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「ん、もしかしてガイか? やっと帰ってきたのか!」
「おう、久しぶりだな! 皆元気にしてるか?」
村に近付くと、村の入口にいる門番が熊の行商人とあいさつを交わした。
この門番さん、それなりの年齢なのだが見るからに強そうで門番ではなくどこかの兵士や騎士と言われても納得してしまいそうな人物だった。
「で、後ろの連中は客人か?」
熊の行商人と二言三言話したと思ったら門番さんはこちらに話を振ってきた。
「ああ、俺の客であり商売相手だよ」
「商売相手!?」
子供ばかりの集団が商売相手と言われてもそりゃあ驚くよね。ただ、そろそろ中に入れてもらえないかな、狩ってきた獲物の処理が大変なんだよね。
「話はあとでするとして、悪いが村の皆を呼んできてくれないか? 見ての通り荷物が多くてな、手伝ってもらわんと暗くなっちまう」
俺達が持つ鹿に猪、それと大量の鳥を見て門番さんは村の人達を呼びに行ってくれた。
近くの家から声をかけたのかすぐに村の人達がやって来て熊の行商人に「お帰り」と声をかけていた。熊の行商人も嬉しそうに「ただいま」を言っている。
少しすると何人もの村人が集まってきたので、早速解体の手伝いをしてもらう。いつもならここから挨拶がてら宴会に突入しているのだが、時間が時間だけにすでに夕飯の仕度が済んでいるのか各家から煙と良い匂いが漂ってきているので宴会は明日することになった。解体する獲物は鹿に猪だが、鳥は大量にあるので各家に一羽ずつ配って各々にやってもらうことになった。今解体して晩御飯のおかずにしてもよし、明日以降に調理するのも自由とした。
「あなた!」「お父さ~ん」
解体をしていると遠くから誰かを呼ぶ声が聞こえた。こちらに向かってくるのは……熊? ということは熊の行商人の家族かな?
「お父さん、お帰りなさい!」
「おう、元気にしてたか?」
走り寄って熊の行商人に飛び付く子熊。熊の行商人の子供かな?
久しぶりに会えた家族と話をすると三人でこっちに来てあいさつをしてくれた。奥さんの名前はサンさん、娘さんの名前はチナちゃんというらしい。
父親との再会を果たしたチナちゃんはすでに妹ちゃんに捕獲され村の子供達と解体を始めていた。村の子供達の年齢は幅広く俺より下っぽい子もいればクルスくん達と同じ位の子もいる。また、チナちゃんみたいな獣族もいればイリヤちゃんみたいな兎人族、獣人族もいる。それに俺みたいな人族もいるのでどうやらこの村には差別は無さそうだった。
解体もある程度終わった頃、村の人達はポツリポツリと帰っていった。その時になってふと思い付いた。
「そういえば、この村って宿屋はあるの?」
そう、まだ泊まるところを決めてなかったのだ。熊の行商人に確認したところ、小さい田舎の村なので宿屋は無いそうだ。
家に泊まれと言われたけれど、さすがに普通の家にいきなり六人泊まるのは無理だろう。
「なら、今日も俺達はテントだな」
「そうね、広場を借りれれば安全でしょ」
「なら食事の準備もしないとね」
寝床については昨日までと同じなのですぐに行動する。後は広場の使用許可なのだが熊の行商人に聞いてみたところ「勝手に好きなだけ使え!」と言われてしまった。村長に確認しなくて良いのかと聞いたらなんと熊の行商人が村長だったので驚きである。
というか村長が何ヵ月も行商に行ってていいのか!?




