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---45--- 拠点 歪な模擬戦闘

 朝食を済ませ、拠点家の外で獣人のエラルのやりたい事である修行(稽古)を見る為に屋外に出てきた。


「う~ん、どんなのがいいかな~」


 そして今シアキが何を悩んでいる。

 朝食中に少しだけ獣拳や打撃魔法について勉強をしたのだ。


 基本打撃魔法は拳や体の一部に魔素を集め強化する事しか出来なく、攻撃範囲も極めてゼロ距離での肉弾戦しかない事が分かった。

 この世界において最も戦場では死の危険がある職だとも聞かされたのだ。


 種族的に魔族なら多少攻撃されようが防御力と治癒力が高いので打撃職は問題ない。

 だが獣人は俊敏で回避能力が高いだけで防御力も治癒力もそんなに高くはないので、敵との間合いの取り方や回避の型等、修行を積み重ね習得さえすれば、無傷で相手との距離を詰められると自慢げにエラルは朝食中に話していた。

 だが、仲間の獣人エラル自身の防御力は強者にとっては卵の殻みたいなものだ。

 ましてや、主副職共に打撃職で超超超が付く程の防御力の薄い接近戦タイプなのだ。


 自分の仲間になった以上、冒険中に想定していない強者に出くわした際、危険と分かっていてゼロ距離迄近づき戦うとか絶対に有り得ないとシアキは考えている。

 そんな場合を想定すれば、真っ先にエラルが致命傷を負い瀕死又は死亡してしまい、大切な仲間を失ってしまうという最悪の結果が容易に想像出来たので、そんな事にならないように、打撃職でも距離が離れた相手に打撃を与えられるような魔法を一つ作ってプレゼントすると食事中に約束したのだ。

 

 そこで今、打撃職専門でも、拳が届かない攻撃範囲外の相手に直接ダメージを負わせられるような魔法を生成しようと考えているのだ。

 離れた相手に向けて打撃力をそのまま波動として撃ち込みダメージを与える事が出来れば良いと考えは既に出来ているのだが、その方法となるイメージが思いつかないので悩んでいたのだ。


 取敢えず主職を打撃に代え、拳に魔素を集中させ拳を強化するイメージをする事は出来たが、その先、これをどうやって離れた相手にダメージとして当てるかで行き詰まり難しい顔になっている。


「う~ん、魔素を拳の形状に保ったままに出来ればいいんだろ~。

 周りの大気から魔素を自動供給し続けてロケットパンチのように飛んでいくイメージか?。

 それだと永遠と飛び続けるよな~・・・。


 う~ん、撃ち込みの勢い分だけ、拳の魔素が飛んでいき消滅するってのが出来ればいいんだよな。

 これは全て条件として付ければいいのか?。


 まぁ~いいや一度作ってみていけそうならそれでいいか。

 まず手順と条件付けを思い描いってっと・・・・」


―― この打撃魔法を使用する際条件として・・・。

 一つ目は、魔素を拳に集中させ強化し拳の形を強くイメージする。

 二つ目は、魔素の拳の大きさは、拳の形をイメージする際に大きくも小さくも出来る。

 三つ目は、魔素の拳は相手に撃ち込む動作をすれば、飛ばす事が出来る。

 四つ目は、魔素の拳の飛行距離は、拳を撃ち込む運動エネルギーを三倍にした距離までしか飛ばない。

 五つ目は、魔素の拳の威力は、拳を撃ち込む運動エネルギーの三倍の威力になるよう空間から自動で魔素供給され威力が増すものとする。

 六つ目は、撃ち放たれた魔素の拳は、三倍の距離まで飛ぶがそれ以降は、魔素の自動供給が無くなり自動消滅する。


 そう考えイメージしながら、腰を低く落とし、拳をただ前に軽く突き出してみる。

 ただ軽く突き出したにもかかわらず、豪風のような風が起き、数メートル何かが飛んでいった。

 すかさず、魔術記録書出しをし魔術書にしてから魔導書にする。


「よし、こんなもんだろう。拳に色付けでもすればよかったかな~。

 まぁ~いいか色付いてたら避けらるからこのままでいいよな。


 エラルこれは魔素の拳を、そのまま撃ち放ち相手に当てる単純な魔法だ。

 そして拳の飛行距離には制約がある。

 拳を撃ち込む運動エネルギーの三倍の距離しか飛ばないようにしてあるからな。

 あと威力なんだが、撃ち放たれた魔素の拳は、空間から自動で魔素供給され通常の打撃力の三倍の威力になるからな。


 さっき俺が軽く撃ってあれだけの風だったから、まぁ~物に当てて破壊実験はしてないからな~。

 どんだけ威力が出るか分からんけどな。

 本気でエラルがやれば威力が三倍になると考えると結構な破壊力になると思うぞ。

 この魔法を発動する時の負担は、拳に魔素を集める時くらいだ、あとは空間から自動供給されるぞ」


 受け取った魔導書を開きランクを確認する。「B」ランク品だった。


「こんな高価な物良いんですか?コレBランク品ですよ。それに、私でも覚えれるんでしょうか?」


「そんなの気にするな、買ったら馬鹿らしいだろ」


 全員その開かれた魔導書を覗き込み、ランクを確認する、マイナス表記は出ていない。

 そもそもシアキの生成する魔導書は、触れた本人の職の習熟度に合わせて自動変更されるので、何も変化がないという事は丸々今見た感じの魔法が覚えられるという事だ。

 既に三冊も魔術書等を貰っているが、一つも習得はまだしていないので少し羨ましい気持ちを覚えながら、ルルは内容を覗き込む。


「良いな~エラルちゃんそれ・・・。


 それに覚えても大丈夫だよ~。

 シアキの魔導書は特殊だと思うし、マイナスとか表記されてないし平気だよ~。

 もし魔素焼けするようなら、私が直ぐに治してあげるから心配いらないよ~」


「シアキさんの生成する魔導書は触れた本人の職の習熟度に合わせて自動変更されるみたいですし、エラルちゃん大丈夫だと思いますよ。


 シアキさん、それ私にも作って貰えませんか?。

 私も打撃系ですので同じ物が欲しいです」


 同じ打撃職としては欲しい打撃系の魔法だ。

 目を輝かせながら欲しいと訴える。


「いいぞ、もう一冊作るから待ってろ」


 同じ工程をし魔導書を生成しラフェルに渡す。

 正直一冊一冊作るのに同じ工程をするのは面倒だと感じ、今度本だけ大量に作りストックしておこうと心のメモに刻む。


 二名が魔法を習得したので、エラルの修行に付き合う為、二人で開けた場所に移動する。

 残りの仲間は拠点玄関前の階段に腰を降ろし見学する。

 早速ラフェルは試しに魔法を使い打撃を空に目掛けて放つ。

 爆音とともに空の雲にぽっかりと穴が空いたのを確認して満足そうにしている。


「ラフェルあまり威力あるようならそれ必殺技にしておけよ。

 それ拳の大きさはイメージで調整出来ると思うから使いこなせたら便利だと思うけどな。

 何かラフェルがやると、一突きで街を破壊出来そうだな。


 よしエラルも頑張って習熟度あげて、強く成ろうぜ。

 恐らくだが俺が考えるに打撃職の習熟度を上げるのは、きっと型を覚えたり、それを教えたり、使ったり、同じ事を数回繰り返すとかだと思うぞ。

 試しに俺に今覚えた型を披露して、そのあと型をゆっくりした動きで使って組手擬きでもしてみよう。

 何かもっと色々したいけど時間無いしな今度って事にしよう。


 あと俺にどれか一つ簡単そうなのを教えてみてくれ。

 考えが正しくて当たってれば、最低三つ習熟度は上がると思うんだ。


 俺さっきまで打撃魔導士の習熟度が一だったのに、今は三になったしな。

 魔法覚えて、使用したってのが上がった理由だと思うんだよ、修行後強さを確認してあげるから基準となる習熟度だけを確認してもいいか?」


「はい是非今の私の強さを確認してください。

 習熟度が上がるのが確認出来れば、そう言った考えで修行に取り組めますので、是非お願いします」


 同意を得たので確認する。


「主職の「獣拳使い」の習熟度が三で、副職の「打撃魔導士」の習熟度が二だ。

 これが今の基準になるからな、さぁ~修行開始だ!」


「はい、よろしくお願いします」


 元気よく、挨拶し頭を下げ、修行に入る。


 ・・・・約三十分程度、ただ永遠と型を見るだけという退屈な時間が流れ。

 また次に約三十分程度、型をゆっくりした動きで使って組手擬きを実践する。

 一通終え、次にシアキへ簡単な型を教える為先生気分で手取り足取り教えるエラルであった。


 その光景を、ただ見ているだけの外野見学組は、なんだかモヤモヤ羨ましいと言う感情が生まれる。


 獣拳の型はどれも獣人の並外れたしなやかな動きが出来る身体的特徴を生かした型が多く、どれも個性的な型が多い。

 身をこれでもかと低くしたり、足の筋肉と爪を生かした動きをし獣人以外で、ましてや人族では覚えるには少し難しい型ばかりだ。


そして今、エラルは嬉しそうに自身が簡単と思う型を披露してくれている。


 早朝国に置いて来た貰った服に着替えたいとエラルはルルお願いし、服を取りに行き、修行前に着替え今修行をしているのだが、スカート丈が丁度靴を脱いだ事により、すっぽりと足を隠してしまい、重要な足部分の型を全く見る事が出来ない。


「どうですか?シアキお兄さん?。

 これは足爪を地面に食い込ませ軸足を固定し、一気に踏み込み、相手に飛び掛かる様に拳に全体重を載せ打ち出し打撃力にする型です。

 これなら応用も効くと思いますし、簡単で覚えられるんじゃないですか?」


 嬉しそうに覚えたての型で最も簡単に覚えれそうなものを披露しながら、型の説明をしている。


「ははは、靴を脱いだら、スカートで足元が完全に隠れて、足の位置の型とか見れてないしな。 そもそも俺は足にカギヅメになるような爪が無いしな~・・・いや待てよ出来るかも。 足をそもそも固定出来れば、いいんだろスパイクの様に固定して瞬発力を高めるって訳だよな・・・。

 魔素で爪を作って地面に引っ掛ければ代用が効くかもな」


「あ!そうでしたこの衣装で修行するよう言われてたので、ついこの格好で教えてしまいました。

 これだと重要な足元の型が全然見えませんよね。

 失敗ですね。 ちょっと待ってください、今すぐ脱いじゃいますので・・・」


 その場で黒と紫を基調としたゴシックロリータ風のドレス部分を脱ごうとする。

 慌てて脱ぐことを止めさせる。


「待て待てそのままでいい。 ココで脱いだら皆に俺が変態扱いされるから止めてくれ・・。


 でも、取敢えず、そのスカートってのは正解だって事は確かなのは分かったな。

 足の運びが全然確認出来ないから、もし俺が敵なら、次どうやって攻撃してくるか予想が立てられないし、迂闊に手が出せないって事だけは今実感出来た。


 そうだ、エラルそのまま、一度全力でさっき覚えた魔法は使わず、俺にその型で普通に攻撃を当ててくれ。

 撃ち込みの練習台になってやるから掛かってこい、避けられるようなら避けちゃうからな。


 避けられたら罰として何かしてもらおうかな~。

 あと、さっき覚えた打撃魔法はまだ使うなよ。


 あれは打撃力が単純に三倍増になるって感じだからな、拳を撃ち放ったと同時に反動で後ろに吹き飛ばされるかもしれないし、少し修行して習熟度が上げてからにしろよ。

 修行途中でエラルの今の習熟度とか確認するから、俺が大丈夫だと判断して出来るって思ったら声掛けるからその時までお楽しみとしてとっておけ」


 吹き飛ばされるというのは真っ赤な嘘だ。

 先程生成過程で実際に使用した時何も感じなかったのだから。

 今職を打撃職に変えているので、防御力が心配で、使用されると確実にダメージを負う危険性があるのだ。


 その提案を素直に受け、魔法の使用に関してはそうなのだと疑う事無く、打撃する事を躊躇する事をなく快諾するエラル。


「はい、分かりました、では今の私の何も使わない素の本気全力で攻撃しますね。

 一応避けさせません。 罰は嫌ですし。 当ててみせますよ、覚悟してください」


 中段に腰を落とし、拳を構えるがスカートが邪魔で足元が一切確認出来ない。

 どのタイミングで飛び出してくるのか全く予想が付かない。

 これが自分と同等の強さかそれ以上の強者との戦いであった場合、正に死闘になるに違いない。


「よし避けてみせよう。そして避けて後ろをとってエラルの尻尾を掴んでみせよう」


 その発言を聞き、尻尾が緊張した時の様にピーンとなり、少し言葉に詰まりながら目が泳ぐ。

 

「え!・・・尻尾ですか・・は獣人にとっては・・・・いえ勝負ですものね、仕方ありません。 絶対避けれませんよ、そして触らせません、当ててみせます」


 ふ~っと一息吐き、構え直す。

 目に闘志が漲るとはこういう事を言うのであろうと感じさせる程の真剣な眼差しになる。

 尻尾は相変わらずピーンと立っているので相当緊張している事は確かだ。


 この尻尾で感情を他者に晒してしまうので敵に襲われた際不利になるでは無いかと思う。

 伝えて改善すべく、感情のコントロールを並行して行わないといけないのではないかと感じる位、尻尾で感情がバレバレ状態だ。

 恐らく型の習得が先と考え、師であるエラルの父ガオラスは娘に型を先に教えているのだと、今は信じるしかない。

 あと先程の態度から、もしかすると弱点部位なのかもしれないと感じるが、今は敢えて触れないで、身構え行動する。


「よし何処からでも、エラルのタイミングで、掛かってこい」


 少し斜めになり、右手を突き出し手の甲を相手に向け、左手を腰に当て、中腰になり身構える。

 元の世界で格闘の番組などで見たテレビ内容を思い出し、如何にもと言う武道家スタイルで待ち構える。

 少しカッコいいかもと思い口元が緩んでしまう。


 拠点のログハウスの玄関階段部分には、仲間達は座り観戦している。


「へ~あの構えなかなかじゃの~、シアキ殿は元の世界とやらで、武術を齧っておったのかもしれぬな。 防御にも攻撃にも転じれる相当よい構えじゃぞアレは」


「そうですね。なんだか見た事ない構えですが、凄い様になってますね」


 その二人のやり取りを聞きルルが笑いだす。


「あははは、ナイナイそれは無いよ~。

 多分何かの記憶を頼りにカッコいいからやったってだけよ~あれ。

 ほら少し口元がニヤケてるでしょ、ふふふ」


 確認しようと眼を細める。

 確かに口元が何処となく緩んでいる。


「ホントじゃ、何じゃあのニヤケ顔は、ルル殿は、やはりシアキ殿の事をよく知っておるの~。

 もっと我もシアキ殿の事を知らねばならぬな。

 ルル殿!今日の夜にでも、色々聞かせてもらいたいのじゃが・・・」


「あ、ご主人様が・・・」


「あ、マムラ様・・・」


 そう二人が声をあげたと同時に、凄い勢いで地面に転がり土煙をあげながら、藁人形がゴロゴロと回転し吹き飛ばされるようにシアキが吹き飛んでいく。


 心配そうに主人が飛ばされた方を目で追い、今にも走り出し、手当をしなけらばいなないのではないかと救急セットを胸元でギュッと両手で抱えるように抱き寄せる。

 その少し力んだ拍子に、救急セットの箱にメキメキっと音を立て亀裂が入る。


 慌てて力を緩め割れた卵を持つかのようにし、壊してしまった事を、持ち主であるラフェルに対し平謝りし謝罪する。

 一度ひれ伏してしまいそうになったが、フェンラがそっと腕を掴み「そんな事は仲間にしなくて良いのじゃ」っと止められ、立って出来る謝り方で頭をこれでもかと下げて謝罪する。


「ご、ごめんさない、奴隷ですので謝らせてください。

 壊してしまいました事をお許しください」


 救急セットの亀裂を確認しそんな事を謝る必要はないと思うのだが、これも奴隷の習慣だから仕方ない事だとラフェルは思う。

 もしここでひれ伏して謝られていても、素直に自分はそれを見て受け入れてしまいそうになると思うと、ゾッとし、止めてくれたフェンラに感謝する。


「はい、許しますよ。

 そうでしたね一応奴隷だから謝る事をしないといけないんでしたね。


 あと今後何かを破損破壊しても、謝らなくて良いですよ。


 私もその箱とか物とか、しょっちゅうちょっと力を入れただけで壊しちゃいますし。

 その箱は、特に脆いので壊れても今後は気にしないで報告だけしてくれたらいいですよ。


 それに、リムちゃん私達の前でひれ伏して謝らないでくださいね。

 シアキさんに怒られちゃいますよ。

 リムちゃんは仲間なんですから、謝る際は頭を下げなくて良いです。

 言葉だけで十分に謝罪の気持ちは伝わりますからね」


 指差された救急セット用に作られた木の箱は、この森の木々を使って作られているので、丈夫な方なのだ。

 人族であれば拳で殴ろうと、ハンマーで殴ろうと、まず亀裂を入れる事は至難の業だ。

 ここに居る面子は誰一人として力加減が真面ではないのだと言う事を誰一人自覚していないだけだ。


 そして、仲間のシアキが攻撃されたので、仲間全員特にラフェルは我を忘れ、怒りを覚え全力で相手を排除しようと動くのだが。

 これは仲間との修行であると分かっているので全員和やかな雰囲気で見ている。


「あっちゃ~派手に飛んでるね~、リムちゃん大丈夫だよ~。

 シアキはここに居る仲間の中でも私に次いで丈夫だから、あれ位じゃ傷一つ負わないから、安心していいよ~。

 それにその救急セットを使用するとしたら、恐らくエラルちゃんの方が使う確率高いと思うよ~」


「なかなか獣拳とは面白いの~。一瞬で距離を詰めよったな~。

 我も竜拳なるものを少し齧った事があるが、あんなにしなやかな動きでは無いから今度我も教えてもらおうかの~。

 でも組手にしては、結構派手に飛ばされておるの~実に楽しそうじゃの~混ぜてもらいたいの~」


 見ているだけでは、なんだか手持ち無沙汰であると言った感じで各々喋りながら、凄い土埃が舞っている方角に全員目線を向けている。


 土埃の中から人影が見えてきて、外に出てくる。

 現れた姿は彼方此方服が破れ切り刻まれた様になっており、その破れた服の間から下着やら胸やらが見えている。

 男の胸等見えても何も嬉しくは無いと思うだろうが、その姿に女性陣達は釘づけになり、全員心の中で「エラル!よくやった」と叫び、脳内に今見た眼福光景を焼き付けるのであった。


 頭をポリポリ掻きながら、獣人のエラルの方へ戻る。


「いや~エラル凄いぞ、まるでゼロ距離に一瞬で詰め寄られ、打撃力は痛みとか流石に認識出来なかったけど。

 一瞬で詰め寄られて、この距離まで吹き飛ばされるとは凄い威力だな。


 これが互角の力で戦ってたら致命傷ってやつだな」


 土埃から姿を現したシアキの姿を確認し、何て格好にっと思い一瞬目線を逸らす。

 そして、傷一つ無い事を確認すると、自分の実力が足許にも及ばず、弱いのだと実感する。

 掠り傷位であれば付けれるのではないかと思う位、今自身が持てる全力で打撃を撃ち込んだのだ。


「いえ、これは基本の型を忠実に再現しただけです。

 でも流石シアキお兄さんですね。


 一応全力で撃ち込んだんですが、本当に掠り傷一つ負わないんですね。

 服はボロボロに出来ましたが、ははは。目のやり場に困りますね」


 尻尾が悲しい時に見せるダラ~ンとさせているので相当自信を失っている様だ。


 服がボロボロになったので着替える必要があるが、面倒くさいので、このまま上半身の服を脱ぎ捨てる。

 拠点の玄関階段で座りながら観戦している仲間の方を見る。

 

 一人そわそわしている奴が居る。

 奴隷のリムは駆け寄っていいのか、直ぐ呼ばれたら駆け寄るぞっと言うように今か今かとソワソワしている。


 これを利用して模擬戦が出来るかもと考える。

 それにエラルの落ち込んだ、姿を見ていると心が痛む。

 嘘でも痛がった方が良かったのかもしれないと後悔する。


「これ位ってエラルは全力だっただろ?あの鋭い目つきで分かったぞ。


 俺に負傷をさせれる事の出来る相手は、このパーティー内だと、ルル位なもんだからな~。

 ラフェルやフェンラですら無理なんだし、そんなに気を落とすなって、俺はちょっと防御力があるってだけだ、戦いの才能はエラルの方が俺より断然上だぞ、これは断言出来る。


 それに、これで色々任せられるって確信持てたしな。


 そこで一つエラルに提案何だがいいか?」


「何ですか?」


「今から実戦練習兼ねて仲間と協力しての模擬戦みたいなのをやらないか?」


「実践形式の模擬戦ですか?」


「そ、今はエラルのやりたい事をやっているんだし拒否してくれてもいい。


 今後冒険するにあたって、今の内にリムに戦闘にも少しは慣れてもらう必要があると思うんだ。


 見てみろあのリムのソワソワした態度、俺が怪我してないか、心配して救急セットを持って行きたいって考えてるに違いない。

 しかも仲間達に大丈夫って言われているだろうけど、全然周りが見えてないって感じだろ。

 あれだと冒険中真っ先に、このパーティー内で命を落としかねないと思わないか?。


 エラルの実践形式の修行にもなると思うんだが、どうだろう?。

 リムも防御力はあるから全力で攻撃しても大丈夫だし、もし間違って攻撃が当たっても、傷一つ負わないから安心して、どんどん攻撃出来るしな。

               

 そうだな~模擬戦はこんな感じでどうだ。

 俺からリムを攫い、リムを自拠点に連れて行けば勝ち。

 俺は自拠点にリムを連れて行き且、その後、エラルの後ろを取り尻尾を掴んだら俺の勝ちって条件で、勝った側には、一つ何でも相手の言う事を無理のない範囲で一日聞くってどうだ。


 そしてエラル側には、拠点役の二名を除く仲間と共闘してって感じで、俺が不利になる様に作戦を考え、やって欲しい。

 俺からは一切攻撃はしないが、守る為に攫われるのを阻止する為の最低限の行為はさせてもらうけどな。


 ただし追加条件として三つ程守ってほしい事がある。

 一つ目、大将であるエラルが動き戦闘に参加する事、リムを攫うのもエラルがする事、攫った後は仲間に渡して運ばせるのはありな。


 二つ目、人選した仲間には必ず攻撃と守備をエラルが指示する事。

 これはあくまでエラルの修行を兼ねているかな。


 三つ目、人選した仲間は原則事前の作戦指示内容に基づく行動しか出来ないと制限するが、現場でエラルが直接指示を出した場合は、それが優先される事とする。


 最も効率的に仲間を動かす為、作戦を組み立て、模擬戦をやって欲しいんだが出来るか?。

 今後、エラルには戦闘の作戦立案とかを任せる事にもなると思うんだ。


 一応修行も兼ねてるから今回は大将が自ら動く形式になるけど、やってみないか?」


「私が作戦立案ですか?」


「そ、エラルがだよ。

 一応今の所はエラルが一番、国に滞在している時間が長いかも知れないしな。


 その時、他国が攻めてきた際、俺達が駆けつけるまでの間、エラルが率先して避難誘導や戦闘の指示を出さなきゃいけなくなると思うんだ。

 なんせ、俺のパーティーメンバーだし、周りから一目置かれる存在だろうからな。

 有事の際は、きっと頼られるのは必至だろうからな。


 今有る人員は、ここに居る仲間と限定的だし、本来なら有り得ないが、今回は大将が自ら動く事形になるけどな。


 頭脳であり力押しが出来るフェンラを使い作戦の立案するもよし、前線投入するもよし。

 力押し出来るラフェルを前線投入し俺の行く手を妨害させるもよし。

 アイは何が出来るか分からんが、今回使うか使わないかは、自由だな。


 どうだ、実際に人を動かして戦う事で何か修行に役に立つ事に気づくかもしれないし、歪な模擬戦だがやらないか?。


 俺にもメリットあるしな、もし敵と交戦になった時を想定して、どんな理不尽で不利な環境でも相手の攻撃を回避し仲間を守る訓練にもなるしな。


 より実践的に俺とリムを殺すつもりで攻めてくれ。

 どうだ、駄目か?」


「駄目とかそんな事は無いです。

 寧ろ嬉しいです。実戦練習をシアキお兄さんと出来るなんて。

 分かりました。本気で戦いますね、覚悟してください。それに尻尾には触らせませんよ。私勝って見せます」


 これで少し仲間の実力や傾向が確認出来ると心の中で喜ぶ。

 あとはルルにそれとなく気づかせればいい。 拠点役にルルを入れてエラルの聴覚認識外で伝えたらいいか。 文字でも書くか。 いやニュアンスで分かりそうだけど、まぁ~いいやな。


「よし決まりだな。皆の所に行くぞ」


 拠点で待機している仲間達の下に戻り、内容を伝えず、模擬戦をしようとだけ伝える。

 このまま見てるだけは、つまらないと考えていたので、その提案内容中身を聞かず同意する。


「よし決まりな。 今から説明するぞ。

 この模擬戦を行うのは、この木々の無い拠点空間内のみで、森には一切入らないって事、入った奴はお昼はココでお留守番決定な。


 そして拠点役に、この木々が無い空間の端、左右対称に別れてもらう。

 俺の拠点はサジュラ、エラル側の拠点はルルな、これは力のバランスを見て考えた事なんだ、今回ルルは諦めてくれると助かる。


 そして俺はリムを連れ敵拠点、エラル側から歩きで自拠点を目指し移動する、移動で走る事はしない。

 もちろん俺からは一切攻撃はしないが、守る為に攫われるのを阻止する為の最低限の行為はさせてもらうけどな。


 勝利条件だが、俺からリムを攫い自拠点に連れて行けば、エラル側の勝ち。

 俺は自拠点にリムを連れて行き且、敵大将であるエラルの後ろを取り尻尾を掴んだら俺の勝ちって条件だ。


 勝利報酬は、勝った側は負けた側に一つだけ無理のない範囲で今日一日言う事を聞かせられるだ。


 今回はエラルの修行が目的なので、条件として三つ程、守ってもらう事がある。


 一つ目、大将であるエラル自ら動き戦闘に参加する事、俺からリムを攫う行為は、エラルしか出来ないものとする。

 攫った後は仲間に渡して運ばせるのはありとする。


 二つ目、エラルが人選した仲間は自らの考えで攻撃、守備、各種行動をする事を禁止する。

 これはあくまでエラルの修行を兼ねているかな。


 三つ目、攻撃守備各種行動は原則、事前の作戦指示内容に基づく行動しか出来ないと制限するが、現場でエラルが直接指示を出した場合は、それが優先される事とする。


 いくらチャンスだとしても、事前に決めた行動や指示がない限り動かない事、これはあくまでエラルの修行の一環だからな、全てエラルの指示がないと動けない事にするぞ。

 もし指示以外で動いたら、罰としてこの後のお昼からは、お留守番しててもらうからな」


 勝利条件を聞いた辺りからフェンラは、顔を赤らめモジモジし、話が終わると同時に慌てて内容を変更するよう訴える。


「シアキ殿、その尻尾を掴むと言う勝利条件は無しじゃぞ。

 違う条件に替えるのじゃ。

 直ちにその勝利条件は変更する事を提案する、代案で背中に触れるとかでどうじゃ?」


 その慌てぶりに、尻尾は、もしかすると弱点部位なのかもしれないと考えられる。

 もしそうなら何か策を講じなければ、戦闘中にそんな弱点部位を晒しながら戦闘すれば致命傷に繋がる危険性があると考え、どうして駄目なのか理由を尋ねる。


「ん?尻尾を掴むと不味いのか?。もしかして弱点になって触られたら力が抜けるとかか?。


 それなら尻尾を防御出来る何か防具が必要になるんじゃないか?。

 もし実際の戦闘時に弱点部位を攻撃されたら厄介だし、何か尻尾がある者特有の弱点に繋がる事なら、今後戦闘になった際、作戦立てる時に役に立つし、一応お前達のリーダーとして理由は把握しておかないとだから教えてくれるか?」


「普段の戦闘時等に触られたり握られても力は抜けるという事は無いのじゃ、寧ろ怒り狂い相手を屠る原動力になるじゃろう。


 少なくとも今回、シアキ殿が触れる事が問題なのじゃ。

 そのじゃな・・・この世界では我らみたいな、尻尾のある者は・・・そのあれじゃ・・・そう・・・」


 考えられない程、言葉を所々詰まらせている。

 この事は種族的弱点部位で他種族に知られると不味い案件で生命危機に繋がるものなのかもしれないと少し聞いたのは失敗したかとシアキは思う。


 何故フェンラが、こんなに理由を渋るのか理解出来ないエラルは、ここは自分が伝えるべきだと考え発言する。


「シアキお兄さん、フェンラお姉さんに代わって私が理由をお教えしますね。

 私も普段尻尾に他者が触れたら嫌悪感を抱き、その者を蹴り飛ばすか引掻くと思います。

 私達のように常時尻尾のある者は大抵共通して尻尾に触れる行為は、求愛行動になるんです。


 でもシアキお兄さんでしたら、いくら触られても私は全然嫌だなんて思いませんので大丈夫です。


 そのまだ繁殖期ではないので、暴走したりはしませんが。

 その・・シアキお兄さんには、繁殖期の私の尻尾には触れないで貰えると嬉しいです。

 嬉しさのあまり暴走しちゃい、大好きなシアキお兄さんに抱きついちゃいますきっと、ふふふ。


 私はシアキお兄さんの子供も欲しいと考えてもいますし、結婚も真剣に考えていますので、受入れて下さるなら全然嫌じゃないですよ。


 それにシアキお兄さん言いましたよね、シアキお兄さんには常識が通用しないって。


 今回のこの勝利条件を考えたのは。

 ただ後ろを取った際に尻尾が握るのに適しているからと考えて選んだんだって事ですよね。

 分かってますので、誤解も暴走もしませんし平気ですよ。


 でも、仲間以外の常時尻尾のある種族の方で、繁殖期で無い方に対して同じ事をすると、痴漢行為と捉えられ、凄く怒られ引掻かれたりしますし、もし繁殖期の方にその気が無くて触ったら恐らく、求愛行為と捉えられ、繁殖期中執拗に追い回されますので、気を付けてくださいね」


 ストレートな結婚等の発言を聞き、女性陣達は目を見開きこの子はストレート過ぎる発言をすると驚き、ラフェルとフェンラは恥ずかしそうに俯くのであった。

 そしてシアキはその内容を聞き、知らない内に最低な痴漢行為を堂々としてしまう所であった事を知り、慌てて深々と頭を下げ謝罪する。


「そっか、エラルは俺の事を好きでいてくれてありがとな。

 子供は流石に気が早いかな、それに結婚は今考えてないって事を理解してくれてるから、ちゃんと別の理由を考えてくれてるとかホント助かる。


 そっか~求愛行動になうのか、ごめん本当に知らなかったとは言え、その発言内容を聞いた時不快にさせたよな。


 危うく最低行為を堂々とするとこだった。

 じゃ~条件を変えよう背中に触れるに変更な。


 はぁ~この世界の常識を色々知らないとホント困るな~もっと勉強しないとだな。

 今後もし、俺が間違った内容を口にしてたら、後で知らされると結構恥ずかしいから、その場で教えてくれな」


「はい、そうします」


 全員うんうんと頷いている。


「よし、あと他何かないか?無かったら歪な模擬戦をやるぞ」


 静かに聞いていたルルが何か理解したような顔をする。

 模擬戦なら自分も参加すればいい。手加減が出来る事はシアキも知っているはずだ。

 あの「力のバランスを見て考えた事なんだ」と「今回は諦めてくれると助かる」の助かると表現したのは何か引っかかる。


 他にさせたい事があると言っているのだと理解する。


 本来ならアイとサジュラを拠点にし、均等に力配分すれば、より実践形式になるはずだ。

 なのにシアキ一人に他全員を相手にするという事は、他の仲間の力バランスをみたいという事だろう。

 そして自分の役割は審判、この勝負はシアキが負けでいい。

 他の仲間の力が見れれば勝ちって訳だと考えに行きつく。


「ふ~ん・・・。 シアキ~私参戦出来ないしさ~。

 私のお腹が空いたら強制終了って事で、シアキの負けにしようよ~。

 お昼はフジイデ王国の屋台街行くんでしょ~?」


「ん、流石だな、ルル。


 ルルは参戦したら死者が出るからな、今回は不参加だしつまらないだろうから、模擬戦の強制終了審判役もしてくれな。


 ルルの腹時計は正確だしな、だとすると模擬戦は大体二時間程度って所か。

 じゃ~時間そんなになさそうだし、サジュラを拠点位置に運んでくるから、ルルはリムを抱えて反対側に移動してやってくれ。


 皆は役割をエラルから聞いて準備が出来たら、十数えた後に攻撃開始宣言してくれ。

 それとエラル達は俺達を殺す気で何処からでも掛かって来ていいからな、必ず全力で俺を驚く程、殺す気でこいよ。


 じゃ~サジュラ、拠点位置になる個所迄移動させる為に、少し抱えるからな、少しだけ跳躍したりするけど我慢してくれ。


 リムすぐ戻ってくるからルルに先に連れてってもらえ」


 そう言い残すと上半身裸のシアキにサジュラはお姫様抱っこされ、拠点位置へ連れて行かれた。 その行為を目にし女性陣達は小声で「いいな~」っと声に出してしまう。


「エラルちゃん、頑張りましょうね。私何でもするよ。

 勝負に勝とうね、今日一日好きな事をしてくれるって言ったんだから、絶対私、シアキさんにお姫様抱っこしてもらいます」


「我はラフェル殿のように、開き直る事は、まだ出来ぬが、お姫様抱っこはして欲しいの~。

 う~ん・・そうじゃこれは勝負の賭けなのじゃし、勝てば報酬として堂々としてもらうのは悪い事ではないのじゃ・・。

 エラル殿、我を扱き使ってくれなのじゃ」


「ははは、お姉さん達は、どうして素直にならないんですか?。

 シアキお兄さん、言えば受け入れてくれると思いますよ」


「それが出来たら苦労しない「よ」「のじゃ」」


「あの~私は何をすれば・・・」


 盛り上がっている女性陣に水を差すようにアイは申し訳なさそうに会話に入って来る。


「アイ様は、何が出来ますか?」


 何が出来るかと聞かれ、出来る事を話そうとするが、先にルルが会話に割って入いる。


「アイっちは、リムちゃん捕縛の縄役決定だよ~。

 この面子の中、下手に動くと~負傷しちゃうよ~」


 その返答を聞きエラルは驚愕する。


「そうなんですか?」


「一応皆には私の防護の加護付きの衣装を身に着けてるでしょ~。

 今回シアキがこの人選で選んだのは、恐らくだけど負傷させない為もあるけど、恐らく・・ふふふ、まぁ~いいや。


 私はアイっちの強さ見れないから防御力が不明だからね~。

 大事を取って見学が良いんじゃないかな~ってね」


 本当の理由は他にあるが、最もらしいと思われるのでこれでいい。

 基本ルルはアイをまだ心底信用はしていないので、手の届く範囲に置いておく事が今の所、得策と考えているだけだ。


「では、私はリム様の縄役を務めさせて頂きます」


「じゃ~リムちゃん行くよ~、アイっちは自分で来てね~」


 そう言い残すとリムを抱え凄い跳躍をし一気に端まで到着する。

 到着と同時に反対側から凄い勢いで自分の主人が走って到着する。


「よしリムこれからあのサジュラの所まで歩いて向かう。

 俺の側から離れるなと言いたいが、交戦中は極力、フェンラ寄りに逃げてくれ。

 あと俺を信じて盾になってくれ、あとこの俺がするようなこの顔をして見せてやれ。


 まぁ~フェンラから助言を受けて行動を立案してると思うから予想が立てやすいんだよな~。


 あ!そうだ、ルルお前が見たがってる、新しい魔法なんだがな。

 その前に聞きたいんだが魔法を完全に無効化って出来ると思うか?」


「何?完全無効化って?それって完全相殺って事じゃなくて?」


「あ~そうだ。相殺って同じ力をぶつけてってだろ、そうじゃくて無効化だ。

 ・・・あ!向うは、もう準備出来たみたいだな、この話は後でな」


 作戦会議が済んだようで、エラルが数を数える。

 数え終わると開始を宣言する。同時に三名は放射状に距離を取り展開しながら走り出す。


 先程見た構えをし、エラルが攻撃を仕掛けてくる。

 一度見て目が慣れているので避けようと思えば避けれるがここは、敢えて攻撃を受ける。

 また勢いよく吹き飛ばされると思っていたエラルは驚く。

 見事に数ミリも動かせなかったのだ。


「ははは、爪で踏ん張りを利かすってのを、魔素でやってみたが成功だな」


 連続で攻撃を仕掛けてくるかと思いきやリムを狙い素早く後ろに移動する。

 その軌道が読めているので、エラルの腕を掴み軽く投げ後方に飛ばす。

 投げ飛ばされクルクルと回転し綺麗に着地しまた走ってくる。

 その行為を見てフェンラが文句を言いながら攻撃をする為、拳を振り下ろしてくる。


「投げるのは攻撃じゃぞ、ズルいのじゃ」


 攻撃と同時に、リムはその前に出て盾になる。


「な!リム殿を盾に使うとは・・・ズルいのじゃ」


 ニヤリと悪戯っ子がするような笑みを向けた後、主人の方を見てこう言う。


「こんな感じでよろしいでしたか?」


「そうそう、その悪戯っ子がするようなニヤリとする笑いが重要だぞ。

 よしあとはそこで何もせず立ってろ」


「はい、ご主人様」


 そう言い残すと指示通り何もせず立ち尽くす。

 魔素に少し色を付けたようにし、リムをスッポリ覆うようなイメージをする。


 その直後自身の影から手が出てきて両足を掴まれてしまう。

 足を掴んでいる者の細い白魚のような手を見て正体が容易に予想が出来た。


「ラフェルか!凄いなこんな事も出来るのか道理で途中から姿が見えなかった訳だ」


 影からぬっとラフェルが上半身を出し自慢げに話し出す。


「ふふふ、どうですか?闇属性だと闇さえあれば、基本こう言う事も出来るんですよ。

 驚きましたか?打合せでは足止めを頼まれただけですし、掴む事しか今は許されてませんので、このまま足掻かず少しリムちゃんを攫う為の行動時間を稼がしてもらいますので、この手は離しませんよ」


 その間にエラルは横をすり抜けて行く。

 そしてフェンラは何もせずただ眼前に仁王立ちしている。


「どうじゃ、これで動けないであろう。こちらの作戦勝ちじゃな」


「ははは、本当だなこれは予想してなかった、やられたぞ。

 こっちから攻撃出来ないから振り解けないからな。


 でも甘い。もうリムには触る事は出来ないぞ。

 魔素で防御用の膜を作ってその中に入れているからな。さぁ~どうするエラル」


 本当に何かの膜に包まれているようにリムに触れる事が出来ない。

 でもそれだけだ。

 このまま傷を負わないのであれば、自拠点まで吹き飛ばせばいいだけだ。


「シアキお兄さん、甘いです。

 このまま自拠点まで打撃を打ち込みリムさんをこの防御用の膜事一緒に吹き飛ばせば、私の勝ちです。


 ラフェルお姉さん、そのままシアキお兄さんの足に抱きついて完全に動きを妨害してください。

 フェンラお姉さんは、シアキお兄さんに抱きつき身動き取れないように妨害してください」 


 その指示に従い、ラフェル、フェンラは役得だと言わんばかりにシアキに抱きつく。

 その姿を確認したルルが口を尖らせ羨まし過ぎると小声で漏らす。


 中段に腰を落とし、拳を構え、ふ~っと一息吐き、打撃を躊躇する事なく撃ち込む。

 すると膜が地面を削り、リムが数センチ、いや約三十センチ前後移動した。


 その単距離しか移動しなかった事に目を疑う。

 全力での通常打撃なので、数十メートルは軽く吹き飛ばせるはずだと確信していたので予想が外れ驚きを隠せない。


「ははは、二人に動きを止めさせるのは良かったが。


 一応その防御用の膜は地面に突き刺さってる形になっているからな。

 今エラルは惑星その物に通常の打撃で攻撃したんだぞ。


 まず構造を把握してからやらないとな、掘り起こすとか斜めに打ち上げるとかしないと駄目だぞ。


 しっかし予想通り一点正面打撃で地面を三十センチ程抉って進めるとか驚きだな。


 やっぱり打撃力は相当のものだぞ。

 ・・まぁ~あと何百回同じ事をやれば自拠点までは行くだろうな」


「そんな~」


「そんなに気を落とすな。

 その膜も万能じゃない今の衝撃で恐らく埋まっているアンカー部分は破損してるだろうからな。


 よしエラルさっき覚えた魔法を発動させて同じ事をしてみろ、リム!今からエラルが殺す気で襲ってくるけど心配するな。

 そのまま立ってろ。

 その俺が作った防御用の膜があるし、もし壊れてもお前にはルルの防護の加護が施されてるから攻撃されても耐えられるからな。俺を信じろ」


 その問いに少し震えながら、主人の言う事はすべて正しいと昨日嫌と言うほど分かったので信じる。


「はい、信じています」


「では、リムさん、少し怖いかも知れませんがお許しを・・・ふ~」


「使い方は分かるな?。 拳の大きさもイメージで代えられるぞ」


 もう言葉は耳に入っていない様子だ。

 瞑想しならが立ち。

 腰を落とし躊躇する事なく打撃を放つ準備をする。

 それと同時に防御の膜を厚くし地面にめり込ませているアンカーを少し力が加わるだけで切り離れるようにする。 シアキの指示は絶対だが時に誤りがあると知ってもらう為、今回は盛大にリムには吹き飛んでもらう。


「では、いきます」


 掛け声と同時に、拳が放たれる。

 打撃の衝撃を受け、膜に包まれたリムが勢いよくルル目掛けて吹き飛んでいく。

 今何が起きているのか分からないが自分は主人が作ってくれた防御用の膜の中に入り凄い勢いで吹き飛ばされている。

 主人は大丈夫だと言っていたので、全く疑う事無く慌てる様子も見せずただそのまま成り行きに任せる。

 飛ばされている途中で速度が急に落ち空中で、ふわっと浮遊する感覚が生まれる。


「ははは、リム少しは叫んで驚いてもいいんだぞ。

 よし、リムは回収っと、さぁ~どうするこれでリムは空の上だ」


 その空中でプカプカ浮遊している状態に何が起きたのか分からないが、主人の回収という言葉を聞く限り何かした事だけは確かだ。


 そしてルルはこれが止め時と判断し、これでもかと口を尖らせお腹を擦りながらお腹が減ったとアピールし叫ぶ。


「シアキ~お腹空いた~そろそろ終わってご飯食べに行こうよ~」


「ははは、流石ルルだ。本当に正確な腹時計だ。

 さてこの勝負は俺の負けだ。


 ルルが腹を空かしているし終了だ。

 エラルの修行はここまでにして、皆でフジイデ王国に買い物に行こうぜ」


 その言葉を聞き抱きついているラフェルとフェンラは少し残念そうな表情をする。

 そしてその言葉と同時に拠点の玄関扉が開かれる。

 戦っていたエラル、フェンラ、ラフェルは、その人物を見て何故そこからと言う疑問符が付いたような表情をみせる。


「ありがとなサジュラ、全員に飲み物を配ってやってくれ、俺は着替えてくるから。

 どうだ、楽しめたか?これで俺からの簡易依頼は達成だ」


 楽しかったと言うような目をしながら答える。


「はい、楽しかったです。少しハラハラドキドキしました。

 では、これで、個人依頼内容は達成とし報告しますね」


 そう言いながら何かのクリスタルを開き手続きをする。

 そしてシアキは何か満足そうにしている。


「後で確認するより今見てしまうかな・・・お、やっぱり上がったな。

 おめでとう、サジュラ冒険者の習熟度が一上がったぞ。


 俺のも上がったか?・・・あ!そうか~これだと上がらないのか~職が違うとこれは自動で上がらないか~残念。

 でもまた今度やればいいな、上がる事が分かったしな」


「あははは、シアキ~三人共「何?」って顔してるよ~」

 

「ははは、すまん、すまん、ちょっとした実験を並行してやってた。


 あとルルは、この模擬戦の意味に気づいてたからいいとして。

 もうちょっと顔に出さずにしてくれないと、気づかれないか冷や冷やだったぞ。

 じゃ~ちょっと着替えてくるから、あと任せるな」


 言い残すや、サジュラと入れ替えに家屋内に入って行った。

--- 45話目のみの後書き----------------------------------------

45話目最後まで読んでくださりありがとうございます。

どうでしたか?楽しんで頂けたならうれしいですが。


では、次46話目で、お会いしましょう。

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