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「つまり、領主様の息子が新しい領主になったの?」
「いや、正確にはまだらしい。詳しくはわかんないけど国王様の許可が必要らしい」
「でもさ、色々やってんだろ?」
「まぁ、領主になるのは決まってるからな」
話は一週間ほど前に遡る。長い間病に伏せていた領主様が亡くなってしまった。町の住人は領主様の死を悲しんでいたが喜ぶ人物もいた、それが領主の息子だ。彼は住人が悲しんでいるのに追い討ちをかけるように様々な税を住人達に課した。
ガラの悪い冒険者達はここぞとばかりに領主の名前をだし暴れまわったらしい。
で、なぜ孤児院が襲われていたのかだが、どうやらここの土地が目当てらしい。内壁の中とはいえ中心地から離れた端なのだが建物、広場、畑とかなりの広さがある。発展中のこの町ならそれでも高値で売れるだろう。
そして、ここは院長先生が領主様から借り受けた土地である。借りたと言っても無料で、孤児院をしていれば半永久的に貸してもらえる事になっているらしい。もちろん領主が代わっても、院長先生が代わってもその契約は続く。はずだった。
どうやら領主の息子が領主様が寝込んでいる間に細工をし領主様が亡くなると同時に契約は終わったと言い始めたのだ。もちろん契約書は院長先生も持っていて勝手に変えられるわけもなく、問題だらけで話は無効と言ったのだが、相手は腐っても貴族。こちらの言い分は通用しない。この町の領主より立場が上の、この地方の領主様に頼めばなんとかなるかもしれないが、そこまで話を持っていくのは難しいだろう。そのための町の領主なのだから。
「そういえばちびっ子達はどうしたの?」
「あぁ、危ないから避難させてるよ」
「あいつら毎日来てるからな」
どうやらガラの悪い冒険者が来ていたのはいわゆる地上げ屋のようなもので、実力行使で孤児院の人間を追い出そうとしていたそうだ。まぁ、それもうまくいってないみたいなんだけど、何かあるといけないので子供達はクランハウスや牧場の方へ避難させたらしい。あいつらが欲しいのは孤児院の土地なのでクランハウスは大丈夫らしい。そもそもクランハウスはギルドを通じて買ったので領主は手が出せないのだろう。
「それで、これからどうする?」
「ん~、このまま住むか出ていくかしかないんじゃない?」
「だよなぁ……、まぁシュウ達のおかげで出ていくって選択肢があるんだけどな」
「最初は俺だけど今は皆のおかげだよ」
実際孤児院の皆のおかげで冒険者業も生産業も商売も出来てるし、従魔達のお世話は任せっきりだ。
「結局は相手次第かなぁ?」
そう、領主の息子やガラの悪い冒険者達が今後も来るようならやはりここを諦めることを考えなくてはいけないだろう。
町の衛兵になんとかしてもらいたいけど雇い主が領主様だからどこまで対応してくれるかなぁ。いつもの門番さんに今度聞いてこよう。




