使う方じゃと思っておったが下っ端の末端では戦闘センスが無いのじゃな、少しガッカリじゃ。
もっと状況を把握し戦略を立てぬと、お主とお主の部下達の命を無駄に散らすだけじゃぞ。
今回我等は、お主達の誰も屠らぬから安心してくれなのじゃ。まぁ~大怪我位はするじゃろうがな。
しかし我が先の戦争時代に戦った時は、もっと戦況と相手の力量等を図り戦況を次々替えてきたがの~。
まぁ~今の実力を試したいので、少しだけお主達で遊ばせてもらうで、嫌でも付き合って貰うのじゃがな!」
首をコキっと一度鳴らすと、上体を低くし腰を落とし眼前の獲物に飛び掛かる肉食獣のような眼をしながら勢いよく飛び出してくる。
一瞬視界から消えたと思える程素早く動き、また距離を詰められた上位魔族は、手持ちの長剣で必至に応戦するが。フェンラの動きに全く着いていけない。
上位魔族であるので、ある程度の速度には反応し反撃や応戦が出来る筈なのに、今回は全くと言って良い程、動きを目で追い、攻撃を辛うじて防ぐ事しか出来ない。
高速移動していたフェンラは動きを止め、無防備な態勢を見せる。
「どうしたのじゃ?お主上位魔族なのであろう?手を抜くのは良いが本気で戦ってくれぬかの~。
そうやって防御だけされても、我の修行にならぬのじゃ。ほれ、全力で掛かってきてくれなのじゃ」
無防備な態勢で棒立ちになったのを絶好の好機と捉えた残りの上位魔族三名が一斉に魔法攻撃を仕掛けてくる。
三発の魔法を食らいフェンラはまるで糸が切れた人形の様に上空に跳ねあげられ、そのまま放物線を描き落下する。
落下地点に次々と躊躇する事なく上位魔族達は魔法を撃ち込み、その周辺に居た中位、下位、低位魔族達の命等、お構いなしと言った感じで次々と攻撃をする。
土埃が上がる中、フェンラは立ち上がり辺りに散乱する中位、下位、低位魔族達の無残な亡骸を見て怒りを覚える。
巻きあがった土埃が突風が起きて吹き飛ばされ視界を確保される。 そこに立っていた者は、武装形態を第二に引き上げ少し怒りに満ちた表情を見せたフェンラが上位魔族達を睨みつけている。
睨みつけられている上位魔族達は、このまま視線を逸らすと確実に距離を詰められ屠られるかもと恐怖を感じ身動き出来なくなる。
「お主達、仮にも同じ国に暮らす仲間が居るというのに、何と言う愚行な事をするのじゃ」
上空で観察していたレレが声を掛けてくる。
「駄目ですわよ。トカゲっ娘今すぐその形態は解除しなさい。それでは修行になりませんわ」
「駄目じゃレレ殿、我はキレたのじゃ。
仲間達を、躊躇する事なく巻き添え死させるような奴を許しては、シアキ殿に笑われるのじゃ。
こう言う奴等は一度後悔させねばならぬのじゃ。
お主達の所業許し難しじゃ。
お主達のその愚行な振る舞い、万死に値するのじゃ」
ゆっくり、ゆっくりとフェンラは上位魔族達の下に歩み寄っていく。
眼前に立たれ、睨み上げられたその瞬間、睨みつけてくる竜人が膝を折り地面に這いつくばる。
「何度も言わせないでくださいまし、駄目なものは駄目なのですわ。
私が、したいのを、我慢しているのですわよ。
これに関しては従ってもらいますわ。
直ちにその形態を解除し第一形態で戦いなさい。そうすれば、その捕縛を解いてあげますわ」
これが逃げる絶好の好機と捉え上位魔族達は逃げる為、空間接続をし空間を繋ぐ。
飛び込もうとしたが体が動かず何故か空間接続が無効化される。
「玩具が勝手に逃げる等、私は、まだ許しておりませんわよ。
この失敗作共め、私の親友に恥をかかせるとは、虫唾が走りますわ。
さっさと、私の前に、ひれ伏しなさい」
その号令が飛ぶと、全魔族(アイとビデア含む)はその場で自分の意思では無く強制的にひれ伏した状態にさせられた。
何故自分達の意思とは関係なく体が勝手に動いているのかが分からない。
「どうしたんですかレレ様?もう終わりですか?」
この状態は修行の終わりであるのかを、サジュラが問いかけてくる。
「違いますわ。一時的は休憩ですわ。少し休憩しておきなさい。
私は、少しトカゲっ娘に話しが有るのですわ。
終わり次第、再開しますわよ」
「分かりました」
上空からフェンラの下に降り、地面に這いつくばっているので、屈んで目線を合わせる。
「さて、フェンラ、元の状態になりなさい。
今日はお義兄様が進める策を有利にする為に、私達はこの者を屠るのではなく、追い返すのが目的で修行がてら腕試し中ですわよね?。
昨日事前に、私達で決めた事を覚えてますわよね?」
「分かっておるのじゃ。
助かったのじゃ。レレ殿の指摘が無ければ、危うくルル殿とシアキ殿に怒られるところじゃったのじゃ・・・」
そう言うと武装形態を下げ人族そっくりの第一形態に戻る。
捕縛の圧を解除し、手を差し伸べ、立たせる。
「何じゃろう、凄く納得がいかんのじゃ」
「ふふ、そうでしょう。
私も、この様な失敗作の玩具達をすぐにでも処分したい気持ちで一杯ですわ。
でもココは我慢なんでしょ、フェンラ?」
「そうじゃ、我慢なのじゃ。ラフェル殿がより有利になるように事を運ばねば、シアキ殿の策が無駄になってしまうからの~。
レレ殿すまぬが、あの亡骸になった連中を蘇らせてやって欲しいのじゃ。
このままじゃと我等が屠ったと、この者達なら言いかねぬのじゃ」
亡骸になった者達の居る方向え手を翳し、何重音声だと言わんばかり呪文詠唱を唱える。
『他者に刈られし生命達よ、再度己の器に元に戻し、その活動を開始せよ』
大規模な魔法陣が詠唱終了と共に広範囲に広がり展開し、黒い霧状のモノが吹き出し辺り一帯足元二十センチに濃い黒い霧が立ち込める。
亡骸になった者、粉々粉砕した者が生前の姿を取り戻し息を吹き返す。
「大規模死者蘇生も今後使用する可能性が有るので無詠唱化しておくべきですわね。
何故、私が興味の無い、玩具《魔族》相手に、私の、この高貴なる口を煩わされなければいけませんの、あ~今凄く虫唾が走ってますわ、全く不快極まりないですわね」
「レレ殿ありがとうなのじゃ」
「今度も同じ様な事をされては、嫌ですわね。 仕方ありませんわね」
立ち上がり、少し上空に浮遊して上がり見下ろす。
「私の玩具達、良く聞きなさい、私の名は「ア・リリルルフェ・レレ」ですわ。
私が今から指示致しますのでそれに従い行動なさい。
但しお義兄様の仲間である目玉「アイ・ラベル・ラベル」、腕「ビデア・ゼゼル・ビデア」は指示に従わない者達としますわ」
その発言をキッカケに、魔族達と一緒にひれ伏していたアイとビデアは己を取り戻したかのように立ち上がる。
「では指示を聞き忠実に実行なさい。
上位魔族全員一箇所に集まりさい。
トカゲっ娘、上位を全て貴女が相手をしなさい。
中位魔族は、綺麗に半数に分かれて、それぞれ距離を取り集まりなさい。
目玉、腕は中位をそれぞれ相手なさい。
下位、低位魔族は全員一箇所に集まりなさい。
黒髪は、下位、低位全てを相手なさい。
さぁ~やりなさい」
空間に座るようにし上空に上がり見下ろす。
魔族達は己の意思とは関係なくそれぞれ距離を取り集まっていく。
それぞれの前に敵であるフェンラ、アイ、ビデア、サジュラが一人づつ現れ、一礼をし身構える。
訳が分からないので魔族達は我先に逃げ出そうと空間接続し逃げるが、何故かまた同じ位置に体が勝手に動き戻ってきてしまう。
そして空間接続を諦め森に逃げ込むが、ある程度距離を取り離れると強制的に体が動き、元の位置まで戻ってきてしまう。
魔族達は眼前の敵一人を倒してしか自由に成れないのだと悟り身構える。
「さて上位魔族のお主達には悪いのじゃが、少し痛い目を見てもらうのじゃ。
我は先程の件に対し少し怒っておるのじゃ、この状態で出せる本気で動かせてもらうのじゃ。
上位魔族相手に、どこまで行けるか試したいので、お主達も少しは本気で動いてくれなのじゃ」
そう言うと、フェンラは靴を脱ぎ裸足になる。その足は爪が三本あり踵部分に鋭い爪が一つ有る感じで正に鳥の足と言った感じだ。
地面に爪を食い込ませ、上体を低くし高速移動で辺りをウォーミングアップと言わん感じに周りを走り始める。
その動きに上位魔族達は驚き、本気を出さねば屠られると直感し身構える。
一向に攻撃をしてこない。
「う~ん、やはり第一形態時では、速さも左程思った以上は上がらぬようじゃな。
今はこれ位が限界かの~よし今度は打撃を試すかの~」
魔族達はお互い背中を合わせで陣形を取り、四方何処から攻撃されても一人が確実に対処出来る布陣で固まっている。
今まで高速で周りを走っていたフェンラは動きを止める。
この行動に拍子抜けし一瞬魔族達は気を緩めた。それを見逃さず、すぐさま間合いを詰め軽めに掬い上げるように一人の魔族に打撃を叩き込むが寸止めする。
打撃の衝撃波が全員に伝わり魔族全員上空に吹き飛ばされていた。
「何じゃ!一人消えたじゃと・・・」
吹き飛ばした四人の中に既に幻影が一人紛れ込んでいたらしく、上空で一人姿が忽然と掻き消え三人になった。
慌てて、一人を探すが時すでに遅し、至近距離で蟀谷目掛けて魔弾が放たれた。勢いよく横回転しながら吹き飛ばされ、巨石に何度もぶち当たりようやく威力が落ち停止する。
「・・眼が少し回ったのじゃ。流石に至近距離は焦るのじゃ」
全力の魔弾を至近距離で放ったはずなのに無傷で佇んでる姿を見て一人は戦意を喪失しその場に座り込んでしまった。
一方サジュラ、対、下位魔族五十名、低位魔族百名との戦いをレレは実に楽しそうに観戦している。
一見すると数の暴力でサジュラが不利な状況だ。
戦い方は、ジャイアントラービット戦と同じく両手に長剣を振った時の威力を殺さずそのまま踊るように戦っている。
その動きは、まるで戦場のダンサーっと表現したくなる戦いぶりだ。
基礎を底上げしたので、今のサジュラは低位魔族相当の移動速度と回避能力を身に付けている。
加えて攻撃の加護のお陰で、攻撃が当たれば下位魔族相当のダメージを相手に与える事が出来るようになっている。
戦い方は、ほぼ独学で個性的なものなので、無駄が多く、最初はバシバシ攻撃が当たっていたのだが、戦闘経験のある者であれば、数分もすれば軌道を先読みされ容易に避けられるようになる。
その為今は全然攻撃が掠りもしないのだ。
「あ~全然当たらなくなりました~」
戦っている魔族も避けて笑い、ほらほら当ててみろと調子に乗る者まで出て来る始末だ。
―― 本当に何をやっているのですのアレは?。
お遊戯ですの?全く遊び過ぎですわ。黒髪・・えっと確かサジュラ・ルレイでしたはね。
あの子は昨日も見てて思いましたが、武器は使用せず、何故素手の打撃系で戦う方が自分に向いていると気づかないのかしら?。
もうまたあんなに武器に踊らされて・・・。
あ~もう動きに無駄が多すぎですわ。何故あの子は武器を使うのですの?体術は多少ましなはずですのに・・あ!そこですぐに斬り返すのですわ。
あ~モタモタしてるから避けられるんですわ・・・。
そんな事を心の中でつぶやいていると、念話でシアキに話し掛けられる。
『レレ~聞こえるか~、今何処にいるんだ?』
思いもよらない不意を突かれる形で話し掛けられ少し動揺を隠せない。
なんて返答を返そうか瞬時に考え念話を返す。
『お、お義兄様!もう復活されたのですのね!良かったですわ。今ですか?・・・場所は教えませんわ。
今、お義兄様の仲間達を、私自ら修行を見ている最中ですわ。
今、特別な環境下で組手修行をしおりますので、皆の気が散るといけませんので、絶対こっちには来ないでくださいましね。
終わり次第戻りますので、そちらで待っててくださいましね』
『心配するな、こっちも少し用があるからいけそうにないと思うからな。
ただ今日は夕食前迄には必ず戻ってこいよ。屋外焼肉パーティーをするからな』
『?パーティー?良く分かりませんが、食事を外でするのですわね、分かりましたわ。
では少し、時間短縮の為に私も参加して参りますので、これで念話を終わりましょう』
『その修行早く切り上げれるなら今日は早く切り上げて戻って準備手伝ってくれると、助かるからな。
まぁ~あまり組手で派手に無茶させて怪我だけはさせるなよ。
じゃ~これで念話終了するな ‐念話終了‐』
「不味い、不味いですわ、今の念話、全く発動する気配を感じとれませんでしたわ。
これは早めに終わらせないと不味いですわ・・。
トカゲっ娘!黒髪!目玉!腕!もうお義兄様は目を覚まされましたわ。
黒髪あと半分は仕留めなさい。もう武器を使っての児戯は後にして、素手でいきなさい」
発せられた言葉に反応し、フェンラは完全無防備に成りレレを見上げる。
「な!シアキ殿が、やっと目を覚ましたのじゃな・・それは急がね・・・」
上位魔族三名からの魔法攻撃を気を逸らした瞬間を狙われ、全発食らいフェンラは勢いよく飛ばされていく。
「もぉ~トカゲっ娘気を逸らしてどうするのですの!全く」
吹飛ばされながら、土精霊魔法を使う。
「契約せし土の精霊よ、我の呼び掛けに応じ、その力を示せ【石壁】」
飛ばされている先に手を翳し、石壁を生成する、それを足場にし勢いを付けて飛び戻る最中に再度精霊魔法を唱える。
「契約せし土の精霊よ、我の呼び掛けに応じ、その力を示せ【石刃】」
唱え終ると両手に、全長二十四センチ程度の黒い鉱石物で出来たブレードナイフが生成された。
邪眼で全員の動きを先読みしそれに合わせ高速移動をし一人、また一人と首元に生成したブレードナイフを当て「お主は今死んだのじゃ」っと宣言して回る。
そして上位魔族全員戦意を喪失し、その場に座り込んでしまった。
既に戦闘を終えて暇を弄んでいるビデアとアイの下にフェンラも合流しレレに訊ねる。
「レレ殿、我はこの形態で、どれ位の敵までなら戦えるのじゃ?」
「そうですわね。
トカゲっ娘の今の状態を見る限りですと、高位魔族相当一体なら時間は掛かるでしょうが倒せるか倒せないか程度と言った所ですわね」
それを聞きビデア、アイそしてこの場に居た魔族全員驚いた表情をみせる。
「凄いですね。高位魔族一体相当と戦い倒せるかも知れないとは流石、フェンラさん」
「流石フェンラ様です。 これで、第二夫人の座は、フェンラ様ですね」
その発言は間違いである自分がそんな序列の上位に居る訳が無いっと思い慌てて顔を真っ赤にしながら発言を否定する。
「な、な、何を言っておるのじゃ、アイ殿。
第二夫人はレレ殿じゃ、我は第四夫人辺りじゃろうが・・」
その慌てた様子を見てレレはニターっと悪戯っ子がするような笑みをみせる。
「トカゲっ娘!、それは間違ってますわよ。
私は、お義兄様の義妹であって側室候補等ではありませんわ。
そもそもその様な候補になった覚えはありませんわよ、まぁ~お義兄様がそれを望むなら別ですが、なる気は有りませんわよ」
雑談中、サジュラが悲鳴を上げながら川の中に吹き飛ばされ水飛沫を上げる。
「きゃ!」
素手で打撃戦に切り替えた為、敵である下位魔族を投げ飛ばそうとし掴んだら逆に、川目掛け投げ飛ばされたのだ。
それを見たレレは右手を額に当て呆れたっとばかりに首を横に軽く振って見せる。
「もうあれは何とかなりませんの?。体術はそこそこ使える筈ですわよね。
何故、少し囲まれただけで、あのような事になるのですの、あれでは戦闘時のお笑い要員ですわ」
「レレ殿、サジュラ殿は、本職が受付嬢なのじゃ。
冒険者も、つい最近なったばかりで戦闘の「せ」の字も武器の型すらまだ知らんのじゃ。
しばらく寛大な心で見守ってやってもらえるかの~」
「それ位、昨日の戦闘を見て既に把握済みですわ。
でも、あれでは、防護の加護を上回る攻撃を一撃でも食らったら真っ先に死んでしまいますわよ」
「まぁ~サジュラ殿はあれでなかなか強いのじゃぞ、その証拠に、レレ殿に良いものを見せてやるのじゃ。
サジュラ殿~もうあまり時間が無いのじゃ。アレの使用を許可するのじゃ。
早く終わらせて帰らぬとルル殿とシアキ殿が腹を空かし駄々を捏ねかねぬのじゃ!」
「あ!はい、すみません。では、すぐ終わらせますね」
指摘を受け、サジュラは腰を低く落とし、体の軸を安定させ、右足を少し前に出し、左足を引き、両手を胸の前で交差させた後、一つ深呼吸をしなが両手をゆっくり降ろし、上半身を捻り拳を構える。
そのまま向かって来る、下位、低位魔族達の軍勢に向け右拳を勢いよく突き出す。
右拳から撃ち放たれた衝撃波が、前方から向かって来る下位、低位魔族の大群を見事に全員吹飛ばした。
「はぁはぁはぁ、終わりましたぁ~、はぁはぁはぁ・・・」
その信じられない光景を目の当たりにしたレレが少し前のめりになり、驚いた表情をしている。
「何ですの?衝撃波を打ち出した?あの子を底上げしましたが、そこまでの腕力は付いてませんわよ。
あんな事が出来る訳がありませんわ。トカゲっ娘!何ですのアレ?」
「アレはシアキ殿が作った、打撃魔法じゃよ。因みに仲間全員会得済みなのじゃ」
少し息を切らし疲れた表情で戻って来るサジュラに、レレは尋ねる。
「黒髪、これは本戦だと、私は、言いましたわよね?。
何故、あのような魔法をお義兄様から授けられているのに、相手からの攻撃を受け続けていたのですの。
防護の加護は万能ではないのです、少しでも上回る攻撃力を相手が放ったれたら貴女は死んでいたのですわよ。
何故、最初から使用しなかったのか説明しなさい!」
「はぁ~私のまだ魔力量が少なく条件を満たしていないので、はぁはぁはぁ。
仲間である、マムラ様、ルル様、ラフェル様、フェンラ様の誰か御一人から使用許可を頂かないと、今は、この魔法を自分の自由意思では発動させられないんです」
魔法発動に他者からの許可が居ると嘘の説明している事に少し苛立ちを覚える。
「?他者からの許可を必要とする魔法ですって?何を馬鹿な事を言っているのですの、そんな魔法はこの世に存在しませんわ。揶揄うのもたいがいになさい」
嘘の説明だと思い込んでいるレレに対しフェンラが補足を入れる。
「残念ながら、レレ殿事実じゃ。
このシアキ殿の魔法は発動さえさせれば、あとは空間から魔素を取り込み続けてくれるのじゃが。
発動させる時だけは、己の魔力を必要とするのじゃよ。
他の仲間はリム殿以外は、その点は難無く出来るので、自由に使用は出来るのじゃが。
人族であるサジュラ殿は元々が魔力量が少ないのでの、一度発動させただけで、今のような有様になるのじゃ。
不用意に二発目発動させれば、すぐに魔力切れで、気絶してしまうのじゃよ。
そこでシアキ殿が魔法発動に必要な一定条件を満たさぬ者が魔法を覚えても自由に発動出来ぬようにと考え、許可を与える者が使用許可を出さぬと発動せぬと言うこの奇妙な魔法が生まれたのじゃよ」
その補足の説明を受け、その場に座り込み笑い出す。
「あははは、もうお義兄様は何なのですの!、そんな使用出来ない魔法を覚えさせ、許可さえあれば使用出来る物を開発するなんて・・・こんな物が世に出まわれば、戦争時の使い捨て魔法要員を大量に確保出来ますわ、何て革新的なのでしょう。
あぁ~益々、私、お義兄様に興味が出てきましたわ。
早く戻ってその辺りをもっと詳しく聞き出したいですわ、さぁ~帰りますわよ」
「待ってくれなのじゃレレ殿、この惨状はどうするのじゃ?。河原が我等の戦闘で、めちゃくちゃに成っておるのじゃぞ。
これをシアキ殿に観られた際、一応説明はするが納得してくれるじゃろうか?。
誰も殺傷しておらぬし、この者達が我等の事を悪いように話そうがシアキ殿は信じてはくれると思うが、現状は回復しておく方が良いと思うのじゃが?」
河原を見渡し、破壊された岩々や、河原の彼方此方に戦闘で出来た大きな穴や、サジュラの攻撃で出来た破壊の跡が無数に残されている。
確かに、この状態は酷い有様だ。先に手を出した出さないと揉めた際、確かに自分達が不利になる可能性はあると判断する。
「そうですわね、事後処理はしないとですわね。
私の玩具《魔族》達、良く聞きなさい、私の名は「ア・リリルルフェ・レレ」ですわ。
今から、お互い傷を癒し合い、此処での戦闘はお互いの仲間割れが引き起こしたものと記憶なさい。
そして今すぐ貴方達の玩具箱である国に帰りなさい」
集まっている仲間含めこの場に居た魔族全員、虚ろな表情になり頷き、互いに術を掛け合い傷を癒し、装備品等全ての荷物を纏め、空間接続出来る者が空間を繋ぎ、その中に次々魔族達が入っていく。
その異様な光景の中に仲間であるビデアとアイの両者も加わっている。
空間接続は両者共出来るので接続し中に入ろうとするので、慌ててフェンラは止めに入り、この事態を何とかする様レレに訴える。
「レレ殿、ビデア殿とアイ殿が・・・魔族達と共に戻ろうとしおるのじゃ、何とかしてくれなのじゃ」
動きを止める為、フェンラに掴まれているビデアとアイの肩に、実に面倒臭いと言う表情をしながら触れる。
「貴方達は今の事は無しですわ」
耳元で囁かれると虚ろな表情が一変し元に戻る。
両者は辺りをキョロキョロっと見渡し一体自分は今何をしていたのかと言う表情をして見せる。
「私は、魔族全般を言葉で操れるのですわ、トカゲっ娘これは、私にしか出来ない事ですから覚えておきなさい」
「分かったのじゃ。じゃが、今後シアキ殿の仲間の魔族達には使用しない方がよいと思うのじゃぞ。きっとシアキ殿はそう言う事をしたら怒るのじゃ」
「そうですわね、確かにお義兄様に知られると怒られそうですわね。
今はそれより、お義兄様の魔法の話しや、お義兄様の事を少し調べたいですわ。さぁ~戻りますわよ。さぁ~早く纏まりなさい」
転移前に戦場を元に回復術を掛け元通りに戻す。
そして、手を繋ぎ一つの輪になっている仲間達を確認し、レレは、フェンラの肩に手を置き、転移で拠点に戻った。
--- 82話目のみの後書き----------------------------------------
82話目最後まで読んでくださりありがとうございます。
どうでしたか?楽しんで頂けたならうれしいですが。
では、次83話目で、お会いしましょう。




