イケメンすぎる冒険者、学園へ向かう②
ショートヘアの彼女は、メルロスと名乗っていたのを思い出す。
「メルロスはずいぶんと早くに学校に行くんだな。部活か何かかな?」
学年にもよるが、基礎課程も専攻課程も、一番早い講義にはまだ二時間以上あった。
俺は新設の専攻を受け持つため、週三回の午前中の二講義が予定されているそうだ。付け加えるなら、今日は諸手続きなどのために早く行く必要があった。因みに、普段も講義の準備のため、同じような時間帯に出勤する予定である。
「生徒会があるからね。あと、メリィで良いよ。」
なるほど、生徒会の役員か。
「わかった。また時間があれば、学園のことをいろいろと教えて欲しい。」
「いいよ。私も先生のプレ講義を受けるつもりだから。」
講義ではなく、プレ講義ということだ。
本格的に受講するかは内容次第というところか。遠回しに有意義な講義をしろと言われてる気もしたが、考えすぎかもしれない。
ただ、にこやかに話しながらも、彼女の目は真剣味をおびていたように思う。
「来たな。」
学園の事務所に向かうと、アリエルが待っていてくれた。
「おはよう。」
「おはよう。理事長も副理事長も今日は不在だから、私が代わりに説明や案内をさせてもらう。」
「わかった。よろしく頼む。」
アリエルのここでの立場がどのようなものかは知らない。俺と同じように、講師ということだけは聞いている。おそらくだが、俺の関節的な紹介者ということになっている気がした。
以前、学園絡みの依頼をマイク・バルカンに依頼した際に、自らも冒険者資格を有していることもあってオブザーバーという立場で共に依頼をこなしたことが発端だと聞いている。
そこから似たような案件を何度かこなし、今回も同じようにマイク・バルカンに依頼が入った。
しかし、エルフだけの街─学園への潜入に関してはある種の技能がなければ難しく、可能な限り溶け込めるような容姿が必須だとされたのである。
余談だが、俺の耳だけをエルフのように変化させたら完全に溶け込めるのではないかと提案し、依頼主にその手の魔道具の費用負担をしてもらおうと企んだ。しかし、エルフの中にはそのような魔道具を使用していることを、魔力の流れで把握する者が少なくないため逆に不信を招くと却下されてしまった。
さすがというか、おそるべしというか、エルフの魔法に関するパッシブスキルのようなものは、人間のそれを遥かに凌駕している。
皆が皆というわけではないが、彼らの前では下手に魔道具を使うのはやめておいた方が無難だろう。
「ところで、アリエルは何を教えているんだ?」
「言わなかったか?私は剣術だ。」
ああ、なるほど。
確かに人に教えるだけの腕前である。
何せ殺されかけたのだから、身をもって経験した鋭さくらいは判断できた。
「その細剣はエルフの定番なのか?」
「剣ならそうだな。人間に比べて腕力では劣るから、このくらいの重さがちょうどいい。」
刺突に特化した剣というわけではない。
両刃のナイトリーソードというやつだ。
鎧の隙間からも刺しこめるほどの細長い剣である。切れ味を損なうことを気にしなければ、鎧の上から叩いて相手を骨折させることも可能なほど、鍛えあげられた剣身が特徴だった。
「いいチョイスだな。スピードに特化しただけでなく、いざという時に競り負けない強靭さがある。」
「マックスも剣術をやるのか?」
「身を守るために振り回すくらいだな。」
「よく言うよ。」
アリエルはニヤリと笑った。
「何が?」
「いや、そういうことにしておくよ。」
俺は剣士じゃない。
駆け出しの頃に入ったパーティで、「自分の身は自分で守れ」と、ある流派の剣士にしごかれただけだ。
身を守るためにはそれを披露するが、はっきり言って現役の凄腕剣士になどかなうはずなかった。




