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アヒル防衛大臣

 サマンサは大きく眼を見開いた。

「アヒル防衛大臣だ」

「アヒル防衛大臣?」

 はったんが聞く。

「そうだ。旧政権のメンバーだった」

「えっ」


 頓挫していたサマンサたちの当初の計画、すなわちアヒル、カモメ、そしてハトたちの共闘によって蔓延するダニを退治し、ベニヤ板を越え、一気に蚤ヶ島に攻め込み、島全体を平定、統一する作戦にふたたび光明が差した。


「彼なら知っているはずだ。ぜんぶ出来るはずだ」

 サマンサはそう言いながら、足に鎖をつけられて広場の真ん中に座り込む防衛大臣に近づいた。

「あなたは、あのときのアヒル防衛大臣ですか」

「はい、確かに私は防衛大臣でした。いまは違います。処刑囚です。そしておそらく死刑囚でもあります」

 防衛大臣は、このような仕打ちを受けることは十分わかっていた。受けなければならないと思っていた。

「お久しぶりです。サマンサです。あなた方から政権を任されたあひるランド首相ドバトのサマンサです」と手を差し伸べた。

 群衆は固唾かたずを吞んでその姿を眺めていた。

 防衛大臣はふらつきながら立ち上がり、サマンサの手を握った。

「ありがとうございます。サマンサ首相」

「こちらがあひるランド総務大臣であるモグラのはったんです」

 サマンサははったんを紹介した。

「もうひとりの方は・・・」

「村へ『計画書』を届けに旅立ちました」

「あなたは、処刑囚でも死刑囚でもありません。ここあひるランドのアヒル防衛大臣です。この国のアヒルとそのほかの生き物たちを守ることが、あなたの務めです。敵は蚤ヶ島新政府です」とサマンサは告げた。

 公開裁判のため広場に集った群衆たちはひとり、ふたりとこの場を去って行った。


 アヒル防衛大臣には、いまでもこのあひるランドを守らなければならないという強い気持ちが残っていた。そうであるから多くの旧政権幹部たちが逃亡するなか、ひとりとどまったのだ。あひるランド軍は壊滅に近い状態であったが、大臣に賛同する部隊がごくわずかながら、いまだここに残っている。また常に蚤ヶ島軍を監視、研究してきたアヒルである。敵軍のことは熟知しているし、蚤ヶ島軍の強さも当然、知っていた。


 ピジョーのアパートで、サマンサとはったん、それにアヒル防衛大臣はちゃぶ台を囲んで座っていた。夕暮れである。

「いまの我が軍の力では、蚤ヶ島へ攻め込むことも、この国にいるダニを退治することも不可能です。これが現実です」

 防衛大臣ははったんがもたらした資料を眺めながら告げた。

「僕もまったく刃が立たないと思うよ」

 はったんも言う。サマンサはピジョーが置いて行った塩の箱をいじくりながらしばらく考え、ふたりに言った。

「蚤ヶ島と交渉しよう」





(つづく)


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