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千羽黒乃、問題に直面す

「む、そういえば週末の集会の余興、今回はワシの番じゃったか」

定期的に行われる烏天狗の集会。その案内のポスターを目にした千羽黒乃(せんばくろの)はふとそんなことを思い出していた。


各々がどのようなことをしてきたかを報告する年末の集会となる今回は、どちらかと言えばその後の宴がメインとなってくる。それ故に毎年数人が余興を披露することになるのだが、前年、前々年のVtuberとしての活動報告が上層部から好評だったようで、年の中頃には既に余興を披露してくれと懇願されていた。


「むー、どうしようかのう?いつもなら麻雀の何切る問題をするところじゃが、それも2回続けてやっておるしのう……」


千羽はVtuberとしての活動の多くを、麻雀をすることで過ごしている。時に見知らぬ誰かとオンラインで対戦し、時に自身を師匠と仰ぐ人に麻雀を教え、時にはチームを組みリーグ戦で鎬を削る。元々持っていた高い実力を存分に発揮しながら、Vtuberの中でも特に「麻雀と言ったらこの人」と思わせる程、麻雀とは密に関わってきた。


何切る問題はそんな千羽の実力と解説の上手さから、麻雀好きが集まる烏天狗の中でも特に評判の良い余興の1つではあったが、そればかりではマンネリだろうと千羽は考えていた。


「と言っても、ワシの1番の取り柄と言ったらやはり麻雀だから、それにちなんだものがいいと思うんじゃよなあ……」


行きつけのカフェ。カフェオレを飲みながらも余興について頭から離れない。何切る問題のストックは多くあり、思いつかなかったらそれでもいいやとスマホを眺めながら思考を巡らせていると、千羽の目に1つの動画が飛び込んできた。


「ん?これは…………」


───────────────────────


週末、集会。

千羽の今年の活動報告も、主にVtuberとして活動したことについてだった。特に今年は半年に渡るリーグ戦への参加、かねてより連載していたコラムを纏めた本の出版等、麻雀を通して烏天狗の認知度向上に大きく貢献した事が上層部から大ウケであった。


「さて、報告も無事に終えたことだし、後は余興を成功させるだけじゃな」


宴会場へ向かう道すがら、千羽はスマホ片手に緊張した面持ちで、1人深呼吸をする。余興の練習に費やせた時間は1週間にも満たず、Vtuberとしての活動もあったことから、1日に数時間が限界だった。最低限形に出来たのは、昨日の配信が終わった後、寝る前の練習の時。この時すでに日は回っており、まさに滑り込み、といった具合。


「うー、麻雀の大会に出た時より緊張するのじゃ、でも、何とかなる!なのじゃ!」


覚悟を決め、千羽は歩を進めた。出来が悪くとも失敗しようとも、それでも全力は出し切る。その決意を胸に秘めて。

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