イケメンすぎる冒険者、浮かれてやらかしてしまう④
まだ明るい昼下がりに、なぜ焚き火をしなければならないのか。
パンツ一枚で濡れた衣服を乾かしながら、苦々しく思う。
せっかくだからと川で魚を数匹捕獲し、腹を割いて塩をふりかけ焼いている。
川魚はあまり好きではない。
身はパサパサだし、味も淡白なため焼いても大して美味いと感じないのだ。
ああ、でも油で揚げる料理は美味かったと記憶している。鯉やナマズなんかの比較的大きな川魚をカラッと揚げて、甘酢あんかけというソースをたっぶりとかけた料理は、ライスを無限に食えるのじゃないかと思ったほどだ。それに小魚も唐揚げやフライ、天プーラとかいうのにすると美味かった。塩や柑橘類で味つけすると酒が止まらなくなる。
いかん、よだれが出てきた。
ああ、そういえば、ベテラン冒険者が酒場で言っていたな。川魚も身の水分が蒸発するくらいじっくりと焼けば、味が濃くなり大変美味だと。
木の枝に刺して焚き火にかざしていた魚を少し炎から遠ざける。
どうせ衣服が乾くまでは時間があるのだ。じっくりと焼いて、燻製のような旨味が出るか試してみようと思った。
指輪を見つめる。
自由度がそれほどあるわけではないが、この魔道具によって変色させた位置を間違えたのだろうか。
冒険者たちの異常な反応を見る限り、そうとしか思えなかった。
しかし、街中での反応との違いは何なのだろうか。
・・・あ、そういえば、冒険者のひとりが吸血鬼がどうとか言っていたな。
「・・・・・・・・・・・・」
思い出した。
何年か前に、王都近郊で女性の連続失踪事件があった。
被害者はいずれも、数日後に遺体となって見つかっている。
貴族や大商人の息女たちにも犠牲者が出たため、王国騎士団や高ランクの冒険者まで駆り出された捜査が展開された。
王都の隅々まで徹底的な調査が行われた結果、犯人像が浮かび上がって後に討伐されたそうだ。
その犯人とは自称千年の時を生きた吸血鬼で、瞳孔が白く、眉もなかったらしい。
ああ、やっちまった。
俺は魔道具をいろいろと試し、目や眉は对で一部位とみなされることを発見したのだ。だったらそれを試してみようというのが人情ってものだろう?
だって、他は唇を肌の色にぼかすくらいしかできなかったのだし、選択肢がなかったともいえる。
しかし、そうか。
街中ではただのコワモテとして見られたのは、やはり冒険者ほど吸血鬼のことを覚えていなかったからに違いない。
冒険者は遭遇すると危険な魔物をしっかりと頭の中に刻む。吸血鬼は魔物というよりも魔人というジャンルだが、その脅威は相当だったと記憶している。
王都での事件も、解決までに多くの騎士や冒険者が死傷したと聞く。
一般人にしてみれば、対岸の火事に過ぎないところだろう。しかし、ダンジョンなどに出入りする冒険者にしてみれば、いつ身の危険にさらされるかわかったものじゃない。
だからこそ、俺は勘違いから討伐対象にされたのだ。
「仕方がないな。この魔道具を使用する部位は変更せざるをえないようだ。しかし、そうなるとあまり利用価値もなさそうな気もする。」
今更ながら、マイク・バルカンが大した金額にはならないと言っていたことを理解した。
「・・・あれ?」
魔道具による変色を解除しようとしたが、なぜか戻らなかった。
・・・ヤバくね?
その後、再び冒険者たちには吸血鬼として追われ、命からがらに戻った街の入口では門衛に詰め寄られるといった事態に発展したのはいうまでもない。
余談だが、魔道具は一定の使用時間がくると自動的に解除される仕組みだった。門衛に捕縛されそうになった俺は隙を見て逃げ出し、乳首と爪の色を変色させて人相を元に戻し定宿に駆け込んだ。上書きすれば変色部位を変えられることは、この時になってようやく思いあたった。
コワモテも過度にやると魔人や魔物に間違えられる可能性があるなと学習した一日でしたとさ。




