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#1 退屈

初めましての方は初めまして。

そうでない方はこんにちは。

わすれもの、と申します。

人外の日常系になる予定です。

ちなみに言っておきますが、ちょっとGLを入れたいのでGLタグがついています。

前置きが長くなってもアレなので、それではどうぞ。

「二十年前、カザフスタンに隕石が落ちました。

 大きなクレーターを作り、世界中を約20日。大寒波が襲いました。

 隕石の飛来から三年後、ある事実が発覚します。

 その隕石からは不思議な電波が発信されていることが確認されました。

 人間を変化、進化させる電波です。

 アメリカ、イギリス、中国、カザフスタン…誰もがその隕石の所有権を主張しました。

 しかし、ある日隕石は忽然と消えてしまいました。

 それでも、世界中の人間は変化し続けています。

 所有権の争いは無くなりましたが、再び見つかれば争いは必須です。

 この一連の隕石が降ってから紛失するまでの出来事を『星辰事変』と言います。」

ディスプレイに文章と画像が表示される。

ボクはそれをプリントに書き留めながら、教卓の方を見る。

二十年前。ボクたちの生まれる前の時代。

スクリーンには隕石の写真と、クレーターの写真が映し出される。

「電波は、人間の胎児にのみ、進化を促し続けています。

 なので、ちょうど皆さんが『電波世代』『進化世代』」と呼ばれる理由でもありますね。

 吸血鬼にメデューサ、透明人間…変化していない人も一定数いるものの、

 確実に数は増えています。そうして変化した人間は『スペシャルズ』と呼ばれますね。」

昔は風当たりが強かったらしいけど、だんだんと勢いは弱くなっていったらしい。

なぜなら、どうしても数が増え続けるから。

母数なら、このまま行くとスペシャルズの方が上回るからだ。

西暦2160年。窓を覗くと空に鈍く光るスペースコロニーが、その存在を主張していた。

きぃん、こぉん、かぁん、こぉん。りぃん、ごぉん、がぁん、ごぉん。

「あ、時間ですね。号令はいらないです。」

プロジェクターの電源が消え、椅子を引く音や話し声が聞こえ始める。

教卓の二階堂先生は、テキパキと片付けを始めた。

六時間目が終わったらか、帰る準備を始めるものも多い。

「放課後どうするー?」「あーごめん、部活!」「そうだった。ごめんね。」

そんな会話が頭に入っては抜けていく。

「ねぇ、東雲さん。」

手で肩をトントンとされるのは慣れているけど、この感覚は初めてだ。

「なに?」

思わず振り向いた。

淡いピンク色の髪をした、目出さんだ。

真っ黒いサングラスもあるけど、それより目を引くのは頭頂部にいる3匹の蛇たち。

…メデューサの、スペシャルズ。

「東雲さんって、放課後暇?」

「…まぁ。」

「ちょっとさ、この後カフェでも行かない?学校の。」

「いいけど。会計は別々ね。」

「やったぁ!」

彼女が喜ぶと、蛇も心なしか目をぱちくりさせて嬉しそうだ。

…情報量が多すぎる。

たった一人の同じ人間なのに、頭に蛇がいるというだけでこうも情報が増えるのか。

そうしたのち、帰りの会は手早く終了された…教室から人が減っていく。

「じゃ、行こ?」

言うが早いかぐいと手を引かれ、歩き出す。

いつの間にか、ボクたちは二階のカフェテリアにたどり着いた。

「何にする?私ミルクティー。」

「…カフェオレ。ホットで。」

タッチパネルで注文を済ませると、空いた席に腰掛けた。

「なんで誘ってくれたの?」

「ちょっと前から東雲さんのこと気になってて。

 友達も部活とかあるから誘うなら今かなって。」

「友達…相生さんとか?」

「そうそう。あの子透明人間のスペシャルズなんだよ。

 目が合っても平気だから仲良しなんだ。」

「透明人間って…見てればわかるよ。

 でも、最初は服が浮いてて、しかも声がするから面食らっちゃった。」

「わかるー!最初びっくりするよね?衝撃のファーストコンタクトってやつ。」

「ご注文をお持ちしました。」

静かに給仕ロボットがやってくる。トレーにミルクティーとカフェオレを載せて。

「ミルクティーの方は?」

「あ、私でーす。そんで、この子がカフェオレ。」

ロボットは「承知しました。」とだけ言うと目の前に素早く、それでいてどこか丁寧に置く。

「ごゆっくりどうぞ。」

「あ、カフェオレって上にミント乗ってるんだね。」

目出さんが指差して言う。普段なら気にも留めなかった。

「…乗ってるね。」

「オシャレじゃない?こーいうの!今度私もカフェオレ頼もうかな〜。

 ミントの乗ってるカフェオレってどんな味がするんだろう?」

…確かに。飲み慣れているけど。

ミントが乗っているからどう、というのはあまり考えなかった。

指摘されると、急に気になってくる。

「ひとくち、どう?」

「いいの?じゃあ…私のミルクティーも一口飲んでよ。」

「なんで?ミルクティー苦手?」

「そうじゃなくって…おかえししなきゃっていう気持ち。」

…自分だけ、得をしてもいいのに。

「じゃあ、ひとくち。」

「ふふ、どうぞ。」

「…いただきます。」

ボクはミルクティーの容器を手に取って、ストローで一口飲む。

甘ったるくて、ジャスミンの香りがほのかに広がる。まあ、これはこれでおいしい。

その傍らでは、目出さんがボクのカフェオレを飲んでいた。

「おいしい?」

「うん。ミント乗せるとちょっとさっぱりするんだね。」

「…ねえ。その…『気になってた』って言うけど、どこが?」

顎に人差し指を当て、首をこてんとかしげて、考えてから言った。

「東雲さんって、イケメンじゃん?」

…は?

自分の評価として「イケメン」という烙印を押されたのは初めてだった。

「あんまり前に立って話さないけど、ちゃんと気遣ってるって感じするし。」

「観察するの、得意なの?」

「え?いや、うーん…イケメンを見つけるのが得意、みたいな?」

にへら、と素直な回答が返ってくる。

「ふふ、面食いなんだね。」

「えへへ…」

そこは照れるところなのか…

「ねえ、東雲さんって、下の名前なんだっけ?」

「…夜空だよ。」

「そっか。夜空ちゃん…えへへへへ…

 私、うさぎ。目出うさぎだから。」

そう言いながら差し出された手をボクは確かに受け取った。

「お友達に、なってくれる?」

たまにはこういう人間と、友達になっても悪い気はしないと思ったのだ。

「いいよ。うさぎ…さん。」

「…よかった。」

窓の外から差し込まれた春風は、微笑んでいた。

いかがでしたでしょうか。

一話あたりは短い方かもしれません。

(2500字未満なのでそれを短いか長いか捉えるのは個人の勝手なのですが…)

読みやすさを重視して書いているのですが、これでもきつかったらご一報ください。

あなたが通う頭の病院を一緒に探す羽目になるかもしれませんね。

…やっぱり私はジョークが下手だ。

それでは、これで。

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