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魔女と呼ばれた令嬢  作者: 梨花むす
第四章
77/77

77 終幕 新しい生活

イーリン・マクスウェル:主人公、公爵令嬢

ヘンリー・マクスウェル:イーリンの父、公爵

ソフィア・マクスウェル:イーリンの母、公爵夫人

マリア・マクスウェル(クリークス):イーリンの姉、隣国の貴族ヴィルターと結婚

クリス・マクスウェル:イーリンの兄、マクスウェル家跡取り

アンナ:イーリン付きの侍女兼マクスウェル家の斥候

ピーター:マクスウェル家の庭師兼斥候

ファン:イーリンの夫

アーサー・ギーベル:元王太子、イーリンの元婚約者、処刑済み

フィリップ・ギーベル:国王、アーサー達の父

ルイス・ギーベル:第二王子、現王太子

シャーロット・ギーベル:王女、国王の末娘

マデライン・ギーベル:元王妃、アーサー達の母、故人

ブラム・バクスター:侯爵、王妃マデラインの兄

キャサリン・パー(リーデン):魔女として処刑済み

リリー・ストラスタ:イーリンの友人、現王太子妃

ストラスタ侯爵:リリーの父、マクスウェル公爵と同様の穏健派

ルイーゼ・ボンベルグ:イーリンの友人、辺境伯令嬢、イーリンの従妹

アルバート・ボンベルグ:ルイーゼの父、辺境伯

セリーナ・ボンベルグ:ルイーゼの母、辺境伯夫人

ヴィルター・クリークス:隣国ハーフェンの公爵、マリアの夫

シルウァ:『昏き森』に存在する森の主

「うわーん。置いていかないでおくれよ。」


 マクスウェル領の執務室で、仕事に囲まれたクリスを横目に、ファンは自分の身の回りを片付けていた。ファンの左手には、金に紫色の石があしらわれた指輪が光っていた。


「だめですよ、そんな声を出したって。私たちはシルウァ様にご挨拶に行かないといけないんですから。クリスは、仕事が終わってから来てください。」

「あと1日くらい、待っていてくれたっていいじゃないか。今回は、アンナやピーターも行くんだろう。」

「クリスは、森の中には入らないでしょう。」


 クリスは、机に顔を伏せ、泣き真似をし始めた。


「私が入ったら、倒れてしまうよ……。いいですよ。フォレスト子爵は冷たいって、周りに言ってやるんだから。」

「子供じみた脅しはやめてください。」


 騒動が落ち着いた後、ファンは、この国への貢献を評価され、ルイスから『フォレスト』の姓と子爵の位、それと、元々王家の直轄地であった『昏き森』の周辺を領地として与えられた。


 領地と言っても、広大な森と小さな館があるだけであるため、イーリンとファンは大半をマクスウェル領で過ごす。そして、時々領地を訪れては、シルウァに挨拶に行くのだった。


「私たちは、自分の領地に戻るだけですからね。責められるいわれはありません。」


 クリスは、机に伏せていた顔を少し上げ、恨みがましそうな目でファンを見た。


「この間だって、ハーフェンに行ってきたばっかりじゃないか。私を置いて。」

「あれは、ハーフェンの武術大会の視察です。立派な外交です。仕事です。」

「嘘つけ。師匠に結婚の報告をしていたくせに。みんなファンとイーリンに甘いんだから。」

「イーリンに甘いのは、クリスもでしょう。」

「まあ、そうなんだけどね。」


 扉から、軽いノックの音がした。


「お兄様、ごめんなさい。ファンはまだ、こちらにいるのかしら?」


 扉を開けて、顔を出したのはイーリンだった。

 イーリンの左手には、シルウァの指輪ともう一つ、金に黒色の石があしらわれた指輪が光っていた。


「イーリン、いいところに。ねえ、出発は今日じゃないといけないのかい? 明日でも……。」

「まあ、お兄様。また寂しくなってしまったの?」


 イーリンは、困った顔をした。


「でも、またお母様に叱られますわよ。この間、お姉様からも手紙で言われたところでしょう。」

「うーん、それはそうなんだけど。」



 イーリンとファンがハーフェンを訪れた際に、姉のマリアとその夫のヴィルターの好意で、クリークス城に泊めてもらった。クリークス公爵夫人となったマリアは、明るく優しい性格は変わらないものの、母ソフィアや叔母セリーナと同じような貫禄を身につけつつあった。


 マリアはイーリンの無事と、ファンとの結婚を心から喜んでくれた。


「本当に良かったわ。何回もヴィルターをけしかけて、王国を攻めようかしらと考えていたのよ。」

「皇帝陛下に報告したら、ついでに国を取って来いと言われそうだったからね、あの時点でお伝えするかどうか悩んだよ。」


 穏やかな笑顔を浮かべながら物騒なことを言う姉夫婦に、イーリンは戸惑ったものの、ファンも含め、元々よく知った仲の4人は、和やかに会話を楽しむことができていた。


「思ったとおり、2人は惹かれ合っていたのね。」

「ファンをマクスウェル家に行かせてよかったよ。しかし、あのクリスが、よくイーリンを手放したな。」


 ヴィルターがそう言うと、イーリンとファンは、顔を見合わせた。ファンが、ぼそりと言った。


「……認めてくれてはいますが、手放してはいませんよ。」

「ん?」

「どういうこと?」


 イーリンが苦笑しながら話す状況を聞いて、呆れたマリアが、クリスに手紙を書いてくれたのだ。


『心配なのは分かるけれど、新婚の妹を邪魔しちゃだめでしょう。ちゃんと、ファンという立派な相手がいるんだから。』


 そのような内容が書いてあったらしい。ソフィアの耳にも届き、クリスはやりすぎると説教を受けるようになった。



「まあ、いいさ。2人でゆっくりしてくればいいよ。君たちには仲良くしてもらわないとね。次の領主は、君たちの子供なんだから。」

「また、そんなことを……。」


 クリスは、どんな女性を勧められても、頑なに婚約を拒んでいた。イーリンとアーサーの婚約後の経緯から、ヘンリーも強くは言えず、クリスは「運命の女性が現れたら、ちゃんと結婚しますよ。」と言うばかりだった。


 ファンは、クリスにこれから「運命の女性」など現れないことを知っていた。なぜなら、クリスにとっての「運命の女性」は、イーリンだからだ。


 クリスが生きていくには、イーリンが必要だった。イーリンを失いかけて、余計にその思いを強くしたらしい。だから、ファン自身も、クリスからイーリンを奪ってしまうつもりはない。


 ファンは、母親が子供に言い聞かせるように、クリスに言った。


「心配しなくても、どこにも行きやしませんよ。森から戻ったら、館で合流しましょう。」

「はいはい。」


 クリスが少しすねた顔をすると、イーリンが、椅子に座ったままのクリスにそっと近寄り、頬にキスをした。クリスは優しい顔になり、「わかったよ、行っておいで。」と言った。

 この兄妹の関係は、結婚しても変わらない。



 イーリンは、クリスの机の上にある、美しい装丁の本に気づき、クリスに尋ねた。


「また、ブラム様から本が届いたのですか。」


 最初の本を出版して以来、ブラムは本作りに夢中になった。ブラムもやはりバクスター家の人間らしく、自分の得意分野に対しては目利きであった。


 自分の作品を形にするだけでなく、マクスウェル家の支援を得て、領地に職人を集め、良質の本を世に出し続けている。ノーマンにも協力してもらい、ウェナムの使い方を始めとした医学書なども手掛けていた。


 バクスター家が苦手な商売の面については、クリスがマクスウェル家から人をやり、手伝っている。マクスウェル家としても、本という新しい商品を確保することができ、悪くはないらしい。

 寂れていたバクスター領は、本作りで少しずつ賑わいを取り戻してきているそうだ。


「ああ。今回は、聖女様の結婚についてのお話らしいよ。」

「もう……、ブラム様ったら。また、外を歩きにくくなってしまうわ。」


 ブラムが最初に出した本は、王都で評判になり、貴族から平民に至るまで知らない者がいない。

 シャーロットだけでなく、ルイスやリリーまでが目を通しており、「感動したよ」「ぜひ続きを」などと言う始末だ。貴族たちが自分の領地に持ち帰り、じわじわと国内全体にも広がっていると聞く。


 そのため、マクスウェル領で行われたにも関わらず、イーリンとファンの結婚式は人々の耳目を集めた。貴族たちがこぞって出席したがり、聖女とそのお相手の姿を一目見たいと、マクスウェル城は人がひしめき合った。


「シャーロット殿下が絶対に来たいとおっしゃって、ブラム様と一緒においでになったのよね。」


 清らかで美しい花嫁と、それを守るように立つ、逞しいながらも気品のある青年は、シャーロットを始め、集まった人々を十分に満足させるものであった。


 おまけに、2人が誓いの口づけをした際には、シルウァが気を利かせてくれたのか、白く美しい花が周囲に降り注いだのだ。


「そのあたりが、なかなかうまく描かれているよ。」


 そういえば、式の最中もブラムは紙を抱え、ひたすらペンを動かしていたような気がする。



「まあ……。少しでも、シャーロット殿下の心の慰めになるのならいいのですけれど。」


 イーリンがそう言うのには、理由があった。


 イーリンたちの結婚式は、予定よりも挙げるのが遅くなった。ルイスたちの結婚式の後、突然に国王が崩御したからだ。


 国王は、ウェナムが身体から抜けきった後も、以前の覇気は戻らなかった。促しで食事は取り、簡単な会話はするものの、一日の大半をぼんやりして過ごし、自分から何かをしようとすることはほとんどなかった。


 しかし、死の数日前から、急に立ち上がり、王妃の部屋や地下に行こうとすることがあったらしい。そのときは、はっきりと「マデラインはどこに行った」と、以前のような気迫を感じさせる声を出していたという。


 そしてある日、侍従の目を盗んで部屋を抜け出した。侍従たちが捜索した結果、マデラインの棺のあった地下室で亡くなっているのが見つかった。


 うつ伏せで手を伸ばし、まるで何かに縋るような格好で事切れていたため、人々は、王妃の呪いだと噂した。マデラインが虐げられていたのは、王城の中では有名な話だったからだ。


 しかし、イーリンには、そうは思えなかった。


(マデライン様は、そんなことはなさらない……。)


 なぜ、国王は最期に地下室に行ったのだろう。


 マデラインに花を捧げるように頼んだのは、ブラムだった。しかし、ブラムはそれを確かめることができる立場になく、願いを聞いたふりをして放っておくこともできたはずだ。

 花を捧げ続けること、棺の蓋に釘を打たず、開けたままにしておくことを命じられたのは、国王ただ一人だけだった。


 マデラインとの間に3人の子供をもうけ、愛妾も持たなかった。マデラインの死後も、その死を公表せず、新たな王妃を娶ることも拒否した。それを、愛と呼ぶ人もいるだろう。


(いいえ、違う……。)


 国王フィリップに、マデラインを幸せにするという心はなかった。マデラインの心が壊れていっても、あまりの辛さにマデラインがその命を絶っても、マデラインに執着し、決して手放さなかった。


 イーリンがファンの方を見ると、ファンは穏やかな笑顔を向けてくれた。今感じる、このあたたかさこそが愛なのだと思う。


「さあ、もうそろそろ出発なんだろう。大人しく見送るから、準備をしておいでよ。」


 クリスが、優しい笑顔を浮かべて言った。


 イーリンとファンは、「では、また後で」とクリスに言い、二人で執務室を出て行った。




「ははは。イーリンの兄君は、相変わらずみたいだね。」


 翌日、森の泉の前で、シルウァは楽しそうに笑っていた。


「シルウァ様もお元気そうで、何よりです。」


 イーリンは、シルウァの隣に座り、微笑んでいた。相変わらず、ここまでシルウァに近づき、普通に話すことができるのは、イーリンだけだった。


「私は、君たちがいるからね。もうしばらくは長生きできそうだよ。」

「まあ。」


 やはり、イーリンとファンの絆が深まれば深まるほど、シルウァの力は強くなるらしい。シルウァもまた、2人の結婚を祝福してくれた。


 イーリンが処刑のために置いていかれた、『昏き森』の入り口のそばに、フォレストの館は建てられた。

 何よりシルウァがそれを望んだ。そこが最も泉に近かったからだ。


 シルウァは、ピーターの方を向いて言った。


「ピーター、いつもありがとう。彼らは、ここでは不便もあるからね。」


 シルウァのもとにいる『美しい人』たちの中には、イーリンたちのように、外との行き来を望むものもいた。ピーターは、フォレストの館の管理を任されており、森から出てきた人々を館で引き受けていた。


「こちらこそ、森の方々には、いつもお世話になっています。」


 ピーターが、シルウァに礼を言った。斥候でありながら、庭師の仕事が好きなピーターは、森で暮らす彼らから色々と教えてもらっているらしい。



 シルウァはにっこりと笑うと、イーリンに向き直った。


「イーリン。君の友人たちも、元気にしているようだね。」

「ええ、色々ありましたけれど……。」


 若き国王となったルイスは、王妃となったリリーと共に、イーリンの父ヘンリーやストラスタ侯爵と協力しながら国を治めている。


「責務は重大ですけれど、支えてくれる方もいらっしゃるし、やりがいはありますわ。」


 リリーの笑顔は美しく、毅然としていた。王妃となり、気軽に会える関係ではなくなったと思っていたが、いつでも王城に来てくれていいと言われた。


「私の目標は、いつでもイーリン様なのですわ。だから、できるだけお顔を見せてくださいませ。」


 ルイーゼもまた、よく王城に現れるという。アルバートと交代したセリーナとともに、王都で過ごしていることが多いそうだ。


「お母様みたいに、有事の際も活躍できる女性になるために、お勉強するのです!」


 と、張り切っているらしい。なぜか、「扉くらいは鍵なしで開けられるように……」と言って、身体も鍛えているそうだ。


「今度また、王都でお会いいたしますの。」


 シルウァは、イーリンが楽しそうに友人の話をするのを、にこやかに聞いていた。ファンたちや森の人々も、それぞれくつろぎながら、その様子を笑顔で眺めていた。



「イーリン。兄君も、そろそろここに来ることができると思うよ。」


 王都が落ち着いてマクスウェル領に戻ったころ、シルウァに礼を言うために、皆で森を訪れた。その時は、クリスは森の手前まで一緒に来たものの、「私は、入れそうにないよ。」と言って入らなかった。


「まあ、本当ですか。では、次のときにでも……。」


 イーリンは、満面の笑顔でファンの方を振り向いた。


「嬉しいわ。これで、お兄様も寂しい思いをしなくてすむわね。」

「……。」

「……あら?」


 イーリンは、皆の物言いたげな顔を見て、戸惑った。ピーターが言いにくそうに口を開いた。


「お嬢様。お嬢様はその……、我々が最初、どうなっていたか覚えてらっしゃいますか?」

「え?」


 ピーターたちは、イーリンが結婚した今も「お嬢様」と呼ぶ。アンナも、おずおずと言った。


「お嬢様……。ここは……、普通の者には、最初はかなり辛いかと。」


『美しい人』たちでなければ、シルウァの清浄さはあまりにも強すぎて、身体を押さえつけるような衝撃となって感じられる。アンナたちも最初は動けず、ただひれ伏すばかりだった。


「まあ……。そういえば、そうだったわね。」


 それでは、無理に誘わない方がいいのかしら、とイーリンが困っていると、ファンが、苦笑しながら言った。


「まあ、それでもクリスは来ると思いますよ。イーリンのためなら。」

「そうかしら。」


 シルウァは、穏やかに笑った。


「兄君を、支えてあげなさい。彼は、イーリンがいれば大丈夫だから。」

「そうなのですか。……分かりました、私、お兄様を支えますわ。」


 ファンたちの頭の中には、ここで真っ青になるクリスと、ひたすら善意で励ますイーリンが浮かんだが、皆黙って何も言わなかった。



「そうだ、イーリン、ファン。今回もまた、確認してもらいたいところがあってね。」

「はい。今回は、どのような……?」


 シルウァは、王都に闇の気配を感じると、イーリンたちに教えてくれる。イーリンたちは、それをルイスに報告し、様子を見に行ってもらっていた。

 マデラインを解放してくれたシルウァに、ルイスは敬意を抱いており、信頼して王家の兵を出してくれるのだ。


 兵が調査に入ると、悪魔を崇める儀式を行った跡が見つかることが多かった。ほとんどの儀式では動物が使われていたが、人が殺されていた場所もあった。

 儀式の場には、形に多少差はあるものの、あの日、パー家で見たのと似た像が置いてあった。


 イーリンとファンは、儀式が行われた場所を、シルウァの力を使って浄化していた。パー家ほど闇の濃い場所であれば炎が必要だが、それほどでなければ、シルウァは指輪を通して浄化することができるようだった。


「もちろん、美しい人が生まれるのと同じように、彼らも生まれるからね。それは当たり前のことだし、終わることはないのだけど。」


 シルウァはそう言うが、それでも、無駄ではないと思う。『持たない者』たちが闇に取り込まれる前に、違う道を進むことができれば、『美しい人』たちの犠牲は減る。


 イーリンは、時々浄化のために訪れた場所で、キャサリンの気配を感じることがあった。しかし、その気配にはもう恐ろしさはなく、小さな生き物が訳もわからず、縋りついてくるような感じであった。


(いつか、あなたにも光が見えますように。)


 イーリンは浄化のとき、犠牲になった者たちに祈るとともに、少しだけキャサリンのためにも祈る。最近は、ファンも同じように祈っているようだ。

 感じるたびに、気配はだんだんと薄くなっている気がした。



「では、頼んだよ。そういえば、そろそろ帰る時間なのかな。兄君が待っているのだろう。」

「はい、シルウァ様。また参りますわ。」

「ああ、いつでもまたおいで。」


 シルウァと森の人々は、笑顔で見送ってくれた。


 銀の狼の先導で、森の出口へと向かう。ファンと手を繋ぎ、狼の後ろを歩いていく。


「愛しているわ。」


 思わず口から出てしまい、イーリンは自分でびっくりした。ファンが振り向き、穏やかに笑って言った。


「はい。私も愛していますよ。イーリン。」


 薄暗い森の中で、2人の指輪がきらりと光った。


「結婚してから、お嬢様も遠慮しなくなりましたね。ご夫婦だからいいですけど。」

「その方が、私は好きですけどね。おそばにいて楽しいです。」


 ピーターとアンナに言われ、イーリンは赤くなった。


 狼が歩みを止めた。森の出口に着いたのだ。館では、クリスが準備万端で待っているだろう。


 生きている限り、何があるかは分からない。アーサーやキャサリンはもういないが、これからも、何かに巻き込まれ、怖い目に遭うことはあるかもしれない。


 イーリンは、きゅっとファンの手を強く握った。何も言わず、ファンは握り返してくれた。


 ──もう、大丈夫。


「さあ、外に出ましょう。」

「はい。」


 ファンと共に、イーリンは一歩踏み出し、森から出た。狼に別れを告げ、館の方を向いて立つ。


「これからも、一緒にいましょうね。」

「もちろんです。」


 微笑み合うイーリンとファンの上に、白い花が降った。


 アンナとピーターが見守り、ひらひらと白く美しい花びらが舞う中、2人は館の方へと歩いて行った。

最後までお読みいただいてありがとうございました! 最後長くなってしまいましたが、もう分けずに行こうと思い、そのまま投稿させていただきました。よろしければ、感想等いただけましたら嬉しいです。これで、イーリンたちの物語は終わりますが、また、別のお話でお会いできたらと思います。今後もよろしくお願いします。

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