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【完結】眼鏡ギャルの近間さん 〜陰キャの俺がギャルと友達になれたのは、眼鏡女子が好きだったお陰です〜  作者: しょぼん(´・ω・`)
第四章:波乱の夜

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第四話:近すぎる距離

 近間さんが慌てて駆け寄った先はコンロ。

 急いで火を止め魚焼きグリルを開けると、まるで何かを鑑定するかのように、色々な角度から見始めた。

 そして。 


「セーッフ! あっぶなかったー」


 ほっとした彼女の横から覗き見ると、そこで焼かれていたほっけは、端や皮は火が通り過ぎた感じこそあるけど、身ががっつり焦げた感じはないように見える。


 同時に、焦げた臭いと合わせてより強く香る魚独特の良い香り。

 美味しそう……そう感じた瞬間。


  ぐーっ


 俺のお腹が欲望通りに鳴った。

 直後、顔を上げこっちを見る近間さん。


 ……聞こえたって事だよな。

 なんとも言えない顔で、目を泳がせ頬を掻くと、彼女がくすくすっと笑う。


「もしかしてー。遠見君ってお昼の後、何も食べてない?」

「あ、うん。ずっと寝てたし……」

「じゃあ話は後にして、まずはちゃちゃっとご飯食べよ? ささーっと着替えて来ちゃって」

「う、うん。わかった」


 まあ、腹が減っては何とやらって話もあるし、まずはこっちも心配かけないようにしないとな。


 俺は近間さんの言われるがままに、一度キッチンを離れると、新しい下着とパジャマに着替える事にした。


      ◆   ◇   ◆


 近間さんが用意してくれた晩御飯は、白米と大根の味噌汁。そして、大根おろしの添えられたほっけの塩焼きっだった。

 焼き魚をこうやって食べるのって、コンビニ弁当を除くとまだ家族と住んでいた頃だったし、久々の味に何となく懐かしい気持ちになる。


 焼くだけ、というと楽に聞こえるかもだけど、結構グリル周りの後片付けも大変だし火加減も地味に難しいから、何気に手を出しにくくって。

 だから、こうやって美味しく焼き魚を味わえたのは嬉しかったな。


「ね? ね? どう? どう?」


 なんて、とにかく感想を気にする近間さんのプレッシャーもあって、落ち着いて食べられたって感じはしなかったけど。


 とはいえ、美味しいって伝えてあげた後のにっこにこになった彼女は、体調が悪いって事も忘れられるくらいの破壊力があったのは確かだ。


      ◆   ◇   ◆


 ご飯を食べ終えてすぐ薬を飲んだ俺は、そのまま風呂のお湯溜めだけセットした後、近間さんを心配させないよう、大人しくベッドに戻り、スマホを眺めていた。

 シーツなんかは事前に近間さんが変えてくれて、さっきまでより寝心地はいい。


 スマホで開いたMINEのタイムライン。

 夕方に俺が送ったメッセージは既読になっていたけど、やっぱり彼女からの返信は一切なかった。


 やっぱり、俺を起こさないよう気を遣ったんだろうな。

 まあ、さっきのほっけは食材として買い込んでなかったし、買い出しとかに一生懸命で返事もできなかった可能性も否定できないけど。

 後でちゃんと、お金を返しておかないとな。


 でも、ほんと近間さんってお節介っていうか……いや。その言い方は駄目だな。

 彼女も言ってたじゃないか。俺のことを心配したって。

 確かに色々と迷惑をかけたのはこっちだし、そこまで心配してくれる人なんて、家族以外でいなかった。それに俺だって、その厚意には感謝してるし。


 ただなぁ……。

 ギャル故なのか。そもそもそういう性格なのか。とにかく積極性の塊である彼女だからこそ、個人的にちょっと考えなしなのかな、という事もあって。

 それが俺を困惑させてるのも確か。


 何となくため息を漏らしたのとほぼ同時に、カチャッと部屋のドアが開き、ひょこっと近間さんが顔を出した。


「あ、片付けは終わった?」

「うん。終わったよー。遠見君は寝てなかったの?」

「うん。昼間ずっと寝てたし、あんまり眠くなくって」

「そっかそっか。あ、そのままでいいから」


 上半身を起こそうとした俺を、彼女はさらっと制する。

 ま、近間さんがいいならいっかな。彼女の言葉に甘えて、俺は横になったままでいることにした。


「そっち行っていい?」

「うん。でも、椅子とかないけど……」

「いいっていいてー。悪いけど、ベッドの端を少し開けてもらってもいい?」

「うん」


 俺がベッドの奥に行くと、彼女はドアを閉め部屋に入り、そのまま空いたベッドのスペースに乗って、足を崩した姿勢で腰を下ろす。

 少しの間、じーっと俺の顔を見る近間さん。


「……うん。お昼頃よりは顔色いいかも」


 といって、少し安心した顔になる。


「何かごめん。色々と迷惑かけて」

「そんなの気にしなくっていいよー。あたし、弟の看病をしたりもするし、結構慣れてるから」

「だけど、友だちと遊ぶ約束までキャンセルしちゃったんでしょ?」

「うん。でも、このまま明日遊びに行っても、結局遠見君の事が気になっちゃって、楽しめなかったと思うし。だったらこうする方が絶対いいっしょ」


 俺の言葉に笑顔でそう話してくれた近間さんは、そこで少し表情を引き締めた。


「あのさ。それで、さっきの話の続き、聞いてもいーい?」

「あ、えっと。距離感って話?」

「そうそう。あのさ。さっき困ってるって言ってたけど……その……やっぱ、あたしのこういう行動、ちょっと重かったりする?」


 おずおずと尋ねてくる彼女に、俺は少しだけ考えた後、言葉を選び話し始めた。


「えっと、重いっていうか。さっきの言葉通り、かな」

「つまり、困ってるって事だよね?」

「うん。勿論看病してあげたいって想いには感謝してるし、特別な友達だからこそってのも嬉しかったんだけど。その……一応、俺も男だしさ」


 それを聞いて、何か思い当たる節があったのか。

 ぽんっと手を叩いた彼女は、にっこりとする。


「大丈夫大丈夫! 昼間も言ったじゃん。遠見君は信頼できるし」


 まあ、その信頼を裏切る気は更々ない。

 けど、俺が話したい事とはちょっと違うんだよね……。


「あ、えっと。信頼されてるのは嬉しいよ? だけど、それとはちょっと別っていうか」

「別? 例えば?」


 それじゃないの? と言わんばかりに首を傾げる彼女。


「いや、その、さ。今日、俺の熱計る時、額を当ててきたでしょ?」

「うん。あたし冷え性で手のひらだと意外にわかんなくてさー。だから羽流はねるにもこうしてるよ」

「そ、そっか。あと、洗濯物取り込んでくれたよね?」

「うん。あ、ちなみにそっちも気にしなくってOKだかんね。昔っからお父さんや羽流はねるの畳んでて見慣れてるし」


 近間さんはさらっとそう言ってのける。

 って事は、やっぱ慣れてるし自然体っていうか、天然の行動なのか。


「ちなみに、帰りに手を繋いできたのは……」

「あー……あはは……」


 流石にこの言葉には、彼女も少し乾いた笑いを出し見せると、眼鏡を直しつつ顔を少し赤くした。


「あれは流石にあたしも、少し恥ずかしかったかも。あ、でもでも! 遠見君だけ変な目で見られるのは嫌だったし。それならあたしも変な目で見られる方が、遠見君も疎外感とかないんじゃないかなーって思ってさ。ほんとだよ?」


 両手を胸の前でぎゅっと握り、必死に言い訳をする子供のようなリアクション。

 それがちょっと可愛くってドキっとするけど、今はそんな感想を口にしてる場合じゃないよな。


「うん。そこは疑ってないし、近間さんが一生懸命だからこそ、迷わず行動してくれたんだろうってのも分かってる。だけどさ。その……逆の立場になったら、どう感じる?」

「逆の立場?」

「そう。まあ、俺なんてイケメンじゃないから、そこまで感じないかもしれないけど。俺から手を繋いだり、俺から急に額を重ねられたり、その……洗濯物畳むとはいえ、下着見られりしたら、どう思う?」


 きょとんとしていた近間さんだったけど、俺が例を挙げていくと、目を見開き固まったまま、顔がぼっと赤くなる。

 そのまま目が泳ぎ、胸の前で両手の人差し指を重ねてもじもじし出したって事は……一応、理解してもらえたって事、かな。


「……た、確かにそれ、かなり恥ずいよね……。下着とか見られるのなんて、恥ずいだけじゃ、済まない、かも……」


 しどろもどろで、声も小さくなっていく彼女の見慣れない姿。

 眼鏡ギャルというレアさもあって、俺も顔の火照りが感染うつってくる。


 ……ゔ……や、やっぱり可愛い……って、見惚みとれてる場合じゃないって。

 ちゃ、ちゃんと最後まで伝えないと。

 気恥ずかしさに俺も目を逸らしつつ、何とか話を続けた。


「ま、まあ、そういう事。俺も男だから、そ、その、同じ気持ちになったんだ。た、ただ、嫌ってわけじゃないよ? あ、いや。下着見られるのは、ちょっと抵抗あったけど……」

「そ、そっか。ご、ごめんね。考えなしで……」

「う、ううん。その、色々、助けては貰ってるから。だから、ありがとう」

「う、うん……」


 ……気まずさっていうか、こんな話をした事がただただ恥ずかしくって。

 お互い顔を真っ赤にしたまま、それ以上の言葉も発せず、ちらちらと様子を伺いながら、ただ恥ずかしさを露呈するだけ。


 ……って。このままじゃだめだ!


「そ、そういえば、今日はこれで帰るんだよね?」


 晩御飯も作って貰えたし、看病といっても随分楽になってきてる。だからこそ俺はそう問いかけたんだけど……。

 彼女のもじもじは止まらないまま。


「えっと……その、泊まってくつもり」

「……へ?」


 泊まってく?

 近間さんが?


 恥ずかしさに恥ずかしさを重ねた言葉が、俺の思考を完全に止めた。

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