イケメンすぎる冒険者とコワモテすぎる冒険者のそれぞれの思惑③
少し早まったか・・・。
定宿に戻ってから自身の浅はかな対応に後悔した。
いくら欲しい魔道具をチラつかせられたとはいえ、即答はないだろう。
ただ、マイク・バルカンが話していた魔道具は、レア物という域にはおさまらなかった。
魔力で顔に張りつくマスクで、蒸れない、臭くならない、汚れない、肌が荒れないともなれば、素顔を隠すのに最適である。
当然のことだが値は張る。
目眩がするほどの天文学的な金額で取引されている上に、犯罪で使用されないよう司法機関への届出が義務付けられていた。不法所持や無断使用は逮捕拘束の対象となるため、不必要な者なら取扱いに困るところだ。
貴族や上流階級では、病気や怪我で顔に傷を負った者が着用するなどの需要があると聞いている。
マイク・バルカンが所持しているマスクは大したメンテナンスもいらず、恒常的に使用できるためにランク的にも最高等級の逸品だそうだ。
「どこかのダンジョンで発掘でもしたのか?」
もし採掘品や戦利品なら、なぜ売却しないのか疑問に思い確認した。
「自分で使おうと思って購入したのだ。」
ああ、そういうことか。
俺と似たような理由で、コワモテを隠したいんだな。
「使わないのか?」
「戦闘時の視野が極端に狭くなるからな。二度ほど死にかけた。」
なるほど。
確かに、そういった弊害はあって然るべきだな。
「しかし、かなり高値で買ったのだろう?売却してもそれなりの額になるんじゃないのか?」
「確かにそうだが、手続きが面倒なのでな。ああいった魔道具は競売にかけなければ売れない。そうなると時間も手間もかかる。」
競売申込みや落札後の立ち会い、それに司法機関への登録申請だけでも猥雑な手続きが必要となる。代行者に依頼するのが常だが、その手数料もかなりのものとなるそうだ。
下手をすると、手数料や代行費用だけで落札金額の5割から6割を持っていかれる可能性もあった。そこにさらに競売益に対する税金も徴収されることを思えば、手間の割に大した金にはならないのかもしれない。
だからこそ、マイク・バルカンは売却よりも俺に無償で譲った方がいいと思ったのだ。
何の依頼かは未だにわからないが、ひとりの冒険者に恩が売れて、受諾した依頼が完遂するまでの適任者として囲うことができるのである。
とはいえ、競売で買い手がつけば、それなりの額にはなるはずだ。追加報酬として自身の魔道具を提供するとは、簡単な依頼じゃないと思った方がいいだろう。
何にしても、引き受けてしまったことは仕方がない。これも良い縁だと思って、依頼に真摯に取り組むとしよう。
しかし、顔を隠せるマスクか。
まさか、あのような高価な魔道具が手に入るチャンスに恵まれるとは。
マスクをつけて、颯爽と冒険者ギルドを訪れる自分の姿を想像してみた。
かっこいいのか?
それとも物語の主人公を気取っているのかと、冷ややかな目線を送られるのか?
どちらにしても、誤解とはいえ『歩く種馬』『歩く生殖器』などと町中で呼ばれたこともある俺だ。その二つ名よりはだいぶマシな気がした。
顔を隠せる魔道具が手に入る可能性が高まったからか、少し気分が浮かれている。
一呼吸おいて気持ちを落ち着かせた。
浅はかな考えで承諾したが、依頼の詳細を知った段階でどのような境遇となるのだろうか。
今のところ、説明を聞いてから対応を考えるしかないが、万全の準備だけはしておきたいと思った。




