宴会 2
ベルガは終始むっつりとしていたが、マナー無視でがしゃんどしんと音を立てながら杯を一杯、二杯傾けると顔色が良くなってきた。
すっかり体を隣のトゥアナの方に体を向き直らせて言う。
「トゥアナ、お前が無事で何よりだった。娘たちのことを何より心配していた」
相手はにっこりする。
「将軍はずっとわたくしたちに紳士でしたわ」
「カペルは良い奴だ。何より気取ったところがまったくない」
「あなたはいつも正直で公正だわ、きっとよい領主になれます」
ベルガは少し悲しい顔をした。
「もうモントルーが恋しくなってる。こちらには山羊の肉もあまりないし。早く帰らねば…今、あちらの城は大変でこんなことをしている場合ではないのだし…って、つうっ!!!」
カペルから、テーブルの下でトゥアナの指がベルガの手の甲をぎゅうっとつねるのが見えた。
「あのさ、トゥアナ、怒らないで聞いてね」
トゥアナとベルガが話し始めてから、あっという間に面白くない顔に変わっていた太子がカペルを乗り越える勢いで体を寄せてトゥアナに話しかける。
「君のかわいい妹ちゃんのことなんだけどさあ~、母上、どうしても言うこと聞いてくれなくて」
トゥアナもベルガも黙っている。
だれも名前を出そうとしない。
やっとのことで、トゥアナがひとこと、短く答えた。
「残念です」
?
何のことだ?
カペルは一人で首をひねった。
トゥアナはひきつる顔をしいておさえ、精一杯の笑顔を見せながら明るく言った。
「でもなかなか連れて行くのは難しいわ。今あの子、モントルー地区にたてこもってますの。こうなるとなかなか出て来ません…説得に数年はかかるかも…」
「大変かもしれないけど、そこをちょちょ~っと説得してもらわないといけないみたい。確かにおじいちゃんと結婚なんて嫌かもしれないけど、ないことじゃないしさあ~」
空気をまるで読まずにカペルはベルガにたずねた。
「妹ちゃんてだれ?」
「アウナだ」
「アウナ?無理だろ」
全員がこちらを見た。
少し離れた場所から、ロトが固まっているのが見える。出来る限り腕を振り回してカペルに合図しようとしている。
「だって…」
ロト(シッ!シッ!シ~~~~ッッ!!!カペル、黙って!!)
「俺だってちょっとしか会ってないけど、めっちゃ無理っぽかったよ。言うこときかねえもんあいつ。とんでもねえお転婆だよ?」
「もーそこまでお知り合いになってるのならなんで付き合っちゃわないの~!」
どーん!と背中を思いっきりどつかれた。
カペルは前のめりになり、もう少しで食器に頭を突っ込む所だった。




