表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アラカン派遣探索者は意外とヤれる  作者: あおおに


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/11

二つ目のスキル

 新居への引っ越しは、問題なく終わった。

 なお、家具や家電も一式購入する必要があり、張り切った真桃ちゃんが俺を引っ張り回してくれた。

 お陰で、俺のセンスでは有り得ないオシャレな住居が出来上がった。当然、お金の方も盛大に飛んで行った。

 なお、いくつかある部屋の一つは真桃ちゃんに完全に占領され、彼女の私物が運び込まれている。

 もちろん、合鍵も奪われた。色っぽい空気はないままに。


 俺はダンジョン探索を週二日に増やした。

 さすがに、経済的に不安になったのだ。

 そして、今日もオーク狩りに来ている。

 が、今日は失敗だ。他のパーティーが一つ、同じようにオーク狩りに来ていたのである。そのパーティーはまだ若く、20代前半に見える男女の三人組だった。


 刃長が1メートルはありそうな大剣を背負った大柄な男に、弓矢を持った軽装の男、それに魔術士っぽい女という組み合わせだ。

 弓矢と魔術で遠距離からダメージを与え、大剣持ちがオークをぶった斬るという攻撃的な戦法で、なかなかのペースで狩りをしている。

 これでは、いつもの様な数を狩れそうにない。


 場所を変えるしかないか?

 草原エリアに戻って、チームでいるゴブリンを乱獲するか、荒れ地エリアを奥に進んでもっと重武装のオークを狙うかだ。

 ゴブリンは正直、気が乗らない。ドロップがショボい上に、数が増えれば単純に手数が痛い。

 重武装のオークは、【縮地】のメイス攻撃さえ効くなら、普通のオークと同じ手順で戦える筈だ。


 俺は、試しに荒れ地の奥を目指す事にした。

 新居探しより武器の新調が先だったと思わないでもない。

 奥へと歩き出す俺に、パーティー大剣持ちが声をかけて来た。

「オジサン、ソロで奥へ行って大丈夫か?」

 俺は何も言わず、笑って手だけ振っておいた。「初めて行く」だなんて答えたら、心配されてしまうだろう。


 しかし、あのパーティーがここに留まっているって事は、重武装オークの守りがそれだけ堅いという事を意味している。

 うーん、やっぱり無謀だったかな。

 2〜3発殴って効果がなかったら、【縮地】で逃げるしかない。

 でも、あっさり逃げ戻る姿を見られるのは、イヤだな。

 頑張れるだけ、頑張ってみよう。


 色々と逡巡していると、やがて重武装オークが見えた。

 金棒持ちより、ちょっとデカい。そして、サビの浮いた金属の鎧を身に着けている。重そうだ。足は遅いだろう。

 腰には一丁前に剣を吊り、左手には四角い金属盾。頭には兜を被っている。

 なるほど、守りは堅そうだ。

 とりあえず一戦仕掛けてみるか。


 手順は、金棒持ち相手と変わらない。

 まずは。

 俺の姿を認めてのしのし近づいて来るオークに、【縮地】をかけたチャクラムを投げつける。

 オークが盾を構える前に、その顔面に食い込む円環。

 続いて、もう一枚。これも、狙い違わず顔面に突き刺さる。


 これで、オークの視力を潰せたか?

 俺はオークに駆け寄ると、左手で金属盾を押し下げ、【縮地】つきのメイスを兜越しに叩き込んだ。

 ドガッ!!

 重い音を発して、兜が歪む。

 これは、効いたか?

 反動で跳ね返って来たメイスを、もう一度【縮地】をかけて叩き込む。

 重武装オークは、棒の様に倒れた。


 オークの剣が届かない位置まで下がり、残心。もちろん、周囲への警戒も忘れない。

 残骸と化すオークを見て、ようやく呼吸を弛める。

 なんとか、ヤれる様だ。

 後には、ビー玉より一回り大きい魔石が残った。これは、金棒持ちのより1000~2000円高かったりするのかな?まだ重武装オークとやる予定じゃなかったせいで、何をドロップするのか、そしていくらぐらいになるのか、予習出来ていないのだ。


 そこから夕方までかけて、5体の重武装オークを狩った。

 数が少ないのは、やはり、慎重になってしまったせいだ。実際、一度はチャクラムで視界を潰すのに失敗して退散したし。

 ドロップは、魔石が5個に精力剤が1本、初級ポーションより色の濃いポーションが1本、剣が1振り。

 そして、最大の成果は二つ目のスキルが生えた事だ。


 頭の中には【仙人みかん】という名前が浮かんでいる。

 その名前の由来は謎だが、効果は、目の前に手のひら大の穴が開き、その中に物を収納出来るというものだ。俗に言うアイテム・ボックスって奴だ。ただ、収納スペースは直径50センチ程の球形で、あまり広くない。使っているうちに広くなるとは思うけど。

 役には立ちそうだが、戦闘向けのものじゃないのが残念。

 とりあえず、オークの剣を放り込んでおいた。

 さて、帰ろう。そして、もう少しゴツいメイスとハンドガンを買おう。


 ダンジョンを出たら、いつもの如く事務所でアイテムの売買手続きだ。

 魔石と色の濃いポーションを見た事務所のお姉さんが、明らかにギョッとした表情を浮かべた。

「こ、これ、三烏様が?ソロですよね?」

「そうですけど」

 考えてみたら、俺もパーティーを組んでも良いんじゃなかろうか。


 お姉さんがノギスを持ち出して、魔石の大きさを測り始めた。

「やっぱり・・・」

「え、何か?」

「このサイズの魔石てすと、1個3万円になります」

「え?えええっ!?じゃあ、俺には1個で2万4千円入る?」

「そうです。そして、こちらの中級ポーションは60万円です」


 なんと、色の濃いポーションは、中級ポーションであった。

「と、すると、魔石が5個と精力剤に中級ポーションが1本ずつで・・・」

 スマートゴーグルが即座に計算してくれた。840,000円也。

 一度記憶したアイテムは、スマートゴーグルが次からきちっと見分けてくれる。これが、簡易鑑定だ。

 しかし、倒した数が半分以下でも儲けがほとんど変わらないとは、重武装オーク恐るべし。


 俺は何か言いたそうなお姉さんに手を振ると、事務所を出た。

 シャワーと着替えを済ませると、『はるか』に向かう事にする。

 今日は真桃ちゃんはレッスンがあるそうで、部屋には来ない。真桃ちゃんも忙しいらしく、思ったよりは俺の部屋に入り浸ってはいない。

 基本的に空いてるのは金土日ぐらいらしいし、週末には芸能の仕事が入る事もある様だ。彼女の場合はモデル業である。


「こんばんは」

「いらっしゃいませ」

 いつもの女将の艶っぽい声に迎えられて、俺は『はるか』のカウンターに着いた。

「今日はクラーケンの活きのいいのが入ってるわ」

「クラーケン!?なんか馬鹿デカそうだけど・・・」

「クラーケンて名前の普通のイカですから」

「じゃ、じゃあ刺し身で」


 酒はクラーケンに合うっていう『涼水(すずみず)』を頼んだ。

 まだ日本酒の味が分かって来たとは言えないが、雰囲気だけは味わえる様になった気がする。

 イケオジへの道は、まだまだ遠い。

 今のところは、クラーケンの味を楽しめれば良いか。


「何かご機嫌そうですね」

「そう?」

「この間のお嬢さんと関係ありかしら?」

「いやいや、それは関係ないよ。探索の方が一段上に行けただけ」

「それは、おめでとうございます。まだ、こちらにいらっしゃって間もないのに、順調そうですわね」


「そうなのかな。やっと人並みに行ける様になったって気分なんだけど」

「今は最前線にいる様な方でも、芽が出るまでは結構時間がかかったりしたものですよ」

 30~40代にしか見えない女将が言うには、ちょっと不自然な台詞だったが、同時に納得出来る話でもあった。

「三烏さんは、もっと上を目指してらっしゃるの?それとも、現状満足してらっしゃる?」


「うーん、ある程度上には行きたいけど、最前線とかまでは目指してないなぁ」

 だいたい、ソロの俺が最前線まで行くのは無理だ。

「そうですか。無理に上を目指す必要はないですからね」

 優し気な瞳で俺を見やる女将。

 店に来るお客さんの中にも、上を目指して・・・そして帰って来なかったり、大怪我をした人がいるのかも知れない。


「うん。無理はしないよ。まだまだ、ここの料理を味わいたいしね」

 俺は女将に笑いかけた。

  

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ