イケメンすぎる冒険者とコワモテすぎる冒険者のそれぞれの思惑①
コワモテを目指すためにマイク・バルカンと接点を持ちたかった旨を正直に告げた。
理由を聞いたら怒るか呆れるかするだろうと思っていたのだが、彼は意外な反応を返してくる。
「なるほどな。俺とは事情が異なるが、イケメンにはイケメンの弊害があるということか。」
あれ?
何か理解されている?
「それぞれの思いや状況については詳しく知ることはできないだろうが、少なくとも俺はこの顔で得をしたことは一度もない。むしろ、人生の中で何度妨げになったかわからないくらいだ。」
空気を読んでそんなことを言ってみた。
生まれつきにしてコワモテの彼からすると、「何言ってんだコイツ」である。
普通に考えれば、コワモテよりもイケメンに生まれた方がお得に決まっているだろう。「ワガママが過ぎるぞ」と言われてもおかしくはなかった。
「わかる、わかるぞ。俺もどれだけ顔で判断されたことか。疲れて無表情なだけで、目が合った奴や入った店の店員が金を包んできたり、お代はタダでかまいませんと告げて泣きそうな顔をするんだぞ。イカつい顔をした奴は、覆面でもしていろと言いたいのか。」
マイク・バルカンは過去のことを思い出して腹が立ったのか、大ジョッキを乱暴に机に置いた。
「お客さん、壊れるからやめてくれ。」
すぐにマスターから注意される。
「ああ、すまない。」
普通の店なら、店員が震えあがって何も言えないだろう。
この店のマスターは、元冒険者として肝が据わっているのだと思えた。
「しかし、無表情なだけでカツアゲと勘違いされたり、代金を踏み倒すことになったりとは・・・思ったよりも大変なんだな。」
「マックスも似たような経験があるんじゃないのか?」
似たような経験か。
そうだな。
歩いているだけで女性冒険者の集団にさらわれそうになったり、万引きの濡れ衣を着せられて道具屋のババァに「体で払え」と言われたりしたことは似たような経験だよな?
それに、飲みの席で薬を盛られてお持ち帰りされたこともあったな。
それ以外にも・・・あれ、自然と涙が溢れてきた。
「ずいぶんと苦い思いをしてきたようだな。」
マイク・バルカンがしんみりとした口調でそうつぶやいた。
その後、手に持った大ジョッキで何杯目かのミックスジュースをゴキュゴキュと飲み干したため、まったく締まらない。
というか、それ何杯目なんだ?
本当に見ているだけで胸焼けしてくるぜ。
「苦い思いをしてきたのはお互い様だ。それよりも、まさかそんな話をするために、俺を追ってきたわけじゃないんだろう?」
マイク・バルカンは、自分のこれまでの人生と照らし合わせて同情的な言葉を伝えてくる。しかし、俺がどういった人間なのか、知りたかっただけではないのかというのが俺の本音だ。
こういった風に声をかけてくる場合、次に出てくる言葉もある程度想像ができた。
「実は、一時的なパーティを組む相手を探している。」
ほらきた。
彼も冒険者だ。
しかも凄腕の。
スイーツが大好きだからといって、おごってもらった程度で初対面の相手とこれほどの距離感にはなかなかならない。
ソロで活動している冒険者は、自身の強み弱みをしっかりと把握している。特に高位の冒険者は、高位だからというだけで高い信頼を寄せられてしまうものだ。
パーティメンバーがいる場合は、互いに苦手な分野をカバーしながら依頼を完遂させることができる。しかし、ソロの場合はすべて自分で補完するか、一時的に組む相手を探してそれを補う必要があった。
国やギルド、著名人や権力者からの指名依頼というものは、様々なしがらみもあって断りにくいものだ。
自分には向いていない、もしくは不足している能力を補える人材に心あたりがなくても、依頼を引き受けざるを得ない場合がある。
それほど規模が大きくないこの街にSランク冒険者が出没したということは、そういった依頼の準備期間や現地に向かっている途中である可能性があった。
マイク・バルカンとの間に縁が生まれるかどうかはわからなかったが、どうやらズコットケーキのプレゼントはその道筋を作ってくれたようだ。
たまたまだが、ダニーがこの街にいたことも後押しとなったのかもしれない。
まあ、とはいっても俺に大した目的があるわけではなかった。身近でコワモテを実体験すれば、いろいろと参考になるかもしれないと思っていただけだ。
ただ、俺の中でのマイク・バルカンのコワモテ像は、すでに崩壊寸前ではあったのだが。




