第16話 異変
ただ、問題が生じたのはその次の試合だった。
僕はその時の光景を忘れられないだろう。
その祈里さんの倒れた光景を。
それは突然にして起きた出来事だった。祈里さんがサッカーのためにグラウンドを駆け走っていた時、突然に祈里さんがその場に倒れたのだ。
悪い夢だとも思った。祈里さんはその後しばらくは立ち上がらなかったのだから。
祈里さん君は一体、何なんだ。
そう、下でタンカで運ばれる祈里さんを見て呟いた。
僕はまだ祈里さんの事をよく知らない。
そう、思い知らされた。
そこから、少しの休憩を置いて、体育祭はまた開始された。しかし僕の木は気でなかった。
今すぐにでも飛び出して、祈里さんの元に行きたい。そんな気持ちだった。
「ねえ、貧乏ゆすり酷いよ」
僕はその方向を見る。そこにいたのは、岸沢さんだった。
「知らない」
僕は小さい声で言った。
「僕は、不安なんだ」
「分かる。わたしも心配。でも今はここから離れるわけにはいかないから」
「そう言う話なのかな」
「大丈夫。祈里はきっと大丈夫。そんな確信があるから」
そう言う、岸沢さん。だけど、その表情を見ると、やはり不安なそうだった。
結果として、うちのチームが勝利した。
二位だ。大躍進だけど、そんな事は関係がない。
不安な気持ちしかない。
もし彼女が、いなくなったら僕はどうしたらいいんだ。僕にはその答えがどこにもない。
そして、球技大会が終わった。
僕は、早速岸沢さんのもとに行く。
少し怖いけれど、でもずっとこのままじゃきっとその方が怖いから。
「何か知ってるの?」
僕は訊いた。
僕の脳裏には前岸沢さんが言っていたことが引っかかっている。
秘密とは何なのだろうか。アレルギーの県都関係しているのだろうか。
「何か知ってるなら教えて欲しい」
「私だって知らない、なんて言い逃れ出来たらいいんだけどね」
そう言って顔を俯かせる。
「でも、知るべきだよね。あなたはあの子の運命を」
まるで、芝居がかった演技で言う。その言葉を聞き僕は頷く。
「本当に聞く?」
僕は頷く。いまさら何を言っているんだ。もう、引き下がるなんて言う道はない。
進むべき道は前にしかないのだ。
「分かった。あの子のいる場所なら知ってるからついてきて」
そう言って岸沢さんは歩いていいく。
本当なら母さんに連絡するべきだろう。
だけど、多少ややこしい説明をしなければならなくなる。
母さんには事後報告しようという事で、連絡せずに芹沢さんについていく。




