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千羽黒乃、余興入りをす

千羽の決意を誰が知ることもなく、滞りなく宴会は始められた。

大広間は全国各地から烏天狗が一堂に会して、酒やつまみやと開始早々どんちゃん騒ぎが繰り広げられている。

麓の村から雇われた侍女たちが、あくせくと注がれてはすぐ空になるグラスにビールを注いでいく。

千羽はその端でお茶を飲みながら、余興の最後の確認を行っていた。


「千羽ちゃーん、どしたの?今年は飲まないの?」


そうしていると、どこからともかく、男の烏天狗がフラフラした足取りで千羽のところまでやってきた。千羽と年はさほど離れておらず、酒にもそこそこ強いのだが既に出来上がっている様子で、ビールの消費スピードが伺い知れる。


「あはは……。今年はいつもと違うことするから、お酒を飲むのはそれが終わってからにするつもりなのじゃ」


「へー。でもそれじゃお酒残らなくない?」


「それは心配無用。大天狗殿にとっておきの1杯を残して貰えるよう頼んでいるのじゃ」


「なるほどねぇ~。あ、余興始まるよ。最初は千羽ちゃんの出番じゃない?」


「本当?じゃあ、行ってくるのじゃ!」


そう言って、千羽は舞台袖へと姿を消していった。


「では皆さん。これより余興を開始いたします!」


千羽が舞台袖に消えてから1分もしないうちに、会場内に声が響いた。騒いでいた会場もそのアナウンスを聞くと、次第に声が消えていき、侍女が食器を片付けるカチャカチャした音だけが聞こえてくる。


「まず最初の余興は、千羽黒乃!なんと彼女は、これまで定番としていた『何切る問題』を封印し、今年の活動にちなんで新しいことに挑戦したとのこと」


何切る問題は頭を使う。その事からお酒が進むと頭が回らなくなり、正解率がぐっと下がってしまうため、千羽が余興に出る時は大体早い段階で出るようになっていた。そんな千羽が今回新しいことをすると聞かされ、会場内はわずかにどよめきが起きる。


「それでは早速始めていただきましょう。千羽黒乃の今回の余興は新作落語!内容は聞いてのお楽しみ。それではどうぞ!」

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