---41--- ジルベル魔人国 囚われの身
ジルベル魔人国内にある検問所地下三階部分最奥、独居牢エリアに魔眼族のラベル領主のアイは収監されている。
牢の前には、看守として、頭が牛と言う異形の魔族が二名が、こん棒らしい物を持ち左右に立っている。
牢と言うよりただの横穴の四角い空間で、ベッドも無ければ、排泄用の器具や器も無ければ、空間を遮る為の檻となる鉄格子すらも無いそんな状態だ。
壁からは、湧水が染み出ており、空間内は適度な湿気が保たれ特有の苔がびっしりと生えている。
床の彼方此方には、以前使用していた囚人がしたであろう汚物類が、そのまま床にこびり付き、悪臭が充満した、まさに劣悪な環境そのものだ。
牢の外からは様々な罪人等が拷問を受けている為か、常に悲鳴や叫び声がBGMのように絶え間なく響きわたっており、ここは罪人にとっては地獄より悍ましい所だ。
檻となる鉄格子が無いのは何故か?。
それは牢の空間全体に魔素結界という強力な魔法が施されているので、檻となる鉄格子そのものが不要なのだ。
もし一歩でも結界が解除されていない状態で牢の外に出ようものなら、牢の中に居る者自身の魔素量に比例し結界が構築され出る事が出来なくなる仕組みになっている。
強引に出ようものなら肉は硬直をし痺れ動けなくなるだろう。
そして何故このような環境に収監されてるかなのだが話しは少し遡る。
邪眼回収に赴いた先で回収対象が、ある冒険者パーティーに所属してた。
そのパーティーリーダーの提案で、仲間の邪眼を回収するのを止めて自らも仲間となり回収対象が魔素焼けを起こさないかを見守るか、それとも魔眼一族全員を根絶やしにされるかと究極の二択を迫られ、仲間になる事を選択したのだが。
異形であるこの見た目をどうにかしてくれと、そのリーダーに言われ、自身の体を探すべく自国に戻ったのだ。
食料用、苗床用、体用と用途は様々で、生体や死体等を欲する魔族は結構多い。
そして需要がある以上供給される個所もある。
各種族を生きた状態で取り扱い要望通りの部位を提供したり、またはその場で死体にし新鮮な状態で提供する事を生業とする魔族の中でも特殊な死霊族という者達が運営する死体生体販売店というものがある。
こういった店は、他者の体を利用するアイのような寄生するタイプの魔族にとって凄い重宝される店だ。
こう言った店で種族や性別等を伝えれば、在庫があればすぐ購入と同時に生体を購入者の前で要望通り命を奪い新鮮な死体にし提供をしてくれたり、そのまま拘束具を付けた状態で生体のまま提供してくれたりする。
もし在庫が無ければ、数日中に要望通りの個体を攫ってきてくれて提供してくれるのだ。
通常、何らかの理由で体を探すなら、こういった店で、気に入った体を探し購入するのが一般的だ。
だが今回それが出来ない。
仲間になったリーダーが体を手に入れる為に条件を出してきたのだ。
その条件とは相手を殺傷して体を手に入れる行為を禁止するもので、手に入れる方法は、死にかけの相手と交渉し、死んだ際、体を譲り受けると言う方法のみでしか、手に入れる事が出来ないのだ。
その条件で体を得る為には、各種病院や死体生体販売店をいくつも回り、人族のメスで身体的特徴を事細かく指定し、さらに死にかけている個体が居れば交渉したいので、紹介して欲しいと聞いて回っていたのだ。
この様な交渉をするのは、同魔族の体を手に入れる為であれば、交渉し体を手に入れたいのだと考え不自然さは微塵もない。
仮にもこの国内で五位の権力ある領地持ちの領主で金も権力も十分余裕がある魔族が下等な劣等種の人族と交渉したいと国内を聞き回っているのだ。
これはあまりにも魔族としては不自然な行動だ、よってこの国の衛兵隊に不審行動として通報され、拘束連行された後に拷問を受け、今現在に至るのだ。
「はぁ~こんな牢にぶち込まれてしまうとは情けない。
これでは約束の日に戻れない・・どうすれば良い・・これでは本当に一族が根絶やし決定ではないか・・はぁ~・・どうにかしないと」
ほぼ目玉と触手のみの異形なので、項垂れる事は出来ないが、もし出来るならがっくり肩を落とし項垂れているだろう。
ぶつぶつ小声で言っていると、突然聞き覚えのある声が耳元で優しく囁くかように話し掛けてくる。
目玉と申訳程度の口と触手だけの見た目まさに異形な存在なのに耳があるのかと思うかもしれないが、耳に相当する部分に小さな穴が空いており、これがアイの耳なのだ。
-魔法発動中-
― お~い聞こえるか「アイ」、俺だパーティーリーダーをやってる「マムラ・シアキ」だ。
今、俺考案の遠距離相手と会話出来る魔法で、お前の耳元に直接話しかけているだ。
てか、お前今どんな環境に居るだ?何だ、その聞こえてくる悲鳴の数々は?。
魔族領ってそんな悲鳴がするもんなのか、ってそんな事ないよな。
単純に考えて声出すとまずい状況下に居るのかも知れないよな。
そのまま返事はしなくていいから、不自然でない程度に、咳払いか物音で、緊急事態なら一回、そうじゃないなら二回鳴らしてくれ ―
急に声を掛けられたので、辺りを見渡す。
牢の前に看守として立っている頭が牛で右の角だけしかない者が、暇なのでキョロキョロ不審な行動を取っている事を揶揄ってくる。
「おいおい、ラベルの眼玉大将、何キョロキョロしているだ。
本当に魔眼族って眼玉だけだらか気持ち悪いな~大人しく処刑の日まで待ってろよ。
腹が減ったならそこの糞でも食ってろ。ははははは」
今度は揶揄っていない方の頭が牛で左の角だけしかない魔族が揶揄いをしている魔族に注意をする。
「おい!ゴアラ、ほっとけ、そんな魔族の面汚しと話をしていると、こっちまで、レフェア・ラミューラ・ジルベル様のお怒りに触れるぞ」
「ん?はは、そうだな、メアラ。
コイツ二日後処刑だっけ、あと領地解体だったよな。
こんな馬鹿領主だと一族が、かわいそうだな。
でもなんでこいつ魔族の面汚しになってんだ?。
それに何故?拷問牢に入れず、こんな独居牢に収監されているんだ?」
「こいつ体を探して彼方此方の病院や死体生体販売店で、死にかけの人族のメスは居ないか、居たら交渉したいんだとか不自然な行動を取ってたそうだ。
店の主人達に通報されて、呆気なく捕まったらしいぞ。
上でさっきまで尋問魔法に掛けられあらゆる苦痛を与えられ、最後に自白魔法を掛けられた際に、こう言ったそうだ。
「人族と仲間契約をして仲間になり、その仲間のパーティーに、元第一王位継承者である王女が生きて所属していて、その連中達が、数日中に、この国を目指しやって来る」って誰が聞いても嘘と分かる内容を自白したらしいぜ。
その内容が現女王のレフェア・ラミューラ・ジルベル様の耳に入り、恩赦を受け処刑日まで拷問牢ではなく独居牢に入れさせよと命が出たらしいぞ。
まぁ~腐ってもこの国内権力五位の領主だから、自白魔法への対抗魔法が施されていると考えた女王が直々に明日新たな情報を手に入れる為、強力な自白魔法を発動させるそうだ。
それに耐えられるだけの体力を温存させる目的で独居牢にと恩赦を与えておられるんだきっと。
これは聞いた話なんだが、いつもの自白魔法より、レフェア様が使う自白魔法は強力で、掛けられた者の体力が無ければ数分と持たず精神崩壊し聞き出す前に死ぬらしいぜ。
どうせレフェア・ラミューラ・ジルベル様の王位を脅かすような権力抗争の為の何か画策したんだろ。
嘘の記憶を予め植え付け、画策した連中を守ろうとしてたみたいだしな。
でもその内容が、元第一王女のラフェル様が生きているとか、誰が聞いても嘘だってバレるような内容だもんな。
やはり体がほぼ目玉だけだから脳が足りないから嘘の記憶も巧妙には作れなかったんだぜきっと。
それに魔族が人族の下について仲間になるとか有り得ない事も言ってたしな、事実でなくてもそんな考えは魔族の面汚しだろ」
「ははは、魔眼族っていくら国内権力五位でも、体が無いからきっと複雑な考えが出来ない程、脳が無いんだぜコイツ、はははは。
でも、コイツ処刑は二日後だけど、実質レフェア・ラミューラ・ジルベル様のその強力な自白魔法を掛けられたら死ぬんだし処刑は明日って事だよな。
でも何を画策したんだろうな、気にならないか?」
「おいおいこれ以上詮索したら俺達もヤバくなるぞ。 これ以上余計な詮索しない方が身の為ってもんだぞ」
その二名の会話を聞きシアキは全てを理解する。
そして怒りが生まれる、自分の出した条件で仲間になった者を危険に晒した事と、その仲間を侮辱した発言をした者に激しく怒りを覚える。
現女王のレフェア・ラミューラ・ジルベルと言っていた。
以外に大物が何もせず釣り針に食いついていた事を知り笑いがこみ上げてくる。
― アイもう返答も返事も合図もしなくて良い。
その侮辱発言した、そいつらの顔を覚えておけ、名前はきっちり俺は記憶したからな。
絶対許さね~アイが受けた同じ苦痛を味合わせやるからな。
ふ~捕まった経緯は、そいつらの会話を聞いたから分かった。
本当にすまんなアイ、俺の無茶な条件で疑われて囚われの身にさせてしまって拷問魔法であらゆる苦痛を受けたみたいで。
自白魔法か~そんな魔法があるんだな、これだと俺との約束の、俺達の事を特にラフェルの事を口外するなって事は守れそうにないよな。
でも俺達の情報、特にラフェルの情報聞いて、即お前を死刑せず拘留するとか、ふん、向うさんも少しはお利口さんって事だな。
そうだ、アイ、俺今自分の国を持って、その国の王をやってるんだ。って今は良いかこんな話は・・。
う~ん今直ぐそっちに行けるんだが、少しそのレフェアって、現女王って奴に繋がりそうな奴に情報を流してくれると助かるんだが・・・。
恐らく、レフェアって奴は頭が回るみたいだし、情報が耳に入れば、お前を国賓級の待遇を受けれて、命は保障されると思うんだが。
って、あ~、明日になったら強力な自白魔法ってやつを掛けられ死ぬかもしれないって言ってたの忘れてた。
クソ!、仲間をこれ以上危険な目に合わせられるかってんだ。
ごめん、アイ今直ぐそっちに行って、助けてやるから。待ってろ~。予定なんかどうでもいい。待ってろよ今すぐ行ってやるからな。 ―
小声で話していたが、今の独り言の内容から獣人の聴力だとまず聞こえているであろうと踏み。
あたかもそこに相手が居るかのように普通の音量で話す。
「エラル、今の俺の独り言聞いて内容は把握出来ただろ!。もし分からなくても良い。
エラル!俺、今からちょっとアイを助けに行ってくる。
皆には、俺が出て行った事は、明日の朝まで内緒にしておいてくれ。
ルルは俺が行動したら気づくだろうから、何かしら行動しそうになったらそれとなくルルには伝えて誤魔化しておいてくれ。
じゃ~行ってくるから、あとの事は、よろしく頼むぞ」
壁の向こうに居る獣人のエラルに向けて話す。
一見するとただの自室で壁に向かって小声で独り言を言っている様にしか見えない。
言い終わるや否や、聞こえている事を信じて、転移する為、アイの前に現れたいと願い転移する。
必死にアイは考える。このような高度な魔法が使えるのだから、助けに今すぐ来るという事は出来るに違いない。
だが、こちらの不手際で愚かにも捕まり、しかも約束した事も守れず、相手に情報迄流したのだ、その罰を受け自分はここで死ぬべきだと考え、その旨を伝えるべく口を開く。
「待ってくだ・・・・え!」
眼の前に昼間別れた人族のマムラ・シアキが立っていた。
現れるなり辺りを見渡している。看守二人は有り得ない声を聴き振り返り驚いた表情をみせ同時に同じ言葉を発する。
「「貴様どこから入った?」」
そんな事はお構いなしに、相手など存在自体無いかのように無視し、自身の足に付いた汚物を眺め、しかめ面になりながらお道化た口調で話す。
「うわ~なんちゅう劣悪な環境だよ!。
こんな所にもう一日とか俺言ってしまったのか~ホントゴメンなアイ。
そして、アイ迎えに来たぞ。
・・はぁ~戻ったら確実に明日の朝、ラフェル達に怒られそうだな。
ははは、この不法侵入者になる感覚は、二度目だが、どっしり何か重いものが圧し掛かってくるこの感じ何度体験しても嫌なもんだな!。
まぁ~いいや、これで大物釣れたと思えば、この重たさも心地いいか・・・って重いぞコノヤローここの加護者ぶん殴ってやりて~」
「貴様~俺達を無視しやがって、何勝手に喋っているんだ。
何処から入ったと聞いている下等な人族野郎」
「はぁ~うるさいぞ、さっきからごちゃごちゃと、この牛頭の糞野郎が!。
しっかりお前達の面と名前のゴアラにメアラってのは俺は記憶したからな。
お前達は俺の大切な仲間である、ここに居る アイ・ラベル・ラベルを、こんな劣悪な環境に押し込めて、しかもさっき侮辱発言をしてただろ全部聞いてたからな。
本来なら、今すぐにでもお前達に俺の大切な仲間が味わったであろう苦痛を数倍にして味合わせてやりたいと考えているくらい頭に来てんだが。
取敢えず、これ以上ごちゃごちゃ喋られるとイラッとするから、黙ってろや」
ギロっと睨みつける。知らず知らずに殺気を出している。
看守二名は背中に氷水を掛けられ、縄で体をぐるぐる巻きにされている様な感覚に身動きも声も発する事も出来ない状態になり黙り込む。
「ふん、ちょっときつく言っただけで大人しくなり微動だにしないんなら、最初っからそうやって黙って突っ立ってろよ」
牢の前の壁から男の声が聞こえてくる。
「流石、レフェア・ラミューラ・ジルベル様の読み通りですね~。
助けに獲物が餌に食付いてくると仰っていた通りになりましたね、流石我国の女王様の読みは完璧です。
でも魔素結界に自らは侵入する者が居るとは、態々透明化出来る魔法を使っていたのでしょうが・・。
ははは、流石お馬鹿な劣等種の人族ですね。
こんな劣等種の人族に仲間と本当に呼ばれているとは、アイ・ラベル・ラベルさん本当に魔族の面汚しですね。
劣等種だから牢の仕組みも知らずに自ら囚われの身になるとは滑稽ですね。
明日、あなたも、そこの目玉さんとご一緒に拷問し、全身の皮を剥いで差し上げます。
私は人族の悲鳴を聞くのが何よりの至福の時間なので明日が楽しみです」
牢前の壁等何も無いのかと思う位、壁の中から長々と聞いても無い事をペラペラ喋りならが一人の魔族が姿を現す。
耳は尖りがあり、髪は銀髪で短髪。
蟀谷辺りから暗黒色の角が天に向かい湾曲し左右生えている。
肌の色が青鈍色。
瞳の色は淡い紫紺色で、白目が黒色だ。
胸は鍛え上げられた筋肉の胸板があるので盛り上がっている。
身長が百八十センチ前後でまさに細マッチョと言う感じだ。
服はタキシード風のモノを着こなしている。
「うわ!キモ!壁から出てきたよ。アイ、アイツ誰だ?」
壁から出てきた人物を目の当たりにアイは恐怖する。
「あ、あの方は現女王「レフェア・ラミューラ・ジルベル」様の側近。
この国の序列二位の貴族で「ベリエ・ルンデア」様です。
すみません私の不手際でシアキ様のお命がここで尽きてしまう事になり皆さんに何といえばよいか」
女王の側近でしかも国内序列二位と聞き、結構大物が姿を現したと知り、少し自身の命の危機であると感じる。
慌てて相手のステータスを確認するが、予想に反して、どの数値も自分の各種値より低く約半分程度だった。
確かに魔眼人のアイ、魔人のラフェル、竜人のフェンラ、獣人のエラルなら攻撃を一撃でも受ければ即死させられるだろう。
だが、ルルより防護の加護を受けている、奴隷のリム、専属受付嬢兼冒険者のサジュラと、今の自分なら眼前の序列二位という強者が渾身の一撃を放ったとしても傷一つ負わないと確信が持てる。
今まで会った神族達、ダン、ルル達の数値を見てきているので、色々ここに来る前に考えていた強者戦を予想していたが、二位がこの程度なら、そんなに気合を入れる必要が無いのかもしれないと知り、ため息が出る。
「はぁ~この国の強者で序列二位って上から数えてだろ?。
女王の側近右腕か左腕が聞いて呆れるよ。 今まで会った神族達より弱いし。
ましてや、俺より断然弱いとか有り得ないぞ、しかも俺の奴隷に傷一つ付けれない程かよ・・はぁ~弱すぎだろ序列二位って嘘だろ~。
はぁ~何か予想してた強者戦とは全然違ったな~肩透かしを食らった感がするな~。
あのさ~側近がさ~自分達の敵になるかもしれない相手に、丁寧にも牢の説明とか忠告するとか、馬鹿なのか?。
まぁ~どうでもいいや、一つ聞きたいんだが、俺が透明化して入ってきていなくて、魔素ではなく聖素で動けるとか考えなかったのか?」
「流石劣等種の人族、冗談も挑発行為も馬鹿ですね。
私が人族如きに劣ると言って挑発し、私が逆上して牢の結界を解除させるつもりですね。
そして襲い掛かって来るのを今か今かとあなたは狙っているのでしょうが、残念私はそのような挑発行為には乗りませんよ。
もっとましな挑発をする事をお勧めしますよ。ははは。
あなた相当な馬鹿でしょうから教えて差し上げましょう。
魔素結界に入る際、私達に気づかれず透明化して入って助けに来たのは明白。
その結界内に一瞬でも聖素を使う神族が触れていれば、その中に入った時点で全身にダメージを受け今頃は血まみれですよ。
そしてその牢は自身の魔素量に比例反応し結界を構築する特殊な牢でして、その牢は入るの容易ですが、出る事は容易ではないですよ。
ましてや人族が結界を出ようと触れた時点で燃えてしまうでしょうね。
ふふふ、すみません思わず私とした事が笑ってしまいました。
これ位調べて来て下さい。本当に劣等種は何所まで馬鹿なのでしょう。底なしの馬鹿なのでしょうねきっと」
結界の特徴を聞き、自身の新たな職魔聖術士が使える魔聖素とは、魔素と聖素の混合であるのか、それともこの世界では未知のものなのか、そしてそれを纏ってこの結界に触れたらどうなるのか試したくなる。
「いや~お前、敵である俺の質問にサラッと重要な事をペラペラ喋ってくれるよな。
よっぽどのお人好しなんだな。
あのな、この牢に俺が透明化して入ったと思い込んでるみたいだが、そもそも透明化出来ないし、こっそりお前達の眼を盗んで入ってないしな。
まぁ~いいや、魔素結界か~魔素量とかに合わせ結界構築で聖素系が触れると拒絶反応が起きてダメージか~。
うんうん丁度いいぞ、この結界が、どう反応する試してみたくなったぞ」
「少しその態度にはイラッとしますね。
少しは慌てふためき悲鳴をあげるなりしたらどうです。
もうそこから出る事は出来ないと知って、尚、その態度、劣等種の分際で、その態度気に喰わないですね。
あなたは此処で死ぬまで過ごしますか?そうしてやりますよ」
「あ!ごちゃ、ごちゃ、うるさいな~少し黙っててくれないか。
結界に触れる検証の邪魔だろうが!黙って見てろよ。面白いもの見せてやれるかもしれないぞ」
結界が張られているか確認する為、手を翳しながら近づく。
丁度牢が終わる境界位置辺りに見えない壁があるような感覚を掌に感じる。
「ふ~ん、確かに牢が終わる境界位置辺りに見えないビリビリする壁があるみたいだな。
さ~て本当に出れないのかやってみるか~」
肩を回し、少し軽く飛びながら首を左右に振りコキコキ鳴らしながらステータスを開き自身の職を魔聖術士変更する。
自身の手に魔聖素と言うものが、纏わり付きコーティングするようなイメージをする。
何かしら手に纏わり付く感覚を覚え再度、先程見えない壁があった個所へ手を翳しながら近づく。
今度はすんなりと先程まで牢が終わる境界位置辺りに有ったであろう見えない壁みたいなものは無く何も無かったように手が突き抜けていく。
この事から魔聖素は、魔素でもなく、聖素でもない新たな物で、魔法構成自体を無効化し纏っていると、魔素系魔法によるダメージを遮断され身体に傷一つ負わす事が出来ないものだと分かった。
恐らくこの職は役に立つと確信する。
そして無効化出来ると仮定し、相手を挑発し相手に直接能力を使わせそれを無効化出来るか実験をしてみたくなる。
「ふん、何が出れないだ?、さっきの牢が終わる境界位置辺りにあった、見えない壁みたいなのは何も無いみたいだぞ。
ほら手がすんなり出るぞ、ほら、ほら、ベリエって言ったっけ、これはどう説明するんだ?」
その有り得ない光景を見て、無意識に出てきた壁際まで、後ずさりをする。
先程ベリエのステータスを確認した際、「無機物同化移動」「魅了の視線」「石化視線」を併用し戦うと備考欄に記載されていたのを、事前に確認済みである。
このままでは、実験する前に獲物が壁と同化し、逃げてしまうと考え、先手を取られる前に行動する。
魔聖素をベリエの全身身動き出来ないような程、魔聖素を凝縮し固めるイメージをする。
それに縄状の物が伸び、自身の掌に収まっているイメージをする。
それを一気に牢の中に引き寄せるイメージをしながら強く引っ張る動作をする。
するとベリエは縄で縛られた者が引き寄せられるように、牢の中に飛び込んで入って来た。
そしてこれでもかと馬鹿にした態度で挑発をする。
「ははは、出来た、出来た。
な~お前側近なんだろ、何劣等種って言ってた俺に簡単に捕縛されてんだよ~情けないし呆れるぜ。
ほら、ほら、今何されたかすら、分かってないだろお前?。
あらあら、側近が聞いて呆れまちゅね~、ベリエちゃんはお馬鹿ちゃんでちゅね~分かりまちゅか~。
って冗談はこれ位にして、どうだ、糞尿があるこの床に寝転がっている気分は?。
よくも俺の大切な仲間のアイをこんな劣悪な環境に入れやがって、しかも外に居る牛の頭した二名合せてお前も侮辱発言とかしてくれちゃたよな。
何だ?そんなに俺の目を穴が空くほど見つめても何も起きないぞ。
今お前の考えている事は分かるぞ。
こんなにハッキリ俺と視線を合せてるのに、魅了も出来ないし、石化させる事も出来ないって不思議に思ってるんだろ?。
残念、ご自慢の魅了と石化の視線は、俺が使えなくしたんだよ。
ははは、本当に残念でちゅね~側近でお馬鹿な魔族だから、今置かれている事が全然理解出来ないでちゅね~。
ほらほら、本気で俺を石化か魅了しないと、このままお前の大好きな皮剥きをお前自身が体験する事になるぞ~」
牢の中に何故か飛び込んできた、序列二位の貴族のベリエ・ルンデアにも驚くが、その顔前に屈み込み、覗き込み目線を合わせながら、赤ちゃん言葉でおちょくっているシアキの姿を見て、本当に敵にするのではなく、仲間になって良かったと感じならがら、声を掛ける。
「シアキ様、何をなさったんですか?」
「ん?そだな~ここで詳しく説明すると、この馬鹿にも聞かせる事になるのは嫌だから。
そうだな~簡単に言うと、新たな魔法の実験ってとこだな。
そしてその魔法の実験が見事成功ってところだ、気にするな」
「シアキ様、その・・ベリエ・ルンデア様をどうされるんですか?」
「う~んどうしよっか?。
アイが決めていいぞ、お前が被害者なんだから、酷い目に合わせられたんだし、コイツの処分権利はお前に譲るぞ。
コイツ他人の皮を剥ぐのが趣味らしぞ。
もし屠るんなら、自分の皮を剥がされながら屠られたいんじゃないか?はははは」
いくら自分に対し拷問をするように指示を出した相手であろうと、国内序列二位の強者である者を手に掛けるなど出来ない。
放棄する為、何か言い訳を考えるが思いつかないので率直に話す事にする。
「シアキ様、私には出来ません。 その方は私達の敵なのでしょうが、我国内序列二位の強者を私が殺した事が広まると、同胞達の命に危険が及びます。
ですので、いくらシアキ様のご命令でも同胞の命の危機に繋がる事は私には出来ません」
「うん分かった。 ってそう言うと思ってたしな。
アイなら同胞を守るって言うと思ってたしな。お前立派な仲間思いの領主だな。
じゃ~俺がやっちゃうな。
皮剥いじゃおっかな~、それともこのまま酸素供給止めちゃおっか~。
さぁ~ってどうしよっかな~。
・・・ふん、何だよさっきまで俺の事、劣等種、劣等種とか言いながら、人族如きにとか言ってたじゃん。
そんなに涙目になるなよ、何か俺が虐めてるみたいじゃん。
お前俺の仲間に酷い事した敵なんだぞ。 敵なら敵らしく最後まで足掻けよ。
ははは、もういいや冗談は、これ位にしといてやるよ。
どうせこのまま、お前達三名を絶命させたって、ただ「レフェア・ラミューラ・ジルベル」って奴に喧嘩売っただけで、そいつには痛くも痒くも恐怖すらも味合わせられないからな。
そこでだ、お前達に俺から生きる為に一つ仕事をやるよ。
実に簡単なお仕事だ、俺が言った内容を伝書鳩のように、レフェア・ラミューラ・ジルベルって奴に伝えるだけだ。
確実に、これは実行した方がいいぞ。
拒めば、お前達は俺に殺されなくても、明日朝には、この国の命運が分かるかもしれない重要な人物と、その仲間である折角捉え囚人に仕立てたアイの脱走を手伝ったとみなされ、弁解の余地なく処刑されるだろうからな。
さぁ~、一度しか言わないからなよ~く聞いて覚えろよ。
お前達の飼主のレフェア・ラミューラ・ジルベルって奴に、「マムラ王国の国王である俺マムラが仲間達を引き連れて、今日含め二日後に、この国の正位王位継承者である、第一王女である「ラフェル・ラミューラ・ジルベル」を連れて訪問するから、それまで、たっぷり日数重ねて自分がしてきた事への後悔をじっくり味わってろ」って伝えてこい。
あと俺の人相書きの手配書が関所に今出回ってるだろうから、手配書も付けて渡しておけよ信用してくれるだろうしな。
別に俺の国に攻め込みに来てもいいけど、調べてそんな勇気があるならどうぞって言っておけ。
それと逃げたら真っ先に逃げた奴を俺の特殊魔法で、何処に居ようと一瞬で見つけて命を刈り取るから、そのつもりで逃走旅を楽しめよって合わせて伝えとけ。
じゃ~俺達は、これで失礼するな。
どんな結界があっても、俺達なら入れるし抜け出せるって所を今から見せてやる。
それをお前達が見ても俺の言葉が信じられないなら、そのまま何もせず明日の朝を迎えて、処刑されたらいい。そこは好きにしろ。
ただ伝えて、お前達が戦力を整えて迎え撃ってくれると、俺達も攻めがいがあって嬉しいんだがな、ははは。
あと俺達が居なくなってから数秒後に動けるようにしてやるからな、それまで糞を顔に付けてろ、はははは。
よしアイ、俺達の拠点に行くぞ。 ・・・って、ちょっと俺達あれだな~臭うな~。
よし先に近くの河原で体洗ってから戻るか」
宣言通り、牢から、囚人である魔眼族と、いきなり現れた人族と思われる者の姿が忽然と掻き消えた。
その光景を数秒何が起こったのか理解出来ず立ち尽くし見入っていた牛頭のゴアラとメアラは慌てて、牢脇に設置されている結界を解除制御板に近づき牢を解除する。
牢の中で女王の側近であるベリエ・ルンデアが、糞尿が散乱する床に顔面を付けた状態で微動だにしていない。
女王の側近に、身分の低い自分達が触れて助け起こして良いものかと悩む。
もし身体に触れた事に腹を立て罰せられるのではないかと二名はお互いの顔を見合わせ合う。
宣言通り数秒後、体の自由がきくようになり、慌てて身を起こし、顔に付いた汚物を払い落す。
「クソが~舐めやがって~あの人族のマムラって言ったか、絶対絶対この屈辱忘れないぞ。
レフェア様が重要だと仰ってた囚人を脱走させてしまい、食付いて来た獲物まで取り逃がしてしまった~クソ~許さないぞ~。 はぁ~はぁ~はぁ~。
・・国名や国王である事も自ら語りおって、あんなのは嘘に決まっているが、手配書が出回っていると言っていたな。
あ~も~それより早く脱走の件を、レフェア様にご報告せねばならない。
お前達は、急ぎ各関所に行き、手配書を全て掻き集め、あのさっきの男と人相図が類似する手配書が無いか調べて存在していれば全て回収し、それを持ちレフェア様に、この事をご報告しに迎え。
私はこの屈辱的に汚された体を洗い清め、着替えを済ませた後に向かうとだけ伝えよ。
この失態の報い、あの男を捕まえ全身の皮を剥ぎ、徐々に石化させ一気に粉砕してくれる。
もう、ありとあらゆる苦痛を味合わせてやるぞ~」
二名は指示を受け地上へ続く螺旋階段を慌てふためきながら駆け上がっていくのであった。
--- 41話目のみの後書き----------------------------------------
41話目最後まで読んでくださりありがとうございます。
どうでしたか?楽しんで頂けたならうれしいですが。
では、次42話目で、お会いしましょう。




