金欠になりました! 第四話 賄いのありがたさ
俺は今居酒屋のバイトをしている。すると、キッチンの奥から女性の声が聞こえた。
「楠君休憩入っていいよ。」
俺はすぐに、その声がバイトリーダーの鳳美琴ということに気がついた。俺は了解しました。と言って、更衣室に向かった。
俺は私服に着替えて、賄い料理を頂いた。
今日の賄いは、チキン南蛮定食だ。サクサクの揚げ鶏にこの店自慢のタルタルソースがかかった看板メニューである。俺は両手を合わせ、大きな声で「いただきます」といった。箸を手に取り、チキン南蛮を思いっきり頬張った。この時間は金欠の俺にとっては至福の時間である。
「んぅ〜。おいひぃ〜。」
あまりの美味しさに心の声が漏れてしまった。揚げたてほやほやの揚げ鶏と酸味と甘味のタルタルソースが相まって、口の中がとろけてしまいそうな感覚だった。ほんとうにこの店の賄いは最高にうまいんだよな。ここで働いて本当に良かったと思った。俺は箸を止める隙もなく、チキン南蛮定食を完食させた。俺は、ふぅと深呼吸をした。そして、厨房に戻って食べ終わった皿を洗い仕事に戻った。
仕事が終わり、俺はタイムカードを切ってバイト先を出た。帰り道を歩いていると、コンビニにたっている旗に目を向けた。
「期間限定スイーツの抹茶エクレア?なにそれ美味しそう……。」
給料日前だし、大丈夫だよな。と自分に言い聞かせながら、コンビニの中へ入り、スイーツコーナーへと向かった。
「抹茶エクレア、抹茶エクレア……どこかな。」
俺は、ケースの端から端までくまなく探した。しかし見当たらない。俺は「もうないんだな」と諦めかけたその時、ケースの一番下の奥に抹茶エクレアと書かれたパッケージを見つけた。俺は、『よっしゃぁ!』と心のなかで叫んだ。そして、それを手に取りレジへ向かった。
「お会計1点で320円になります……。」
バイトの子だろうか、声がやや震えていた。おそらく緊張しているのだろうと思った。俺は、鞄の中から財布を取り出そうとした。
「あれ?財布が見当たらない」
ふと、この光景に見覚えがある事に気づいた。鞄の中をひっくり返しても見当たらない。どこかに財布を忘れた。それらはまるで何処かで体験したことがある「デジャヴ」のようだった。
――バイト先のロッカーに忘れた。俺は店員に「返品て可能ですか」と聞くと嫌そうな顔をしながら、「返品ですね、かしこまりました。」といって商品を返品してくれた。
俺はコンビニを出てため息を付いた。「はぁ……。どうして財布忘れちゃうかな。そろそろボケてきたのかもしれない。まぁ、今日の賄いも美味しかったし、明日はついに給料日だから許せるね」俺はそう思ってバイト先に戻り、財布を取って家に帰った。
――――つづく……。




