翌朝 2
「あれはどういうことなんだ、え?ロト」
女たちが去るまでしばらくかかり、三人はすっかり痛くなった足や背中をさすりながらソファの後ろから出てきた。
厳しくウヌワが掃除をさせているので埃こそ付かなかったものの、古い革の匂いに三人とも気分が悪くなっていた。
無言でいるロトの横で、サウォークが腕を組んで難しい顔で言う。
「ややっこしいことになりそうだな」
「遠征の時、本当にあなたが残らなくて良かったと思いますよ」
「あ?なんで?」
ロトは答えずに考えていた。
彼らはどうやら、ベルガではなくあの子をラベル公としたいらしい。
ラベル公がソミュール伯を後継に指定、ソミュールの血を引く男子だからあの子が後継…?
「もしもーし、ロトさーん」
ベルガを推すトゥアナと、アドラを推すウヌワとセレステだ。
あの子の存在はカペルのソミュール伯への地位も脅かす。
「何かまた悪巧みを考えてるんだろうな…」
「失礼ですね!邪魔だとか厄介だとか不慮の事故が起きたらいいのになんてそんな不道徳なことは考えてませんから!」
「言ってるじゃねえかよ…」
「そもそも、あれがソミュールがセレステ殿に産ませた子供だとしても、庶子となればさすがにそこまでの後継を主張する扱いは無理があります」
「うーん」
「そこまでの権利を主張するだけの根拠が何かまだあるのか?」
ロトは薄目で二人を見た。
「まあ、あなたたちに聞いても仕方ありませんでしたね…」
「あっ!バカにした!こいつ今バカにした」
「とりあえず、他言無用です。明日カペルと相談しましょう」
ロトはすっくと立ち上がったが、まだしびれが残っていてよろけた。
「いよいよ文箱の行方が気になります。朝が来たら捜索を再開いたしましょう。さとられぬよう、秘密裏に!」
サウォークが後ろで変な咳をした。




