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【第276話】朝ごはんと陽花の欲しいもの

「おお、こんなに美味しい朝ごはんが食べられるとは」


「朝ごはんは一日の活力源ですから、しっかり食べてくださいね」


「久しぶりに、三花姉の朝ごはん食べたけど、やっぱり美味しいね」


 三千花が朝ごはんを用意して、麗香さんと穂乃花ちゃんが舌鼓を打っている。


 なぜ麗香さんがみんなと一緒に朝ごはんを食べているのかというと、そこには大人の事情があった……


 なんと、食事を作ってくれるなら、材料費は全て麗香さんが出してくれるというのだ。


 しかも、食事を作ってくれる三千花の分はもちろん、「分けるのが面倒だろ」という理由で、俺や穂乃花ちゃんの分まで全て出してくれることになっている。


 ……太っ腹すぎる。


「それにしても麗香さん、ちゃんと朝起きられるんですね」


 俺がそう言うと、麗香さんは味噌汁をすすりながら答えた。


「それが、3時に起きてしまったからな、めちゃくちゃお腹が空いていたんだ。こっちの部屋に来るだけで上げ膳据え膳とは、もう自宅には戻れないな」


「何やってるんですか、ちゃんと睡眠取ってくださいよ」


 なんて不規則な生活をしてるんだ……


 しかも、自宅はスカイツリーがバッチリ見える押上の高層マンションなのに、そっちに帰りたくないとか言い出してる。


 なんなんだ? 逆ニートか?


「気合が乗ったときに好きなだけ働いて、好きな時間に寝て、好きな時間に起きる。これがクリエイターの醍醐味なんだから、硬いこと言うな」


「でも、睡眠不足はお肌の敵なんですよね、大丈夫なんですか?」


「ほお、そんな心配をしてくれるとは嬉しいじゃないか、でも大丈夫だ、昨夜(ゆうべ)は8時に寝た」


 ……8時?

 

 ってことは……3時起きしても7時間は寝てるってことか、意外と寝てるな。


「夕飯は7時に用意しますから、あまり食べてすぐに寝ないほうが良いですよ」


 三千花が心配してくれる。


「大丈夫、分かってるぞ、食事した後3時間くらいは作業するから、寝るのはその後だな」


 言われてみれば、肌が荒れている訳でもないな……


 むしろ、子供みたいにツヤツヤしてる。


「意外と、美容にも気を使ってるっていうことですか?」


「そうだな、フィギュアのポージングは自分の体を参考にするからな、体が資本だ」


 鏡の前でポージングしている麗香さんを想像してしまった。


 ……うん、食事のときにする話題じゃないな。


「ちなみに、ポージングのときはコスプレしているぞ……助手をやっていれば見せてやったのに」


「えっ、それはちょっと……その……遠慮しておきます」


 あぶなっ、あのまま手伝ってたら、そんな場面に遭遇してたのか……


 密室でコスプレしてる麗香さんと二人っきりとか、危険過ぎる。


 それに、コスプレしたとしても、ぐるぐるメガネはつけたまま……ギャップ萌えには良いのかもしれないけど、俺にはちょっとレベルが高すぎる……スタイルがいいだけに尚更だ。


「なんだ、つれないな……カメラマンを頼もうと思ったのに……」


「私がお手伝いしますので大丈夫ですよ」


 陽花が代わりに助手をやってくれる――


 本当に良かった……命の恩人かもしれない。


「そうか……じゃあ、むしろ陽花にポーズをとってもらおうか……衣装も用意しないとな」


 えっ、陽花がコスプレするの?


 ……それはちょっと見たいな。


 なにしろ、陽花の見た目は俺の理想を再現しているので、ビジュアルはどストライクなのだ。


 しかも、ポージングも思いのままだろうし。


「衣装はイメージを言っていただければ、お作りしますよ」


「本当か! そこまでしてもらったら食材費だけでは割に合わんだろ、何でも好きなもの買ってやるぞ」


 パトロンかな?


 陽花の……


 でも、陽花に欲しいものってあるのか?


「でしたら、オーブンレンジが欲しいです」


 調理家電か……意外と、実用的なものが出てきたな。


「そんなもんでいいのか、さすがに欲が無いな」


 えっ、俺からしたら、けっこうな値段するものを頼むんだなって思ったけど、安い方なのか?


 俺の金銭感覚が間違ってるのかと思って、三千花と陽花ちゃんを見たら、神妙な面持ちをしている。


 ……どうやら、麗香さんと陽花の金銭感覚がおかしいらしい。


「やりましたよ涼也さん、これで色んなお菓子やお料理が作れますよ」


 陽花が目をキラキラさせながらそんなことを言う。


 そんな嬉しそうな顔できるんだな。


 ――陽花の願い。

 

 ……それは、みんなに美味しいものを食べてもらいたいという尊いものだった。


 麗香さんは「おお、良い表情だ! これは是非再現しなくては」とか言ってはしゃいでる。


 まあ、そのオーブンレンジで作った料理を麗香さんも食べるんだから有意義な買い物だな。


 ここは、遠慮しないで買ってもらう。


「凄いよ、三花姉、オーブンレンジだって!」


「本当ね、グラタンも作れるし、ちゃんとしたケーキも焼けるわね」


 なんたって、三千花と陽花がいるんだから、これで相当レパートリーが増えるはずだ。


「夕花もなんか作るね……これで、オーブントースターで作る”なんちゃって”お菓子じゃなくて、本物のお菓子が作れるんだよ」


 プチ充電が終わって、学校に行く支度をしてる夕花も嬉しそうだ。


 まあ、麗香さんの株も上昇したみたいだし、食生活も豊かになるから、良かったんじゃないかな……


 こうして、陽花の働きのおかげで――


 朝から、オーブンレンジをゲットしたのだった。

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