♯3 漫画
そうだ、今日も演劇部行こう。
唐突にそんな感情が湧いた。行くも行かないもなにも、部員だから行っといたほうがいいし、朝も期待に満ちた目でじーっとうさぎさんが見つめてきたのでおそらく行かなければいけない。
というわけで至る放課後、家庭家事準備室。
「失礼しまーす…」からからと開ける。
…犬神家…?
そこには大量の本の山に埋もれ、下半身が山の頂上からぴょこんと出た人間らしきものの姿があった。
この重力に抗っているスカートもなかなかなのだがこれでは部屋に入れない。というか前来た時はこんなカオスはなかった。
…もしかして部屋間違えたか?
「…失礼しましたー…」からからから。
「待って待って待って!せめて助けて!」
この跳ねるようなハスキーボイス…紛れもなくうさぎさん…!
「…お邪魔しまーす」
「邪魔すんねやったら帰ってー」
「ほな帰るでー」
「あっ!待って!脊髄反射!脊髄反射だから今のは!助けて助けて!」
「えーっと…本の山崩していったらいいかな?」
「うん!そこの本棚に入れていって!」
がさがさと本を持っては棚に上から入れていく。丁寧にカバーがされていて中身がわからない。
パラっと一冊適当なものを適当な場所で開いてみた。
『フフフ…どうした?まさか怖えってんじゃねえだろうな?』
『…』
『おいおいだんまりか?まったく、これだからハタチはよぉ…』
『…21だ。』
『…あん?』
『俺は21だ。ちょっと表に出ろ。』
…何この西部劇のマンガ。タイトルを見る。
『ガンマン王 チョト・オモテ・デーロ 4巻』
…このネタで4巻も引っ張ってるの?しかもさっき年齢間違えられてた人が主人公なの?ビジュいいけど小物すぎないか?
「ちょっと!読んでないで助けて!」
あっバレた。
「ふふっ、読んでない読んでない…」
漫画を棚に入れていく。
「ところで、ここってマンガが多いの?」
「うん!顧問の二階堂先生が置いてて良いよって!でも隙間なくギチギチに詰めたから無理に読もうとしてバランス崩して本だけが溢れかえっちゃった!」
…確かに本棚が壁と一体化している。なら本だけ崩れるのも納得か。
本棚が三分の一ほど埋まったところで、うさぎさんが顔を出した。
「おー!ありがとー!」
気付いたらすでにサングラスをかけている…手慣れているなぁ…
「さっ!本棚復旧しよっか!」
そうして本棚の壁が埋まる頃にはもう日暮れが近くなっていた。
埋まるだけなら早めに終わったのだが、ここから中身を確認して並べ替える作業が待っていたので結局遅くなった。
お互い疲れていたので流れで解散して、ボクは自室に辿り着く。
制服もそのままに、ぼすんとベッドに寝転がった。
ボクの中ではずっと頭の中で尾を引いているものがあった。
「なんだよ『ガンマン王 チョト・オモテ・デーロ』って…」
前後が絶妙に気になったので明日はちょっとあれを読むためだけに演劇部行こう。ボクはそう心に決めた。
2ヶ月おきの投稿ペースになると思われる…
非力な私の首を刎ねてくれるか?




