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1.身代わり婚 1-4 (大幅改稿)


 

 背にしていた窓から漂ってくる冷気を首筋に感じて、私――アリアストラ・ヴィレオンは窓の外を見上げた。

 ヴィレオン大公領の森にはうっすらと雪の白さが目立ち、どんよりとした曇天が覆う冬の始まりの日。

 この日は私にとっては特別であり、そして地獄でもある日だった。



「フローラちゃん、お誕生日おめでとう!」

「18歳の誕生日、おめでとう、フローラ。お前もやっと成人だな」

「ありがとう! お母様、お父様!」



 〝家族〟の声がリビングに響き渡る。

 ご馳走がいっぱい並ぶテーブル。真ん中にはバースデーケーキ。

 祝われているのは、私の双子の妹、フローラ・ヴィレオンだ。



「お姉さま。お水を」

「……はい、お嬢様」

「私より先に生まれたくせに、使用人の真似事なんかしちゃって、お姉さまもお可哀想よね」

「魔力ゼロの出来損ないを哀れに思えるなんて、心が優しいのね、フローラちゃん」



 母親の言葉がナイフみたいに胸に突き刺さる。



「王国の鎮守を担う大魔法使いの一族の長子なのに、魔力を持たないで生まれてくるなんて恥知らずも良いところだわ」

「その点、フローラは我がヴィレオン家の当主にふさわしいだけの魔力量を持っている。歴代でもっとも優秀な魔法使いになるんじゃないか?」



 父親がフローラを褒め称えて、彼女の白銀の髪を優しく撫でた。

 フローラがはにかんだ笑顔を父親に向ける。

 


(私だって、魔力を持って生まれたかった)



 そう思わない日なんて一度もなかった。

 両親の愛情を私も受けたかったし、フローラと並んで母国アーランディア王国の鎮守を担うことができたら、なんて幸せな事だろう。

 私もヴィレオン家の誇りになりたかった。

 だけどないものねだりをしてもしょうがない。望んだところで手には入らないし、現実が変わることもない。

 この18年を生きてきてそれを痛感している。


 水の入ったボトルを抱きしめるようにして持ち直し、待機場所である壁際へと戻った。他の使用人たちがちらちらとこちらを窺っているのが気配でわかる。

 言葉にはしないが、気にしているのだろう。 


 魔力を持つものと、持たざる者の扱いの差に。





―――――――――――――――

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