塩と夕食 2
「ねえ司令官って、トゥアナのこと好きなの?」
いきなりの専制パンチに、サウォークはむせた。
「トゥアナを見る顔がでろでろじゃん」
「もう何ならトゥアナのことしか見てないよね」
双子の母親の婦人がたしなめた。
「お子さまはそんなこと気にしなくていいの!」
「ねえ結婚したいの?どうなの?」
「逆にお前らに聞きたいんだけど…おとうちゃんと義理のおにいちゃんが死んじゃっても大丈夫なの?こう…街の様子見ても、あんたらと話しててもなんかあんまショック感じないんだよね」
二人は押し黙った。
婦人がサウォークに向かって多少緊張した表情でそれでも穏やかに話した。
「公爵さまはお忙しくて、たくさんいる娘のことなんてかまう暇はなかったんですよ」
「へー、じゃあ…あなたのことも?ほったらかし?お綺麗なのに!」
婦人は笑った。
「公爵さまは私のことなんて覚えていなかったかも。あの方が本気でお好きだったのは多分…(婦人は双子の頭を撫でた)トゥアナさまのお母さまだけかもね」
「えーもったいない。こんなお若いのに」
(ちくしょう公爵だからってうまいことやりやがって)
婦人はまだまだ若々しく、細身なのに胸も大きく腰はきゅっとくびれていて、サウォークは何歳なのかぜひ聞きたいと思ったがさすがに自制した。
ニマウが皮肉げに吐き捨てた。
「何いってんの、ウヌワのママと浮気したのが悪いんじゃない。それで離婚することになっちゃったんでしょ?」
「子供の前で話すことじゃなかったわね」
「とっくに知ってるよ!この領地で知らない人なんていないじゃん」
オノエが物知り顔でサウォークにささやいた。
「ずいぶん暴れたらしいよ。お父さまじゃなくて、トゥアナのママがね」
「遺伝かよ!つうかトゥアナはそれじゃ暴れる×暴れるの暴れる純血種じゃねえか。…大丈夫なんかな(カペルが)」
「ウヌワのお母さまはね、領主さまが結婚する前からの仲だったのだから」
婦人は悲しげな顔をした。
「あの方は王様でした。ここはあの方の国、自分が法律。都がそれを受け入れられないのは仕方のないことだったのかもね…」
ニマウが聞いた。
サウォークが抱えて持ち込んだ文箱の包みの上に足をぶらぶらさせながら座っている。
「ねえママ、裏の鍛冶屋のとこ、見習いの子まだ来てる?」
「いますよ。今はもうあの子でもってるようなものねえ。おじいちゃん、腰を悪くしてね。跡継ぎの息子が死んだから…」
ガタガタっと屋外で音がして、サウォークは窓により、顔をしかめて外をうかがった。
しばらくして難しい顔をして戻ってくる。
「強盗とか、ロトに知れたらその場で斬られるな。こりゃあ規律を叩きなおさねえと。最近、気を抜いてたからな」
食べ終わって満足そうにしながらオノエが能天気に言う。
「でもあの人、見かけによらず甘党だよね。いっつもお菓子持ってんだよね」
「お菓子???は?ロトが??」
「時々くれるよ」
何のこっちゃと首をひねりながら、ロトはロトなりに手なづけようとしているのだろうかと考えた。
ニマウが箱から飛び降りた。
「早いとこ、こいつ開けちゃおうよ。ウヌワに気付かれたらまずいよ。今日中に元に戻して置きたいから」




