千羽黒乃、反響に驚愕す
千羽の新しい挑戦、新作落語は大盛況で幕を閉じた。
舞台を降りた千羽の元には沢山の烏天狗が集まり、どこで習ったのかだとか誰の落語かなど、質問攻めでもみくちゃにされる。幸い次の余興が始まるとその烏天狗たちもそっちに向かい、嵐のような出来事に千羽は乾いた笑いしか出なかった。
「おつかれであったな、千羽殿」
肩の荷がおり、酒や食事や楽しもうと席に座る千羽の隣に、大柄の天狗が腰掛けた。手には未開封の日本酒の瓶。
「大天狗殿、これはありがとうございますなのじゃ」
慣れた手つきで大天狗は瓶の蓋を空け、千羽のお猪口に酌をする。
「しかし、千羽殿が落語とは、ワシも一杯食わされたのう」
「ワシも今、大天狗殿に1杯飲まされたのじゃ」
「ハッハッハ。今日の千羽殿はいつにも増して口が上手い。ワシにも1杯いただけるかの?」
「大天狗殿はいっぱい飲むから……ああ、冗談じゃよ大天狗殿。分かっててそんな悲しそうな顔しないでほしいのじゃ」
苦笑の表情を浮かべながら、千羽は大天狗に酌をする。
「しかし、千羽殿は変わったのう。Vtuberを始めて、良き者達と出会い、影響を受けたみたいだ」
「そうなのじゃ。誰も彼も個性が強く、最近は毎日が楽しいのじゃ」
「それは僥倖。……ふむ、旨いな。これはどこの……」
一口飲み、その舌触りと味を堪能する大天狗。千羽はふふっと笑うと、胸を張って答えた。
「そのお酒ですか?ワシの故郷、バーチャル高尾山のお酒なのじゃ」




