第1話:死んだはずの俺、現代で“成功率”が見えるようになっていた
その日、俺は――死んだ。
映画を見終わって、いつも通りの帰り道。
信号が青に変わったのを確認して、一歩踏み出した瞬間だった。
強烈な衝撃。
視界が白く弾け、身体が宙に浮いた感覚。
何が起きたのか理解する前に、意識は途切れた。
……次に目を開けたとき。
そこは、見知らぬ和室だった。
「……は?」
畳の匂い。木の柱。障子。
どう見ても病院じゃない。
体を起こして周囲を見回した、その時。
部屋の中央で――小さな女の子が土下座をしていた。
「……え?」
状況が理解できない。
すると、その少女が顔を上げる。
見た目は小学生くらい。
だが、その瞳には妙な圧があった。
「申し訳ありませんでした!」
いきなりの謝罪。
「……何が?」
やっとのことで声を出すと、少女は深く頭を下げたまま言う。
「あなたの死は、本来起きるはずのないものでした」
「……は?」
「神の世界からの干渉により、世界に歪みが発生しました。その影響で、あの交通事故が起きてしまったのです」
――つまり。
俺は、運が悪かったわけでも、ただの事故でもなく。
“バグ”で死んだらしい。
「いや、意味わかんねぇんだけど……」
思わず本音が漏れる。
少女は申し訳なさそうに視線を落とした。
「お詫びとして、あなたに特別な措置を行います」
「特別?」
「本来であれば異世界へ転生していただくところですが……今回は、元の世界へ戻します」
「……は?」
「その代わり、スキルを付与します。自由にお選びください」
――待て。
急に話が現実離れしすぎている。
だが、ここまでの流れを考えると、冗談とも思えない。
「……自由に?」
「はい。制限はありません」
少し考える。
戦闘系は、現代じゃ使い道が薄い。
それよりも――“情報”と“効率”だ。
「……鑑定」
「承りました」
「翻訳」
「承りました」
「あと、アイテムボックス」
これでいい。
最低限、生きていく上で困らない。
少女が頷いた、その瞬間だった。
「――うそーーーーー!!」
どこからか、大声が響いた。
「……は?」
反射的に周囲を見るが、誰もいない。
次の瞬間。
身体が、急激に下へ引っ張られた。
「ちょ、待っ――!」
視界が歪む。
足場が消える。
何かに“落とされる”感覚。
そして――意識が途切れた。
「……っ!」
目を開ける。
見慣れた天井。
自分の部屋だ。
「……戻ってる?」
体を起こす。
痛みはない。むしろ、妙に軽い。
夢……だったのか?
いや、違う。
妙な確信があった。
「……ステータス」
小さく呟く。
その瞬間。
空中に、光のパネルが浮かび上がった。
【ステータス】
名前:神谷 恒一
年齢:17
状態:正常
スキル:
・鑑定
・翻訳
・アイテムボックス
「……マジかよ」
夢じゃない。
あれは、本当に起きたことだった。
試しに、机の上にあったペンに視線を向ける。
「……鑑定」
【ボールペン】
状態:良好
価値:100円
故障率:3%
「……は?」
故障率?
なんだそれ。
さらに、スマホを手に取る。
「鑑定」
【スマートフォン】
状態:良好
寿命:残り約2年
バッテリー劣化:23%
「……いや、これ」
ただの鑑定じゃない。
“未来”に関する情報が混ざっている。
胸の奥がざわつく。
試すべきことが、ひとつ浮かんだ。
机の上に置いてあった、買ったまま放置していた宝くじ。
半ば冗談で買ったものだ。
「……鑑定」
【宝くじ】
当選確率:0.0000001%
期待値:低
「……まあ、そりゃそうか」
苦笑しながら、ふと考える。
“じゃあ――当たるやつは?”
その瞬間。
頭の奥で、何かが繋がった気がした。
「……試してみるか」
俺はまだ知らない。
この力が、どれだけ異常で。
どれだけ世界を変えるものなのかを。
そして――
この日を境に、俺の人生は大きく変わり始める。




