表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
健康すぎる私が医療事務に!?  作者: りむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/12

#3 え、まさか……この子も、同期?

紬が配属された医事課の部署は、病院の正面玄関から入ってすぐの場所にある。

小さな部屋に整然と並ぶデスク、カルテが積まれた棚、壁には診療報酬や保険の情報が掲示されている。


朝礼の時間になると、医事課のスタッフが立ち上がる。課長の挨拶の後、緊張しながらも元気よく自己紹介をする。


「日下紬です! 本日からお世話になります! えっと……頑張ります!」

周囲から温かい視線と、軽い微笑みが返ってきた。


自己紹介が終わり、朝礼は解散になった。


(話しかけやすそうな先輩……)


紬は視線を巡らせた、そのとき。人混みの中に、ひときわ小さな人影が目に入った。

目が合う。ぱっちりした瞳が、一瞬驚いたように瞬いて、すぐにやわらかく笑った。


「おはよう。今日からよろしくね」


そう声をかけてきたのは、背の低い女性だった。


特別、紬の背が高いわけでもない。

それなのに思わず見下ろしてしまうほど、小柄な女性。

華奢な肩にきちんと整えられた制服が、少しだけ大きく見える。


(……ちっちゃ)


身長は、140センチあるかないかくらい。

丸い輪郭に、あどけなさの残る顔立ち。

ほっぺたはほんのり桜色で、少し離れた目元には、薄く長いまつげが影を落としている。


暗めのブラウンの髪はサイドテールにまとめられていて、動くたびに軽く揺れる。

ぱっちりとした黒い瞳が、マスク越しでもはっきりとこちらを捉えた。


制服を着ていなければ。いや、着ていても。


(小学生が職業体験してる、って言われても信じそう……)


少し高めの声も、その印象を強めていた。

周囲の職員たちと並ぶと、その幼さは一層際立って見える。


どう見ても、子どもが迷い込んできたようにしか見えない。


(え……まさか、この人も……同期?)


隣を見ると、沙耶もわずかに目を丸くしていた。

同じことを考えているのが、手に取るようにわかる。


心臓がドクンと鳴って、紬は一瞬、動けなくなった。


その女性は、そんな二人の反応に気づいた様子もなく、にこやかに名札を指さす。


「私、金沢愛美(かなざわまなみ)。医事課に勤めて10年になるの。今日から研修担当をするから、よろしくね」

「……10年?」


危うく、声に出かけた言葉を、紬は慌てて飲み込んだ。


(じゅ、10年……!? え、じゃあ……見た目と全然……)


もしここで、「同期かと思いました」なんて言ってしまったら、初日から取り返しのつかない失礼だ。


愛美はそんな紬の内心など露知らず、机の上に資料を広げていく。

その動きは無駄がなく、手慣れていて、さっきまでの印象とはまるで違っていた。


「まずは、医事課の仕事の全体像から説明するね。大きく分けて3つあるの」

愛美はホワイトボードに簡単な図を描きながら解説する。



★ 医事課の仕事 ★


 1 受付・患者対応

  ・保険証や診察券の確認、案内や予約の対応

  ・患者さんが一番最初に接する窓口だから、病院の印象を左右する大事な業務!

 2 会計・レセプト作成

  ・医師が入力したカルテやオーダーを確認・整理して、請求書と明細書を作成

  ・患者さんに請求するものと、保険請求するものに分けられる

  ・正確さが求められ、ちょっとしたミスで、クレームや返戻に繋がる!

 3 その他

  ・保険請求分以外の診療費の請求

  ・未収金の管理、督促

  ・患者数などに関する統計資料作成



「紬ちゃんは接客経験があるって聞いてる。沙耶ちゃんは専門学校で勉強してきたんだよね?」


愛美はそう言って、二人を交互に見た。

紬と沙耶が小さくうなずく。


「タイプは違うかもしれないけど、医事課ではどっちも大事だからね」


その言葉に、不思議と緊張が少しだけ和らいだ。


(……この人が教育係なら)


紬は、沙耶と視線を交わす。


(なんとか、やっていけるかもしれない)


「じゃあ、行こっか。最初は覚えることが多くて大変に感じるかもしれないけど、焦らなくて大丈夫。ポイントさえ押さえれば、少しずつ慣れていけるからね」


小さな背中が、すっと前を向く。

その後ろ姿は、さっきよりずっと頼もしく見えた。


紬は一歩、踏み出す。


ここが、自分の働く場所。

そして、この人が——最初の“先輩”だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ