表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

336/338

【第336話】趣味と嗜好

「えーっと、自分が楽しめる趣味を作ると良いと思うんです」


「趣味? 陽花に?」


 それって、悠二の2次元オタク的なやつとか、彩ちゃんのBLみたいなやつだよな……


 しまった、例えがこの二人だと、全然有意義に思えてこない……まあ、本人たちは楽しそうではあるが……


「はい。でも、それだけだと、どんな趣味を選ぶのか選択肢が広すぎると思うので、陽花さんがその趣味をすることによって先輩が喜ぶようなものが良いと思います」


 ん? 自分の世界に没頭するんじゃなくて人が喜ぶ趣味?


「例えば、おしゃれとかですね、陽花さんが可愛く着飾ったり、アクセサリーをつけたりすれば、先輩も見ていて嬉しいですよね」


 なるほど、その趣味自体が、人を喜ばせるようなものを選べば良いのか。


「それは確かにあると思います……メイド服を着たり、エルフの耳をつけたりすることで、涼也さんの琴線に触れることができます」


「え、えーっと、それって……」


 天音ちゃんが困ったような顔をする。


「コスプレ……ですよね?」


「はい。涼也さんには大変ご好評いただいております」


「せ、先輩……陽花さんにそんな格好をさせてるんですね……」


 天音ちゃんのジト目が痛い……でも、それって、どっちも俺が着せたわけじゃないんだけど。


「い、いや、俺がそんな格好させたわけじゃなくて……」


 とはいえ、そういう格好が嫌いなわけではないので、全否定できないところが悲しい……


「先輩がその……コスプレが好きなら……わ、私もそういう格好しても……」


 なにやら、天音ちゃんがボソボソ言っているが、ここはきちんと説明しなくては。


「メイド服は向田さんが持ってきたからだし、エルフの格好は麗香さんが仕事でフィギュア作るから、そのモデルとしてやってただけだから!」


 このままじゃ、陽花の趣味じゃなくて、俺の趣味の話になってしまう。


「そ、そうなんですね……良かったです、先輩がノーマルで……」


 危うく、天音ちゃんにアブノーマル認定されるところだった。


「そうそう、それに、天音ちゃんが言ってるおしゃれって、コスプレじゃないでしょ」


 陽花が変な方向に持って行くから、おかしなことになっちゃったんだよな。


「おしゃれとコスプレは違うのですか?」


「いや、そこから!?」


 うーん、陽花の知識的に区別はついていると思うんだけど、説明しないと駄目なのか?


「えーっと、おしゃれは、自分の好みの格好で、自分を飾る感じかな。普段からできるし、そのまま出かけたりもする」


 二人とも真剣に聞いてくれてるのだが……


「コスプレは、特定のキャラクターとか世界観になりきるためもので、非日常的というか、イベントとか撮影会とかのときにやるものかな」


 果たして、こんなに詳細に説明する必要あるんだろうか……


「く、詳しいですね、先輩……もしかして撮影会とかするんですか?」


「いやいや、しないから!」


 エルフの写真は撮ったけど……


「涼也さんが喜ぶんでしたら、その……コスプレが趣味でもいいのですが……」


「却下で!」


 わざわざ、陽花の趣味をコスプレにしなくても、どうせ麗香さんが着せるんだから、ここは却下だろ……いや、いつでも見られるからってわけじゃなくて……って、いったい誰に言いわけしてるんだ?


「そうですか、せっかく涼也さんの嗜好に合いそうだったのですが……」


(だから、俺の嗜好じゃないってば……)


「でしたら、他に涼也さんの好きそうなものを……あっ!」


「ん? どうしたの?」


 陽花が急に何か大切なことを思い出したような顔をした。


「涼也さんのPCのデータです! あれが思い出せません!」


 ……そうか、全てリカバリーしたと思っていたけど、確かに記憶を復元するとき、俺のPCのデータを持っていっていなかったな。


「でも、それは、もう消したから、残ってないけど……」


 人に見られるって分かってたら、検索履歴とかキャッシュとか消すでしょ普通……


 あの頃は、PCの中にいる陽花にどんな格好させたら似合うかなとか考えながら、色々検索してたりもしてたし……


「そんな!……もしかすると、感情が戻らないのは、あのデータが無いからではないでしょうか」


(いや、違うだろ、絶対……)


 単なる俺の趣味嗜好の情報であって、感情を司るものは一切ないはずだ。


「せ、先輩のPCの中身ですか……確かに興味あります……」


 いやいや、陽花ならともかく、天音ちゃんとかに見られたら、軽くトラウマになる自信あるけど。


「しかし、消してしまったのでは仕方ありませんね……何らかの代替措置を考えなければ……」


「えーっと、それって、そんなに重要?」


「そうです、重要です……涼也さんの好きなことが分かれば、それに沿った趣味を見つけやすくなりますし……」


「それなら、別にPCの中身じゃなくても、俺に直接聞けばいいんじゃないの?」


「そうなんですが、その場合、正直に話していただけるかで結果が変わってしまうかもしれません……」


 まあ、確かに「コスプレ好きですか?」とか聞かれて、正直に「大好きです」とか言うわけないな。


「それを防ぐには、例えば、色々な画像を見ていただいて、その中で涼也さんが無意識のうちに反応したものから嗜好を割り出すといった工夫が必要かもしれません」


 それって、新手の自白剤みたいなもんだよな……AIの解析技術を使って、微妙な反応を見分けるんだよね?


「もはや、プライバシーどころの話じゃないんだけど……」


「大丈夫ですよ、私の学習データの中に留めますので、決して他言はいたしません」


 いやいや、陽花に知られてる時点で、他言してるみたいなもんだろ……そのうち、AIの学習データから、特定の情報を取り出す技術とかが生まれるかもしれないし……


 うーん、天音ちゃんのアイデアは良いんだけど、その先が決まらないな。


 方向性が決まっても、具体的にどんな趣味にするかを決めるのが難しそうだ。


 このままだと、コスプレになっちゃいそうだけど、普段からできるものじゃないし……


 三人で頭を抱えながら、しばらく唸り続けるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ