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君の遺影を撮りたい  作者: 有原優


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第七話 遊園地

 ついに彼女と、秋峯さんと遊園地に行く時がやってきた。

 僕はワクワクしている。

 実際、前日ほとんど寝る事が出来なかった。

 目がぱっちりと覚めてしまい、目をつぶることが中々出来なかったのだ。


 今日は体調がばっちりでないとダメなのに、6時間くらいしか寝ることが出来なかった。


 いや、六時間も寝たら十分かもしれない。

 だけどできるならば八時間くらいは睡眠を確保しておきたかったのだ。


 時計を見ると、朝九時。僕は伸びをして、そのまま部屋を出る。


 リビングには母さんがいた。


「おはよう」

「おはよう、沙雪」



 そう言って僕に手を振った。


「出かけるの?」

「うん、そのつもり」

「気を付けてね」


 そう、母さんは力ない声で言った。

 


 今日は秋峯さん、違った祈里さんと一緒にご飯を食べる予定。

 だから、朝は納豆とご飯だけを腹に詰め込んだ。所謂THE朝ごはんだ。


 そして食べ終わった後、僕は家を出た。


 目的地までは20分くらいしかない。

 僕は電車の中で漫画を読む。

 今日は現地集合だ。


「あ」


 電車の向かいの席に祈里さんが座っていた。

 現地集合のはずだけど、祈里さんも同じ電車に乗ったのか。


 写真を撮りたい。

 僕はカメラを消音モードにして、祈里さんの姿を撮った。

 

 そして、遊園地に着いて早速、僕は祈里さんの元へと言った。


「おはよう」


 祈里さんが早速僕に手を振ってくれた、僕も手を振り返す。

 そして、僕たちは遊園地に入る。


 そこには多くの客がいた。

 

 人が多すぎる。

 少々やりにくさを感じる。


 なんだか人酔いをしてしまいそうだ。


「大丈夫?」


 祈里さんが僕の顔を見る。


「人が多すぎて、少しね」


 正直人はそこまで得意ではない。


 過去に色々とあったせいで、人が多い環境は苦手だ。

 何しろ、じろじろと見られてしまうからだ。

 学校で髪の長さをいじられたりしたときの事を思い出す。


「そう」


 そう言って祈里さんは僕の前を進んでいく。

 僕はそんな祈里さんの後を追うように進んでいった。



 そして歩いていくと、早速大きなアトラクションが見えた。

 ジェットコースターだ。

 僕は、思わずゲッと呟いてしまった。


 「ジェットコースター嫌いなの?」


 その言葉に僕は静かにうなずいた。


「大丈夫、乗るのは私だけだから」

「そっか」


 確かに僕まで乗ってしまっては写真を撮れなくなる。

 写真を撮れない毛おの乗り物なのだから。


「じゃあ、大丈夫なのか」

「うん。ばっちり写真撮ってね」


 そう言ってグッドマークを作る。

 



 僕がジェットコールターに乗らないとは言っても、乗り物に乗るのは、並ばなければならい。

 僕は祈里さんの後ろに並ぶ。いざ着いた時に、l僕が離脱する。そう言う目論見だ。

 僕たちは列の中でいろいろな話をした。今日どこに行くかとか、色々な事だ。


 そしてすぐに順番がやってきた。

 祈里さんが向かっていく。僕は手を振って、「がんばって」と言った。


 実の所、祈里さんもそこまで絶叫マシンは得意ではないらしい。それも、今日の朝まで乗るかどうか迷っていたくらいだ。


 だけど、写真に自分の絶叫する顔を残したいから、乗りたいらしい。

 責任重大だ。

 正直言って動くものを激写するのは大変だ。


 動画を撮って、それをスクリーンショットした方が楽かもしれない。

 だけど、僕は取らなければならない。


 それが彼女の望みなのだから。

 僕はまず、ジェットコースターに乗る彼女の姿を撮った。

 ちなみに片手にはスマホを構えている。

 

 これは動画を撮るためだ。

 僕はカメラを手に取り、そして、どんどんと上へと上がっていく祈里さんを撮る。

 ドキドキしている様子が見える。

 今から彼女は絶叫地獄へと向かっていくのだ。


 精神的に死ぬかもしれない事だ。


 だけど、彼女の姿をじっと見ると少しだけ嬉しさもあるように見える。

 彼女が怯えているだけではないことの証左かもしれない。

 

 恐れとわくわく二つの感情がある。そんな彼女を見るのは、写真アg撮れるのは、かつてない嬉しさに襲われる。

 楽しみだ。彼女の顔が恐怖に満ち溢れた顔になるのは。


 おっと、こんなことを言ったら、ラスボス感が出てしまうな。

 そんなことを思いながら、カメラを構え、もう一枚パシャリ。

 段々と表情が変わっていく。

 それを見るのが、楽しい。


 そして――


 彼女は地獄。そう、頂上へとたどり着いた。

 ギギギと、少しづつ頂上へと向かっていった。

 そして最終的には地獄へと送り込まれた。

 一気に下へとかけていく。



 その速度が速く思うようには取れなかったが、二枚だけ取った。一枚はぶれていたが、もう一枚は、きちんと撮れていた。

 彼女の絶叫の表情が取れた。


 ちなみにここのジェットコースターは何度も取るチャンスがある。一周を長い時間をかけて回る、という訳ではない。

 何度も何度も同じ場所へと戻っていくのだ。そう、様々なルートを通って。そのたびに彼女の顔がどんどんと暗くなっていく。

 生気を失っていっている。僕はそれを見るのが楽しくなってきていた。

 次はどんな表情の変化を見せてくれるのだろう。


 ちなみに二週目以降はちゃんと写真を撮ることに成功していた。

 僕の手にかかればこれくらいの写真はお手の物だ。


 写真を激写していくこと暫くついに、彼女の乗るジェットコースターは最終的な終着点へと到着した。


 その時の祈里さんの顔はもう忘れられないだろう。まさに、死んでいた。

 顔が死んでいた。


 これは芸術的な写真だ。

 僕の中で永遠に残っていくだろう。


 さて、写真を撮り終わったので、僕は出口の方へと向かう。

 そこから、生気を失った祈里さんの姿が見えた。


「大丈夫?」


 僕はそう訊きながら、写真を撮る。


「もう無理」


 彼女はそう言って僕にもたれかかってきた。

 まだ一個目のアトラクションだというのに、一つ目で絶望されると困る。

 これから何枚も写真を撮って行かなくてはならないのに。

 全く困ったものだ。


「少し休む?」


 その言葉に、祈里さんは黙って頷いた。




 

 僕たちはそのまま近くのベンチへと行く。

 ベンチに座り、そのまま二人で会話となると思っていたが、祈里さんはぐったりとしている。


「酔ったの?」

「うん。かなり」


 かなりかあ。

 だったら結構休憩の時間を入れないとだめだな。


「私の事」

「ん?」

「私の事ほっといていいから。一人でいろいろ見て回ってくれてもいいから」

「いや、そんな訳にはいかないよ」


 僕はそう、言葉を返した。


「僕は祈里さんが回復するまで待つよ」

「ありがと」


 そして、僕の肩に頭を乗せてきた。

 これは、狙っているのか。それとも天然なのか。

 おそらく後者かな、と思った。

 何しろ、わざわざ僕に色仕掛けをする必要性がないのだ。


「この前も」祈里さんが口を開く。「気づいたと思うけど、私、体力がないの。だからかな、こんなに酔っちゃったの」


 やっぱり体力がないのか。この前も爆睡してたし。


「大丈夫、僕はいつまでも待つから回復したら行って欲しい」

「ありがとう」


 そして、祈里さんは微笑みながら「自慢の彼氏だね」と言った。



「何言ってるんですか」

「本気にしないでよ。ストーカー盗撮魔」

「もうそれ言うのやめてください」


 僕がそう言うと、楽しいのか、祈里さんはまたふふと、笑った。


「でも、優しいよ、三輪君は」

「ありがとう」


 人から褒められる経験自体がほぼ皆無だから、少しうれしい。


 その後、祈里さんに「顔赤くなってる」なんて言われたから「うるさい」と返しておいた。

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