金欠になりました! 第五話 念願の給料日
朝、俺は教室の入口で叫んだ。
「ついに、ついにこの日がぁ、来たぞぉ!」
俺の声は教室中に響き渡った。教室内には生徒がちらほらいた。しかし、みんなはいつものこんな感じだと認識されているから特にこれといった反応はなかった。その中でも、自分の声を聞きつけたのか教室の奥から一人の男子生徒が俺の机までやってきた。そいつの名は橘優太だ。優太は俺の心の友である。
「どうした和弥、そんな大声だして。」
と優太は心配顔をしながら俺に聞いてきた。
「どうした、こうしたも、ないよ!今日は念願の、給料日!」
「あぁそうだったな、いくら入ったんだ ?」
俺は、堂々と答えた。
「わかんない!」
優太は「はぁ……。」とため息を付いた。
「おいおい、普通そこは金額を確認して喜ぶところじゃろ。」
「いやぁ、でもさ金欠生活を続けた側からしたら結構大きいことよ?」
「そうだったな、結構俺に奢ってってせがんできたもんな。」
その頃のエピソードが俺の頭の中を駆け巡る。
「そうだったな、まぁでもこれで母に借金返済ができるから助かったわ。」
「金額が分かったら、小生の耳にも入れさせてくださいよ?」
「了解!」
放課後、日が傾き続ける中、俺は学校から銀行まで駆けだした。走っている間の俺の心は〝金〟それしか無かった。それはまるで、食べ物に飢えている獣のようだった。
銀行に到着すると、そこに広がっていたのは人がごった返しになっていた光景だった。それは、銀行が狭いのか、単に人が多いのかわからないほどだった。やっぱりこの時間帯って一番混むんだな。と俺は、そう思いながら列の最後尾に並んだ。
ようやく、自分の番が回ってきた。俺は財布の中からキャッシュカードを取り出し、ATMに差し込み残高を確認した。
――――11万!?。その数字を見た瞬間俺は飛び上がるほど驚いた。額の大きさに俺は喜びよりも心配と恐怖が勝った。労働基準法上大丈夫なのか、所得税取られるのかな。考えると色々な心配が頭をよぎる。しかし、稼いでしまったものは仕方がない。有意義に使っていこうではないか。
早速、俺は母から借りたお金の返済のために講座の中から13000円を引き出し、帰宅し母にそれを渡すと、「しかと受け取った」といった。俺は安堵の息をついた。
その翌日、俺は優太に報告した。
「優太!給料ね11万だったの!」
「本当か!随分稼いだな。も、もしかしてその11万の半額を小生に献上してくれるのか?」
「なわけないだろ!冗談でも殴るよ?」
俺は、怒っているような笑顔を優太に向けた。
「ごめんて、そんな顔をするなよ和弥。」
俺の金欠生活も一区切り。しばらくは、お金に余裕ができた。うん、しばらくは……。俺はそう思っていたのに……。
――つづく……。
次回:第六話 夢と希望と絶望のオンパレード お楽しみに。