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29話

 歌劇でインスピレーションを受けたアリシアは、次の日は商業地区にある人気の仕立て屋、装飾品屋、帽子屋などを見て回ることにした。もちろんユミルとエナと一緒に、である。

「いらっしゃいませ、ユミル様」

「お久しぶりね。実は今日は姪を連れてきたのよ。ドレスに興味があるのだけれど、最近何か面白いものは入ってきているかしら?」

 ユミルは積極的にアリシアに協力してくれるようだった。新しい流行の形や素材、そして少し変わった商品などを見せてくれるように店員に伝えている。

――ユミルおば様がいると本当に心強いわ

「―は、――――日焼けしにくい素材でして――」

「え?」

 アリシアはとっさに聞き返してしまった。周りの衣装に目を奪われて、話をよく聞いてなかったが、日焼けしにくい素材、という言葉に引っかかった。

「アリシアどうかしたの?」

 ユミルがアリシアに話しかける。

「あの、この素材は日焼けしづらいと聞こえた気がするのですが」

「えぇ、お嬢様おっしゃる通りです。その素材は特殊な織り方と組み合わせることで、日焼けを防ぐことができるため、暑い季節にはお勧めのドレスでございます」

――これは……

「この素材と織り方は、耐久性はどのくらいあるのかしら?」

「え?耐久性でございますか?」

店員はアリシアの質問にポカンとした顔をする。普通の令嬢はドレスに耐久性は求めないからだ。ユミルは黙ってアリシアを見守っていた。

「耐久性は、そうですね、悪くはないです。多少擦れたりしてもぼろぼろになったりすることはございません」

「例えばこの素材を、牧場の作業着や帽子に使用することはできるかしら?」

「作業着と帽子ですが……織り方を工夫すれば問題ないとは思いますが」

「水で簡単に洗うこともできるかしら?」

「それは大丈夫です」

「でしたら、作業着と帽子を作っていただきたいのだけれど……」

――帰るまで1週間しかないわ。どうしようかしら。でも、これがあれば

 アリシアが考えていたのは、カレンと進めている牧場用の作業着と帽子の商いだった。かわいい作業着と帽子ができることはできたのだが「ただ可愛いだけ」という理由ではあまりうまく売れていなかった。特に平民は「可愛いだけ」にそこまでお金を払う余裕もない。是非、停滞している作業着と帽子の商いに、「日焼けしない」という要素を加えてみたいと思いついたのだった。

「あら、だったら市民用の既製品の服の中で、一番作業着に近いものを購入したらどうかしら?試してみて良かったら、改めて作業着を作ってもらったらいいわよ」

 ユミルがアリシアにアドバイスをする。

「そうですね。それでしたらすぐに用意することが可能です」

 店員もユミルのアドバイスに対して問題ないと続く。

「では、そうしますわ。いくつかサイズ違いでいただけますか?」

 アリシアはカレンと自分の分、それ以外にも牧場で働く従業員何名分かの服を購入した。牧場で試してみるつもりだった。

「ユミルおば様、ありがとうございます。助かりましたわ」

「ふふふ。アリシアのお役に立てて嬉しいわよ」



 その後も装飾品屋、帽子屋といくつも回り、夕方になるころにはアリシアはくたくたになっていた。

――本当に刺激的なものばかりだわ。オルカンドに帰ってから、店で提案してみたいわ。一度ユンさんも連れて来たら良い勉強になるかもしれないわ。

 アリシアがくたくたになってでも歩き回ってみたい、と思うほどオスルには様々な文化のファッションが集まっていたし、文化の融合された商品もいくつもあった。



 そして、料理も面白いものがあった。アリシアが聞いたこともないハーブ豚の肉の料理には驚いてしまった。ハーブ豚はハーブを食べさせて育てた豚で、ヘルシーで臭みがないのが特徴だった。アリシアはハーブ豚の脂身に甘みがあるようにも感じた。

――これは牧場でも取り入れてみたいわ。ハイドさんにも相談してみようかしら

「まさか、こんなにハーブ豚がおいしいなんて。脂身に甘みがあるように感じるわ。キルス領の牧場でも試してみたいわね」

「豚ですか?」

 エナが首をかしげる。今のところ牧場で豚を任せる良い責任者が見つかっていないのだ。

「そうね……豚以外の動物にも使えると思うのだけれど、そのあたりは相談するしかないわね」

 

 アリシアは積極的に初めて見る食べ物を試していった。中にはぶよぶよとした不思議な塊が入った、決しておいしいとは言えないスープや、見た目にこだわりすぎて味の組み合わせが最悪な料理、ハーブの使い過ぎで辛すぎる料理など、二度と口にしたくない失敗もたくさんあった。

 それらの料理を口にしたときは、アリシアは淑女のプライドと意地でなんとか吐かずにやり過ごした。


「エナ、新しいものに挑戦するのも、結構つらいわね」

「そうですね、お嬢様」

 エナにも意見を聞くため、まったく同じものを食べてもらっていたが、エナは表情が変わらない。相変わらず無表情だった。

――エナ、本当に尊敬するわ


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