---76--- 精神世界内 強襲者 2
本がびっしりぎっしりと並べられた本棚が幾つも並べ置かれ、最奥が何処まで続いているか目視で確認出来ない程永遠と続く、本棚と本棚との隙間を縫うように、今シアキは必至に強襲してくる高次元生命体から全力で走りながら逃げている。
魔法を放とうとするがこの空間内では何も発現しない。
試しに本棚から本と手に取り中身を見たが、白紙で何も掲載されていない本ばかりなので、相手に投げ付け武器にするが、相手に当たる前に元の位置に自動的に本が本棚に戻ってしまう。
「だ~あの本は俺の記憶その物って感じだよな・・真っ白って、もしかして俺は馬鹿なのか・・・。
はぁ~せめて相手を斬りつけられる武器位は具現化出来てくれよ、俺の精神世界なんだろココ。俺がルールじゃないのかよ。
・・一応帰り方の見当はついたが、未だ相手から説明もないし何が狙で俺を狙っているかすら分からないからな~もうしばらく様子見ながら逃げ回るしかないか・・・。
あ~もぉ~ホントちゃんと説明しろ少しは思考出来るだけの情報をよこせってんだ~。さもないと本当にキレるぞ・・」
幸いこの世界では移動速度だけは妙に早いという事だけが分かっている。
高次元生命体は何かの枷が付いているかのようにのろのろと追いかけてくる。
そして攻撃は単調で手から光を放つのみ、その光も光の人型である身を伸ばしていると言った感じだ。
射程圏内に入らない限り傷を負う事は無い。
だが一度でも射程圏内に入ると攻撃を受け負傷する。既に足を数ヶ所射貫かれている。
傷痕はあるがそこから出血する事は無い、ただそこの情報がスッポリ無くなったそんな感じがする。
痛みも射貫かれる時のみで、その後の痛みは無い。
もうどれだけ走ったか分からない、後ろを振り向くが誰も追いつく事は無い。
少し走る速度を落とし、後ろを警戒しながら前を見ず走る。そして上空から聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「見つけただえ、無事だっただえな!・・少し止まるだえお主の情報を先に預かるだえ」
走りながら上空に目をやると、空からリムが降って来ていた。
「そのしゃべり方は神の方だな、情報・・」
言い終える前に胸を鈍い痛みが走る。目線を胸元に向ける。
そこには先程まで上空に居たはずのリムが自分の胸を抉っていた。
そして躊躇する事なく高速で何度も何度も上半身を、その細い腕で貫いていく。
その間、シアキは動く事も出来ずただ上半身をハチの巣状にボコボコ穴を空けられるをの見せられている。
「よし、これ位回収しておけば、いざ相手がお主を消したとしても、何とかなるだえな」
汗も出ていないのに額を拭う仕草を見せられ少し苛立ちを覚える。
「おい!一応貫かれると痛みは感じるんだぞ!。
説明しろ説明を!今ので何となく分かったけど、ちゃんとした説明をしろ!」
「ふん、分かったならそれが真実だえ、それにそんな暇はもう無いだえ。
後ろのお客さんの相手をしなくてはならないだえからな・・」
振り向くと光の人型が十体とそれに付随するように小型の人型が無数追い付いてきた。
距離を取り停止し睨み合いになる。
リムを模った神が前に立ち啖呵を切る。
「よくも、わっちの世界で好き勝手してくれるだえ、何が目的だえ?理由によっては、わっちは交戦するだえよ」
光の人型の一体が前に出てくる。光の顔部分がグニャリと一度湾曲し、顔だけシアキその者になる。
「「リ・ファルム・リルム」お前が世界構築に関する重大な規則違反行為を犯したのを確認した。 上は、そこの者の存在情報が我々にとって重大危険因子と成り得ると捉えている。
よってこの世からその者に関する全て排除をする事が決定した。
そしてお前の創ったこの世界には、その重大危険因子がまだ残っている可能性があるので、我々十名とその眷属で強制終焉させる」
自分の名を隠す事無く晒した事でもう同胞達がどのような決意であるのかが分かった。
世界構築する上で幾つかしてはいけない取決め規則等が存在する。
世界構築者、すなわち創造主は創造した世界の住人に名を明かしてはならないという規則がその一つだ。
その規則を破り、今、相手が自分の名を故意に晒したのだ。
「わっちの名を故意に晒すとは・・・お主達の方が余程規則違反ではないか!。
もう、わっちはキレただえ。
確かに、この者はわっち達の記憶操作を受けつけない逸材だえ。
わっち達の真の目的に恐らく思考だけで導き出しておると思われる。
だが、この者は自分の欲である、仲間達との冒険さえ出来れば、わっちに協力すると約束し行動しておるだえ。
取扱さえ間違えなければ、危険な事は一切ないだえ。
もし仮に、この者が重大危険因子であるとしよう。
この者だけを強制処分するのなら納得してやれるだえが。
何故、わっちの創りし世界までも、強制終焉させられねばならぬのだえ、全然納得がいかないだえ。
わっちは、その決定全てを拒否し異議を唱えるだえ」
右手人差し指を相手に向け左手を腰に当てた仕草を相手に見せる。
「如何なる異議も認められない、既にこれは決定した事だ。
素直にその者の情報を差し出せ。
我々が厳重に封印し二度と世に出ない様に無にする。
そして大人しく終焉を受入れれば、このやり取りは不問とし、再度世界構築をする事が許させるだろう」
やり取りを聞いている限り、この世界の神は違反行為をしていないと思われる。
ただ高次元生命体である自分達を屠られるその事が怖いので、身の安全を一番に考え、そうなる前に、その芽を摘んでおこうと、何とも高次元生命体と言う割に器の小さな事を考えている連中達だとシアキは思うのだった。
仮に世界終焉が最初から予定され決められていたのなら、その決定に文句は言うが、その時まで仲間達と楽しく暮らし終焉するのを受入れていただろう。
だが今回は違う。
どう考えても、自分一人の犠牲で終わる話しを、ただ自分達を屠れるかもしれない者が、他にまだ居るかもしれないと不確かな可能性を信じ、脅えて、無関係の者も纏めて一掃処分すると実に身勝手で安易な考えで終焉と言う手段をとろうと発言している事に苛立ちを覚える。
「おい、俺一人で十分じゃないのかそれ?態々世界丸ごと消滅させる必要は無いだろう。
そんなにお前達の身の可愛さ優先で消滅させるとかを、本気で言ってるのか?」
怒った表情を見せながら自分の顔をしている高次元生命体を睨む。
「その口振りからするとやはり我々高貴なる高次元生命体は消し去る方法を思い付いているな!。
ふん、お前達器如きがそんな事に気づく必要はないのだ。
お前みたいな重大危険因子が居る世界と、お前に触れ汚染された世は要らないのだ。
我々にとって必要ない器であり、今後発生させない為には当然の措置だ。
分かったら今すぐ、大人しく抵抗する事なく存在の抹消を受け入れろ」
そんな理由で無関係な仲間達が死んでしまう事は、絶対に許せない行為である。
何よりそんな理由を偽物であれ、自分の顔と声色で、且、ふてぶてしい態度で、己の保身を第一だと言い切った事に対し苛立ちが頂点にくる。
眼前に立っているリムを模した神の首根っこを掴み後ろに放り投げ、前に数歩出る。
「おい、大切な仲間の命を刈取ろうとかを、俺の顔と声色を使って何言ってんだ、このクソ生命体が!。
決めたぞ!その決定をした奴全員、絶対後悔させてやるから覚悟しろ。
手始めにお前達は、俺にとって危険因子だから、ここで存在丸ごと虚無にしてやるから覚悟しろや!このクソ生命体共!」
首をゴキっと鳴らし、目を見開き、拳に力を込め、己の蟀谷に躊躇する事なく拳を叩き込む。
その拳が蟀谷に当たる前に、リムを模した神が手を差し入れられて止められる。
その光景を見た光の人型の高次元生命体達は次々に逃げだす。
「止めるだえ、本当は確証がなかっただえがお主は、やはり、わっち達の屠り方と目的に勘付いておるのだえな」
止められた事で、シアキはギロリとリムを模した神を睨む。
「当り前だろ!お前と直接話した次の日には全部思考が行きついたんだ。
それに俺は、俺が死ぬ前に、きちんと協力してやるって言っただろ。
それより何故止めた!お前も同胞が完全な虚無になるのを見たくないか?。
安心しろお前は仲間のリムを守ってくれる存在だから助けてやる。
クソが!アイツ等我が身可愛さで、そそくさ逃げやがって、対抗してやろうとかって奴はいないのか・・」
ッカっと目を見開大声で「戻って来いこのクソ共が!」っと叫ぶと逃げていった高次元生命体達が頭上から振って来る。
光の人型達は空中でジタバタして足掻いている。
「そう簡単に俺の体から出られると思うな、ココは俺の精神内だぞ・・・そこで少し大人しくしてろ!。
あと俺から奪った情報とやらは返してもらうぞ。
ついでに一体は、此処で「有」にして「無」にしてやるから覚悟しろよ。
あとの連中は、「無」になるまでの恐怖の時間をたっぷり味わえや」
ジタバタしている一体の光の人型の頭部部分をシアキは何ら躊躇する事なく鷲掴みにし握りつぶす。
潰された者は光の細かい玉状になりシアキの穴だらけの欠損した個所に集まり元の体を取り戻していく。
それに合わせて、眼球の色が次々に変わり、シアキは苦痛に耐えている様子を見せる。
「コイツ暴れやがるな・・・だが・・・・やはりな!・・・よし慣れて来たぞ。
どうだこれでお前は「有」になったぞ。さぁ~恐怖しろ「無」になるその時をな!。
リム、さっさと俺から重要な情報を持って早く出ていけ」
「・・・・本当に高次元生命体である、わっち達を屠るだえか!・・。
・・・わっちは、どうせ、同胞達に同胞とも思われていないか!・・。
・・まぁ~良い、わっちもキレたし、お主の好きにするだえ・・。
・今回特別に、わっちも協力はしてやるだえ。
今、お主の部屋は空間が湾曲し仲間が誰一人として部屋に入れない状態だえ。
今、戻ると無意味だえ、だから、わっちがお主の体を部屋の外に出してやるだえ。
お主、あとどれくらい自我を保てるだえ?」
「そっか・・そうだな・・・少なくともこの量を全て押さえ込むだけなら、数十分ってとこだな。 あ~話してる時間は勿体ないから早くいけ・・・ック暴れるな!。そこで大人しく浮いてろ!。
リム、もうお前しか頼れないから頼んだぞ。 さっさと情報持って行ってくれ」
「分かっただえ。「最低限お主の仲間を危険に晒す高次元生命体を絶対この体から逃がさない」と言う意識と「仲間達の名前」と「発言する言語力」だけは残して置くだえよ」
苦しそうに耐えているシアキに向かい躊躇する事なくリムを模った神は、シアキの頭を貫く。
引き抜くと同時に、光がその欠損した個所に集まり元に戻る。
その間、自由に動ける様になった光の人型達は一斉にこの精神世界から離脱する為動きだす。
一瞬虚ろな瞳になり、しばらくして瞳に生気が戻る。
「・・・逃げるんじゃね~逃がすかこのクソ生命体共!。
・・俺の仲間を殺そうとする・・舐めた事してくれるじゃねか~こっち来いクソ生命体共が~」
再度呼び戻される形になり、散っていった光の人型がまた現れ一箇所に浮遊した状態で拘束される。
完全に怒りに支配されたそんな表情でシアキは辺りを見渡し、リムを模った神と目線が合う。
「ん?どうしてリムが?・・お前何でこんな所にいるんだ!。
何してるココは危険だ、さっさと皆の下に戻っれ。ここに居たらお前も巻き沿いになるぞ」
返答を聞く気はないと首根っこを掴み、リムを模った神を地面に叩きつけ、そのまま力を込め地面にめり込ませていく。
「・・・(今後の作戦思考が流される)・・・帰れ!」
その一言が放たれた瞬間、精神世界から強制的に追い出され、一気に弾かれた神はリムの精神世界に戻ってしまった。
額を合わせていたリム本体も神が戻ると同時に額をのけ反らせ強い衝撃を受け弾かれた様になり床に尻もちをつく。
慌てて主人の額に、自分の額を合わせるべく立ち上がる。
精神世界から追い出される一瞬の間に今後の計画を追加で流して込まれた。
それを実行すれば、この件は犠牲を最小限で終わらせられると強く念じられ、忠実に実行しろと思念を流し込まれた。
実行するには、一刻も早くこの部屋からシアキを連れ出さなければならない。
無駄な時間は一切掛けられない状態だ。
額と額が離れた事でリムは主人の頭が破裂させたくないとその一心だけで周りが見えていない。
すぐさま態勢を整え直し、再度額と額を合わせようとする。その行動を神は止めさせる。
『もうする必要は無いだえ、それより一刻も早くお主の主人をこの部屋から出すだえ。
さぁ~主人を死なせたくなければ今すぐ抱え脱出するだえ、急ぐだえ』
急に声を掛けられ目線の先に自分の姿をした神が仁王立ちになりながら立っていた。
「え・・あ!はい、分かりました、神様・・ご主人様失礼します」
寝ている主人を抱え上げる。一歩出口に足を進めるが、何故かベッドの上に立っていた。
何が起こったのか辺りをキョロキョロ見渡す。
廊下側でその様子見ていたルルとレレは立ち上がり出てきたらすぐに理由を聞き対処出来るようにする為、お互いにある程度動ける様に回復術を掛け合う。
『この空間は入るのは直線で苦もないが、出るには決められた道を通る必要があるだえ。
わっちは、お主の主人からお主に命令し、従わせろと言われてるだえ。
わっちの、指示はお主の主人からの言葉だと思うだえ。これからは聞き返す事は無しだえ。
兎に角、後ろ手で、主人の足首を持って引きずって走るだえ。
その方が早くこの部屋から脱出出来るだえ、さぁ~指示通り今から動くだえ』
神の言葉は主人言葉であると言われ指示通り後ろ手で両足首を持つ。
『よし良い子だえ、まずは、出口とは反対側壁際に思いっきりぶち当たるだえ』
指示通り壁にぶち当たると何故か部屋の反対側に移動していた。
何が起きたのか理解出来ないが、無茶苦茶な指示でも、その通りにすれば必ず外に出られると確信する。
『よしこれで分かっただえ、次々行くだえ・・・・・』
それから数分間、たかだか部屋の出口となる廊下までは、直線で三メートルも無いのに、室内をぐるぐる回たり、横移動をしたり、壁に向かい走ったり、無駄にその場で停止し跳ねたりを繰り返す。
ようやく廊下まで、数センチと言う所まで来る事が出来た。
『よし、あとはそこで後ろを向いて、奥の壁に当たるまで走るだえ』
「はい、壁に向かい走ります」
壁にぶち当たると廊下側に突然リムが勢いよく飛び出てきた。
『よし、間に合っただえ、取敢えずその手は、今は絶対離さない事、あと仲間達と今は一切会話はしない事、この二つは絶対守るだえ、手を離したり、会話をすると主人が死ぬだえ』
廊下に飛び出た瞬間、シアキの周りを覆っていた半透明の向日葵色の物質が消え去る。
そしてリムは相変わらず半透明の向日葵色 の物質に包まれているので、持っている足首がみるみる負傷していく。
それを目撃しルルは慌ててリムに手を離すよう指示をだす。
「その手を今すぐ離してリムちゃん!シアキの足が怪我してるから!」
指摘を受け後ろを振り向くと自分が持っている主人の足首から出血しているのを確認する。
咄嗟に手を離そうとするリムに対し、神が離すなと言い放つ。
『離すなだえ、そのままだえ、離せば主人の命が尽きるだえ。そのままの状態で居るだえ、我慢するだえ。
そして今お主が、とるべき行動は、黙って、ルルと言う者の眼を見つめ、ただ下唇を噛んで、頭を横に振って見せるだけで良いだえ。
それがあの主人が、お主にさせたい事と、わっちは聞いたんだえ、さぁ~指示した事をお主は実行するだえ』
主人の負傷した足首を確認し、一瞬手を離そうとしたリムが再度握り直し一向に手を離そうとしない。
この事でルルはあるシアキとの約束を思い出し嫌な予感が心を駆ける。
その行為を見たレレは、手に漆黒のモヤ状の物を宿し破壊術の準備を整える。
その手をリムに向けて、翳しながら睨みつける。
「その手を今すぐ離しなさい劣等種!。
今すぐ離さなければ、お義兄様のお気に入りであろうと、その頭を躊躇なく吹き飛ばしますわよ」
この手を今すぐ離したいと思っている。
だが神から手を離せば主人の命が尽きると言われたので、絶対離せないのだ。
涙を堪えながら、神の指示通り、ルルの眼を見つめ、下唇を噛み、首を横に振る。
その行動で嫌な予感が、最悪な事態であると告げていると分かった。
事前にシアキとルルの二名間で仲間が増えたのである取り決め見直しが行われている。
それは個々仲間別に、最重要緊急事態を伝える為の合図を決めているのだ。
そしてリムに設定されている合図は、仲間全員の命令には一切従わず声を発する事なく、ただ目線を合わせ下唇を噛ませ首を横に振って見せると言う行動だ。
あとは、シアキが次に目覚めた際の一言目の行動がどんな理不尽なものであれ、指示が出れば実行しなければならない、そんな取り決めになっている。
「そう、離さないのですわね。ならその命、お義兄様の命の為に散らしなさい」
精神世界で、突如シアキは両足首を負傷する。
これを合図と捉え拳に力を込め、己の蟀谷に躊躇する事なく拳を叩き込む。
その衝撃で精神世界のシアキの頭は吹き飛び、現実世界のシアキが飛び起きるように目を覚ます。
目を覚ますと丁度いい感じにレレが相手を屠りそうな禍々しい漆黒モヤに包まれた手をリムに向けて差し出している。
それを視界に捉え指示を出す。
「・・・ィッテ~・・ック、リムそのまま足を持ってろ!。 レレ!それで俺を絶命させろ!」
急に声を掛けられレレは一瞬躊躇する。
「え!お義兄様、今なんと?」
聞き間違いではない、シアキ自身が自分自身を屠れと指示を出している。
その問いが自分でない事にルルは少しホッとする。
「聞こえなかったか、俺を殺せと言ったんだ。
さぁ~やれ!押さえ込むのも限界があるんだ!後でどんな形でも良いから蘇らせてくれよ・・ック・・・早くしろ、そろそろ限界だ!」
その言動を聞き神はリムに体の交代を伝える。
『体の交代をするだえ、同意するだえ』
『同意します』
体の主導権を入れ替えた神は全身を覆っている半透明の物質を素早く消し去り、躊躇する事なくシアキの後頭部を鷲掴みにし持ち上げ、レレに向ける。
「やるだえ、この男が決めた事だえ。
もうこの者の中に居る同胞達に、わっちは裏切り者としてしか思われておらぬだえ。
早く出てくる前に、この者と一緒に始末するだえ、それしか、お主達が助かる方法は無いだえ」
死を散々弄んできた「ア」の神族であるレレが初めて躊躇し戸惑いを見せている。
これは駄目だと判断し、ルルの名をシアキは叫ぶ。
「ルル!やれ~」
自分の名をシアキが叫ぶ。
それを聞き、やはり自分がやるしかないのかとの思いに至り、表情と感情を殺し、素早くシアキの胸元まで移動し、自身の右手で躊躇なく胸元を貫く。
そしてその手には、まだ鼓動しているシアキの心臓を握られていた。
両者は目線を合わせる。ニコリと微笑み、シアキは、口パクで「ありがとう」と言って見せる。
「何で笑うのよ~・・・・ごめんね。痛いよね。シアキ、ゴメンね」
数秒後「グボ」っとシアキは吐血をし、ピクピクピクと痙攣を起こした後、絶命する。
絶命と同時に、リムの胸元にある奴隷紋が一瞬だけ光り、契約解除がなされた。
突然の事で全員言葉を発する事が出来ず、その信じがたい光景をこの場に居る者達全員悲鳴一つ上げる事なく、ただ放心状態で見る事しか出来なかった。
ただ、そんな中、神降ろし中のリムと、シアキをその手で屠ったルルだけは冷静に行動を開始する。
貫いている手をシアキの体から引き抜き床にそっと寝かせる。
寝かされた胸元がポッカリ空いた亡骸のシアキの姿を見てレレは我に返る。
「あ・・あははは、お義兄様を・・お姉様、お姉様が御手で屠られました・・・わ。
・・私にとっては、日常で凄く喜ばしい事ですのに・・何故、高揚感が生まれませんの、何故ですの何故、こんなに悲しい気分になりますの。
お、お姉様早くその心臓をお義兄様の胸元に置いて下さいまし、蘇生を・・」
覗き込んだ姉の表情を見てレレは言葉を失う。
いや声を掛けてはいけないと直感で分かる程の表情をしているのだ。
持っているシアキの心臓を、呆然と虚ろな眼で、大切な物、者、モノ、あらゆる全てを失った者が見せる絶望しきった表情をしながら、ルルは鼓動しなくなった心臓を眺めている。
そして、抑揚がない小声で、神降ろし中のリムに語りだす。
「ね~リムちゃん、・・いえ、この世界の神様・・私・・シアキをこの手で屠っちゃったよ。
屠ったよ・・屠ったんだよ、何故こんな事をさせたの・・ね~理由を聞かせて・・・」
神降ろし中のリムは、その問いか掛けに何も語らず沈黙しながら、亡骸となったシアキから目を離さず立ち尽くしている。
静寂とも言う沈黙に耐えられなくなったルルは目線を上げ、今まで仲間には決して見せた事の無い冷たい目線をリムに向け睨みながら、今度は怒りを乗せた感情剥き出しの声色を出す。
「聞いてるの!・・・シアキと行動を共にして考えが変わった、私に、何故このような不快な事を貴女はさせたのですの。
話せる範囲全て、いえ!どんな手法を使ってでも、貴女から全て聞き出しますわ。
それで何の納得も得られなければ・・・私は、私の今後の人生全てを賭けて貴方達、高次元生命体を根絶する事だけを考え行動しますわよ」
口調が本来の素の口調に戻っている事に気づき、レレがルルの口を塞ぎ、ルルの耳元で小声で語りだす。
「お姉様そんな事とはあとですわ。それに口調が戻っていますわ。
その口調はこの者達には内緒なのでしょ、少し落ち着いて下さいませ。
今は取敢えず、私がお義兄様を、完璧な状態で、人族として蘇生させる事が先決ですわ。
これ以上お義兄様を冷たいままにしていては、蘇生するのが遅いと、私が、お義兄様に怒られますわ」
今まで聞いた事の無い、レレと似た様な口調で話す、ルルの姿を見たラフェルは、シアキと三人で事前に決めた事ではない、この態度を見せられ、これから仲間達を「今すぐ逃がすべきか」、「留めておくべきか」の判断に困る。
一切ルルと目線を合わせず、ただ亡骸になったシアキから目線を逸らさないで、神降ろし中のリムは語りだす。
「良いだえ、お主の質問したい事、全てに対して答えられる範囲で全て答えてやるだえ。
でもその為には、その者の動きを完全に止め、お主達が生き延びてからだえ」
指を指した先にあるシアキの亡骸が、もぞもぞっと動き出し、重力が無いかのように天井に移動する。
ポッカリ胸元に風穴が空いた状態で逆さまに立ってこちらを見ている。
「クソ!器の分際で、同胞を九人とその眷属達までも無に還すとは・・やはり危険因子ではないか!。
だが私を大半取り込んだのは誤算だったな。
この体に固定させられているお陰で完全に朽ちる迄こうして動けるぞ。
あははは・・後悔するのは貴様の方だ!ココに居る連中全て、道ずれにしてくれるぞ」
「そうはさせないだえよ。
その体を動かす為に使えるお主自身の精神エネルギーは、どう見積もっても数分間って所だえ。
わっちも少し力を使いすぎて数十分位しか行動は出来ないだえが、お主が完全消滅し無になるまでの時間、わっちが、この者達に指一本触れさせるとでも思っているだえか?」
右手に半透明の向日葵色の物質が滲み出て刀のような形になる。
それを天井に逆さまになり胸元に風穴が空いた状態で立っているシアキに刃先を向ける。
胸元に空いた風穴から、半透明の向日葵色の物質がゴボゴボっと溢れ出てくる。瞬く間にそれがシアキの体全身を覆う。
「この者の体にある全ての情報を使えば・・・ははは、これであと数日だ!。
これで、この世界の器半分以上を・・・ック・・」
啖呵を切っている最中、糸が切れたかのようになり天井からシアキは落下する。
「本当に引っ掛かるとは思わなかっただえ。
お主の使っている、その体の情報は既に、わっちがその体から抜ける際、全てこの手にしてるだえ。
ただの偽情報しか残してないその肉の抜け殻で、何の情報を糧にしたと?、これで数分が数秒で終わりだえな」
体を覆っていた半透明の物質が形を保てなくなり掻き消えていく。
最後に何か言葉を発しようとしていたが言葉は出ない。
神降ろし中のリムを睨みながら、みるみるシアキの眼から生気その物が消えていった。
「ふん、わっちが見つけたこの者の仲間に危害を加えようとし、敵に回すからその様な目に合うのだえ。
あ~わっちは本当に、これでお尋ね者だえな・・・これからどうするだえ・・はぁ~」
完全に死んだシアキの体を眺めながら溜息を漏らす。
神降ろし中のリムは、シアキの頭上に立ち、屈んで額と額をくっ付ける。
「そこの蘇生を行える者、この者の肉体情報が保てている内に、蘇生を急ぐだえ、肉体が無くなれば蘇生出来なくなるだえ一刻を争うだえ、早く蘇生するだえ。
わっちがその間肉体を維持しておいてやるだえ」
その言葉が理解出来たレレは慌てて駆け寄り、亡骸になったシアキに向かい、手を翳す。
滅紫色のモヤが亡骸となったシアキを包み、モヤが体にドンドン吸着されていく。
本来ならここでモヤが無くななり、ドクンと一度うねる様に跳ねて死者は息を吹き返すのだが、今回はその現象が起きない。
「お、おかしいですわ。蘇生術は完璧ですのに、お義兄様の生命を感じませんわ」
額と額をくっ付けていた神降ろし中のリムが声を掛ける。
「大丈夫だえ、今からこの者から預かっている情報を全て返還するだえ。
もう少しだけ、その術は維持しておくだえよ。
・・・・・しかし、少し欠損しているだえな・・仕方ないだえ、わっちのを少し分け与えるだえ」
額を合わせている個所から、向日葵色の強い光が数秒間放たれ。その光が消えると、滅紫色のモヤがシアキの体から無くななり、ドクンと一度うねる様に跳ね息を吹き返した。
一度大きく喉に溜まっていた血を吐き出した後、ケホケホケホと咳き込み、蘇生された事による倦怠感がどっとシアキの身に襲いかかってくる。
徐々に眼に輝きが戻り意識がはっきりする。
「リム・・皆・・無事だな・・・」
消え入りそうな小声で話しているので、仲間達全員相当疲弊していると察し、何も言わずただ泣きじゃくり頷いて見せる。
「全くお主は無茶をする。
お陰で、わっちも力を大幅に使い、しばらく休息が必要になっただえ!。
しかも同胞からお尋ね者扱いだえ」
膝枕をし優しくよしよししながら笑顔で微笑んで、眠たそうな表情でリムが頭を撫でている。
「すまん俺も今凄い眠い・・ところでリムは大丈夫か?」
「ん・・あの娘なら大丈夫だえ、わっちにこんな事を態々させる程、今、五月蠅く「お詫び」「頭を撫でろ」と吠えておるだえ。
そろそろ、わっちも限界なので代わるだえよ、お主も数日は休むだえよ。
わっちも数日は表には出れないと・・・・思う・・・・だえ・・力・・・た・・・」
必至に眠気と戦いながら最後まで話そうとしていたが、神降ろし中のリムは眼を瞑り眠りに落ちた。
寝たと思ったら、勢いよくパチリと眼が開き、涙をボロボロ流しながら、震える手でシアキの頭を再度何度も何度も撫でまわす。
「ご主人様!ご主人様!ご主人様!ご主人様!リムはリムはもうもう・・」
「はは、もうお詫びは、いいから、分かった分かった・・」
「シアキ!・・・」
突然大きな声を出されシアキはビックっとする。
横に女の子座りをし、胸元にポッカリ空いた服から覗く生身の部分をペタペタ触り、本当に塞がっているかの感触を確かめた後、ルルは涙を流す。
「お願い、お願いだから無茶をしないでよ・・ヒック・・私この手でシアキを・・シアキを」
「ゴメンな。嫌な役をさせたな。でも、ルルのお陰で俺の大切な仲間達の命は守れたんだ、感謝する。本当にありがとな。」
他の仲間は何処かと頭を上げ見渡すと、ルルとレレとリム以外の仲間全員ラフェルの部屋に避難している様だ。
壁が無くなった個所から、涙を流しながら、こちらを黙って見ている。誰も駆け寄ってくる気配はない。
そして死を弄ぶとされる「ア」の一族であるレレですら、今回は神妙な表情をしながら薄っすら眼に涙を浮かべている。
もっと死ぬ光景を見れてさぞかし喜び恍惚な表情を浮かべたり、普通の人族に蘇生させた事を悔しがっていたりしていると考えていたが、予想に反してしおらしくしている。
「レレ、蘇生をしてくれて、ありがとな。
どうした?俺が死ぬ光景が見れて、もっと喜び恍惚な表情を浮かべてると思ったが、それ所じゃなかったか?」
「そうですわよ。
何ですの!私の知ら無い、高次元生命体とか!、オマケに劣等種達を、私自ら助けなければと思うなど、もう頭が変になりそうですわ」
話している最中だが、全く内容が頭に入ってこない程眠気に襲われている。
「そっか・・Zzz・・駄目だ・・眠い・・ルルあと任せる・・俺少しだけ・・寝・・Zzz・・・」
もう限界っと瞼を閉じ、リム膝枕で気持ちよさそうに寝息を立てる。
そしてゴボゴボゴボとシアキの胸元から、あの半透明の向日葵色の物質が溢れ出てくる。
咄嗟にルルはリムを払い除け廊下の奥に吹き飛ばす。
「何でまた!何なのこれ・・・」
廊下の奥に吹き飛ばされたリムが戻って来る。
そして躊躇なくその半透明の物質に包まれたシアキ体に触れて見せる。
「ルル様、大丈夫です。神様が同胞達避けの予防用にと発動させた物らしいです。
この状態のご主人様に触れられるのは、この中で一番力の弱い者である私とサジュラ様だけだそうです。
他の方はこれに触れると怪我をしてしまうそうです。
これは、ご主人様が目を覚まされれば自動で消えるそうです」
それを聞き瞼を閉じ鼻で息を吸い込み、両頬をルルは勢いよく叩く。
「ふ~そっか~そっか~、じゃ~もう安全だね~・・・。
う~ん~シアキにあと任されたから~取敢えずお昼にしよ~、ふふふ、シアキの分まで、私食べちゃおっかな~もうお腹ペコペコだよ~・・・。
じゃ~リムちゃん、サジュラっち、目の届くリビングにシアキを運んでくれる~私先に行ってるね~・・・」
もうあからさまに空元気で態とゆるゆる口調に戻し無理をしているといった印象だ。
そしてスキップしながらリビングに戻っていくその後姿は何かを必死に我慢しているのはバレバレだった。
だが、その空元気を無駄にしてはいけないとラフェルは思い涙を拭い、笑顔を作り部屋を真っ先に出てルルを追う。
「そうですね~ご飯にしましょう。
ルルちゃん駄目ですよ~シアキさん起きたらきっとお腹減らしてますし、ご飯ないと怒りますよ・・」
その二人のやり取りを見て、他の全員そんな心境にはなれないと思い部屋を出て廊下に出る事が出来ずにいる。
そしてレレは呆然とシアキを眺め、体を覆っている半透明の物質に無表情のままで唐突に手を当てる。
みるみる手が負傷していくのはお構いなしにドンドン、力を込め押し進めようとする。
痛みに耐えならが、無表情で体重を掛けるが一ミリも手は埋まらず、自身の掌の肉が全て消し飛び、骨が見える状態になる。
その光景を見たフェンラは慌ててレレの後ろに回り羽交い絞めにし一緒に後ろに倒れる。
「レレ殿、何をしておるのじゃ、お主の手が酷い有様に成っておるではないか!」
虚ろな目をしながら、自身の無残な手を見ながら後ろのフェンラに語る。
「トカゲ娘、何故余計な事を・・・私は、この物質の正体を探る為行っていたのですわ。
早く対抗策を見つけたいので、邪魔しないでくださいな・・・この手の一つや二つで、お義兄様の役に立てるでしょ。
邪魔ですわ手を離しなさい本気で振り解きますわよ」
リビングからルルが声を掛けてくる。
「早く~皆来なさ~い、食事は皆揃ってじゃないと駄目何だよ~。
それにレレちゃん・・・そんな事してないで、手を元に戻してさっさとこっち来なさい。
私お腹減ったの~これ以上待てないよ~本気で私怒るよ~」
「ほれ、皆は先に行ってくれ。
リム殿、サジュラ殿、シアキ殿を先に運んで行っててくれなのじゃ。 我はレレ殿と共に向かうでの」
全員頷きリビングに向かう。二人きりになったので、フェンラはレレを横に退かしてレレの顔を覗き込む。
その表情は悔しさが滲み出ていて今にも泣いてしまうのではないかという表情だった。
「レレ殿」
「何ですの?トカゲ娘・・・私の手を気遣った事に対しては、礼など言いませんわよ」
「レレ殿、本当に本当に感謝するのじゃ。
我は先程、唯一我の悍ましい魔素焼け姿を見知っても、躊躇なく全てを受け入れてくれた、シアキ殿を失うとこじゃった。
本当にシアキ殿を蘇生してくれたこと、感謝するのじゃ」
「貴女に感謝されても何も嬉しくありませんわ。
私の近くにいつまで居るのですの、生者の分際で馴れ馴れしいですわよ」
そう言いながらレレはフェンラを抱き寄せ耳元で「ありがとう、フェンラ」っと小声で伝え、しばらくそのままの状態を維持する。
「もぉ~いつまで待たせるのかな~フェンラちゃん早くその子引きずって、こっちに連れてきて~お腹空いたよ~」
声を掛けられ、慌ててフェンラを突き飛ばし立ち上がる。
「何をしているのですの、そんな些細な事で態勢を保てず、ふらつくとはなってませんわね。
さぁ~行きますわよ、トカゲ娘」
起こしあげたフェンラと共にリビングに向かう。
全員自分の席に着く。
席の前には簡単な料理が並べられている。
全員「いただきます」と合掌し食事を開始する。
だが全員無言である。
室内に鳴響くのは咀嚼する音、飲み物を飲む音、食器類が当たる音等だけで、誰一人として一切言葉を発しない。
全員シアキが何か声を発し、助けを求めないかを気にしながら黙々と無言で食事をしているのだ。
そして本来なら一時間以上ワイワイ話し笑ったりしながら楽しく食事を楽しむのだが、今は二十分と掛からずあっという間に全員食事を終えてしまった。
正直何を食べたか、どんな味であったか、誰も覚えていない。
食べ終えたお皿類を片づけてラフェル達は再度席に座り静寂の時が流れる。
これではいけないっとルルは判断し今後の予定を話し出す。
「コホン・・今後の予定について話すけど~皆良いかな~」
全員目線をルルに合わせ頷いて同意の意思を示す。
「あはは、みんな返事とかしないね~駄目だよ~そんなに暗いとシアキがびっくりするよ~。
いつもの様にワイワイやろうね~。
じゃ~今後の修行についてだけど~出来る限り今出来る事は今終わらせよ。
シアキは起きてると仲間の為となると平気で無茶するから、もう私シアキを手に掛けたくないから良いかな?」
全員目線をルルに合わせ大きく頭を縦に振って見せる。
ただレレだけは反対を述べる。
「私は反対ですわ。
それよりお義兄様の体の周りを覆っているあの物質を無効化出来る対抗策を今の内に見つけるべきですわ。
それにこの者達の修行を見るのはお義兄様の楽しみでもある筈ですわ。
指示を受けていない事をしては、お義兄様ならきっと怒りますわよ」
今まで優しい表情をしながら話していたルルの表情が一変する。
眼からみるみる光が無くなったように虚ろな目になり、完全に無表情状態になり自分の手を見つめながら、周辺に聞こえない程の消え入りそうな声でブツブツ呪文を唱える様に語る。
「・・もう・・もう、私は、もう・・・あんなのは・・あんなのはもうイヤ」
その行動を見ていると、やはりルル一人に負担を強いていると実感がわいてきたラフェルはそっと席を立ちルルの背後に立つ。
そっと胸元にルルの頭部を埋めさせ心臓の音を聞かせながら頭を優しく撫でてあげる。
「ルルちゃん、私今回もやっぱり何も出来なかった。
ごめんなさい、シアキさんと、ルルちゃんばかりに負担を掛けて、私にはこれ位しか出来なくて、本当にごめんなさい」
虚ろな眼に光が戻りルルは抱きしめてくるその腕を愛おしそうに持つ。
「・・・ラフェルちゃん・・・ゴメンね、今らしくないよね、私・・・。
ちょっとそのまま、少しそのままで居てお願い。
すぐ・・すぐいつもの私に戻るから・・少し待って・・・」
じわっとルルの眼に涙が溜まる。ゆっくり瞼を閉じ深呼吸を何度もし、自分の両頬をパチンと叩く。
「よ~し、元気貰ったから、もう大丈夫だよ~ありがと~ラフェルちゃん♪」
そっと離れ一歩下がり、ラフェルはお茶らけて敬礼をして見せる。
「ルル隊長、早速シアキさんの負担軽減の為、いえ、強くなって驚かせよう作戦を開始しましょう。
私めに指示を下さいルル隊長殿♪」
「ふふ、シアキ怒るだろうな~・・・。
よしラフェル隊員は私と一緒に外へ行く事を命じる♪」
そのやり取りが何なのか分からない他の仲間達は、ただ呆然と眺めるしか出来なかった。
ただ唯一このやり取りを知っているシャボちゃんが参加してくる。
「ルル隊長、シャボちゃんはここで待機してるぞ」
全員これが何か理解出来ず、ポカーンとした表情しているのを見た二人は笑い出す。
「あははは、ラフェルちゃんやっぱりこうなるよ~。
でもありがとね~シャボちゃん。なんか心がスッキリしたよ~」
「あははは、そうですね、やはりシアキさんが的確に誰かをワタワタさせないと駄目ですね。
シャボちゃんありがとね。
さぁ~ルルちゃん、皆に指示して私達はそれをシアキさんの指示だと思って従うから、ね!皆」
全員に視線を合わせ同意を求める。レレ以外、全員頷いて見せる。
「シアキ殿に「あとを任せた」と言われた、ルル殿に誰も異論を唱える者など居らぬのじゃ、な!レレ殿もそうじゃろ」
「・・私は、お義兄様の為・・もう~良いですわ、トカゲ娘の言う通りで良いですわ。 全く此処に居ると、調子が狂いますわ・・」
ぷいっと照れているような感じでそっぽを向く。
「よ~し、じゃ~ラフェルちゃんと、エラルちゃんの面倒は私が見るね~。
レレちゃんは、フェンラちゃんと、アイっち、サジュラっちの修行を見てあげてくれる~。
ビデアっちは、シアキが起きるまでは、フェンラちゃんとアイっち達の魔素とか魔聖素とかを見る練習の協力してあげてくれるかな~。
シャボちゃんは、シアキが目を覚ますまで、傍を離れない事~。
リムちゃんの職に就いては明日決めるね~。
さぁ~各々夜までに行動開始~」
各々席を立ち、修行を開始する班と、待機する班に分かれ行動を開始する。
--- 76話目のみの後書き----------------------------------------
76話目最後まで読んでくださりありがとうございます。
どうでしたか?楽しんで頂けたならうれしいですが。
では、次77話目で、お会いしましょう。




