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十二話 覚醒せし者達

 現政権徳川幕府の神祖と、徳川から重宝されつつも徳川に仇を成す者として虐げられて来た村正一族の末裔は戦う。


 二百年以上の歳月をかけて研ぎ澄まされた村正の最終型である天下王村正。そして、本田平八郎の使っていた蜻蛉切を数多の霊気観察方に使わせて磨き上げた真蜻蛉切。


 二つの得物は互いの肉を喰らおうと交差し、青い火花が散る。

 双方共にかなりの消耗をしていた。

 しかし、まだまだ若い者には負けないという家康は言葉でも攻めた。


「開国、開国と言うが主は外の国へ行った事も無ければ外の国の人間と話した事も無い。たかだか徳川に反旗を翻したいだけなのに、何故そこまで開国にこだわる?」


「外の国の知識はこの村正が知っているのさ」


「? 刀は道具。話す事は出来ん。村正一族の全ての敗北が迫り、狂ったようじゃ。全て終わりにしてやろうぞ」


 真蜻蛉切がこめかみをかすり、吹き出た血が右目を隠す。すかさず槍を引いたのを利用し、槍を掴んで家康に引き寄せられつつ突きに出た。その切っ先を家康は口からの咆哮により、夜光ごと吹っ飛ばす。

すぐに体勢を立て直す夜光は天下王村正を構えつつ、


「函館、横浜、それに京に近い兵庫でさえも外国船による砲撃を受けたりしている。大霊幕があるとは言え、もう奴等の侵入は時間の問題だ。ここのイエヤスアークは侵入者から得た霊気だけでは維持は出来ない。もう、かつての戦国武将のような圧倒的な霊気を持つ人間などいないからな」


「戦国武将達は毎日が必死だったからこそアークという霊気が発動していた。確かに大霊幕は弱まりつつあり、砲撃は守れても、漂着物による外国の脅威は守れぬ。そちは知ってるのじゃろう? 異人の国力というやつを」


「霊気観察方として、村正一族として異人関連の物は調べた後に処分していたからな。それに、海岸部は時折現れる外国船で近くの人間達は黒船だと騒いでいる。あの巨大な黒船は大きさ、走力、積載力、攻撃力、そしてブリキで守られた船体防御力。全てが日本船の上を行く。ただの大船が兵器となっている。あれに侵入されたら、日本は終わるぞ」


 徳川家康は高笑いをした。まるでそんな事は全てわかっていると言わんばかりの、人をあざ笑うような笑いだ。夜光は狸親父め……と怒りを増す。


「黒船は徳川幕府における今後の最大の難関となる問題になるだろう。だが、この徳川家康の作りし鎖国を実現している大霊幕を解放し、開国に踏み切りたくば戦うしかない。勝った者のみが、全ての権威と象徴を手にするのだ」


「権威も象徴もいらんさ。俺が望むのは開国して日本人の魂も開国される事。そうしなければ、この日本は外国の植民地になるだけだ。故に徳川家康よ。ここで貴様の魂を斬る」


「そう言ってこの東照宮で死んだ者は数知れぬ。そもそも、イエヤスアークを狙われ、東照宮を攻撃された事などは全て三河の自作自演。あくまでも、この聖櫃の霊気を狙う猛者を集める為の餌。強き者はどうしても敵がいなくなると、最強の敵を求める。それがワシであり、ワシもイエヤスアークを集める人間を使うのじゃ。大霊幕こそが日本の安定であり、全ては大霊幕さえあれば異人などは無害になる」


 その家康の言う通り、三河の連中は東照宮内の侵入者はあえて受け入れわざと泳がせている。結果的に東照宮内で勝手に死んでくれるのと、大霊幕の綻びを補修する生贄としての役割があるから一石二鳥だった。

 同時に、徳川家康復活の生贄としても徳川幕府は考えている。


「現体勢の幕府は神祖であるワシを復活させて異人からの攻撃を防ごうとしている。大霊幕を強化するには復活しか無い。それは、その妖刀村正の最終型を持つ村正一族を倒せば叶う。最後の生贄として、イエヤスアークの中で眠るがいい」


 徳川家康の背後にある霊気玉であるイエヤスアークは、青白く発光しており家康の霊気に反応している。夜光も村正一族の末裔として、この戦いには絶対に負けられ無かった。


「家康よ。やはり徳川に恨みを持つ者は強くあるのかも知れん」


「? どうした村正。何の話をしている?」


「豊臣討伐のきっかけの話さ」


 すると、夜光は地面にある鉄の破片を刀で叩きまくる。超音波のような音が発生し、家康の平衡感覚が乱れた。


「こ、これは方広の鐘と村正の共鳴か? そこの鉄の破片は方広寺の鐘の残骸」


「そうだ。本田平八郎が方広の鐘を消滅させ無かったのは失敗だ! 徳川家康! その首もらった!」


 天下王村正で砕けた方広寺の鐘の最後の鐘を鳴らした。動きが取れない家康に夜光は迫る。その隙をついたように、隠れてイエヤスアークを狙っていたホーキの姿が現れた。


「ホーキ!? 今頃現れたのか!」


「僕を起こしたのはお前だろ村正ぁ! 僕は方広寺の鐘に最後の魂を残しておいたのさ。でもそれだけじゃ、具現化も出来ない。だからこそ、真田丸でこの石川数正の子孫の女を助けておいて近くに隠したのさぁ! 僕の為にねぇ!」


「お前――豊臣秀頼!?」


 豊臣秀頼はホーキの身体を乗っ取り、この瞬間を狙っていたようだ。竹箒の一撃を受けて夜光は家康への攻撃を断念する。そして、石川伯耆数正の竹箒が家康の顔面を叩き、吹き飛ばした。ニタァ……と豊臣秀頼はホーキの顔で笑った。


「謀反人の力は偉大だろう? 家康ぅ!」


 怒りのままに豊臣秀頼はホーキの身体を操り、幾度と無く折檻を加えた。


「石川数正は豊臣では特に何も出来なかったけど、徳川の最後で子孫を活躍させてあげられて感謝すべきだよ! 数正本人は、死の間際には徳川を裏切った事を後悔してたようだけどねぇ! あははっ!」


「そうか……それは知っておるんだ秀頼よ。そして、その言葉によって石川数正の血筋が目覚めてしまったな」


「何を言って……!」


 そのホーキの顔から血の涙が流れている。宿主の豊臣秀頼はホーキを操る事が出来ない。全てを察する家康は目の前のホーキに懐かしそうな感じで声をかけた。


「数正。ようやく出会えたのぅ。もう昔の事は水に流し、また徳川に仕えてくれぬか?」


 溢れ出す血の涙は、石川数正の心を解放した。


「殿……かたじけない。この石川伯耆数正。今度こそ徳川家と共に全身全霊邁進していきまする!」


「ありがとう。数正」


 そして、納得する家康とは正反対の声が響いた。ホーキの身体から抜け出た魂だけの存在の豊臣秀頼は現状を理解出来ていない。


「ねぇ? ちょっと? おじさん達……何言っちゃってんのーーーっ! ぴょえーーーっ!」


 石川伯耆数正の改心とホーキの覚醒により、豊臣秀頼は完全に消滅した。立ち上がる家康は白髭を撫で、言う。


「あの亡霊はこうしなければ死なん。これで豊臣討伐は完了じゃ」

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