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---57--- 拠点 お風呂は心が癒される 1

 各々酒樽一つ、コップ七つ、御摘み、石鹸七つ、桶四つ、縦長のタオル二十枚、椅子に成りそうな物四つ、脱衣したい服を入れる籠に成りそうな物七つ、他色々持ち込んでくる。


 お酒の樽を場内で掬いやすい位置に設置し、コップと御摘みをその周辺に置きルルは脱衣場所に向かう。

 石鹸、桶、椅子に成りそうな物をラフェルとビデアとサジュラは先に浴場内に運び入れ設置した後、脱衣場所へ向かう。

 

 他の仲間は既に脱衣場所に集まっている。


「では、先に簡単な入浴方法の説明だけをお話しておきますね。

 まずお湯に入る前に体の汚れを取る為、体を洗いますので、桶等に湯を汲み取り、一度体を濡らしてください。


 再度桶に湯を汲みタオルを濡らし、石鹸を擦り付け泡立てます。その泡が付いたタオルで体を隅々まで洗い綺麗にします。


 洗い終わったら泡は必ずお湯で綺麗に流してください。

 そのまま入るとお湯が泡だらけになりますので、ご注意ください。


 服はここで全て脱ぎ、用意された籠や決めた場所に自分のだと分かる様に置いてください。

 また乾いたタオルは必ず一枚、この脱衣場所に置いておいてください。

 入浴後それを使い体の水分を拭き取ります。


 事前に桶、石鹸、椅子等は、運び入れてあります。これらには数に限りがありますので、順番に使用してください。

 浴場内には体を洗う為にタオルは一枚だけ持って行きます。

 何か今の時点で分からない点はありますか?」


「は~い、無いで~す、服はここで脱いで~、タオルを持って~、入浴前に体を綺麗に洗って~、入浴するんだね~、分かった~」


 今の入浴手順をいつものゆるい口調で話し確認している。

 こう言う時のルルは危険だ、かなり過激な悪戯をしたりする事が多い。

 このまま入浴すると、確実に何かしら悪戯や派手に変な遊び思い付きやりそうなので、ラフェルは事前に、そうならない様に釘を刺しておく事にする。


「ルルちゃん!浴場内で走ったり飛んだりは駄目ですよ、滑って転んで転倒したり、飛び過ぎて天井に頭ぶつけたりしちゃいますからね。


 あと危ないですから魔法とかを放つのも極力しないでくださいよ。

 お風呂では私達防護の加護の掛かった服は着ていませんので、防御力が低くなっているのを忘れないでくださいね。


 それと絶対お風呂を真っ二つにするとか、お風呂自体を一時的に消しちゃうとか豪華な悪戯は無しですからね。

 いくら周りが森でも外にはモンスターの目もあるんですよ。不用意に裸体を晒す事になるのだけは絶対嫌ですからね。


 もしそんな悪戯をしたら、ルルちゃんのご飯だけ減らしますからね」


 真剣に詰め寄って来られ、悪戯をするとご飯を減らされると聞き、完全に胃袋を支配されているルルにとってはラフェルの料理が食べられないのはだけは避けたいので、折角考えた悪戯はお風呂ではしないと心に誓うのであった。


「ご飯減らされるのヤダから~絶対そんな事になる様な悪戯とかしないよ~。


 大丈夫、大丈夫だよ~ラフェルちゃんは、ホント心配性だな~ははは。

 さ~さ~楽しい、楽しい、お風呂だよ~脱ごう脱ごう皆~」


 この世界で最強とされる「ラ」の一族で、愛すべき者が、たかが魔族の言葉を真に受け従い少し焦った表情をみせた事に、ルルにしか興味のない腹黒レズっ子のララドとしては許せなく眼前の魔族に対し怒りが沸々と沸き上がってくる。

 だが、その怒りを帳消しにするかのように、眼前でルルが豪快に着ている服を脱ぎ始める。

 全員それにつられ、次々脱衣し、決められた籠の中に衣服を入れていく。


 全員脱ぎ終わり各々の籠一つとっても個性が出る。

 雑に脱ぎ捨てている者、きちんと折りたたんでいる者、再度着る為に着易い順に並べる者と、こんな所にも個性がきっちり現れているのだとサジュラは思うのだった。


「はぁ~何という幸せな光景なのでしょう~では(わたくし)も・・っぶふぁ」


 眼前に一糸纏わぬ、愛すべきルルの姿を観て鼻血を出す勢いで顔を赤らめ一人、一糸纏わぬルルから一切目を離さず、ララドは立ち尽くしている。

 全員脱ぎ終わっていると悟り自分がまだ脱衣していない事を思い出し、術で着ている衣服を一瞬で掻き消す。


 そしてルルは先程ララドがラフェルに向けた殺気等が気になる。

 ここできちんと仲間達に対する行動抑制をしておかなければ、今後シアキに迷惑が掛かると考え、何か良い手は無いかと、全員の体型に目をやり、自分の体型との差を自虐ネタにはなるのでコレを使いより効果的に、ララドを不快な気持ちにさせ、仲間に敵意を向けさせる行動をとらせ抑制しようと決める。


「あぅ~やっぱり~みんな~胸有るよね~。

 はぁ~・・・・私も、もう少しあればシアキをメロメロに出来るのにな~」


 自分の胸に手を当てて少し小ささをアピールし残念そうな表情を見せる。


 神族にとって胸は他の種族より無い方が良いとされ美化される傾向にあり、大きいと醜いとされているのだが、神族以外の一部の他種族を覗き、胸は女性の象徴として大きい方が好まれている。

 その事をルルが知ったのは、まだシアキとラフェルとだけ生活していた際、ラフェルとの女子トーク中に下着の話しやらを聞かされた際、知った内容で目から鱗が出た事案だ。

 無論、この事はララドは知る由もないので、想像し自分と同じ醜いものが愛する人の胸にあると思っただけで、悍ましく寒気をその身に覚えるのであった。


 そしてそのルルの姿を見ていた仲間の女性陣達は、自分達のスタイルを眺めた後、眼前のルルの身長とスタイルの良さを羨ましそうに眺めながら心の中で「あなたに胸が装備されたら、誰が勝てる」っと思うのであった。


 一人悍ましい光景を想像し、眼前の神族の理想の美である姿のルルを観て鼻息荒く暴走気味な腹黒レズっ子が口を開く。


「もぉ~何を仰るのですか、リリルルフェ様!。

 私達のような、こんな醜き我が儘な胸が良いと?。

 そのような醜いお姿を(わたくし)は想像しただけで目眩が致しますわ。


 その可憐で清楚な慎ましいお胸でなければ、(わたくし)の心は発情出来ませんわ、うふふふ。

 あ~こうして、リリルルフェ様の裸体を拝める日が来るなんて、なんて幸せなのかしら~、あの男の条件を飲んで正解ですわ~」


 その発言を聞きルルは眉間に皺を寄せ蟀谷辺りをピクピクさせながら、ララドの胸を睨みつける。

 そう神族ではこれは褒め言葉なのだが、今のルルにとっては考えが変わっているので、皮肉にしか聞こえないのだ。


 そして今この場に居る中で、一番の我が儘な胸の持ち主に胸を否定されたのだ。

 確かに胸をネタに自分が皆より小さいと言われるのは想定されていたが、考えが変わるとここまで屈辱的な怒りを覚えるものなのだと改めて感じるのであった。


「何!ララちゃん、私に喧嘩を売ってるのかな~・・・この胸を寄こしなさ~い」


 両手で胸を鷲掴みにしても指の間から零れ落ちる程のボリュームと心地よい弾力に、何故こんな子に有って自分にはこれが無いのかと、さらに屈辱的な怒りが増してくる。


「はぅ、リリルルフェ様が、わたくしの(わたくし)の胸を~・・なんて幸せなのかしら~」


 ワシワシと胸を揉み自分に無い、この弾力を確かめ言い知れぬ敗北感を同時に味わう。


「この敗北感・・・ララちゃんの癖に~ムカつくわ~」


 表情からして少し怒っている様に見えるが、口調がいつもの感じでゆるゆるなので、ふざけていると判断し、フェンラはルルの肩をポンポンっと叩き、ささやかだが、ルルよりは断然ある自身の胸を張りながら頷いて見せる。

 もう顔がニヤケている、揶揄う気満々っといった表情を見せている。


「ふふふ、我をトカゲと言っておった事への罰じゃ、ルル殿。


 こればかりは諦めるのじゃ。

 胸だけは天性のものじゃでの~ルル殿に我等のように胸が装備され完全装備状態になられては、我等は誰も敵わぬでの~そのサイズで丁度良いのじゃ。


 しかしそんなルル殿に朗報じゃぞ。

 我ら空族に伝わる伝説級の不思議と胸を少し大きくする事が出来る秘儀を知っておるのじゃ。ぷふふふ。


 見るが良い我の胸を!ルル殿より確実に大きいのじゃ!。

 これはその伝説級の秘儀を使用し大きくなったのじゃぞ!。

 そしてルル殿にだけ教えてやるのじゃその方法をな!。


 さぁ~我のお胸様を崇めるのじゃ~ぷふふふ。さすれば胸は少し大きく成長するのじゃよ~」


 完全揶揄っている、ここぞとばかりに笑いを堪えながら、トカゲと揶揄われている事への仕返しとばかりに、胸をネタに有りもしない事で揶揄っていると、事情を知る女性陣達と揶揄われているルル本人も気づくのであった。

 

「ホント!なら崇めるよ~、ハハ~フェンラ様~お胸様~。

 どうぞお乳を大きくしてくださ~い・・・って、揶揄うのやめてよね~大きく成る訳ないでしょ!フェンラちゃん!もぉ~」


「ははは、冗談じゃ冗談じゃ。じゃがそんなに、ルル殿が胸の大きさを気にするとは思わんかったがの~」


 その二人のやり取りを見ていたこの中で一番サイズの小さい者の怒りが頂点に達する。


「なんだえ、なんだえ、お主らは!

 ココに居る全員我が儘な胸をしおってからに~。なんだえ、わっちに対する凄く嫌味に聞こえるだえ。

 わっちの体を見るだえ、ココに居る者達よりも慎ましい胸をしておるのだえよ。


 ・・・わっちから言わせれば全員我が儘な体だえ。羨ましいだえ何なんだえ!。

 やはり体をよく吟味し選ぶべきであっただえ~。

 全く、お風呂と言うのは、こんなに屈辱的な事だったとは知らなかっただえ」


 神降ろし中のリムは、自分の胸に手を当てて地団太を踏み悔しがっている。


 本来神族に他種族が話すこと自体許されない行為だ。

 そして人族風情が、無礼な口の利き方や容姿の事で揶揄う事等は、有り得ないと思っている神族のララドは、少しこのやり取りを見ていて、段々目つきが鋭くなり、怒りが沸き上がり、少し殺気を出しこの者達を黙らせようと考える。

本気でやればまたルルに怒られる危険性があるので、脅し程度に殺気を放とうとする。


 殺気だった表情に成っていくのを横目でルルが見ている事など、お構い無しにララドから殺気が放たれようとしている。

 行動抑止の為、怒るなら此処だっと、すかさず、ララドの頭に少しだけ力を入れたチョップをいれる。


「はぅ・・・」


「駄目でしょ。ララちゃん、ここに居る私の仲間達に対し少しでも殺気を放ったら今度から一緒にお風呂入らないからね~。


 今のは、此処での日常なの、私は此処に居る皆と種族とか関係ないく普通に楽しく雑談したり揶揄い合うのが好きなの。

 これが覚えられないなら、次から口も効かないし、一緒にお風呂も入らないからね。分かった!


 ララちゃん、皆に謝って!。

 取り乱して殺気を出しそうになった事を、皆に頭を下げて謝り、今後は私の仲間達には危害を加えないで、楽しく冗談を言い合う関係になると誓いなさい」


 頭を擦りながら涙目で頷く。


「・・何か納得は出来ませんが、お風呂をご一緒出来ないのは嫌ですわ。

 リリルルフェ様がそう仰るなら(わたくし)は従いますわ。


 皆様、先程は(わたくし)が取り乱し殺気を放った事をお許しください。


 リリルルフェ様に誓いますわ。

 今後、リリルルフェ様のお仲間とされる方に対しては、危害を加えず、楽しく冗談を言い合う関係になりますわ」


 言われた通り他種族に対し頭を神族であるララドが下げ謝って見せ、誓いを立てた。

 これで、ララドは自分の仲間達に対しては、手を出さないであろうと確信する。


 こんな事で確信出来るのかと思うかもしれないが、神族が他種族に頭を下げましてや謝る等は、あり得ない屈辱的行為なのだ。

 神族が仮にも誓いを立てたので、屈辱的行為も平気にこなせるようになる。

 神族にとって誓いとは誰かの名前で誓いを立てる事はその者と契約したと言っても良い事になるのだ。


 これで問題は去ったので、胸の話題はルルの中で過去の出来事のように扱われ、瞬時に忘れ去られ、次の行動に移るのであった。


「じゃ~お風呂いこ~、お風呂♪、お風呂♪、お風呂でお酒♪、お酒♪、お酒♪、オ・サ・ケ~♪」


 さっきのやり取りが嘘のようにコロッと表情が変わり風呂で、お酒を飲むと言う目的を達成させるぞと、浴場へ足を進めて脱衣場所を後にする。

 お酒と言う文言を聞きフェンラも目の色が変わり後を追う。


「おぉ~そうじゃぞ、こんな所でじゃれ合っておる場合ではないのじゃ、お酒じゃ、お酒じゃ」


 去っていく二人を少し呆然を見ていたララドは慌ててタオルを持ち浴場に向かう。


「はぁ~何とリリルルフェ様は強者なのに、下々の無礼な態度をお許しに成り、剰えその行いを一緒に楽しむその寛容な御心・・あぁ~(わたくし)は、そんなリリルルフェ様に益々惚れてしまいますわ~。

 ・・あ!待ってください!。(わたくし)も着いて行きます、リリルルフェ様~」


 その三人を見ていてラフェルは何か二日前までの自分の立ち位置がフェンラに取られ少し寂しい気分になる。


「あははは、何でしょうつい二日前迄は、ルルちゃんの隣で、じゃれ合ってたのは、私なんですが少し寂しいですね。

 でもルルちゃんに胸で揶揄う勇気は流石に自分の胸で張り合うと、虐めている様で、気がして引けますし・・・」


「そうですね、胸の大きさは、私達がやると流石に揶揄うと言うより、虐めに成りますよね」


 相手より豊満な胸の持ち主の人が言うと嫌味にしか聞こえて来ない。


「もう何だえ何だえ、これから胸の事は、わっちの前で言うなだえ。

 くぅ~わっちの術を使えば体や容姿改変等は容易に行えるだえが、そんな勝手な事をすればあの男がわっちの存在を消し去るかも知れないだえな。


 でも・・・わっちも女性だえある所に無いのは不満だえ。

 わっちは創造主である神だえ何でこんな体を選んだんだえ・・・」


 神はどうやら考えを、すぐに声に出すタイプの様だ。

 ぶつぶつ念仏を唱えるように小声で何かを言っている。これは確実に長くなりそうだと判断し、タオルで体を隠し全員浴場に向かう。

 最後ラフェルは、神降ろし中のリムに声を掛けて脱衣場所から出て行く。


「リムちゃん、いえ神様、先に私達はお風呂に行きますので、考え纏まったらタオルを持って浴場に来て下さいね。

 それとリムちゃんの容姿を改変するとかはしないであげてくださいね。

 リムちゃん本体が嫌がりますよきっと、って聞いていませんね、ははは」


 脱衣場所から出て浴場に向かうと、そこは湯気が充満し少し視界が白く、前が見にくい状態であった。

 最後に来たので皆の姿を探すが視界が悪く、このまま進み、滑って転ぶと恥ずかしいと思い、少しだけ手に力を入れて湯気を軽く払う。

 軽く払っても凄い勢いで風が起き湯気が瞬く間に流され掻き消えていく。


 湯気が消えると既にルルとララドとフェンラは湯に浸かっていた。

 だが湯気が次から次に空間を埋めていき、すぐに辺り一面湯気で白くなり、また視界が悪くなる。

 仲間全員を視界に捉えられる程の距離に居るので何とか目視確認出来ている。


「ラフェルちゃん、おそ~い、早く、早く~体洗ってこっちおいで~。

 洗うのが面倒なら、私が術で体を綺麗にしてあげるからこっちおいで~」


 辺りを見渡し全員を確認する。

 何故か椅子に座り硬直状態で居るビデアが目に入る。

 恐らく洗い方が分からないで困っていると思いそちらに足を進める。


「ルルちゃん、私は自分で洗ってから入りますので、しばらく待っててください」


「分かった~早くおいでね~お風呂ってすっごく気持ちいから~。

 もぉ~ビデアっち、洗うの無理ならこっちおいで~術で体綺麗にしてあげるから~」


「いえ、大丈夫です・・・」


「う~んそっか~じゃ~そうやって座ってても駄目だよ~。

 ちゃんとタオル取って、タオルで体は洗わないとだよ~」


 タオルを取ろうかと悩みながら椅子に座って既に数秒考え込んでいると急かされたので慌てて返事をする。


「あ!はい・・・分かってます・・・」


 体を隠す為に巻いているタオルを取れば自身の体を直視しなければならない。

 死霊族なのに中身はグロ耐性のない人であるビデアにとっては自分の体を見る事だけでも気合と勇気が必要なのだ。


「どうしたのじゃ?ビデア殿、早うタオルを取り体を洗うのじゃよ。

 安心するのじゃ、我等はお主の体を見ても笑う事も恐れる事もせぬと約束するのじゃよ」


 周りに居る仲間達も、うんうんっと頷いている。


「あ!はい・・ちょっと待ってください。

 これは結構、私にとっては勇気がいる事なんで・・本当に怖がらないでくさいね・・えい」


 意を決して勢いよく体に巻いていたタオルを取り、透けて骨格が全て丸見え状態の体が露わになる。

 自身の体に目を向け確認し、やはりこの体は見るだけでも嫌悪感を覚え寒気が全身をゾワゾワっと走り抜けていく。

 これ以上直視出来ないので、一旦ギュッと瞼を瞑り少し震えながら心を落ち着かせる為そのまま椅子に座り続ける。

 その姿は脱衣場所で仲間全員一度見ているが別段怖さを感じる程のものではやはり無かった。

 

「ビデア殿、皮膚が少し透け骨格が見えるだけじゃで、大した事は無いと思うがの~。

 脱衣場所でも見たが、その容姿じゃからと言って、ここに居る仲間達は、笑う事も恐れる事も、まず無いのじゃ、安心して良いと思うのじゃがの~」


 ギュッと力強く閉じていた瞼を少しだけ開け自身の透き通っている手や体に目を向ける。

 そこにあるのは骨格標本の様な骨の手や骨盤等が目に飛び込んでくる。

 思わず立ち上がり、すぐさま自身の体から目を逸らし遠くを見つめ無表情な顔を引き攣らせる。


 仲間に成って、笑ってもすぐに無表情になり何処となく引き攣っている表情を見せているのは、これが原因だ!っと仲間全員は察するのであった。


 仲間がこんなに嫌そうにし、困っているので何とかしてあげたくなり、ラフェルはある提案をする。


「ビデアちゃん大丈夫ですよ。

 入浴後、体をきちんと隠せる服とか手袋とかを、シアキさんに作ってもらえば、お風呂以外で服を脱がない限りその姿を自身で目にする事は無くなると思いますよ。

 そんなに見るのが怖いなら、今後お風呂時は浴槽を泡だらけにして見れないようにしましょう。

 そして私が体を洗ってあげますから、その間ずっと目を瞑っててください。

 洗い終わったら目を瞑ったままで、泡の浴槽まで私が手を引いて連れて行ってあげますから。

 仲間が困っているなら、私達は仲間の為どんな事でも協力しますので、今後困ったら遠慮せず相談してくださいね」


 その提案内容を聞きルルが動く。

 一つの浴槽に右手人差し指を向け数回振る動作をする。

 次の瞬間には、その一つの浴槽にある湯のみが、乳白色に変わった。


「は~い、ビデアっちこっち見て~。

 ほら、術で湯に色を付けたよ~泡だと流されて消えちゃうだろうからね~。

 これなら入っても体隠せるよ~。


 コレ、色は付いているけど光の屈折で、ただ白く見えてるだけだからね~体には無害だから安心していいよ~」


「良かったの~ビデア殿、これで気兼ねなく湯に入れるの~」


「じゃ~ちゃちゃっと洗っちゃいますので、ここに座ってください」


 神族で、しかも「ラ」の一族が態々他者の為に術を使う行為は、有り得ない光景だと横に居たララドは驚いている。

 そしてビデアは、自国の王族であるラフェルが他者の体を洗う行為を提案し実行しようとしている事に驚きを隠せないでいる。

 本当に眼前に居る者達は一つの種族や王族等の身分に囚われる事の無い人物達で、且、仲間に成るとその仲間の為に躊躇する事なく行動をする者達であると再認識する。


 そして唯一ある眼球から涙一粒零れ落ちた。

 ポンポンっと優しく肩を叩かれ、椅子に座る様に用意された椅子を指差しながら微笑んでいる。


「本当に宜しいのでしょうか?。ラフェル様はジルベル魔人国の王族の方なのに、そ・・・」


 話の途中でラフェルが口に人差し指を縦に当てて静かにと言う仕草をみせ言葉を遮る。


「ふふふ、確かに私はジルベル魔人国の王族ですが、それは関係ありませんよ。 今は剥奪されてますし、今の私は漆黒の刃風はかぜに所属している、仲間の一人で冒険者のラフェルです。

 そしてビデアちゃんの仲間なだけです。


 私の身分とか気になるなら、そうですね~・・・王族と言うのは飾りだとでも思ってくれればいいですよ。

 私に身分があるとすれば、そうですね~・・・シアキさんとの仲間かどうかという身分があるくらいです。


 まぁ~このパーティー内とシアキさんの国には、種族も身分も関係ありませんし、ただシアキさんの仲間であるかどうかが重要って感じですからね。

 そうですよね~皆~」


「そうなのじゃぞ、このパーティー内では神族であろうと空族や、ましてや人族であろうと、こうして仲間に成れば皆身分は無くなり同じなのじゃよ」


「ははは、ほら、ビデアっち!既に私と普通に喋れたり接してるんだから~身分とか今更気にするのは可笑しいよ~。

 もし気にするなら、私を真っ先に気にしてるはずでしょ~私「ラ」の一族だよ、神族である「ラ」の一族だよ~あははは。


 ね~フェンラちゃんもそう思うでしょ~」


「ん?そうじゃの~我の中では、神族である「ラ」の一族のルル殿と言うよりは、悪戯好きなルル殿と言う方がしっくりくるの~。

 ラフェル殿もそう思うじゃろ」


「あはは、そうですよね~神族である「ラ」の一族のルルちゃんって言われても、私達の中ではしっくりきませんよね。

 私も、悪戯好きなルルちゃんって方がしっくりきますね。


 サジュラちゃんは、どうですか?」


「そうですね、私も神族である「ラ」の一族のルル様と言われてもしっくりきませんね。

 どちらかと言うと悪戯好きなルル様の方がしっくりきますね。


 エラル様は、どう思われますでしょ?」


「そうですね、きっとこれは凄く失礼な事なのでしょうけど、私もルルお姉さんは、豪快な悪戯好きな方と言われる方がしっくりきますね」


「ね!ビデアっち。

 これで分かったでしょ。私の神族である「ラ」の一族ってこのパーティー内だと飾りなのよ~。

 ビデアっちも、もし他の仲間が困ってたら~、出来る範囲で困ってる仲間を助けてあげてよ~。


 ほらほらラフェルちゃんが待ってるよ~取敢えずその椅子に座わて~体洗ってもらいて~早くこっちおいで~お風呂気持ちいいよ~」


「そうですね、ビデアちゃんこのままだと体が冷えてしまいますので、早く座ってくれると助かります」


 死霊族である為、寒さに対し耐性があるので、このまま何時間でも裸のままで居ても平気だが、他の者達は違うのだと気づき慌てて椅子に腰を降ろす。


「あっ!すみません、私寒さに耐性があるのでつい。


 今後私自身グロ系に、もう少し慣れて行きますので、今日はお手数ですがお願いします・・そしてこんな事になり申す訳ないです、ごめんなさい」


 最後謝罪を述べた事を、即座に否定される。


「もぉ~駄目ですよ、コレは謝る事ではないですよ」


 この人が女王に復帰し国民の指示を得ればきっと国は安定し平和になると実感が湧いてくる。

 振り向き頷いて長年笑み等あまりしてこなったせいもありギコチナイが笑顔をラフェルに向ける。


「笑顔とても綺麗ですよ。

 これからこのパーティー内に居ると、もっと自然に笑えるよに成りますから安心してくださいね。

 じゃ~本格的に洗っちゃいますので、終わるまで目を閉じててくださいね」


 桶にお湯を汲み、そっと手を添えて湯が飛び散らないようにゆっくり最初全身に掛けてもらう。

 桶に湯を汲み、その中に石鹸をいれ掻き混ぜ石鹸水を造る。

 それにタオルを浸け取り出しクシュクシュと揉み泡を造り、泡立てられたタオルで優しく体を隅々まで洗ってあげる。

 次に桶に入った石鹸水を持ちそっと手を添えて頭に流し、頭をクシクシと洗い泡立てて洗い、綺麗な湯を汲み頭から順に泡を取り去り洗い終わる。


「じゃ~今から浴槽に連れて行きますね~」


 泡を流し洗い終わったので、ビデアの手を引き、乳白色の浴槽に連れて行った。


 残りのサジュラとエラルも各々体を洗い始める。

 自身の体を洗う為、戻ると、獣人のエラルは全身泡だらけになり悶えている。

 

「はぅ~泡がなかなか落ちません・・・・お湯を掛けると毛が新たな泡をまた生んじゃいます~ラフェルお姉さん助けてください泡が~・・・」 


 そっとラフェルはエラルの下へ行き、後ろに立ち、空いている桶を使いお湯を後ろからも掛けてあげる。

 お湯を掛けると泡が生まれるので本当にキリがない。


「少し石鹸を付け過ぎたみたいですね。結構泡立ちますね。

 これではキリが無いので、今度から使わないお風呂に浸かって泡を一気に落としちゃいましょう。


 皆~一番下段の浴槽は、今後体を洗った際の泡取り専用のお風呂にしましょう。

 浸かって泡を落とす方が早いですので、良いですか?」


 全員その提案に賛成っと意思表示をする。


「「「「賛成」」」」


 全員の賛同を得たので、早速エラルに入って来るように促す。


「じゃ~エラルちゃん、早速入ってきてね。

 でも、走っちゃダメですよ。コケると危ないですからね」


 機転を利かせ行動し、的確に指示を出しているその姿は、まるでこのパーティー内でのお母さん的ポジションのようだとこの場に居る女性陣全員は思うのであった。


「はい、分かりました。では行ってきます」


 後ろ姿を見送り、その場で桶にお湯を汲み、一度体を流し、先程ビデアを洗った時同様の手順で自身の体を洗っている。

 その無駄のない動きに流石王族だと全員は感心する。


 豪族で富豪の娘であるサジュラでさえ直接濡れたタオルに石鹸を擦り付け泡立て洗っていたが、こうして二人を比較すると品位と言う見えない壁があると実感する。

 全員少しラフェルの所作を見て次回は同じようにしてみようと心の中にお風呂の作法として刻み込むのであった。


 最後脱衣場所から神降ろし中のリムが文句を言いながら、ぺちゃぺちゃと足を鳴らしながら、途中何度か滑っているような感じの音を立てながら近づいてくる。

 しかも何も持たずやって来ている。


「何だえ、滑るし何も見えなし何なんだえこれは!、それにお主達は、わっちを置いて行くとは何事だえ。

 ん?・・・この湯に入れば良いのだえか?。

 はて?そこの泡まみれの魔族は何をしているだえ?何かの儀式だえか?」


 その発言を聞きラフェル以外の女性陣達は「さっき何を脱衣場所で聞いていたんだ」っとツッコミを入れたくなったがグッと抑える。


 腕組みをして仁王立ちに成り奴隷のリムの体で凄く偉そうにしながら小首を傾げている。

 手には何も持っていない事を確認したラフェルは、このままお湯に入るのは駄目と幼少の時に教わっているので、全身の泡を洗い流し、自分の使用したタオルをも素早く洗い、新たに石鹸水を造りタオルに泡を付け直す。


「あ!神様。 お風呂の作法としてお湯に浸かる前に体を洗って入るものなんです。 私がリムちゃんの体を洗いますので、こちらに来て下さい」


「うむ、良い心がけだえ、魔族にしては気が利くだえ、わっちを洗う事を許可するだえ」


 凄く偉そうにしているが体がリムなので凄味が全然なく可愛らしく思える。


「では、この椅子に座ってくださいね」


「嫌だえ!わっちは座する事はせんだえ!、このまま立って堂々と洗うだえ!」


 王宮で過ごしていた際、自分に対しいつも張り合う様に背伸びをしていた妹達を神降ろし中のリムの姿と重ね合わせ思い出す。

 もうラフェルの中では、神降ろし中のリムの事を可愛らしい妹の様な存在だと思ってしまっている。 


「分かりました。では立ったまま洗いますね」


 本来このように立って洗うと泡が周囲に飛び散るので、いけない事と教えられているが、幾度もこう言った妹達の我儘を聞いてきた経験が生かされる。

 ある一定の泡が飛び散らない方法を身に着けている。


「泡が目に入ると痛いですから、ここで目を閉じて両手を上げて動かず立っててくださいね~。

 では、一気に頭から流し洗いしちゃいますね~。

 痒い所はないでしゅか~・・あ!ごめんなさい。

 つい赤ちゃん言葉に成っちゃいました」


「ん?なんだえ?そんな事は良いだえ、少し冷えるだえ、早く洗うだえ、寒いだえよ」


 瞼をギュッと力強く閉じた姿を見ると益々妹を思い出す。


「そ!そうですね。冷えますよね・・頭から一気に洗ちゃいますので、少し我慢しててくださいね」


 この世界ではシャンプーやリンスと言った物は無い。

 全て頭の先から足の先まで石鹸で洗うのだ。


 手際よく石鹸水を優しく掛け、リムの頭の先から足の先まで洗い、泡を一気に流して洗い終わる。


「はい、リムちゃんの体は綺麗になりましたので、神様もう目を開けていいですよ」


「うむ・・はぅ少し目が染みるだえ・・痛いだえ!」


 これはよくある事だ。泡の残留が流したお湯と共に開けた目に少し入り染みると言うお風呂あるあるだ。


「大丈夫ですよ。お風呂に入ってお湯を少し眼元に掛ければ、すぐに痛みは収まりますので、そのまま目を閉じててください。

 私が皆の下まで手を引いて先導しますので、ふふふホント手の掛かる妹が出来たみたいですね」


 目を閉じた神降ろし中のリムの手を引き、ラフェルの自己主張している双胸が見事に歩くたびに揺らされならがやってくる。

 その自分では有り得ない光景が少し羨ましいと思いながらルルは自分の胸を見て小さく溜息を漏らす。

 先にラフェルはお湯の中に入り「足元、気を付けて入ってくださいね」っと伝え、そっと手を副えならが神降ろし中のリムを湯の中に誘導する。


「じゃ~まずゆっくり肩まで浸かってくださいね~」


 目を閉じたままラフェルの言葉に従い、肩まで湯が来るように屈む。


「じゃ~私がお顔にお湯を掛けて、少し眼元を洗いますよ~じっとしてて下さいね」


 そっと湯を両手で掬い眼元に流し洗ってあげている。

 もう完全にラフェルには神降ろし中のリムが、手の焼ける可愛い妹にしか見えてない。


「はい、これで終わりです目を開けて来て下さい」


 洗い終わった事を伝えられ、そっと目を開け、あの目が染みるような痛みは無いかを確認する。 何度か瞬きをし眼球を動かすが染みるような痛みは消え去っていた。


「おぉ~あの染みるような痛みが消えただえ~凄いだえ」


 少し尊敬するような目でラフェルを見上げる神降ろし中のリムを見て、ラフェル以外の仲間の女性陣達は「この世界の神様がこんな事も知らないのか」っとツッコミを入れたくなったがここでもグッと抑える。


 全員が湯に浸かったのを確認したルルは、早速酒樽の下部に取り付けられた注ぎ口を捻り次々コップに一口程度の酒を注ぎ入れる。

 取敢えず、人数分を素早く入れ全員に渡していく。


「じゃ~皆揃ったし~お酒飲まない人も一口程度だけ入れたから乾杯だけしよ~」


 配られた少しだけお酒の入ったコップを持ち全員頷く。

 そして全員お酒は飲んだ経験がある者達ばかりだ。


「ふふふ、その前にルル殿とラフェル殿は、コレを食すのじゃ。

 先に解して身だけにしておるでの、これなら大丈夫であろう。


 一度自分で試しに手に取り食べてみるのじゃ!。

 それでもダメなら我が口に放り込んでやるのじゃ」


 渡されたコップを床に置き代わりに一口サイズに解されたお肉が盛られたお皿を持ち笑い立っている。

 盛られている肉は皮も綺麗に取り払われ、見た目は、ただの肉その物になっているので、抵抗感は見て目では左程感じない。


 だがお肉の元の状態を知っているので、少しだけ抵抗がある。

 食べると宣言した手前、恐る恐るラフェルは解された肉を手に取り、目を瞑り口大きく開ける。

 一旦口元まで運ぶが、口に含む事が出来ず手が止まる。


「ふぅ~よし食べます」


 意を決し、肉を口の中に放り込む。ゆっくり口を閉じ一噛みする。

 その様子を、まじまじと自分が食べているかのように嫌そうな表情をしながら横で見るルル。 肉を口に含んだ瞬間、自分が食べてもいないにも拘らずルルの顔がみるみる引き攣っていく。


 一度噛んだだけなのに美味しさがジュワ―っと口一杯に広がる。


「ぅん~美味しい・・な!味が少し変わった・・え!今二つの味がしましたよコレ!。

 あ!コレ美味しいです見た目さえ気にならない様にして貰えれば私も食べれますコレ。


 ルルちゃん食べてみてください。本当に美味しいですよコレ!。

 シアキさんが好きになったのも、分る気がします」


 目を輝かせ心底美味しいと言う眼を向けらながら進められるが、この肉を己の手で掴み口に運び咀嚼する勇気は出ない。

 もう一人の心の中の自分が、この肉はゲテモノで食べる物ではないとそう告げてくるのが分かる。


「駄目!自分じゃ無理~、フェンラちゃんが口に入れて・・はぁひゃふぅ」


 口を大きく開け、早くと言い瞼をこれでもかっとギュッと力強く閉じている。

 相当嫌なのだと分かったララドは流石に止めに入るべきなのではないかと思い動こうとするが、それよりも早く肉がルルの口の中に放り込まれる。


 口の中に肉が入った瞬間、ルルは目を見開き、ひっくり返ったカエルのような状態で両手を天井に向け、両手に何か見えない球体を持つように曲げ広げ固まる。


「はぁふぁいった~・・・はぁ~はぁ~はぁ~」


 まるで、ひっくり返ったカエルのような状態で固まっているその姿が実に可笑しい光景で、思わずフェンラは笑い出す。


「あははは、何じゃルル殿、口に含んだだけでその無様な格好は何じゃ・・。


 ほれ!大丈夫じゃ、後は肉を噛んで味わってみるだけじゃぞ。

 ほれ!頑張るのじゃ、それは本当に美味しいのじゃ・・ほれ!ほれ!噛んでみるのじゃ」


 開いていた口を恐る恐る閉じ肉を噛む。

 その瞬間美味さが口一杯に広がる。あまりの美味しさに驚き目を更に見開き驚く。

 これがあのゲテモノのお肉の味だとは認めたくない自分と、もう認めている自分が心の中で鬩ぎ合い戦っているが、あっさり認める自分が勝った。


「嘘!美味しい~・・・はぁ~私も解してくれたらコレなら食べれるかも~。

 フェンラちゃん、次からは身を解して、私に提供してよ!、そしたら私も食べるから~」


「ははは、そうじゃろう、そうじゃろう美味しいじゃろう。

 これで同士が増えてシアキ殿も大喜びじゃな、ははははは。


 よし分かったのじゃ、初心者用に次回からは我が肉を解し調理し提供すると約束するのじゃ。

 早う上級者の我等みたいに頭から丸齧り出来る様になるのじゃぞ、ふふふふ」


 流石にあの見た目の物を丸齧りする勇気はないと想像しただけでブルっと身震いをしてしまう。


「それは無理丸齧りは絶対、無理だよ~。ね~ラフェルちゃん」


「そうですね、私もまだ姿まるまると言うのはちょっと無理ですね抵抗があります。

 当分上級者のフェンラちゃん達みないには成れないですね。


 しばらくはルルちゃんと一緒の初心者で良いです。

 まぁ~このお肉はお酒の摘みとしては最高だと思います」


「うんそうだね~よしそうと決まれば、さぁ~皆~乾杯しちゃ~お~」


 その合図をきっかけに全員コップを持ち上げ「乾杯」っと叫ぶ。

 コップに注がれたお酒を口に含む。

 あまりの美味しさに驚き全員美味しいと心の底から漏らすように口に出す。


「サジュラっちの家のお酒美味しいね~私コレ好きだよ~」


「そうじゃな!これは美酒じゃな、香りと舌触り、そしてこの洗練された味どれをとっても一級品じゃな」


「これ私の国にも入荷出来れば国民の争い事が無くなるかもですね。

 サジュラちゃん、私が王位に就いたら、私もサジュラちゃんのお家のお酒仕入れに越させますね。

 はぁ~こんな美味しいお酒をお風呂で飲むとか凄く贅沢な気がしますね」


「私の村にも果実や動物のお乳を発酵させて造るお酒はありましたが、これは凄く美味しくて飲み易いですね。

 あれ・・可笑しいで・・ヒック、わらひ・・ヒック、お酒の耐性はあるはずなにょに・・・少し酔ってしまってましゅ・・」


 この場に居る全員に自分の家の酒が美味しいと評価され、自分が造った訳ではないが嬉しくなるサジュラであった。


 獣人にとってのお酒とは、マムラ国王に成る前のヒュヒュク村で造られていた物は果実や動物の乳をただ発酵させて作ったお酒や、濁醪どぶろくの様な物で、アルコール度数の極めて低いのである。

 一方、ルレイ産の酒は、醸造し蒸留した酒の為、アルコール濃度が非常に高い物から低い物迄と様々製造せれ提供されている本格的なお酒なのだ。


 今回この場にある酒は、ルレイ産の中でも最もアルコール度数が高く、且、凄く飲みやすい一級の高級品のお酒なのだ。

 市場の酒場でこのお酒も販売されているが、五十ミリリットルで提供され、銀貨一枚はする代物である。

 酒場で普通お酒を頼むと、二百ミリリットルで提供され銅貨百枚程度飲めるのだ。

 金銭価値にしてそれだけの差がある物を今飲んでいるのだ。


 獣人にとってのアルコール耐性は、アルコール度数の極めて低い濁醪どぶろくの様な物までなので、代謝の速い獣人にとっては、先程飲んだ一口程度で、数杯お酒を飲んだ状態と同じ効果がすぐに現れる。

 酔ったと自分で瞬時に状況を分析し、このまま湯の中に居るのは危険と判断したエラルは湯から上がり岩場に寝転がる。そしてそのまま寝てしまう。


「わらひ、ちょっと酔っちゃいました~ははは、岩冷たくて気持ち~です~しばらく横に成ります~・・・Zzz」


 いくら獣人が全身毛に覆われているからと言っても濡れた状態で寝ていると風邪を引いてしまうとラフェルは思い行動をする。


「ルルちゃん、私、このままエラルちゃんを寝かして置くと風邪を引いちゃうと思うので、体を乾かして服を着せてあげ、部屋に運んで寝かして来ますね」


 そっと浴槽から立ち上がり、エラルの方へ向かおうとする。


「あ~そんな事しなくて良いよ~私がやってあげるから、今浸かったばっかりなんだから~ゆっくり浸かっててよ~」


 右手人差し指をクイっと掬い上げるよな動作をする。岩で寝ているエラルの体が宙フワフワと浮かび上がる。

 更に何度か指を動かしたと思うと全身の水分が弾け飛ぶように一瞬で乾いた状態になる。

 それに合わせるように同時に脱衣場所からエラルの服が飛んで来て誰の手も触れていないのに自動的に着せられる。


 こんな繊細な作業は片指一本で出来る技ではない。

 これはお風呂制作で習熟度が更に上がったお陰で出来る様になったのだ。

今迄であれば、この様な事をする際は、両手をかざして呪文詠唱等も必要で持続時間も左程続かないものであったのだ。


「凄いですわ、リリルルフェ様!その様な繊細な作業を人差し指一本で熟されるなんて、私は夢を見ているのでしょか・・はぁ~流石リリルルフェ様ですわ」


 唯一数少ないルルが気に掛けている者であるララドが、自身の術が凄いと褒められた事で、少し良い気分になる。


「ふふふ、私に掛かればこんなものよ~・・さてと、じゃ~ちょっと部屋行ってくるね」


 そう言い残すと浮かせたエラルを自分の下まで飛んでこさせ、手の甲に指で触れ、裸のまま転移して消え去っていった。

--- 57話目のみの後書き----------------------------------------

57話目最後まで読んでくださりありがとうございます。

どうでしたか?楽しんで頂けたならうれしいですが。


---余談---

 お風呂贅沢ですね~こんな拠点があれば、私もパーティー参加したいです。


では、次58話目で、お会いしましょう。

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