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28話

 歌劇場は貴族街に近い商業地区にあった。オルカンドとは比べ物にならないほどの大きな建物をしており、内装も凝った造りになっていた。

 アリシアはこの日は持参していたアリシアブランドのドレスを着ていた。誕生日にも着ていたエメラルドグリーンのワンショルダーのドレスだった。いくつかあるドレスの中から、ユミルがこのドレスが良いだろう、と言ったのが、このドレスを決めた大きな理由だった。

 ユミルが用意してくれた席は2階席だった。2階席は貴族街に住む住民のための席だった。2階席用の扉から中に入ると、そこにはすでにたくさんの美しく着飾った紳士淑女がいた。

――素晴らしいわ!見たこともないようなドレスの方や、それに独特なセンスの方もいらっしゃるのね。

 アリシアにとってはドレスの品評会に参加しているのか、と思うほどだった。

「ユミルおば様、素晴らしいドレスばかりですわ」

「そうね。デザイナーの方々もいらっしゃるから、個性的な衣装の方もいるでしょう?」

「そうですね。あちらのオレンジのドレスの方は、ドレスと帽子の組み合わせが斬新ですね」

「あぁ、あの方は商業地区にお店を構えていらっしゃるのよ。実は帽子のデザイナーなの」

「素敵ですわ。夢のようです。」

「良かったわ、アリシアが気に入ってくれて」

 アリシアはユミルと話しながら、周りに夢中になり、きょろきょろとしてしまう。

――歌劇を見なくても十分楽しめるわ。皆本当に素敵なのだもの

「是非オルカンドでも販売したいようなデザインがたくさんあります。あのフワッとしたドレスは、オルカンドでも人気商品になりそうな気がしますわ」


「くす、こんにちはお嬢様」

 アリシアは突然後ろから声をかけられ、とっさに振り向いてしまった。

――何かおかしなことを言ってしまったかしら

 アリシアに声をかけた男性は、アリシアよりも少し身長が高い、緑色の髪にグレーの瞳が魅力的な男性だった。たれ目でナンパな印象の男性はアリシアを見ながらくすくすと笑っている。

「あら、アレス様、ごきげんよう」

 ユミルが横で男性に向かって挨拶をした。

――ユミルおば様のお知合いかしら?

「ごきげんよう」

 アリシアは自分から名乗るべきか分からず、とりあえず挨拶だけすることにした。

「こんにちは。僕はアレスと言うんだ。名前を聞いていいかな?」

「はい、アリシア・キルスと申します」

「アレン様、私の姪ですわ。ナンパはご遠慮くださいね」

――ナンパが趣味の方なのね

「これはこれは、ザクレン夫人。そんな冷たいことをおっしゃらないでください。僕はこのお嬢さんとお友達になりたいだけですよ」

 アレンが大げさに悲しそうな表情を浮かべる。

「アレン様、アリシアはアレン様の遊び相手には向きませんわ」

「遊び相手だなんて人聞きが悪いなぁ、ではアリシア様、また会いましょう」

 アレンはそう言うと笑顔で手を振り早々に立ち去っていった。


「ユミルおば様、あの方はお知合いですか?」

「そうよ。あの方は、アレス・ルワン様。この国の第3王子なのよ。でもあの通りの性格なのよね。悪い方ではないのだけれど。」

「そうですか、女性がお好きなのですね」

 アリシアはつい本音を口に出してしまった。ユミルはそれを聞いて苦笑している。しかし、ユミルの表情を見る限り、アレスは本当に悪い人ではないようだった。ユミルのアレスに対する表情は呆れながらも好意的に見えたからだ。

「ユリウス王子とずいぶん性格が違うみたいですね」

「あら、ユリウス様にはお会いしたことがあるの?」

「はい」

「そうね、ユリウス様は冷静沈着で、アレス様は遊び人、というイメージがあるのよね。でも2人は仲が良いし、アレス様も決して悪い人ではないのよ」

「わかります。ユミルおば様への接し方を見ても、悪い人には見えませんでした」

「あら、アリシアは見る目があるのね。でも遊び人なのは本当だから、あまり近寄ると火傷してしまうわ」

 ユミルは笑いながらアリシアに忠告した。アリシアは、自分は1週間しかオスルには滞在しないし、もう会うこともないだろう、と聞き流すことにした。



 その日ユミルと見た歌劇はアリシアが初めてみる演目で、とても素晴らしいものだった。国の権力者に見初められた下級貴族の女性と平民出身の騎士。その二人が恋に落ち、身分差を乗り越え愛を貫く、という話だった。アリシアはその歌劇を見ながら、最後は感動のあまり涙を流してしまった。演技がとても素晴らしく、感情移入してしまったのだ。

「はぁ、なんて素敵なのかしら」

「今、一番流行っている演目なのよ」

「本当に素晴らしかったですわ。あんな風に男性に思われるのは、女性の理想ですね」

「そうね。あの騎士はとても情熱的よね。愛のために命を懸けるのですもの」

「それくらい想われたら幸せですわ。私も……」

 アリシアはウィルキスのことを思い出してしまった。

――ウィルキス様はミリー様のこと、命を懸けるくらい想ってらっしゃるのかしら?……はぁ、なんだかんだ言って、私も本当に引きずっているわね。早く忘れられたらいいのに


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