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---72--- 拠点 修行 コレ凄いです(サジュラ、フェンラ、アイ)

 ドンっと重たい衝撃を受け今サジュラは森の中に吹き飛ばされている。

 吹き飛ばされた滞空時間中に、腰に短剣を装備し両手に長剣を持った状態で手を組みながらどう戦うべきか思考し愚痴をこぼす。


「・・・はぁ~どうやっても攻撃が当たらないですね。そもそもこの依頼は難易度が高いです。 冒険者としては、戦わず逃げるべきなのですが・・・でもこのパーティーに所属した以上、一人でこれ位軽々と勝利しなければいけないですよね・・・よしガンバロ~」


 今行っている依頼内容は、本来、第四位階クラス程度の冒険者四人編成で、最低でも二組以上は必要とする依頼内容なのだ。

 もし自分が受付嬢で駆け出しの第五位階クラスの冒険者一人がこの依頼をやると言って来たらまず止めるだろう。


 優秀な冒険者は己の武を弁えている。勝算がない依頼には挑まないのが鉄則。

 もし何も知らないで受けたとしても、眼前に現れたモンスターが己より強く勝算が全く無いと判断した場合は、不名誉であれ、まず己の命を優先にしその場から撤退する事を躊躇なく選択し依頼を放棄するものだ。

 だが、サジュラはそれを知っていても、敢えて一人では絶対勝利する事が出来ないモンスターに何度も挑んでいるのだ。


 もうこれで何度目か分からない程、ジャイアントラービットの攻撃を受け、森奥に何度も何度も吹き飛ばされている。

 その度に、森のつたのクッションに抱かれ、元居た位置まで森に戻してもらっている。


 長剣二本の長さを生かし振って攻撃を当てようとするのだが、どうしても軸がブレてフラつき、その間に攻撃を交わされ、隙だらけになった個所に、飛び蹴り、体当たり、そのまま殴られると言った攻撃を受けて吹き飛ばされているのだ。


 ようやくモンスターの動きにも目が慣れ、六回に一回は剣を地面に突き立て、攻撃威力を殺し防御する事が出来るようになった。

 そこから攻撃に移る際、地面から剣を引き抜くと同時に再度体当たり等で吹き飛ばされると言う状況になってしまう。

 未だ一度も攻撃を当て致命傷になる傷は与えられていない。


 防御の加護を全身に施されているので痛みやダメージ等になる物は勿論無い。

 もし受けていなければ、一度目の時に死んでいる事は確実だ。


 一旦息を整える為、休憩がてら拠点の開けた空間に入る。この空間に入るとモンスターはその中に入れないのだ。

 これはルルが張った結界のお陰だ。ただし万能ではない。


「う~ん、剣の構えの型とか誰かに教えてもらわないと駄目ですね。

 どうしても振ると剣の重さに身を持っていかれて、フラついてしまいます・・。

・・・重さを感じない分遠心力は考慮に入れるべきですね。

 一旦長剣は置いといて、今度は、短剣で戦ってみましょう。これならきっといくらかは攻撃が当たるかもしれません」


 地面にバツ印になるように長剣二本を置き、腰に付けた短剣を抜き手に持つ。 刃を後ろにして持ってみたり、前にしてみたり、内側に外側にと色々振り方を試し感触を確かめる。

 振ってみるが、どの持ち方、どの振り方が良いのか全く分からない。


「よし、どれが正解か全く分かりませんね!ココは数回吹飛ばされながら、コツを掴むしかないですね」


 結界外に用意されたモンスターに向かい、腰を落とし武器を構えながらゆっくり外に出る。

 相手からの攻撃の予備行動等は把握出来ているので、初撃を見事に交わし、脇を抜け、後ろを取り背中に短剣を突き立てる。

 だが踏み込みが浅く、腰が入っておらず、武器に勢いすら何も乗っていないので、ジャイアントラービットの硬質な毛に見事阻まれ、刃が身にまで届く事がなかった。


 でも、初めて武器で真面に攻撃が当たったのだ。

 その喜びで気が抜け、その場から離脱するタイミングを見誤り、攻撃を貰い森の中に飛ばされてしまった。


「やった~一撃当たった~・・・攻撃が真面に当たると凄い気持ちいいですね・・・よ~し何だかコツが分かった気がします」


 そこからは攻撃が何度も当たるようになり、数分後には二撃与える事が出来るように成っていた。

 でも相変わらず踏み込み等が浅いので、致命傷になる様な傷等を何も与える事は出来ていない。


 一方ラフェルとリムは先程の負荷を掛けての修行をしたせいで、立ち上がれない程に成っている。

 地面に二人は寝転がり、息を切らしている。

 二人に濡れたタオルを持ってきてくれと主人であるシアキに言われた通りにリムがタオルと水の入った桶を持ち拠点から戻って来るなり濡れタオルを作り二人に渡している。


「お待たせしました。濡れたタオルです」


 息が上がっているので、獣人のエラルはもう言葉を発する余裕等ない感じだ。

 二人は濡らしたタオルを受け取ると、火照った個所を順に拭き、気持ちよさそうな表情を見せる。


「はぁはぁはぁ、ありがと~リムちゃん、はぁはぁはぁはぁ」


「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ・・・はぁはぁはぁはぁ」


 この間にシアキはルルと念話連絡を取っている。

 その念話内容で現地人の昆虫みたいな者達と話していると聞き、その者達の姿形がどんなフォルムであるのか男の子である以上気になり、昆虫と聞くだけでロマンを感じ、一刻も早く見てみたいと思い至る。


「よしリム、この二人を介抱しててくれ、俺はちょっとルルの所に行ってくるからな!」


 そう言い残すと姿が跡形もなくかき消えた。返答を返す暇も無く行ってしまったが、与えられた指示内容を熟すのだった。


 そして拠点家屋内では、知り得た邪眼の扱いについての意見交換会が繰り広げられていた。


 本来魔眼族内で邪眼技術の未熟な点、弱点、邪眼で出来る技や魔法等を、邪眼付与者に対して、情報を教えたりはしない。

 これは、魔眼族内で、禁忌行為とされている。情報が洩れれば、邪眼付与者からの邪眼回収の際、反撃を受け回収出来なくなる可能性が有る為である。

 そして一族内でも未熟な点の改善、弱点を克服が出来ても教え合う事はしない。


 だが今、魔眼族であるアイは、自身が付与した邪眼を使用する竜人族のフェンラに、今まで知り得た情報の全てを隠す事なく教えた。

 包み隠さず話してくれていると分かり、途中悍ましい事実もあったが眉を少し顰める程度でフェンラは最後まで真剣に無言で頷きながら聞いていた。


「うむ、邪眼とは実に不完全なのじゃな。

 何も分かっておらぬと言ってもよいな・・しかし、そんな弱点があったのじゃなコレには!気を付けねばならぬな。

 じゃ~次は我が知り得た事を話す番じゃな、恐らくアイ殿もきっと驚くと思うのじゃ」


「待ってください、フェンラさん。

 今の話を聞いて、その・・怒ったりはしないのですか?」


 聞かされた内容には、この邪眼は同族の眼であるという事だ。

 しかもその採取する際に態と武装形態を最終段階に引き上げさせ、戦闘本能だけで破壊行動をとる最も力が乗った状態にして強制採取し本体は無残な形で殺傷したと聞かされた。


「確かに以前の我であれば、この邪眼の経緯を聞けば怒り、アイ殿を滅し、その魔眼族を根絶やしにしたいと思ったじゃろうが、今は違うからの~。


 逆にそのな話を聞けて良かったと思う位じゃ、この眼が同族の眼であった事が知れ大事にしたいと思うのじゃ。

 その者は、きっと我に使われた事を誇りに思うてくれるじゃろうしな!。


 我はシアキ殿達の傍で少しでもこの邪眼を使って役に立ちたいのじゃ!。

 そのついでに、この邪眼をきちんと使いこなし、今もこの世界のどこかで、回収に脅えて居る者達に力を制御し共存しあえれば良いと考えておるのじゃ。

 まぁ~我のような考えを持つ同族が居ると良いのじゃが。


 じゃから今後、我に関しては、全然気にする事は無いのじゃ」


「仲間に嘘は付きたくなかったので、全ての情報をお話しましたが、フェンラさんに、そう言って貰え少し楽になりました」


「じゃ~これはココで終わりじゃな。次は我の知り得た情報じゃ、アイ殿もまだ知らぬ事じゃぞ。


 邪眼とは、己の力の増幅増減を制御する為のものではなく、見えぬ物を目視出来るようになり、相手の力と自分の力を目視で制御し使う力のようじゃ。


 そして昨日、我は魔素、聖素、魔聖素と言う物を目視化する事に成功し、邪眼を使い、相手の魔法をこちら側で意図的に操る事に成功したのじゃ。

 我は己の内なる力を邪眼で見て制御する事に成功し、今では、力を最大限抑えた、この第一形態にも自由になる事が出来るようになったのじゃよ。


 恐らくなのじゃが、正しい方法で使用しないと、力だけが過度にその身に掛かり魔素焼けを起こすのではないかと考えておる。

 我は今の使用方法で邪眼を使っても、以前のような体に負担が掛かる事は一切無いので間違いないと考えて良いと思うのじゃ」


 目視化?操る?っと聞き意味が分からない。

 邪眼で出来る事は付与者の力を増幅増減させて制御していると言うのが今まで常識だとして信じて来た事だ。

 邪眼で魔素、聖素、魔聖素なる物を目視化出来、相手の魔法を意図的に相手の力を操る事が出来るなど有り得ない事だ。

 それらは竜人本来の力を邪眼が引き出して制御したと考えるのが普通だ。


 だが今言われた事が本当なら今までの常識が崩れ、自分自身もその様な事が出来る事になる。

 嘘は言っていない事は、フェンラの眼が真剣である事から、真実を言っているのは確実。


 直ぐに今迄の常識を覆し信じるのが出来ない。

 長年答えを求め幾人に邪眼を付与し、魔素焼けをした者達の邪眼を回収し解剖して分析を行って培った情報が無意味であったという事になる。

 そしてただ単に邪眼の使用法を長年間違えていたと認める事になる。


「それが本当であれば私はとんでもない勘違いをし邪眼を・・・」


「これは本当じゃよ。 分かるのじゃ、疑うのも無理はないのじゃ。

 これは実際自身の眼で確かめる方が早いと思うのじゃ」


 そう言うと口の中で小さく詠唱をし、手の平にオレンジ色の炎を出す。


「アイ殿、この炎はオレンジ色の炎じゃが、邪眼を通して見れば、違う色として見れるはずじゃ。

 早速試してみるとよいのじゃ。

 コツとしては、湯気で霞んで見難い状態で物を、目を凝らして見る感じで見てみるのじゃ」


 目を凝らして確認するが、オレンジ色の炎が見えるだけで何も変わらない。

 角度を変えるがやはり変わらない。オレンジ色の炎は、やはり色が変化する事なく、オレンジ色のままだ。


「見えませんね?オレンジの炎はオレンジのままですね」


「そうか!見えぬか?そう簡単にはいかぬか・・う~んそうじゃ!ルル殿に言われた通りに言うならイメージじゃよ。

 そうじゃ、眼に魔素の膜を作り、それを通して見ると同じ魔素だけが色の変化を起こし認識出来て、目視出来ると言うイメージをしながら意識を集中して再度炎を見てみるのじゃ」


 再度試みる、今度は視界の前に魔素の膜が有り、それを通すと魔素が色変化し目視確認出来ると思いながら炎を、目を凝らし確認する。

 するとオレンジ色の炎がまるで黒炎のように見えるようになる。


「え!黒い炎に見えます・・これは?・・・?」


「黒く見えるのじゃな!そうじゃ、それが魔素と言う物のようじゃ。

 我は魔素が黒色、聖素が白色、魔聖素が七色として認識出来るようになったのじゃ。

 認識出来る色は同じじゃと良いのじゃが、そこは個人差があり別の色かも知れぬから、あとで聖素と魔聖素は自分で確認してくれなのじゃ。


 そこでこの炎を目で掴むイメージをして手から離れると念じながら目線を動かしてみるのじゃ。

 そうすれば、意図的に操れるのじゃ。


 そして恐らくじゃが、もっと強大に魔素を注ぎ込むイメージをすれば意図的に暴走させる事も可能じゃと思う。

 あと自分のこの炎を邪眼で操れば、きっと手から離れても燃え続けさせることが出来ると思うのじゃ。


 少しやってみるかの~そっちでも見ててくれなのじゃ」


 武装形態を第二に引き上げ鱗と尻尾が有る状態になる。

 邪眼を使い自身の掌に出している炎を目視し魔素が集まっているのを確認する。手から離れても供給するようにイメージをしながら目線をゆっくり上げていく。

 目線を上げると炎も掌から十センチ程離れる。


 数十秒そのまま目線を放す事なくその位置で静止させる。

 本来ならこれ程手から炎が離れると燃え続ける事は出来ず、すぐに消え去るものなのだ。少し感動をし気が緩み瞬きをして目線を一瞬炎から外すと直ぐに炎は跡形も無く消え去った。


 そして邪眼について、また新たな発見をする事が出来た。

 目線を一瞬でも対象から外せば、効力を失うという事が分かった。


 邪眼で何かしらを操っている際、瞬き厳禁と言う事になる。

 そして使用後、凄い邪眼の乾燥と眼精疲労感が半端なく襲ってくる。


 何より少し邪眼を使っただけなのに全身全力疾走した時のように息が上がる。

 一息付けば何ら問題ないと考え、息が整ったらアイに感想と改善点が無いかを一緒に考えようと考える。


「これは少し眼が乾くし、疲れるの~・・・はぁはぁはぁ、少し休憩じゃ!」


 休憩をしているフェンラの体に白いモヤのような物が纏わり付いてくるのをアイは目視で確認する。

 この白い物が何なのか分からないが、恐らく聖素で間違いないと思い敵が攻めて来たと勘違いする。


「フェンラさん、あなたの体の周りに白いモヤが集まって・・・恐らく聖素では無いかと・・もしかしたら敵からの魔法が放たれたかもしれません!今すぐ防御を」


 その指摘を受け自分の周りがどうなっているか邪眼を使い確認をする。


「ん?・・何じゃこれは!・・・」


 敵の襲撃と言う事は十分に考えられる。

 何らかの爆発系の魔法だとしたら不味いと考え一気に武装形態四段階目まで引き上げ防御姿勢をとる。

 これでもこの至近距離で爆発されれば、無傷では済まないかも知れないと思いつつ、最悪ここで死を覚悟する。

 すると聞き覚えのある声が頭の中に響き渡る。


『フェンラ~聞こえるか~?聞こえたら念じながら頭の中で俺と会話する感じで話してみてくれ』


 この自身の周りに集まっている聖素の正体が、シアキの術であると瞬時に判断し、武装形態を第二段階まで落とし、アイにシアキの術である事を素早く話す。


「アイ殿、これはシアキ殿の術のようじゃ、今職を替えておるようじゃで心配は要らぬ。

 少し我はシアキ殿と話すで沈黙するが心配せぬでくれ」


 無言になり何かに集中するようになるフェンラを見て邪魔をしないように距離を取る。

 暇なので覚えたての邪眼を通して魔素を見る行為で当りを確認する。

 そしてフェンラは集中し心の声でシアキをイメージし語り掛ける。


『本当に精霊契約の時の対話のようじゃな、この念話とは!。

 シアキ殿!いきなり聖素が体に纏わり付いて来た時は流石に少し焦ったのじゃぞ。

 この念話魔法は少し前触れ等が何かあった方が良いと思うのじゃ!。


 して、何故お主は今職を替えておるのかの~?。

 まぁ~それはどうでも良い事じゃな、して、どうしたのじゃ』


『ん?何で俺が職を替えているって事が分かったんだ?。フェンラも聖素が纏わり付く感覚が分かるのか?』


『いやその様な事は分からないのじゃ。

 ただ我は邪眼で魔素、聖素、魔聖素が目視で識別出来るようになったのじゃよ。

 今、アイ殿に邪眼で知り得た事をお互い交換しつつ、少し邪眼を使って見ておったのじゃ色々とな!。

 

 そしたら、我の体に急に聖素が纏わり付いて来たと知った訳じゃよ・・』


『そっか!それは凄いな目視出来るのか!それはある意味無敵だな。

 良いなそれ、あ~いいこと思い付いたかも!。


 あ!いかん、いかん、このまま念話で長話してしまいそうだな。


 今俺、ルルの所に転移して居るんだわ。

 それで、ちょっとレレに念話魔法の聖術書を作ってやる事になって、今こうして話しかけて訳だ。


 ・・そこでちょっとすまんが頼まれ事をお願いしていいかな!。

 外に出て、サジュラの様子を少し遠目でいいから見て、戦い方を見てやって欲しいんだ!。

 あとラフェルとエラルが修行で体力使って、ぶっ倒れているんだ。

 一応リムに介抱任せているんだが、二人を室内に回収して寝かせておいてくれないか?』


『分かったのじゃ!丁度良いのじゃ、邪眼を使い二人を浮かせるか実験をしてみたいのじゃ』


『はは、あまり無理するなよ。夕方修行するんだし。

 じゃ~念話終了するな・・-念話終了-』


「ラフェル殿とエラル殿が外で疲れて倒れているそうじゃ。

 シアキ殿に二人を室内へ回収するのと、サジュラ殿の様子を見るのを頼まれたのじゃ。


 アイ殿、二人を室内へ回収するのを手伝ってくれなのじゃ」


「分かりました」


「では、シャボちゃん殿、ビデア殿を少し見ててくれなのじゃ」


「分かった見てる、起きたらコレ渡す」


 外に出ると拠点から離れた位置で奴隷のリムが板の切れ端を持ち、倒れ息を切らしている魔族のラフェルと獣人のエラルの二人に向かい扇いで風を起こしてあげているのを発見する。

 遠目なので、出来るのかと思いながら、少し邪眼を使いエラルを掴むイメージをして目線を上空に動かす。

 するとエラルは何かに引っ張られるように上空高く上がった。出来たは良いが、質量感を感じる。

 瞼が重くもう瞼を閉じ楽になりたいと思える程の、眼精疲労が蓄積するのを感じる。


 これは確実に目線を一瞬でも離せば、術が切れあの高さからエラルが落ちるのは確実だ。

 ココは早く降ろさないと身が持たないと思える程、精神力が削られるのを、犇々《ひしひし》と感じる。


「すまぬ、エラル殿、少し動かないでくれ」


 急に体が上空高く上がったのでパニックになり暴れて悲鳴を上げたいが、今はそれが出来ない程体力が減っている。

 これはきっと誰かの魔法であると信じ辺りを見渡し、耳を澄ませる。


 拠点玄関先に居るフェンラと目線が合い、フェンラの発言内容を聞き、この魔法の発動者だと直感で分かったので、大人しく暴れる事なく身をゆだねる事にする。


 瞬きをしては集中が途切れるので、そのまま目線を自分の眼下に向ける。

 それに合わせるように、上空に居たエラルが滑り込んで来るように玄関先まで飛んで来る。


 そっと足下に降ろすように目線を動かし瞼を閉じる。閉じた瞬間床にエラルは置かれた。

 今起きた事を隣で見ていたアイは、慌ててフェンラを見る。

 肩で息を切らしながら顔面から汗が大量に流れている。


「はぁはぁはぁはぁ、はぁはぁはぁ、これは流石にキツイの~炎より楽じゃが!、はぁはぁはぁ、質量がある分、はぁはぁ、重みも感じるのじゃなコレは~、はぁはぁはぁ、」


「大丈夫ですか?フェンラさん無茶ですよ・・でも凄いですね、出来ましたね。


 物質を移動させられるとは凄い発見です。

 では、ラフェル様は、私が移動させてみます」


「アイ殿止めるのじゃ!はぁはぁはぁ、二人を回収して我ら二人も倒れたら元も子もないのじゃ、少し我は此処で休憩するのじゃ、はぁはぁはぁ、」


 ドサリと腰を玄関先の階段に腰を降ろし、少し肩で息をしている。


「あ~それもそうですね、分かりました、ラフェル様は私が空間接続で回収しちゃいます」


 目と鼻の先に居るにも拘わらず、アイはラフェルとリムが居る位置と玄関先を空間接続する。 空間接続した中に体半分入れると、繋いだ先にアイの半身が出る。


 出た先にラフェルを板で扇ぎ風を送っているリムと目線が合う。

 扇がれている者が自国の時期女王であると思うと急に、ただの民である者が自国の王族で有る方の身に触れると言う失礼極まりない行為をして良いのかとを思ってしまう。

 数秒二人の様子を沈黙状態で観察していたので、リムが声を掛けてくる。


「アイ様?」


 その声を聴き慌てて、返答を返す。


「あ!リムさん、えっと、・・・ラフェル様がその様な地面で寝ているのは、とても不衛生ですので、抱えて、この中にお入りください」


「私でよろしいのですか?、アイ様がされる方が宜しいかと思いますが?」


 出来ればそうしたい、自国の王族で、しかも心優しい平和主義な考えを持っている王女をこの手に触れ、どんな些細な出来事でも助けたとすれば、これ程の光栄至極な事は無いと間違いなく思える。


「駄目です、私はラフェル様の仲間であったフェンラさんに対し酷い事をした身、許されない汚らわしい身なのです。

 自国の女王様になられる方の御身に気安く触れるなど、許されませんので、お願いしてよろしいですか?」


 確かにフェンラの一軒で自分はアイをまだ許してはいない。だがそれと仲間を汚らわしいと思うかは別だ。

 それにそんな事をシアキに知れば確実に怒り嫌われる要因になるのは確実だと考え、その言葉を訂正する様、言葉を返す。


「アイ!、はぁはぁはぁ、私は仲間を汚らわしい等とは思っていません、はぁはぁ、仲間をそんな風に思っては、シアキさんに申訳がないでしょ、はぁはぁ、そんな考えは今後しないで、はぁはぁ、ください、はぁはぁ」


 その優しい言葉を聞きより一層自分は触れるべきではないと悟る。


「ですが、・・・いえその言葉だけで私は十分です。リムさんお願いします」


「はい、畏まりました」


 言い残すと直ぐに顔を引っ込める。引っ込めた後、フェンラを見てやはりきっちり自分は罰を受けるべきだと思い至る。


「フェンラさん、やはり、私はあなたからきちんと罰を受けるべきです。そうしないと踏ん切りが尽きません。

 今後エラルさんと体を共有してもこの気持ちを持ったままでは仲間としてやっていく自信がありません。

 この気持ちは此処で私個人だけで断ち切りたいのです。どうか罰を与えてはくれませんか?それと私はやはり「さん」付けは今後止めさせていただきます」


 真剣な眼差しを受け、悩んでいる事は確かなようだ。煮え切らないそんな眼をしている。


「どうしたのじゃ?・・・その話は・・はぁ~お主の気が、それで済むのじゃな?」


「はい!罰をきっちり受け、新たな気持ちで、今後仲間として共に行動をしたいのです」


「分かったのじゃ!ではエラル殿が修行を終えるまでの間、我のしもべとなると言うのはどうじゃ」


「そんな短い期間と言わず一生でも」


「駄目じゃ、そんな事をすれば、エラル殿に迷惑じゃろ、決まりじゃ。

 では、今からじゃぞ!」


「すみません、遅れました」


 空間接続されている個所から、リムがラフェルをお姫様抱っこした状態で現れる。

 疲労で少し眠気にも襲われている様子で、眠たそうな表情をしている。


「ごめんなさい、はぁはぁはぁ、少し休めば・・・」


 休憩の為、座っていたフェンラは、息は整ったが、まだ全然回復したとは居ない状態だ。

 武装形態を上げると力も引き上げられるので、回復したかの様に装おう事が出来る。

 密かに武装形態を第三迄引き上げ、顔から流れていた汗を手で拭い立ち上がる。

 勿論これは空元気だ、武装を解除したらその時回復していなければ反動で疲労感が後から押し寄せてくるものだ。

 見た目は第二段階目と少し鱗の数が増える程度で、注視して見ていない限り気づかれないので、フェンラ達竜人達がよく使う手だ。


「よし、我は回復したのじゃ!。

 さて、アイ殿は、エラル殿を中に連れて行ってあげてくれなのじゃ。

 リム殿もそのままラフェル殿を室内に連れて行って二人を介抱してあげてくれなのじゃ。

 我は少しサジュラ殿の様子を見てくるのじゃ」


 軽々と玄関前の階段を飛び降り、サジュラが修行している個所へ歩いていく。

 その姿に少しだけいつもと違う違和感を覚えるラフェルであったが、修行で相当体力が削られ声を掛ける余裕が無いのでそのまま見送る。

 

 目視で確認出来る距離迄離れ、全員が室内に入ったのを感知し、ジャイアントラービットと戦っているサジュラを見ながらその場に座り、気付かれないように回復に専念する。


 回避がちゃんと出来ておらず、踏み込み等も浅く、腰も入っておらず軸がブレまくりで、攻撃に態と当りに行っているのかと言いたくなる様なお粗末な戦いぶりだ。

 声を掛け、型の練習からする様にと教えてあげるべきなのだが、サジュラのみ今は金銭で情報を得て冒険者として色々熟す修行の真っ最中であるので本人が情報を求めて来ない限り見守る事しか、する事が無いかと思い眺める。


 何度目か数え切れない程吹き飛ばされようやく、フェンラが近くで座ってこちらを見ている事にサジュラはようやく気付く。

 このまま戦っていても埒が無いと思い、手持ちの金銭で、銀貨一枚、銅貨七枚が残っているので、フェンラから今の戦い方で悪い個所全て教えてもらうと言う情報を買おうと決め歩み寄る。


「フェンラ様、お疲れ様です。

 少しいいですか?銀貨一枚と引き換えに、私の戦い方の悪い個所全ての情報を教えてもらえませんか?」


 どうしてここで敢えて戦い方を教えて欲しいと言わないのかと思うが、聞いたところで今の何ら会得していない状態でそれを実践する事は不可能である。

 この場合自分の悪い個所を全て聞けば、それに応じた対処が出来ると考え、数限りある銀貨を最大限有効活用する為に、選んだ質問内容だと気付き感心する。


「本当に戦い方では無く、駄目な点を全てお主に教えるので良いのか?」


「はい」


「ははは、変わっておるが、その質問内容は正しいのじゃ。

 だが、駄目じゃ!お主に教える対価としては、銀貨一枚では到底対価として釣り合わないのじゃ。

 お主に、我を納得させられる他に有益となる物があるなら話は別じゃがな・・・冒険者なら我を納得させてみよ」


 此処で素直に教える馬鹿は、この世の中には居ない。

 自分も数々戦ったり精霊魔法を会得する際無理難題を吹っ掛けられたりした事がある。

 それを話術等で相手をその気にさせ調子に乗らせるのも冒険者の資質として必要だと考え、態と情報の出し惜しみをして見せる。


 駆け引きに持ち出せる交渉材料が手持ちの銀貨だけでは足りない。

 だが口振りからすれば、交渉の余地はある、相手が納得さえすれば情報は得られる可能性が残っている。今考えられる自身が提供出来る交渉材料を用いてこの場を制圧し情報を得る事が冒険者としての資質だと悟る。


「そうですか・・・ではこう言うのはどうですか?。

 今晩の料理、あのトカゲ肉を使ったラフェル様が考案された、アレンジ料理を今晩提供すると言うのはどうでしょう?。


 この料理は、昨晩、マムラ様と特にルル様がそれはそれは絶賛され、自らおかわりされた料理と聞きました。

 今日マムラ様にお昼、私も共に同行し、あのトカゲ肉を仕入れてまいりますので、今晩の料理とし提供させて頂きますが、それで教えて頂くと言うのは出来ませんか?」


「ぐぬぬ、何じゃその料理は!我は食べておらぬのじゃ。

 ルル殿が自らおかわりをする料理とな!それは食べてみたいの~、よし乗ったのじゃ、それで手を打とうなのじゃ」


「では、銀貨一枚とお料理で」


「では、お主の悪い個所は全部で四つじゃ。


 一つ目は、相手の行動を全然見ておらぬ。

  攻撃してくる腕や足ばかりに目がいっておるのじゃ。


 二つ目は、攻撃行動が単調過ぎて、容易に次の行動が予測出来てしまっておるのじゃ。


 三つ目は、武器の特性を把握せず、武器だけで攻撃をしており、無駄な個所に力が入っているせいで、威力を全て殺しておる。

  どの角度で、どの力加減で叩き込めば効率よく打撃を与えられるか、踏み込み位置や型をもう一度見直すべきじゃ。


 四つ目は、回避行動の際、相手から目を離し、回避先に目を向けている事じゃ。

   あれでは容易に回避先が予想出来てしまい、先手を打たれてしまうのじゃ」


「有難うございます、全体的に相手の動きを把握し、攻撃回避共に流動的に動き、武器の特性を把握し武器を手の一部と思える程に使い、最大火力が出せるように力を抜く加減を考え行動すればいいんですね」


「その解釈で間違いはないが、そう簡単ではないのじゃぞ」


「いえ何となく分かりました。

 どうして長剣二本でアレだけ振りかぶっても弾かれたか今その言葉を聞いて分かりました。

 試しにもう一度行ってきます」


 長剣が置かれている個所に行き両手に持ち、その場で練習がてら今度は手の一部のような感覚で振ってみる。

 振った勢いで持っていかれる体を無理に制御しようとせず、流れに逆らわず、振った先に合わせ体を自然に持っていく。

 それを意識するだけで、面白いようにスムーズにステップを踏むかの如く体が動く。


「よしコレなら動けそうですね」


 数歩下がり両手に持った長剣の先を地面に着け、姿勢を少し前屈みになるよう腰を落とし、足をグリグリっと地面に擦り付け摩擦を確認した後、一気にジャイアントラービットに目掛け走り出す。

 両手を広げ長剣が羽根の様に見える位綺麗にブレる事なく「ハ」の字だ。


 前進方向の運動エネルギーを少し左の剣を地面に当てて、体を跳ね上げ横回転し体を軸にして、そのまま回転をしたまま、刃をジャイアントラービットに当てる。

 回転エネルギーも加わり、当たった個所に傷を与える事が出来た。

 着地後、左の剣をジャイアントラービットの足に突き刺し動きを封じる。空いた左手を添え一つ剣を両手持ちにし大きくジャンプし頭目掛けて振り下ろし頭を割る。

 これが致命傷となりジャイアントラービットは絶命し討伐完了となった。元々そんなに体力、攻撃力等が無いので、この動きだけで凄い消耗し、息が上がる。


「はぁはぁはぁ、結構疲れますね・・・はぁはぁはぁ、まさか討伐迄出来ちゃうなんて、はぁはぁはぁ、コレ凄いです、はぁはぁはぁ、体力が・・・」


 少しの助言でこんなに動けるとは思っていなかったので、フェンラは目を見開き、口を開け驚きの表情を見せている。


「何じゃアレは?見た事の無い動きじゃな」


「あははは、どうしたの~フェンラちゃ~ん」


「ルル殿、それにレレ殿、戻ってきたのじゃな」


 横の森からルルとレレが出てきた。

 気配感知をしているルルは、今起きた事もすべて把握しているが敢えて知らない振りをして手を振って近づいてくる。

 辺りをキョロキョロし、先に戻ったはずの者の気配が全くしないのに気づき、念話を入れる。


 そしてレレは素早く討伐されたジャイアントラービットに近づき微笑みながら移動する。

 亡骸を人差し指と親指の二本だけで摘まみ、軽々と持ち上げ、傷口をマジマジと恍惚の表情をし観察している。


「ふふ良いですわ~この血の匂い。

 この傷口は綺麗に一撃しか入っていない所を見ると即死で屠ったのですわね。

 劣等種にしては、凄いですわね。流石お義兄様が集めた劣等種ですわね」


 眼を潤ませ恍惚の表情を見せながら傷口に左手人差し指を入れ、中を弄る。

 抜き出した指に付着している血をペロリと嘗めた後、無造作に地面に落とし、討伐されたジャイアントラービットに向けて手をかざす。


『刈られし者の生命力よ、我手に集まり負の生命量となりて我の糧となれ』


 ジャイアントラービットの亡骸から漆黒のモヤが滲み出て、かざしている手の前で球体となっていく。

 そのモヤの球体が、だんだんと収縮し、直径一ミリにも満たない球体となる。


 球体を見てレレは愚痴った後、手で握りつぶすように握りしめる。


「・・ふふ、小さいですわね、何の糧にもなりませんわね、まぁ~無いよりましですわね」


 その行為で、この討伐されたジャイアントラービットはお肉に出来ない物になり、夜の食卓には並ばない物となったと分かった、ルルは嫌な顔をする。


「もぉ~レレちゃん!そのお肉、新鮮な状態で今晩の食卓に並ぶかもしれなかったのに~はぁ~もうそれ食べられなくなったじゃない!。 もぉ~シアキにこの事、言ってやるんだから~」


「これを夜に食すと言うのですの?」


「ルル殿どうしたのじゃ?、討伐したジャイアントラービットはそこにあるではないか?。

 そう怒らなくても、今ので、多少味が少し劣化しようと、ラフェル殿なら何とかすると思うがの~?」


「はぁ~そのお肉は、もう・・説明するより・まぁ~見てたら分かるよ~」


 数秒後、ペキペキペキと亡骸が崩れはじめ、崩れた個所から砂のようにサラサラの灰のように朽ちて、微風に乗り吹き飛ばされて行く。


 討伐したモンスターが、風に吹き消され跡形もなくなってしまい、サジュラは呆然と立ち尽くす。

 受付嬢なので、これでは依頼内容の討伐は成功としてみなされないと悟る。

 依頼内容の討伐成功と言うのは、その討伐個体を依頼者が確認、又は、組合での換金が成立した時点で、初めて討伐成功となるのだ。


「はぁはぁはぁ、え!あ・・・報告前の・・き、消え・・・はぁはぁはぁ。

  どうしましょう・・はぁはぁ、報告する前に消失・・もう一匹を今から・・はぁはぁはぁ流石に体力的に無理ですし、はぁはぁはぁ・・・」


「え!もしかしてこのモンスターが、お義兄様が貴女に討伐させようとしたものなのですの??。

 不味い、不味いですわ、この事を、お義兄様に、知られたら実に不味いですわ、きっと怒られますわ。

 取り急ぎ、もう一体同じのを屠りましょう、そうすれば問題ないはずですわ、ね、ね、そうしなさい」


 慌てた様子を見せ、詰め寄って来て、もう一匹同じのを倒せと言ってきている。

 正直息は整ったので、もう一度討伐をしなければならないのは分かっている。


 だが、先程の戦いで、今出せる全力を出し切り、体が心地よい疲労感に支配されている。

 確実に明日筋肉痛に襲われるだろうと思える程に節々に少し震えもきている。


「流石に無理です、もう私の体力が、そんなに残っていません。 先程の様に動ける自信はありません」


「そうはいきませんわ、先に戻ったはずのお義兄様は、まだ戻っておられないようですし、今の内にもう一体倒しなさい」


 焦るレレの肩にルルは手を置きニターっと微笑んで見せる。

 その嫌な悪戯っ子がする微笑みを向けられ背筋に嫌な、とても嫌なものが走る。


「ふふふふ、レレちゃん、私のお肉を無駄にした事をそんな事で許るされると~?。

 もうシアキに、この事は伝えたか、どんなに工作しても、レレちゃんは怒られるのよ~。


 それに~サジュラっちの初の討伐お肉が食べれないのか~ってシアキ少し怒ってたよ。

 報酬貰い終わったら、お仕置きだって言ってたよ~」


 態度と口調を聞く限り誰も怒っておらず、少し内容を、ルルが面白おかしく話しているのだと分かった。

 その内容には触れず、シアキが何処に居るのかを尋ねる。


「シアキ殿は、もしかして、もうフジイデ王国に行っておるのかの~?」


「そだよ~ちょっと早いけど~いつ来るか分からない存在だって植え付ける為に、行ってるんだって~」


「マムラ様、もう、フジイデ王国に行ってらっしゃるんですね。

 では、ルル様、マムラ様に、トカゲ肉を買って来て頂くよう、お伝え願えますか?。

 夕食に、昨晩ルル様が食べられた料理を提供する約束をしておりますので、食材調達をお願いしたいのですがと、お伝え願えますか?」


「うんうん、伝えるよ~昨日のあの料理か~あれなら毎日朝昼夕って食べてもいいよね~ふふふ。 よ~し、いっぱい買って来てもらお~」


 その三人のやり取りを見て、どうして劣等種が自身の姉と気安く会話をしているのかと、少し苛立ちを覚える。

 だが、この者達はシアキの仲間であるので屠る訳にはいかないと己の心に言い聞かせ。後で自身の玩具を壊しスッキリしようと考える。


 そして今は、それ所ではないのだ、誤って討伐し食材になる物を無に還した事をどう弁解するかが早急の課題だ。

 悩んでいると後ろから気配無く誰かに肩を叩かれている。振り向くとそこには笑顔のシアキが立っていた。

 眼前に目視で確認出来ているのに、そこには何もいない気配の「け」の字も感じないのだ。


「お、お義兄様!」


 その声を聞き全員レレの方を向く。

 気配感知中のルルはレレの後ろで、笑顔で立っているシアキを見て一瞬驚くが直ちに真剣な表情になり、攻撃姿勢を取り、サジュラの前に出る。

 その行動を見てフェンラは、瞬時に思考する。

 緊急事態であれば、まず此処で殺気を放ち相手の無力化、又は、仲間達の動きを止めるはずだと考え至り、これは何らかの悪戯であると結論付ける。

 これは悪戯である可能性が高いが、万が一を考え、飛び退き、間合いを取り距離を取り、構える。


「ルル殿?アレはシアキ殿ではないのか?」


「うん、アレは得体の知れない者だよ、シアキ擬きだねアレは!。

 ・・・レレちゃん、そのシアキ擬きを捕まえて、一緒に吹き飛ばすから、あまり動かないで!加減間違えたら大変だから!・・・」


 口調がいつものゆるゆる口調ではないので、緊急事態だと察し、サジュラは邪魔にならないように、ルルの背後で立ち尽くする。


 みるみるルルの右の拳に白く輝く雷みたいな物が纏わり付いてくる。これは殺傷系の術であると瞬時に理解する。

 姉の術を全力では無いがこの身で受けるかと思うと少しだけ、興奮と恐怖の入り混じった感情が生まれ額にジワリと汗が滲み出てくるのを感じる。

 自身の防御力を考慮し、このまま得体の知れない者共々貫き消し飛ばすと言う作戦であると理解し、無駄な動きをせず、自身の肩に乗せられている相手の手を握り逃がさないようにし佇む。


「捕まえましたわ、さぁ~遠慮なく撃ってくださいまし」


 手を掴まれ捕縛された事に対し一切抵抗する事なく、ただニコニコ微笑んで、レレの肩に手を置き続けている。


 見れば見る程シアキそっくりだ、目線が合うと、ニターっと悪戯っ子がする微笑みを向けられる。そして次の瞬間、レレと共にこの場から姿を掻き消してしまった。

 あまりに予定通りに事が運んだ事に対し、ルルは笑い出し、手に込めていた術を天に向け放つ。

 キリキリと高音の雷鳴が轟くような音を立て空高く雲を突き破り術が飛んでいく。


「あはははは、もぉ~面白いわ~レレちゃん焦ってた、少し焦ってたよね~」


 事態が呑み込めない、サジュラはどうして良いのか分からず立ち尽くす。

 大体の見当が付いていたフェンラは説明を求めて来る。


「アレは模擬体じゃな?シアキ殿は何をしたのじゃ?それにあの演技は何じゃ!少し本気で焦ってしもうたぞ」


「ふふ、フェンラちゃん、それを私に聞かれても~さっぱり分かんないよ~。


 アレは、シアキの魔法実験の次いでだから少し演技しろって言われただけだからね~そんなに、迫真の演技だった~?ふふふ。

 今頃きっと、レレちゃん凄く、シアキに怒られてるんだろうね~」

--- 72話目のみの後書き----------------------------------------

72話目最後まで読んでくださりありがとうございます。

どうでしたか?楽しんで頂けたならうれしいですが。


では、次73話目で、お会いしましょう。

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