イケメンすぎる冒険者、コワモテとして振る舞う⑧
さて、いろいろとあったため、ブランチはほとんど食べられなかった。
朝昼兼用だからブランチなのだ。
当然のことだが腹が減った。
時刻は既に昼時を過ぎており、間もなくオヤツタイムといったところだ。
正午前にブランチを開始したはずなのに、随分と時間が経過している。
ということで、近くのカフェに入った。
ハーブティーをメインに揃えているカフェのようだが、ランチか軽食くらいあるだろう。
そう考えた俺は軽率でした。
「ごめんなさいね。ランチは限定数しか用意してなくて、早々に売り切れたのよ。」
お店を切り盛りするエルフ女性がそう言う。
ならば仕方がない。
今から他の店に行くのもどうかと思うし、メニューを調べてみることにした。
何か軽食でもあればとページをめくってみるが、ランチタイム以外はお茶とスイーツを売りにしているようだ。
店内もそれなりに賑わっているが、客のほとんどは女性だった。
お茶は別で頼むとして、何か軽食はっと・・・ねぇし。
食べれる物といえば、誰かさんが好きなスイーツくらいしかない。
まあ、いい。
スイーツの中にも小腹を満たせるようなものはあるだろう。
そう思ってメニューをめくっていく。
「セアダスとデザートワイン。食後にラズベリーリーフティーをください。」
セアダンは、最古のお菓子と呼ばれているほど定番のものだ。セモリナ粉で作った生地にペコリーノチーズを入れて油でサクサクに揚げ、蜂蜜がたっぶりとかかっている。
デザートワインはスイーツにあう甘めのワイン、そしてラズベリーリーフティーはほんのりとした甘い香りのするあっさりとしたお茶だった。
「あら、通な方ね。午前中にも大きなヒューマンの方がいらしたけど、人間の男性にも甘い物が流行ってるのかしら。」
大きなヒューマンって、まさか奴じゃないだろうな。
「まあ、種族や性別を問わず、好きな人は好きですから。」
「確かにそうね。ところで、あなたも山盛りがご希望?」
奴だった。
「普通盛りで問題ございません。」
エルフなどの他種族は人間をヒューマンと呼ぶ。
そのヒューマンがみんなマイク・バルカンのような超絶甘党フードファイターと同じだと思われることは避けなければならない。
「あら、そう。」
「甘い物が好きな大食らいというのはヒューマンでも希少種ですよ。」
「ふ~ん。まあ、エルフにも常識離れした激辛好きがいるから、それと同じようなものね。」
さらに奴も知っていたとは。
「そうですね。」
乾いた笑いで返しておいた。
なぜ各種族を代表するような変態?偏食好き?とパーティを組むようになってしまったのか。そこは深く考えない方が幸せだろう。
今のところ、食べ物の好み以外に不満はない。むしろ、マイク・バルカンもアリエルも、冒険者としては俺よりもはるかに評価が高いのだ。
一緒にパーティを組む上で、客観的に不安要素があるのはダントツで俺だろう。
これまでは社交性の高さが顔面の造りと相乗効果を発揮して、トラブルを多々誘発した。だが、今回は俺なんかよりも容姿に優れた者がバシバシいるエルフの居住区での依頼だ。
今までのような気を使うこともなく、持てる技能をフルに発揮すればいい。
それでダメなら、ソロでもできる依頼ばかりを請負って冒険者稼業を続けるか、潔く引退して治癒回復を専門にした店をやるのもいいかもしれなかった。
いや、冒険者としてはまだまだやりたいことが数多くある。
今から諦めるのでなく、やはりコワモテを目指して邁進するべきではないか。
机に置かれたデザートワインを一口飲み、マイナス感情を心のうちから追い出した。




