【第300話】女子トーク
「えーっと、お風呂はどうする?」
早耶ちゃんが泊まっていくそうなので、お客さん優先かなと思って聞いてみたけど。
「先に入っちゃって、みんなは後で入るから」
と、三千花に冷たく言われた……
「そうですよ、普通は女性の後に入らないものです。私は一緒に入っても構いませんが……」
陽花の発言は塩対応なのか、アメなのか分からないけど、ツッコミどころが満載だ。
別に普段はバイトから帰ってきた後に入ってるから最後なんだけど、それは良いの?というツッコミと、後から入るのは駄目なのに一緒に入るのは良いの?というツッコミだ。
「私も涼くんとなら一緒に入ったことあるから大丈夫」
いや、駄目でしょ……例え、早耶ちゃんが大丈夫でも、俺が大丈夫じゃない。
「とにかくダメ! 早く入っちゃって!」
……俺、悪くないと思うんだけど……陽花をなんとかしないと、三千花に怒られてばっかりだな。
二日酔いも少し落ち着いてきたので、お風呂に入ることにした。
* * *
「この部屋で涼くんと一緒に寝てるの?」
「そ、そ、そうだけど、陽花ちゃんも一緒だから……」
「本当? じゃあ、みんなで一緒に?」
「な、な、何を一緒に?」
「一緒に寝てるんでしょ?」
「えっ、あっ、寝てるって言っても布団を並べて寝てるだけだから……」
「うん、そうだよね? 私も涼くんの家に泊まるとき、そうやって寝てたよ」
穂乃花と夕花ちゃんは自分の部屋に行ってしまったので、早耶ちゃんと陽花ちゃんと私の三人だけだ。
てっきり、女子トークが始まるのかと思ったけど……これって女子トークなの?
「あっ、もしかして、そういうこと?」
えっ、そういうことって、どういうこと?
「そ、それって……」
「一緒の布団に寝るってことだよね?」
「う、うん、そうだけど……」
「私も寝ぼけて一緒の布団で寝てたことあるよ」
えーっと、そういうことじゃなくて……
子供の頃の話は、けっこう何回も聞かされてるので知ってるんだけど。
「ほ、ほら、もう大学生だし……」
「えっ、それって……涼くんと?」
「そういうことも、必要なのかなって……」
「そういうことって……えーっ!?」
早耶ちゃんが顔を赤くする。
「ちょ、ちょっと、早耶ちゃん、声が大きいよ」
「ご、ごめん、さすがに私もそれは無かったから……」
早耶ちゃんが動揺するなんて思わなかったから、ちょっとビックリしちゃった。
「そういうことというのは、何のことですか?」
「陽花ちゃん、それは、男の人と女の人が結婚するとすることだよ」
……早耶ちゃんが、無難な説明をしてくれるけど。
「えーっと、もしかして、婚姻届の提出でしょうか?」
「おしい……それは、結婚するときにすること、正解は……ごにょごにょ……」
早耶ちゃんが陽花ちゃんに耳打ちして伝えてくれるけど、大丈夫かな?
「そうなんですね……それはさすがにしている気配はありませんね」
「そうなんだ……大学生なのに、三千花ちゃん奥手だね」
えーっ、ちょっと陽花ちゃん、もし、してたら早耶ちゃんに言ってたってこと?
「私が居るからいけないんでしょうか……寝る前に少し二人きりにしてみましょうか」
「うん、それが良いと思う」
「ちょ、ちょっと、二人とも、そんなこと急に言われても……」
そもそも、涼也が手を出してくれないと、そういうことにはならないんじゃないの?
「早速、明日から二人きりにしてみますね」
「そうだね、それならきっとすると思うよ……おやすみのキス」
えっ、おやすみのキス!?……もしかして、それだけ?
この二人に女子トークを期待したのが間違いだったのかも……
早耶ちゃんは告白とかはされてたけど、お付き合いはしてないみたいだし、陽花ちゃんは知識はあるものの、実体験がないので、方向性がズレてる。
――でも、お休みのキス、か。
それくらいなら、しても良いのかな。
そんなことを考えて、またもやもやしてしまうのだった。




