見つけた
鬼さんだあれ。
「ひなちゃんみーつけた」
その声に顔を上げると、にこっと笑顔にぶつかった。へへ、見つかっちゃった、と照れ笑いで返す。みっちゃんが手を出してくれたのでそれを掴んで立ち上がる。
「ひなちゃんはいつも木の後ろにいるね」
そうだっけ、と首をことんと傾げる。
「大っきな木の後ろとか、ざーっと並んでる低い木の影とかさ。そーゆーとこ」
「かなあ?」
手を引かれて歩きながら、うーんと考えてみた。言われてみれば確かに、建物の影だとかにはあまり行かないなと思う。絶対最後まで見つかるもんかと思う反面、やっぱり早く見つけてくれればいいなあとも思っている。ドキドキしながら待つのは楽しい。
「ふふっ。まあ、いいんだよ? ひなちゃんが好きな所に隠れてれば。皆そうなんだし」
「かなあ? ねーねー、ひなが鬼?」
「んーん。次はやっちゃん」
「そうなの? ちぇっ」
鬼になりたくない子が多い中で自分は率先してなりたいタイプだった。あちこち駆け回って「みーつけた!」と隠れている子達を見つけた時の快感は結構好きで。
みっちゃんは「ひなちゃんは鬼、好きだよね」と可笑しそうに笑った。いつもそうだよね、と。
「ひなちゃんが鬼の時はどきどきするよーどこ隠れてもすぐ見つかっちゃうんだもん」
「えへへーひなはねぇ、あれがあるんだよ。えーっと……あー……アンテナ?」
「ウィーンウィーン、って?」
頭の上に指を立てて、ひなちゃんのは鬼の角じゃなくてアンテナなんだねえ、とまた笑う。あらら、冗談だって思ってる。結構ちゃんとしたものだという妙な自信はあるんだけどな。
「さーて、次探してこよっと。まだ二人いるんだよね」
「がんばってね、みっちゃん」
広場の真ん中で既に見つけられた子達と合流して、駆け出すみっちゃんの背中を見つめていた。
* * * *
そしていつからか私にはわかった。これはみっちゃんにだけ働く女の勘なんだって。だったら使わないわけにはいかないだろう。
まるでかくれんぼの続きのようにすっと居なくなったみっちゃん。進学してご近所さんじゃなくなってしまった頃に、ああ、私が鬼で、見つける番なのねと勝手に解釈して。
やっとこさ見つけた背中は昔と変わらず姿勢が良くて、嬉しくて堪らなかった。そこにぎゅっと抱きつくのもいいなと思ったけれど、それでは昔と変わらない。そんなの嫌。
「みっちゃん、みーつけた」
にこっと笑顔を浮かべながら真正面からそう宣告すると、みっちゃんはものすごく驚いた顔をして、でもその後すぐ「見つかったか。そっか」と少し困ったような顔をしてみせた。
「ひなにはアンテナがあるって言ったでしょ?」
私が鬼でみっちゃんが隠れる方だから、そうしなきゃ終わらないもの。終わらなければその次が始まらない。そんなのつまらないじゃないか。
「そうだったっけ。そうか。うん。……なら、仕方ない」
今度はオレが鬼の番だよね、と彼はどこか愉しげに言って、こちらの手を掬ってぎゅっと強く握りしめた。
「鬼の僕はきっと怖いよ?」
(20140523)




