---44--- オオサ帝国 生身はつらいよ
ちょっとだけ時を遡る。
フジイデ王国、国王の命で解き放たれたに男の使者が一人、街道を早馬で駆け抜けている。
街道と言っても、ただ森の進行を阻害する為の石を敷き詰め歪に整備された境目みたいな感じだ。
この世界には、魔素を燃料にし馬より早く移動する乗り物がある。
何故この使者はそれを利用しないのか。答えは単純だ。
その乗り物を走行状態にさせる為には、魔素を燃料として燃やす必要がある。
国外で長距離移動するには、魔法詠唱者の詠唱永続時間が移動距離に直結しているのだ。
一応結晶化させる事は出来るが人族で作れる結晶は十人掛で一時間の時間を費やしやっと親指程度の結晶が出来るだけだ。
この結晶はそれだけの時間をかけ圧縮し結晶化させたとしても燃焼させると、三十秒も持たず一気に燃えて無くなるのだ。
魔法を使う乗り物は幾つも開発されているが、どれも単距離専用なのだ。
国外を移動するなら丸一日詠唱し続ける事が出来れば、それはより早く目的地に移動出来便利なのだが、優れた魔法の師として崇められる者でも、持続的に詠唱し続ける事の出来る時間は僅かな時間のみなのだ。
よって、国内の単距離間の移動手段としては最適な乗り物なのだが、国外で数キロ走行するには不向きなのだ。
不向きと言うだけで、実際移動手段として使う事もある。
王クラスになると権力誇示の為、大量に燃料源として、魔法詠唱者を引き連れ、この移動手段を用いて大移動したりする。
一人でしかも緊急性を要する場合、この世界は、生体で燃料はそこら辺の草を食べさ、何処かの湧水でも飲ませれば、走り続けれる馬が最も適しており便利なのである。
そして最も自国に近く謎多き隣国のオオサ帝国と言う国へ、今、馬を走らせている。
この帝国に自分が行かなければならない事を嘆き、未だ嘘であって欲しいとどこか心の中で思っている。
何故、近場なのに仕事としては楽に終わらせられると言うのに嘘であって欲しいと願うのか、理由は簡単だ、この国の良い噂を全く聞かないからだ。
この帝国へは関所さえ通過すれば誰でも入国する事が出来る、実に呆気ない程手続きが簡単で殺傷能力の高い武器を持っていても、幻覚作用の強い薬物所持したまま入国しようとしても審査で武器や薬物等を取り上げられる事なく一切面倒な手続きや監視も付く事なく入国出来るのだ。
そして帝国領の各種宿場町が設けられているのだが、そこ迄は誰でもどんな悪人でも関所さえ通れば行き帰りが自由という変わった国なのだ。
問題はそれ以降の帝都に向かう事だ。
何故か帝都に向かうと誰一人として戻ってこないのだ。
近衛団という立場上、数多くの国々の情報を目にしたり、耳にしたりするのだが、この国の情報はどれも宿場町での女遊びや高火力武器屋の情報や、幻覚作用のある薬物を取り扱う店等の情報しか入ってこない。
密偵を幾人も帝都に放ってはいるが、誰一人戻って来た事は無い、国外に機密情報等が一切持ち出させない為、帝都に入った他国の者は屠られていると黒い噂の絶えない国であり、使者の様に送り込まれる事は、そのまま死者になるとも仲間内で言われる程、謎多き国なのだ。
情報が何一つ国外に流出しないので、尾ひれがついているとも言える。
ある者は推測で、実は楽園みたいな箇所で、自国に戻るのが嫌になったのかもしれないと言い。
またある者は、極上の美女達が相手をしてくれるのではと言い。
そしてまたある者は、皇帝や帝国の人々は、同種の人を食らうのが趣味なので、食べられているとまで言ったり憶測が憶測を呼んでいるのだ。
そして誰がどの国に使者として向かうかの選抜方法が、誰が当たっても公平と言う観点から籤引きと言う手段が選ばれた。
運が良いの者は、国交があり比較的友好的な国に決まり喜び、そしてある者は遠方過ぎて本来は行きたくない国の上位の国に当たったものはホッとして見せたりしていた。
自分の番になる頃には、国は八つ程残っている状態だった。
当たる訳がないと思い勢いよく籤を引いたら、見事行きたくない一位のオオサ帝国を引き当ててしまった。
今思い返しても自分の籤運の無さに涙が出てくる。
出立前、フジイデ国王が息を切らしながら自分の前迄直々足を運ばれ、これを皇帝に会ったら渡せと言われ、音声用クリスタルを何故か自分にだけ持たされた。
これはお前が使者として役目を果たし無事に戻る為に必要となる物だと言われ、くれぐれも、他者に奪われ内容を聞かれる事の無いようにと念押しされ、もし奪われそうになった際は、伝令クリスタルより音声用クリスタルの破壊を優先するよう命じられたのだ。
この世界では、音声用クリスタルは大変高価で一度しか内容が聞けない代物なのだ。
その内容は重要文字情報書類より機密性が高く、同じ内容のクリスタルでも情報の重みが違うのだ。
「王様は何故音声を私に持たしてくれたのだろう?。 もしかして私は王国の期待の人材なのだろうか?」
末端の衛兵である男に、このような物を持たせる事の意味を考えながら馬を走らせる。
既にオオサ帝国領にある宿場町エリアを越え、帝都まで、馬を一回休ませて、ゆっくり向かったとしても、あと半日強で到着してしまうと思われる程、帝都が近くに見えている。
今晩中には帝都入りし皇帝にお目通りさせて頂け、王よりの伝令と音声クリスタルを渡す事が出来、明日の昼前迄には、フジイデ王国には戻って来れると男は心の中で計画する。
日も大分落ち、馬も休みなく走らせれ居るので、早急に一度馬を休憩させ無ければならない。
何処かに休憩が取れそうな箇所は無いかを探しながら突き進んでいる。
これが今日一日の中で最後の休憩となると考えられるので、安全地帯になりそうな休憩個所を探す。
しばらく走ると、休憩するに適した三メートルの尖った岩が無数にそそり立ち、正に岩場の密集し地帯が森の脇に視界としてとらえる事が出来た。
洞窟も幸いな事に近くには無いので、ホッと胸を撫で下ろし、この休憩で少し仮眠程度は取っておきたいと考えながら馬を街道から逸れた岩場地帯に向かわせる。
丁度馬がスッポリ入るのに適した岩の隙間に馬を停留させる。
何故休憩するのに、岩場地帯が最も適していると言うのか、ましてや、洞窟が無い事を何故ホッとするのかと思うかもしれない。
モンスター等が居るこの世界では、住処になる洞窟や木々が密集した個所や砂地や、一見安全そうな開けた場所等は、どれも休憩や野営するには不適格な場所なのだ。
この世界で比較的に休憩や野営等をするのには適し安全とされるのが、石の上や岩場地帯だ。
ここなら砂地や地面から現れるモンスターに襲われる事も無く、岩場はモンスターに取って身を隠す事の出来ない、晒された地なので、敢えて踏み入るモンスターは少ないのだ。
そして尖った岩が無数にある様な個所は、上空から狙ってくるモンスターの降下を阻止出来るのである。
馬から降りている使者の男は伸びをし、声を出さず一息付く。
もしここで声を上げれば、上空に居るモンスターに居場所を特定され、岩場を出たと同時に上から襲われ捕食されてしまうからだ。
比較的安全とされるこの岩場地帯でも一定箇所に長居すると、自身の匂いを強く残し地を這うモンスターに嗅覚感知される危険が生まれる。
ここでの休憩は、約一時間が限界であろうと頭で計算する。
今から帝国に着いた際の手順を少し頭で整理し予想される相手の行動を幾つか考える頭の中で予習する。
恐らく自分は使者として王に音声クリスタルを持たされている期待された自分が、余程の粗相がない限り命は取られる事は無いだろう。
伝令を伝えた後、幾つか皇帝に質問等され、その質問内容に的確に返答しなければならない。
もし返答を誤った場合は容赦なく命は無い、だがこう見えて自分は答弁は得意だ。
使者として放たれ、無事に生きて帰った事例として仲間から尊敬の目で見られる妄想が膨らむ。
本来ならここで今すぐ逃げ出したい気持ちになるだろう。
この使者の男は捨て駒にも拘らず、王より音声クリスタルを自分のみが託された事を良い様に自分の内で解釈し期待されている人材であると思い込んでいる。
監視する仲間が誰一人としていない状況でも逃げると言う選択肢に至るような負の感情は微塵も感じていない。
寧ろ、自身の王からお墨付きをもらった期待の人材であり、初めて自分がこの国の帝都から生きて帰れる第一号者だと思い込んで疑わないでいるのだ。
仮に逃げ出そうと考えたとしても、フジイデ王国国王直属の近衛団の誇り掛けて逃げると言う選択肢は端から用意されていないのである。
近衛団に入った際、ある契約魔法をする。
それは近衛団の誓いの契約と言われているが、一種の主従契約だ。
契約内容は、一つ王命と上官命の任務には絶対服従、謀反を起こした場合、死をもって償うべしだ。
これは例外なく近衛団入隊したら誰もが受ける契約で、近衛団隊長含む全員が契約している。
なので、ここで国王命の任務を放棄する事は謀反を起こしたことになるのだ。
近衛団に入った以上国を守る任務で死ぬのは本望だが、謀反を起こし強制的に命を落とす事は近衛団員としての恥で許される死に方ではないのだ。
色々考える事はあるが、仮眠する時間を削る行為につながるので考えを止め、仮眠を取る為、立ったまま岩に凭れ掛かり眼を閉じ仮眠を取ろうとする。
瞼を閉じた瞬間、体に強い電撃が走り気を失い地面に倒れ込む。
そうここは、もう敵地でもあるのだ、仮眠など許されない。
自ら視界を閉ざす行為は、敵に捕食されてるようなもので自殺行為に等しいのだ。
丁度、使者の男が凭れ掛かっている岩から、電撃を与え気絶させた者が姿を現す。
全身岩のような塗装をし、顔面の半分以上が機械、腕、足、体の半分以上も機械で、まるで機械と人間を融合させたような感じの女性と思われる者が二名、姿を現した。
その者達は無言で一度お互いを見た後、気絶させた使者の男を覗き込み確認する。
一人がまるで軽い荷物を担ぐかのように肩に担ぎ、一切言葉を発する事なく無言で、物凄い速さで走り出す。
もう一人は、使者が乗ってきた馬を、まるで重さを感じていないのように、片手で持ち上げ、こちらもまた一切言葉を発する事なく、先に走って行った者の後を追おう。
その両名が走っている方角は、オオサ帝国帝都がある方角だ。
「...お・・きろ...・・もういい、やれ」
微かに誰かが何かを言っているのは分かるが意識が朦朧としている。
水を二杯程掛けられ、使者の男は朦朧とする意識から目を覚ます。
瞼をパチパチさせ必死に今の状況、ここが何処なのか、一体自分がどのような状態なのかを確かめようと辺りを見渡す。
全身金属製の拘束具で固定され。
身動きが一切取れない状態にされ床に寝かされている。
室内を見渡すと先程まで居た岩場ではなく、王宮と思われる個所に自分が居ると分かった。
視線の先には五段の程の階段があり、その上に王が座るにふさわしいと思われる椅子が一つあり、その椅子に偉そうに深々と腰掛けて居る者を見て驚く。
各国の王の人相書きを記憶しているので、その者がオオサ帝国皇帝陛下の「カミン・オオサ」その人だ。
容姿はそっくりだが体の彼方此方に機械が体と融合しているように見える。
足を開き深く王座に腰掛けて座っているカミン皇帝の左右に女性型の同じく機械が体と融合したような人物が立っている。
壇上の玉座に座しているカミンが声を掛けてくる。
「やっと目を覚ましたか、何だ俺の体がそんなに珍しいか?。
魔素義足に魔素義手に魔素義体で体を構成されている者を見るのは初めてか?。
因みに俺の体は六割が魔素義体で攻撃用構成されているから無骨だろ。驚いたか?。
ははは、どうだコイツが俺の右腕のアルシオだ。
そしてコイツが左腕のエルアルファーだ。
俺の国の者は、ある一部の職の者は生身だが、それを除く全国民魔素義体化しているんだ。
これは国外に知られる事は無い、宿場町に居る者も完全人型そっくりの魔素義体化した俺のお気に入りの密偵部隊で、各国の情報を収集する俺の忠実なる国民達だ。
お前も宿場町を通ってきたんだろ、そこの連中の容姿は生身と全然見分けがつかなかっただろう、はははは。
お前はこの事実を知ったからには、この国からお前は生身で戻る事は出来ないぞ。
しかし残念ながら、お前は関所を通り、宿場町を越え、勝手にズカズカ俺の帝都内に入ろうとした罪で、この後、自我も何もない九割戦闘用魔素義体にし、俺の戦闘用自動人形兵として、お前の自国を攻め込むのに使ってやるんだがな、はははは。
それで俺の国に何のようだ?。
この伝令クリスタルの封印をさっさと解き内容を俺に見せろ、俺は気が短いんだ。
場合によっては助けてやるぞ。場合によってだがな。
どうせ俺の国と同盟をしたいとか、ぬるい事を言う内容だろ。
そんな国は俺が攻め滅ぼし、民を全員機械化し戦闘用自動人形兵とし、領土も俺の物にしてくれるがな、はははは」
そう言い壇上から自身の前に伝令用の封印が施されているクリスタルが投げられる。
封印を解除する為、拘束具から手を少しだけ出せたので、クリスタルに触れ解除する。
「カミン・オオサ皇帝陛下、私はフジイデ王国より王命で急ぎ伝令を持ちはせ参じたも・・グフ」
発言途中で、皇帝に右腕と紹介さてた女性が目にも止まらぬ速さで移動し腹に蹴りを入れてきた。
「アルシオ、今度そいつが俺の許可なく勝手に喋ったら、足を切り落とせ。
エルアルファー、そのクリスタルを俺の下迄持ってこい」
王の横に立っていたもう一人の女性がこれまた目にも止まらぬ速さで移動し、クリスタルを拾おうとする。
三本の尖った指の魔素義手の為、何度も掴み損ねたが、クリスタル拾い上げると、すぐさま皇帝の下へ持参する。
皇帝はクリスタルを受け取ると同時に差し出されている腕を破壊する。
「この屑が、そんな腕では、掴むのに不向きだろう直ちに掴み易く、戦闘に向いている腕に替えてこい」
悲鳴一つ上げる事なく、破壊させられた腕を持ち、一礼し部屋を足早に去っていく。
不機嫌そうな顔をしながら、受け取ったクリスタルに記載されている内容に目を通す。
その内容とは実に不愉快な宣言内容であった。
フジイデ王国がどこぞの無名の小国と同盟を結んだという内容で、その国が強大であるという事が掲載されただけの物であった。
「何だ、このふざけた内容の伝令書は、こんな何処の国かも知らん国と同盟とか俺の知った事ではない。
それに何が強大だ、何故これを俺に伝える必要がある。
俺の国はこの辺・・いや人族内最強だぞ、あのフジイデ王のデブ耄碌爺も知っているだろうが!。
この十年でどれだけ俺が力を付け人族最強になったかを・・・その俺に喧嘩を売っているのか?。
俺の国と戦争したいのか、あのフジイデ王は何を考えている?答えろ使者」
発言許可が出たので、質問内容に副うように答える。
「我らフジイデ王国国王のラミン様は決して皇帝陛下と争う事をしたいとは仰っておりません。
皇帝陛下に我国王より言付けの音声用クリスタルも預かっております。
このクリスタルもお受け取り下さい」
ごそごそと体を動かし小型のクリスタルを床に落とす。
「構わんそこでクリスタルを開き聞かせろ」
「では、フジイデ王国国王のラミン様よりの言付けである音声用クリスタルを解放させて頂きます。
‐再生中‐
カミン、久しぶりだな。
儂の国と同盟しろとは言わん。
だがこの新たに同盟国となった儂の同盟国には手を出すな、必ず滅ぼされるぞ。
これを聞く頃には、国として登録されているはずだ、嘘だと思うのなら調べると良い。
兎に角儂が見た限りでは、この国の国王が連れている奴隷一人に、儂の国は数時間と持たずに滅ぼされると恐怖を覚える位の強者達だった。
まだ奴隷の他に仲間が居るが、そいつらはその奴隷よりも強者達だ、そして国王自体が食わせ者だ。
詳しくは言えないが、もしいつものように領地拡大の為、お前が兵を出し行動をしたら、世界のそのものを破滅される事になる。
カミンお前は人族の中では無機物と有機物を癒着させる特異な魔法を使いこなし、人族にしては、防御力も桁外れの強度を保有している強者かも知れんが、儂が同盟する、この国の奴隷一人にもお前の兵は誰一人として敵わなぬ程だ。
嘘と思うなら調べてみろ真実だと分かる。
以上だ。
そしてそこに居る使者はくれてやる、好きにしろ」
その内容を聞き見る見る顔色が紅葉し怒りに満ちた表情になる。
使者は自国の王の最後の言葉を聞き血の気が引き青ざめる。
「俺が奴隷に負けるだと~ふざけるな。
唯一俺の事を理解するからお情けで付き合ってやっているというのに舐めた事を言いやがる。
だがあのデブ糞爺が公にここまで言うとは余程の事か・・・よし調べてやるあのデブ耄碌糞爺の戯言だと証明してやる。
アルシオ、このクリスタルに載っている国の情報、国王の情報を今すぐ確認したい、下の冒険者組合に行って受付嬢を一人誰でもいい連れて来い。
そしてコイツらの逸話、噂話等、全ての情報を俺の前に今すぐ持ってこい。
先手必勝だ攻入るぞ」
皇帝の命を受けたアルシオという機械の体を持つ者は一礼をし窓から飛び降りて行った。
数秒もしないうちに、肩に冒険者組合の制服を着た、派手なデザインフレームの片眼鏡を付けた受付嬢を担いだ状態で飛び降りた窓辺に戻ってきた。
「遅いぞ、何秒待たせるつもりだ。
組合は真下にあるだろう飛び降りて戻って来るのに、何故そんなに時間が掛かる?。
足のバネが逝かれているんじゃないだろうな。後で調整しろ良いな。
よし、受付嬢の女、俺の前に来い。
このクリスタルに載っている国の事と国王の事を調べて、今すぐ俺に教えろ・・いや内容を全て俺に見せろ」
調べるように言われ、クリスタルを渡される。
国名と国王名を確認しようと、受け取ったクリスタルを開こうとした瞬間輝きだし、内容が強制展開される。
その事象に驚き皇帝は飛び退き戦闘態勢を取る。
「何事だ?何故クリスタルが光っている?。
この光を体に浴びた際、義体等に不調箇所が出たりしないのか説明しろ」
この国では、得体のしれない事象や物資が義体触れ汚染される事を極端に嫌う。
特に皇帝は、義体を誰にも触らせない程の人物だ、戦闘態勢を取っている事からして、安全でない事が耳に入ればすぐさま自分は殺される事になる。
事実のみを伝え怒らせないように安全である事を説明する。
「こ、この現象は国名の変更登録がなされた際に起きる現象です。
何が変更なされたかは不明ですが、国の加護者が決まったのかもしれません。
この光る現象に触れても、皇帝陛下のお体には一切害は有りませんのでご安心ください」
その返答内容を聞き、戦闘態勢を解除する。
「そうか悪かったな受付嬢の女、お前も義体化すれば分かるが、得体のしれないものに身を晒すと支障が出るやもしれんのだ許せ。
で!その内容を早く調べ俺の前に出し示せ」
記載内容の国名と国王名を、片眼鏡を起動せず、手から紹介用クリスタルを出しそれに内容を打ち込み紹介する。
出された内容に驚愕する。
その驚いている受付嬢の表情を確認して嫌なものを感じ、手に持っていた紹介用クリスタルを奪い取る様にし内容を確認する。
「見せろ・・・・」
その内容を確認し、加護者欄を見て驚愕する。
「何だこれは!、「ラ」族が加護者だと?本当なのか?お前何か弄ったのか?」
疑いを掛けられた受付嬢は、その様な不正行為が出来ない旨を伝える。
「そこに掲載されている内容は、他者が弄る事は出来ません。
加護者様自ら契約され、お名前を頂いておりますので、その内容に不正個所はなく事実で間違いはありません」
語気を荒げ強い口調で内容が正しいのかと詰め寄ってくる。
「では、この「ラ」族の神族が加護すると言うのは真なんだな。
クソ!、何だこの加護者が「ラ」族とか攻め入る所ではないではないか。
世界が亡ぶと言ってたのは事実かあの糞爺~同盟国を盾に俺を顎で使う気か!。
そうだ!「ラ」族が加護者になるのなら、俺の国の加護者を「ラ」族に変更すれば良いではないか!。
恐れる事は無い。こんな訳の分からない人族の国が、「ラ」族を加護者に出来るのだ。
何かしらの弱みでも握って加護者に引き入れたに違いない。
その方法さえ分かれば、俺はもっと強く成れるではないか!、はははは。
よし隠密部隊に連絡しろ、このマムラ王国に密偵として適任な奴を数名選抜し潜入させろ。
「ラ」族には何かしらの弱みが、きっとあるはずだ。
それを探りだし情報を手に入れ持ち帰って来いと伝えろ」
そして更に内容を目を皿のようにして何か見逃しが個所は無いかを探る。
「ははは、このマムラ王は冒険者であるともあるぞ。
よしこの冒険者マムラ・シアキが所属している冒険者パーティー情報を全て出せ」
紹介用クリスタルをもう一つ出し言われた通り、冒険者パーティー検索をし内容を出し皇帝に手渡す。
皇帝は先に持っている紹介用クリスタルが邪魔になったので、脇に挟み受け取るり内容を見る。
「漆黒の刃風と言う冒険者パーティーのリーダーをやっているのか、仲間は五名か、魔族一名、神族一名、空族一名、獣人族一名、人族一名・・・。
何だこのめちゃくちゃな他種族構成は!コイツ馬鹿なのか?。
この神族の種族が空欄なのが気になるがまぁ~良い。
・・ははは、人族は専属受付嬢を冒険者にしてやがるのか。
コイツ使えるな、この受付嬢の情報を出せ、コイツの親族親戚を人質にし脅せばこのマムラ王から「ラ」族の情報が手に入るかもしれん」
本来受付嬢の重要情報扱いで他の受付嬢が検索しても表には出ないものなのだが、冒険者になった瞬間から受付嬢であった際の登録者情報が全て冒険者情報となり、身体的特徴等全ての情報閲覧出来てしまうのだ。
また新たな紹介用クリスタルを出して、個人情報を閲覧可能なものを全て出し皇帝に手渡す。
「受付嬢歴二年で、専属受付嬢になったのかコイツ。
何故こんな新人丸出しを専属にしたんだ?益々分からんな。
所属加入歴がなんだ、漆黒の刃風所属ゼロ日って加入したてかよ笑えるな。
身長百六十センチ、スリーサイズが、バスト八十センチ、ウェスト六十七センチ、ヒップ八十二センチ。
出身国が、フジイデ王国で、結婚歴が無し、親は両親健在か・・・。
人相図もなかなか美人じゃね~か、髪が黒髪ロングは受付嬢の規定通りか、目鼻立ちも良いな。
受付嬢は規定があり、受付嬢本人を改造出来ないが、冒険者なら攫ってきて体を改造しても規定には引っ掛からないだろうな、よし決めたぞ俺はコイツをコレクションする。
よしアルシオ、そこの使者は何かの交渉に使えるかもしれない。
改造はせず生身で保管しておけ。 飯を与えて死なないようにして、地下牢にでも入れておけ。
牢番に渡したら直ぐに俺の下に戻ってこい。イケ!」
命を受けたアルシオは拘束具で抵抗する事が出来ない使者の男を荷物のように肩に担ぎ部屋を後にする。
王座の間には、カミン皇帝と受付嬢の二名しかいない状態になった。
だがこの場には、まだ一人いるのだ。
「よし明日朝にはフジイデ王国に着くようにするぞ。
今から部隊を編成しろ、密偵部隊もその際に潜り込ませる良いか。準備は今からそうだな~次の時の鐘が鳴る頃には出発するぞ。
人選は任せる二百人程度と小規模を準備しろ、密偵と入れ替わる要因も忘れるな。
この受付嬢の両親を我宿場町で賭博の賭けで借金をし逃げている犯罪者に仕立て上げ捉えに行くぞ。
よし受付嬢もうお前は用済みだ。さっさと消えろ」
玉座の間にはもう誰もいないのはずの、指示が出たのをきっかけに柱に同化するように埋め込まれていた人型の像が動きそっと扉を開け出ていった。
受付嬢はその現場を見て一瞬ゾッとし、足早に王座の間から出ていく。
この国に派遣され、一生この国から出れないのかもしれないと思いつつ、廊下を歩いていると、前から先程の使者を担いで行ったアルシオと言う者が凄い勢いで走ってくる。
生身でぶつかると怪我では済まないので、廊下の壁にくっ付く様にし、通り過ぎるのを待つ。
自分の手前で速度を落とし通り過ぎる事なく眼の前で一度止まり、綺麗な一礼を見せられる。
「ご苦労様です。
またお呼びする機会が御座いますので、組合の所定位置に居て頂けますようお願いします」
この国では自国民で生身と言うだけで貴重な存在なので、皇帝以外の国民達からは丁寧に取り扱ってくれる。
そして皇帝の許可なく、こちらから国民に対し話仕掛ける事を一切禁止されているので、笑顔で頷く事だけをする。
「今日も一言も頂けないのですね、では、私はこれで失礼します」
残念そうに、そう言い残すとまた凄い勢いで王座の間へ向かい走って行った。
ここで返答しないのは、人としていけない事だという事は分かっているが、皇帝の許可なく喋る事は出来ないのだ。
許可なく喋った者の末路を知っている。
この国の法律で「生身の者は、自国民と許可なく喋る事を禁止ずる」と皇帝が決めた法がある。
受付嬢は規定である程度守られているが、この法は絶対守らなければならない。
法を守らず不用意に受付嬢が数人の国民と挨拶を交わした事がある。
その事が皇帝の耳に入り、その者達は翌日には姿を見なくなり、新たに新しい者達が派遣されてきた。
恐らく処刑されたのだと受付嬢達の間で噂になったがその真相は分からない。
この国で、この国民との会話を持ち掛けられるという罠にだけ気を付ければ、この国は天国だ。
食事は毎食、一流の調理人が作る豪華な食事が三食、朝、昼、夕、と貢物の様に持ってこられる。
衣料品、日用品、医療品、住居、医療施設、福利厚生施設、受付嬢用の高級備品等が無料で申請すればその日に支給され提供されるのだ。
「はぁ~挨拶を返せないってのは正直良心が痛むのよね~。
でもこの裕福な生活を捨てれるかと言われたら捨てがたいから挨拶はしないんだけどね~」
片眼鏡を愛おしそうにさすりながら誰もいない長い廊下を小声で言いながら自動階層昇降機を目指す。
長い廊下を進み左に曲がり自動階層昇降機の前で昇降機が来るのを今か今かと待っている。
この建物は地下二階地上四階建て構造になっており、今最上階の王座がある階層に居る。
昇降機乗り場の頭上には大きな目盛りが一から六まで有る。
今目盛りが二なので、地下一階に昇降機があると分かる。
なかなか昇降機が呼んでも来ないので少し苛立ちを覚えたころ受付嬢は後ろに気配を感じる。
恐る恐る振り返ると先程片腕を破壊された者が立っていた。
一瞬悲鳴を上げそうになり慌てて手を口に当てる。
「お困りですか?組合までお送りしましょうか?」
そうここの国民は生身の自国民の者が困っていると助けたくなる性分なのだ。
直ぐに声を掛けてくる。
「私が担ぎ下まで送りましょうか?。いえ是非送らせてもらえませんか?。
生身の方のお役に立てる機会を私に頂けませんか?」
頼んでも良いがその凶悪な腕に抱かれるのは嫌だ怪我をする。
腕の彼方此方に刃物が付いており、手先も鋭利な刃物が付いている。
そんな手で触られたら切り刻まれ下に着いた頃には死んでいる。
「駄目ですか?・・・あ!」
その「あ!」っと言われると同時に昇降機が到着する。
扉が開いたので一礼だけをし、送ってもらえ無い事が残念そうなだと言う表情だけをみせ一階層に到着させるボタンを素早く押し扉を閉める。
扉が閉まり昇降機が動きだし、ため息を一つしてホッとする。
それと同時に良心がチクチク痛むのであった。
「はぁ~この国は、これさえなければホント天国なのにな~。
本当に生身はつらいよ~」
昇降機の中でガックリ肩を落とし、誰にも聞こえない小声で言う、オオサ帝国の冒険者組合の受付嬢であった。
--- 44話目のみの後書き----------------------------------------
44話目最後まで読んでくださりありがとうございます。
どうでしたか?楽しんで頂けたならうれしいですが。
---余談---
新たな不穏な予感です。
では、次45話目で、お会いしましょう。




