8.勇者の力
遅くなり申し訳ありません。
力をもらうとき、サクヤはまだ王城内にいた。
珍しながら王城へと王が1柱の神を呼んだのだ。
わざわざ不触世界へとサクヤを行かせ、神様たちに囲まれて今の段階で騒ぎを起こすことは愚の骨頂であると王は考えたのだ。
謁見の間を出たあと、サクヤは左右で無数の扉が後方へとすぎゆく中1番奥で突き当たりの手前にある部屋へと案内された。
その部屋はほかの扉と違い年季を感じさせるものだった。赤茶色のサビがところどころ金属部分に張り付いていて、押して開けたてみればギィーーと音がするのは避けられないであろうものだ。
それに加えて角部屋であるため光が当たりにくくそして少し薄暗く、だが不気味な雰囲気とは言えないようなそんな部屋であった。
入るためにサクヤはドアを開け、案の定するギィーーという音とともにサクヤは部屋へと入った。
すると……
周りから人の気配が消えた
ただどこまでも続く荒野のみが広がっている。
驚いて後ろを振り返るとそこには先程まであった扉が消失しており、変わりに柔らかく可変式のぷよぷよした感じの結界がはられている。
一見弱そうなものだと勘違いしてしまいそうだが、それはどこまででも変化していき絶対に結界から外へは出られなくするような人間では
真似することの出来ないであろう、シロモノであった。
サクヤは一度それを触ってみるがしばらくしてそれはどうしようもないことを悟る。
そしてもう一度振り返ると
オンボロな一つの部屋が存在していた。
机がひとつにクッションの乗ったソファーが二つ、壁際には本を沢山蓄えた本棚がずらっと並んでいる。床には本の山が積み立てられたり、何かを記したような紙が散らばって落ちている。
そしてホコリをかぶっていて長い間使われていなかったことがうかがい知れる。
「やあ少年、よく来たねー」
突如背後から影が差し突如としてあの気まぐれな女神が現れた。
サクヤの心臓の音はかなり乱れているようではあるがそれを悟らせまいと平静を装う。
だが、口から出てしまったことまでは取り繕えない。
「ウワァ」
まあそれ以前に飛び退いてしまったわけではあるが。
「そんなに驚かなくてもいいじゃないか。しょうがないから僕自らが力をさずけてあげようというのに。あー心配しなくていい。元々ここにいるはずだった神にはもう話はつけてある。」
混乱するサクヤに相変わらずの答える余地のないマシンガントークで言いたいことだけを言っていく異世界神。
「で、力は欲しいかい?君の僕のいた世界での出来事なんて忘れてしまうくらいすごい力が。」
「欲しい。もう自分が劣等感にまみれたまま生きていくのは耐えられない。」
「しかし、その力があってもその壁は君だけのものだ。私がどうしようと君が変わらなくてはならない。それでもいいかい?」
「この希望に溢れた未来への切符は至れり尽くせりなんだね」
その瞬間神様とサクヤの瞳が交錯する。
お互いにくもりのない瞳でうっすらと口に笑を浮かばせながら両者が手を取りあう。
勇なる者は意志を投げかける
神は己の詩にそれを詠む
勇なる者の意志を詩として投げ返す
詩は彼の中で根を張る
水をやり肥料を与える
そして色をつける
形や個性を生み出す
花が咲く
実がなる
そして力尽きる
意志や詩をまた新たに紡ぎ
次世代へと先代の意志はつながる。
力――すなわち魔法やスキル――は神と力を授かるものの意志と詩の織りなすコントラストだ。
織り成す布の中に出来る模様がスキルとなり魔法となり神を楽しませる。
そして神様に力をもらうということは加護対象となる。まあ神様目線でいえば加護はいくらでもあるのでそれほどでも大事ではない。
ただ、至高のひとりを探すための手段に過ぎない。
そしてここでまた新たな力がさずけられる。
いつもは気まぐれな神も真面目な顔をしてサクヤと向かい合う。
サクヤは自然と膝をつき手を彼女に差し出す。
彼女は柔らかくその手の甲に口をつける。
「これで君の力は解放された。あとは頑張って君自身でその力を使いこなし、新たな実を実らせてくれ。」
神からの手の甲へのくちづけに戸惑うサクヤであったが、力という言葉を聞いて全てはそちらに興味は傾いた。
「ステータスはまず心の中で念じることでいつでも見ることができるようになっているんだ。」
サクヤは即座に実行する。
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名前 サクヤ·アカツキ
年齢 17才
職業 異世界より来し勇者
加護 異世界神(●●神)の加護
Lv.1
HP 100/100
MP 50/50
力 124
防御 86
会心 107
俊敏 98
スキル・魔法スロット
▪聖なる雨
・詠唱不要
・想像力により効果範囲変化
▪敗者復活
・魔法を二つストック
・見たことあるもののみ適用可
・入れ替え可能。ただし一度ストックした魔
法は入れ替え後二度と使用不可
▪女神の福音
・己のHPが80%以上の時、能力値絶大補正
・己のHPが80%未満の時、HP自動回復
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なんかすごい。
小学生レベルの感想しか出てこないけどなんかすげぇ気がする。
でもステータスの平均がどれ位か分からないんだよね。
なんか魔法とスキルはキチってるしなんかゲームの強キャラみたいなスキルだな最後のやつ。
「一応説明しておくけどいいかい?」
「お願いします」
「まずステータスには基本情報が最初に刻まれている。そこにはあまり興味無いだろうから次に行くよ。次の所はアビリティーの欄だ。」
「一般的な数値ってどれ位なんですか?」
神様がいうには初期値としてはこれくらいが普通らしい。
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Lv1
HP 30/30
MP 15/15
力 35
防御 20
会心 30
俊敏 25
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サクヤは通常の4倍くらいに強いらしい。
なかなかぶっ飛んでいる。
「なんかある程度理解しているみたいだからアビリティーについての説明は必要ないかな?会心について一応言っておくと、これが高いほど相手の急所や弱点に攻撃が当たりやすくなるからね」
サクヤは初期値が高い。
だが、ゲームなどでは初期値だけでは強さは決まらない。その後のレベルアップ時の伸び代が物を言う世界だ。つまり初期値が高いだけだった場合サクヤは一般人と最終的に変わらなくなるかもしれない。
「次にレベルアップとレベルアップ時点でのアビリティー強化について話すよ。レベルアップについては一定の経験値がたまる事に起こる自己強化だ。まあそこまではいいとして伸び代についてだが、1レベル上がる事に各アビリティーが最大20上がる。いくつ上がるのかについてはその人の素質としか言いようがない。」
「それをスキルで上限解放とかってあるんですか?」
ゲームの中の無い知識から何とか引っぱり出しながらサクヤは聞く。
「今のところは見つかっていない。それに最高レベルは100だ。単純に100×20をすると2000程になるため人類最強はそれ位と考えられている。だが次に説明するスキルが影響を与えることがあるのは確かだ。」
もう一度サクヤはは自分のスキル・魔法スロットをじっくりと見直す。
ちなみに力を与えた神は与えられたものの力を見ることが可能となる。
「スキル・魔法スロット欄には自分のスキルと魔法が発言するんだ。これらの魔法とスキルははその人固有のもので誰しも最低一つは持っているがかぶることは滅多にないと言われているよ。最高は五つまで出現するらしい。じゃあ一つ目から見ていくとしようか!」
まず聖なる雨について。
「この世界の魔法は詠唱が必要となるんですか?」
「最初は唱えるが、だんだん慣れてくると詠唱が不要になるものがほとんどなんだなー。理由としてはこれにはチョーっとだけ深い理由が……」
その後神様に話してもらったことによると、この世界は元々詠唱ありの魔法が主流だったそうだ。だが、ここにいるような異世界神のような神たちおかげで無詠唱の発現が流行ったらしい。すると無詠唱の魔法の方が強くて使い勝手がよく、力を与えられた自分の子どもを楽しく観察する者達にとっては無詠唱の方が白熱した戦いを見ることができ楽しかったらしい。
ちなみに神様は自分の力を与えたものを見るのが趣味みたいなものだ。
なんか今日のこの神は真面目だな……
「2文目の’’想像力により効果範囲変化’’って言うのはどういう事ですかね?」
「これは多分君がこの魔法をカスタマイズ出来るってことだね。無詠唱と言ってもやっぱりメリットだけでなくデメリットがあるんだ。ズバリそれは魔法の威力についてだ。無詠唱だといつも決められた威力の魔法しか撃てないんだよね。時には余剰火力となったり威力が足りなかったりと融通が聞かないこともあるんだ。」
「詠唱すればそこは魔力の込め方とかで威力を変えれるみたいなことがあったりしますか?」
「その通りだね。火力調整がしたい時は結局詠唱するしかなかったんだ。しかし君はその2文目の1行により撃つ瞬間のイメージで火力調整ができるようになったんだ。まあ簡単に言えば両者のいいとこ取りだね。」
「なんか既にチートの香りしかしない……!」
サクヤは一つ目の魔法からテンションは上がりまくりだ。さっきまでは半信半疑で効果を見ていたが今となっては確信を持って次の力もやばそうだと期待できる。
次は敗者復活について。
「この力は説明文を読む限りほかの人が使ってる魔法を自分のものとして使えるといったものっぽいね。スキルと魔法の間を行くようなものですごく珍しいな。そう言えば適性のある属性を測るのを忘れていたね」
そう言って神様が一瞬でどっかに行きまた一瞬で戻ってくる。
その手には胡散臭い占いで使いそうな水晶があった。
「これに手をかざせばわかるみたいな?」
「よく分かってるねー、僕の世界からくる子は飲み込みが早くて助かるよ。じゃあどうぞ!」
手をかざすと……
パァーーーーーーーーーー
虹色に光った。
どうやらほぼ全種族使えるようである。
ただほぼと言ったのはやっぱりというか勇者とだけあって闇属性は使えないらしい。
「これで君は闇属性以外の魔法を二つまで覚えることが出来るらしいよ。このスキル?も一つの枠で二つの魔法、しかも任意で選べるなんて破格の性能だ。」
「でもこれはカスタマイズはできないんですね。自前の魔法のあとだと少し使いずらそうだな。」
「まあここまでのものがある時点でこの世界のルールーブレイカーに十分なり得るからね」
そして最後のなんか一番やばそうなやつ。
女神の福音とかいうやつだ。
「これに関しては僕からの贈り物だね。でもここまで強いスキルと魔法を君自身が引けたのならこんなに強くする必要なかったなー」
「ありがとうございます。ちょっと転移してから使えない神だったとか思ってごめんなさい。」
「えっ君そんなこと思ってたの。まじかー。ちょっとショックだよ。」
サクヤは異世界神の手を取って言う。
「どうぞこれからもご贔屓に笑」
「ちょっと考えどころだよねこれ」
まあそんなこんな言いながらサクヤはとんでもないスキルを手に入れた。
とにかくHP自動回復は反則級だと思う。
そう心の中で思いながらほくほくしているサクヤに対し、異世界神は少しだけ悪戯心を煽られてこんなことを言った、
「そんなに凄い性能なら検証してみようか。特にHP自動回復とかねニヤリ」