第三話 土下座
「お願いします!お金を……貸してください!」
俺は今、静寂が響き渡るこの空間で仁王立ちして腕を組んでいる母に土下座をしていた。しばらく、母は口を開かなかった。『多分母は自分の中で葛藤しているのだろう。』俺はそう思った。急に母の口が開いた。
「何でお金を使うの?」
俺は その言葉に、圧力を感じた。それはまるで、地割れそうな圧力が俺の身体に響き渡った。俺は、恐る恐る答えた。
「生活費と、非常時のお金」
「それで?いくら欲しいの?」
そう言って、母は自分の部屋に戻りパソコンを取ってきた。パソコンの電源をつけ、再度俺に訪ねた。そして俺は答えた。
「13000円ほど……。」
母はため息をついた。もうどうしょうもない子だと思ってるだろう。母はしばらくの間パソコンの作業をし、何かを印刷したようだ。そして、その印刷したものを満面の笑みを浮かべながら、俺に突きつけてきた。
「はい!お約束の借用書。」
俺は『そうだった。楠家独自のルールで借金をするときは必ず借用書発行されるんだったわ。確か、あれ無視すると家追い出されるんだよな。』という記憶をふと思い出した。くそぉ……。俺に金さえあれば…………。俺は、葛藤しながらも母から借用書と現金13000円を受け取った。
翌日、俺は早速、同じクラスであり心の友の橘優太のところへ向かった。
「優太!」
「ど、どうした和弥、あんた世界一幸福を呼ぶ動物で有名なクオッカみたいな顔になってるぞ。なんかいいことでもあったのか」
俺は、そんなクオッカのようにニコニコしながら答えた。
「財布が温まりました!」
「おぉ、良かったではないか。小生は安心したぞ。てか、何だそのお風呂が湧きましたみたいな言い方。」
「言い方はいいんだよ!、まぁ、でもこれで給料日までは安泰。」
そして、俺は優太に制服のズボンのポケットから財布を取り出した。
「そういえば優太からいくら借りたっけ?」
「3000円だよ。」
それを聞いて、俺は財布の中から3000円を取り出し「ごちそうさまでした。」といいながら、それを優太に渡した。すると、優太は「今度はちゃんと節約とかしろよ?」といってお金を受け取った。
その日の放課後、俺は帰る支度をしていた。すると、優太は俺が座ってる机に来た。
「和弥、今日の放課後カラオケいかね?」
「いいよ!フリータイムでな」
「よかろう、小生の歌をおまえの耳までとどろかせてやろう!」
俺たちはカラオケに向かい、喉が潰れそうになるまで歌った。そしてお会計を済ませにレジに向かった。
「2名様、フリータイムでお会計が3,400円になります。」
と店員が言った。
「ということは一人1,700円か。」
俺はそう言って肩にかけていたカバンの中から財布を取り出そうとした。しかし、見当たらない。俺は、徐々に焦ってきた。カバンを床に下ろし、カバンの中をびっくり返した。入っていなかった。記憶の隅から隅までどこに置いたのか思い出そうと試みた。ふと、財布をロッカーに財布を忘れてしまったことを思い出した。
「あっ……学校のロッカーに忘れた。オワッタ……。」
俺は優太の顔色を伺った。すると、いつものようにあきれた顔をさせられてしまった。
「はぁ……。いつになったらちゃんと自分で払えるんかねぇ。明日学校で返済してよ?」
「はい……。すみません。」
俺は反省した。本当、お金のことになると不運だ。せっかくお金が入ったのに……。
そして翌日、俺は優太に1,700円きっちり返済した。その日の放課後俺が一人で帰っていると、気になるプラモデルを店で見つけた。多少迷ったが、全財産はたいて購入した。また、翌日から金欠生活が始まる。本当にどうしょうもないと俺は思った。
――――つづく。
次回 4話:賄いのありがたさ。




