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なんで勇者がこんなところに?!  作者: 糸以聿伽
第二章 勇者の戦場
42/42

なんで勇者はここにいる?

最終話

 見慣れた扉の前にある二段しかない階段を、見慣れない白い軍服を着た、見とれるほど眉目秀麗な、見間違うわけない男性がトトっと軽やかに降りてくる。


 それはまるで少女マンガの王子様のような……いや、にしては野性的な動きで彼は私の目の前にやってきた。


「『約束』のもの、持ってきました」

 差し出されたそれは、待ちに待ってたはずの私の大好きな絵本。

 完全に思考が停止している私は、差し出されたものを作業のように無機質に受け取る。


 思った通りの美しい装丁を目が写しているのに、写し続けているのに……本を見たまま微動だに出来ない。

 目線は本に固定されていた。

 ブラウザーの読み込みが出来なくなった画面みたいに真っ白で固まった私の思考も微動だにしない。


「アグリモニーさん」

 かけられた声が、今更ながら緊張して固くなっているのがわかる。わかろうが、わかるまいが、完全にキャパオーバーした私の脳みそは真っ白なまま。


 大きく深呼吸して声の主は、その低めの艶のある声で言葉を紡ぎ出す。

「ずっと……あなたを想っていました」

 静かに、でも芯のある音は私の心を震わせた。

「そして、これからもずっとあなたを想って生きていきたい。もし、アグリモニーさんのこれからの人生に俺を想ってくれる可能性が有るのなら」


 一歩、近づいてくる足音。

 下を向いている私のすぐ近くで、膝をおる気配がした。


「この手を取ってもらえないでしょうか?」

 差し出される大きな手のひらがみえる。


「俺は、アグリモニーさんが……好きです」

 聞きたかった言葉。

 少年の声でなく、水晶越しでもなく。


 それは、ヴァル・ガーレンの──声。


 私は止まった思考を動かす。

 ──Ctrl+Alt+Del 

 強制終了コンマンドつかってでも動けよぉ!


 再起動してヴァル・ガーレンの手を取りますか?


 NO

 YES


「選択肢なんて……」

 ギシギシいってる脳みそ。

 そこを通さないで心から出るそれが、声帯を通して音になる。


 ──バシン!!!!!

 本を左に抱え、右手で差し出されたその手を叩くように勢いよく握る。そして、それを強く引っ張りながら歩き出した。


「うわ」

 と驚く声が聞こえたけど、無視してそれを握りしめ、扉の前の階段に一目散に向かう。


 一段私が登った所で、その手を勢いよく離した。


 そして、振り返り──私はヴァル・ガーレンの銀の瞳を睨んだ。


 視線を合わせる為に、一段登ったのにまだ少し見上げる位置にそれはある。

 振り向いた私の顔を伺うその顔に、溢れる感情が止まらない。視界がどんどん歪んで、困惑する顔をぼやけさせる。


「ア……アグリモニーさん……」

 私はもう止まらなかった。

「モニカ!!!」

「え?」

 至近距離で突然叫んだ私にヴァル・ガーレンは、なんだか解らないという風に声を出す。


「私のこの世界での本名は『モニカ』なの! あと、なんで白い服着てるの?!! いつも、真っ黒じゃん!! なんでこんなに早く来ちゃうの?!! なんも用意できてないよぉ!!!!」

 溢れ出した感情は、支離滅裂にどんどん言葉になって、ポロポロとこぼれ出す涙と一緒に出て行く。


「なんで……『お帰りなさい』って言っちゃうの?……私が……言いたかった……のにっ」

 泣きじゃっくりが出てきて、言葉が紡げなくなってくる。


「うう……どうして、いつも……いつも……」

 もう、彼の顔も解らない。

 本当は、ちゃんと準備して余裕をもって迎えたかった。

 前世も含めた記憶と経験で穏やかに大人にって思ってたのに……彼はこうして、いつも私の本性を自覚無く剥き出しにしてくる。


 そう、私はこうやって思い通りにならないと不安定になってしまうそんな、面倒な女なんだ。

 それを、今まで『前世』だとか『枯れてる』とかってごまかしていたのに……何もかも繕うことは出来ず、ただただ私は声をだして泣く。


 きっと、すっごいブス顔だ。

 酷い言いがかりだ。

 逆ギレだ。

 それを、ひたすら投げ付ける相手は静かにそれを受け止めてくれている。


 こんな私を、彼は呆れるだろうか……

 そんな自分が情けなくて奥歯を噛み締めて、俯いた。


「……それでも……私は……ヴァル・ガーレン、あなたが……すき」


 呟きにしかならなかった。

 掠れる声は、今、私を溺れる程に満たす只ひとつの想いをなんとか音にした。


 ──ふわり

 柔らかく包み込まれるように、優しく私は抱きしめられた。


 優しく丁寧に、私をまるで壊れもののように包み込む腕。

 階段の段差をしても私は彼より背が低い。

 詰め襟の合わせにある金色の装飾が額にあたる。

 布越しに感じる体温が私の思考をどんどん溶かしていく。


 私もゆるゆると彼の背に手を回す。

 それを感じたのか、抱きしめる腕に力がこもり強く強く抱きしめられた。


 魔王戦の時、突然現れた私を抱きしめたあの腕だ。


 隙間無く密着した彼を全身で感じる。

「夢じゃ……ないよな」

 そう呟かれた言葉は声というより、体を通した響きで感じた。

 まだ、鼻を啜る私はわざと低い声で

「夢の方がいいかもよ」

 といった。

「よくないっ」

 さらに強く抱きしめられる。

 さすがに、強すぎて「ぐえっ」と肺から空気がでた。

 わぁっと言って慌てて腕を緩める彼を、私は離さないように腕に力を込めて抱きしめる。


 キュッと答えるように、また暖かく優しい腕が私を包んだ。


 ふふっと嬉しくて、笑い声が出る。

 泣いたり笑ったり、心が忙しいったらありゃしない。

 涙はおさまって、ぽわぽわと胸の中が暖かい。

 ずっとくすぐられてるみたいに、笑顔が止まらない。


 ──ほんと、かなわない。

 いつも、想定外な登場をして私を翻弄し続けるヴァル・ガーレン。そして、驚くほどの器で私をこうやって受け止めてしまうんだ。


 どこか天然な大きな可愛い彼を、私は甘やかしたくて仕方ない。それと同時に、彼のもつ大きな器に甘えたい。

 だから、決して否定されないと解っている質問をしてみる。

「こんな私だけど、いいの?」

「アグ……モニカさんがいいです。モニカさんこそ……俺、ずっと一生そばにいてもいいんですよね?」


 もう、なんでそんな可愛い事言うの?

 私は即答する。

「いいよぉ」

 密着してるおかけで、にやける顔を見られないですんで良かった。でも、声に緩みきった私の心は乗ってしまったはず。

 緩みついでに

「二人で幸せになろうね」

 そう言うとヴァル・ガーレンは、あぁ~と悔しそうに息を吐いて抱きしめる腕が緩み、私の肩にコトンと頭を乗せてきた。


 ん? と身じろぎすると

「それ、俺が言いたかったです」

 残念そうな声。

「お互い様だね」

 クスクス笑うと、ヴァル・ガーレンは組んだ手を私の腰に当てて上体を起こす。

 私も少しだけ体を反らして、ヴァル・ガーレンを見る。


 彼は嬉しそうに微笑んでいた。

 私の大好きなその笑顔がこんなに近くにある。


 私はコトンと彼の胸に顔を付ける。

「お互いついでにさぁ、私の過去を話したんだから、あんたの昔の話も聞かせなよ」

 そう言うと、ヴァル・ガーレンはうへっと言った。

「15の時を見てるじゃないですかぁ」

 拗ねたような声がする。

「なんでも、知りたいんだよ。……恋人の事はね」

 なるべくサラッと言ったつもりだったけど、ヤバい思いのほか照れる。

「おっ……おおおお!!恋人ぉ、こいびとぉ……」

 また、ぎゅっと彼の腕に包まれた。

 うう、恥ずかしいなぁ。自分、こんな事言える人だったんだなぁ。

 うげー砂糖吐くよーぺっぺっ!

 でも、それが嫌じゃないから、もう重症なんだろうな。


 ほんとの気持ちを言葉にして、喜んでもらえるなら、砂糖だって蜂蜜だってステビアだって吐きますがなぁ。


「俺、こういうのはじめてなんで……めちゃくちゃ嬉しいです」

 ん?はじめて??

 私は顔を上げて彼を見る。

「今までだって、誰かと付き合った事あったんでしょ? 『恋人』って言われた事ないの?」

 ヴァル・ガーレンは真面目な顔で

「誰とも付き合った事ないんです。俺……その、恋人出来たのはじめてで……」

「嘘でしよ?! そのスペックで?!!」

 驚いてツッコミがまた表に出た。

「すぺっ……はちょっと、解らないんですが、ほんとです。すみません、経験なくて……頼りなくて」

 ショボンとうなだれたその憂い顔が、またツボるぅ!!

「いやいや! 謝らんでいいよ、つーことは……その……体だけの関係とかだったの?」

 ショボンから突然、顔を上げて真剣な表情で

「そんなの出来ないです!……俺、ほんと……モニカさん以外は女性として意識出来なくて……」

 頬を赤らめながら言うヴァル・ガーレン。


 あう! 忘れてた! この人、乙女だった。

 つーことは、あれだ……まさかの!? まさかのぉ~?


「えっと……もしかして、女性関係は、未経験?」

 あたしゃ、何を質問しとんじゃぁ?

 さっきまで、デロ甘い空間にいたのに、なんでこんな事に?


 もう、さすがヴァル・ガーレンとしか……


「ありません、すみません。でも! 俺、頑張ってモニカさんと必ず幸せになります!! だから、その、至らない所は言って下さい! 即、直せる事は直して、努力していきます!」


 恋人距離からヴァル・ガーレンは一歩下がって深々と頭を下げた。

 えー? そっちも初めの魔女(ビギノジャニター)ってか?

上手い! 私の残念思考に座布団一枚。


 私はふーっと溜め息をついた。

「わかったよ。あんたも何かあったら言ってね、私もあんたに逃げられないように努力するからさ」

甘い空間に慣れてない私と、その空間が初めての天然君。


 下がった頭がバッと上がる。

「俺、逃げません」

 真面目かぁ!

「はいはい」

 なんだろ、これ楽しいや。


 こんな空気は──なんとも、私達らしい。

 うちらきっと、こんな感じでずーっと一緒にいるんだろうなぁ~そう思えた。


「さて、そろそろ家に入りたいなって思うんだけど、寄ってく? ヴァル」


 私はジグザ兄さんから受け取った、王様からのメモ(まぁ、書いたのは側近でしょうがね)を見ながら扉にかかっている【(ロック)】の解除呪文を読みあげる。


 カチャリと音がして扉が開いた。

 セキュリティーばっちりー♪

 中も特に異変はなかった。

 カウンターにあったカップなども片付けてある徹底っぷり。


 流石っすなぁロイヤルクオリティー♪

 カウンターに大切な絵本を置いて、おや?と思う。

 後ろ静かじゃない?

 当然、私の後ろについて中に入ってくるもんだと思って返事を待たずに行動したが、なんか音沙汰なさすぎくない?


 そして、振り向いてびっくり!


 うへへ~♪

 と表現するしかない、ふにぇら~とした顔のイケメンだったものが開いた扉の向こうで、佇んでいた。


「え? ちょっと、どーした?」

 慌てて扉まで引き返す。

「うへへ~」

 言ったね。

 やっぱり間違ってなかったな。

「じゃなくて、どーしたの? 入らないの?」

「モニカさんがぁ……モニカさんがぁ、初めて……」

 初めて、なんじゃい?!


「ヴァルって言ってくれたぁ!!!!!」

 それは、ガッツポーズだった。

 魔王を倒した時は、一つだった拳が二つ天に向かって伸びている。


 あ……そういえば、そうだった。

 ついポロリと出たけど、なんか改めて言われると照れるじゃないか。


 ヴァル・ガーレン──ずっとずっと意識してワザと距離を置くようにフルネームを呼び続け、癖になってたその呼び方。

 ほんとは、ずっと『ヴァル』って、呼びたかった。


「もー、いちいちそんな事で大げさに喜ばんでよろし、ほら中入って」

 照れ隠しは、ついついぶっきらぼうな言い方になってしまう。それでも、ヴァルはルンルンとした足取りで私の開けた扉から入ってきた。


 私は彼が中に入ったタイミングで言う。

「お帰りなさい」

 ちゃんと、笑顔で言えたかな?


 ヴァルは、銀の瞳をキラキラさせてこちらを向いた。

 そこにあったのは、特上の笑顔。

「ただいま」

 ヴァルの心地良い声が、暖かく私の心に届く。

 私も、それを言えた事が嬉しくて笑う。

 彼の瞳がそんな私を捉えて離さない。

 私も彼の瞳から目が離せない。


 見つめあった瞳がどんどん近づく。

 ヴァルの大きな暖かい手が私の肩にかかる。

「あの……キスしてもっ」

 彼が全部言い終わらないうちに、私はつま先だって彼の頬をもって引き寄せる。

 そして、彼の唇を私の唇でふさいだ。

 あの月の夜、行き倒れた彼に同じように私から唇を重ねたけど、今度はちゃんとヴァルがこの出来事を覚えていてくれる。


 ──忘れないでね。


 柔らかいその感覚を再び感じられて、嬉しくてたまらない。

 優しく触れ合ってるだけなのに、ドキドキした。


 それは、一瞬の触れ合い。

 すぐに離して私は彼を見上げて言う。


「レッスン1(ワン) キスする時は聞かなくてよろし。ヴァルにキスされて嫌な訳ないんだから」

 顔を真っ赤にしているのは、お互い様。

 照れ隠しに、私がそんな事を言うとヴァルはコクコクと素直に頷いた。


 くぅー、ステビアが出ちゃうぅ~。

 あーあかんあかん、このままだとほんと自分の吐く言葉で虫歯になりそうだ。


「さて、そろそろ夕方だしご飯食べてく?」

 その言葉に、ヴァルは何かを思い出したように、はっとして元気に答えた。

「はい! 据え膳頂きます!!」


 ──どんがらがっしゃーん!

 私は盛大にずっこけた。

 慌てたヴァルが私を抱きとめて床に倒れる事はなかったけど、棚に並べてた商品が幾つか落ちた。


「なっ、何いってんの?! え? 意味わかってんの?!」

 真っ赤だったのに、さらに私は頭から湯気が出そうになるほど顔が熱くなる。

「だっ、大丈夫ですか? あのご飯の事だとレイナから聞いたので」


 あぁ……ああ、そっちの意味の方かぁ。

 びっくりしたぁ。

 レイナさん、サンキューです。

 頬染めてたけど、誤魔化してくれたんだね。

「そうね……据え膳ってのは、本当は準備してある食事ってことなんだけどね。ごめんね、今から作るからさ」

 と、取り繕うように説明するとヴァルは申し訳なさそうに使い方を間違ったと謝罪した。

 でも、そのあとニコニコしながら、

「俺、待ってます。モニカさんが食事作ってくれるの待ってる時間、好きなんです」

 とか言う。


 ──キュン

 ぐはっ! 天然のお砂糖攻撃がクリティカルです!!


 私は立ち直りながら、話題を変える。

「そういえば、なんで白い服なの?」

「あ、これカフスタークの式典用の正装なんですよ、俺、白いのこれしかなくて。えっと理由は、『日本』では『あなたの好きな色をこれからは身につけます』という決意をこめて神の前で愛を誓い合う儀式がある、とレイナが言ってたってフォスターが教えてくれて」


 いやまてぇ!!!!

 フォスター・オルロフ、お前、確信犯だろ?!

 それは、花嫁が『あなたの色に染めて下さい』って純白のウェディングドレス着るってやつでしょ?

 それに、白は『純潔』を示すとかも含めてんだろ?!!

 あーいーつーめーぇー!

 不適に笑う聖騎士が浮かぶ。


「わかった……私、それも格好いいと思うけど、いつもの黒のが好きだな」

 そう言うと、ヴァルは嬉しそうにトロけた笑顔をして、私をまたぎゅっと抱きしめる。


 えー? これなんか砂糖入ってた?

 普通だよね?

 とりあえず、その他の疑問はご飯たべながらだ。


 こんな風にフワフワ甘くなったり、しょっぱくなったり……私の日常はこれからどーなってしまうのだ?

 そんな事を思いながら、それが嫌じゃなくて、ドキドキワクワクしてる私はほんとに、この乙女勇者にすっかりやられちゃってんだなぁと思う。


 そう、選択肢なんて……自分の気持ちを自覚した時から、一個しかない。


 YES← Enter!!!


 私は彼と──ヴァルとこうやって一緒に生きていくんだ。

 そして、私はヴァルと二人で幸せになる!

 これは、記憶に有る限り私にだって初めての事。


『幸せにおなり』

 胸の奥からお婆ちゃんの声が響いた気がした。


 うん、幸せになるね。

 私を今、嬉しそうに抱きしめる暖かいこの人と一緒に……


「あ! そうだ!!」

 そう言ってヴァルは抱きしめてた腕を離して、真剣な顔で私を見つめる。

「ん? なぁに?」

「えっと、据え膳頂きますの後に言ったら効果覿面ってレイナに言われた言葉があるんですけど……意味が解らなくて……」


 え?……う、なんか悪い予感しかしない……でも、レイナさんだから大丈夫だよね?

「お、おう、ゆうてみ?」

 間違ってたら言って下さいと言ってから、彼は深呼吸をした。

「はい、では」

 真剣な眼差しで彼は私の瞳を見つめながら、口を開く。


「俺と、にゃんにゃんしてください!!」


 ──どんがらがっしゃーん!

 私は後ろの棚に盛大に後頭部からダイブした。


 これまた、ヴァルに間一髪で腕を引っ張られて、ひとり投げっぱなしジャーマンにはならなった。


 ごらぁぁぁあああああああ!!!!

 なんて事教えてんじゃぁ!!!!!

 レーイーナー!!!!

 お前も確信犯だな?!


 つか、死語だろ……あ、いや、レイナの転移して来た時間ではリアルタイムっ──てそんな事どぉぉでもえぇぇわぁああい!!


 ほんと、うちの乙女(オトメ)ンに何吹き込んじゃってますのん!


「モニカさん! モニカさん!! 大丈夫ですか? 俺やっぱり間違ってましたか? すみません、すみません!!!」


 心配そうに、必死に謝るヴァルが……可愛くて仕方ない。

 私はヴァルの頭をワシャワシャと撫でた。

 きっと、私の笑顔もトロトロの締まりのないにやけ顔だろう。


 でも、彼にはそれを見せてもいい。

 だって、私は、

「大好きだよ、ヴァル」

 眉間によっていた皺が消えて

「俺も……モニカさんの事、あ……愛してっま、す」

 真っ赤になりながら、言い慣れなさ過ぎてぎこちなくなる口調。

 でも、それは彼の本心だって伝わってきた。

 あぁ……どんな、彼も好きだなぁ。


 ヴァルは、私の顎に指をあて持ち上げた。

 そして、私の唇を柔らかい唇でふさぐ。

 流石が勇者、レベルの上がるファンファーレが聞こえて来そうな、心地良いキス。


 それが、ヴァルのお腹の音で中断するのはあと五秒後の話。


 私の居心地のよいこの場所に、ヴァルがいてくれる。


 きっと、みんな疑問に思うだろう?

 初め(チュートリアル)の魔女が住むこんなところに、なんで世界を救った勇者がいるのかって?


 そんな奴がいたら、私は不適に笑って豆腐の角をそいつにグリグリとおしつけて言ってやる!


 それは、勇者(ヴァル)初めの魔女()と一緒に幸せな日常を送る為にここにいるんだよ──とね。



~fin~




完結です。


4/4の活動報告にあとがきっぽいのをあげておきます。

ここまで読んで下さったすべての皆様に感謝!


感想お待ちしてます。

一言でも、長文でもなんでもお待ちしてます。

もちろん、気になる点だけでも、指摘でも、誤字脱字報告のみでもよいので、何かお気づきの点がありましたらよろしくお願いします。


ありがとうございました。

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