生涯で最高の友人との出会い。
双子誕生から十年後のお話です。
「ヴェリーヌ、準備できた?」
「出来たわ。ギュンターも?あら、ランバートはどこに?」
ニーベルンゲン王国では、とある双子が忙しなく動いている。
ヴェリーヌと呼ばれた少女、ギュンターと呼ばれた少年は王国の双子の王女と王子。彼らが産まれてから十五年の時が経過し、両親そっくりに成長したのだ。
「ランバートは今、ヴェリーヌの後ろにいるよ」
「姉様、準備できました」
ランバートは呼ばれた少年は双子の弟。彼は王の兄弟であるアルベリヒに顔も性格も似ている。
「では、行きましょう。今日はお父様とお母様の結婚記念日よ」
少女は両脇に兄弟を連れ添って、広間と向かった。
◇◆◇◆◇◆
三人が向かうと、綺麗に着飾った両親がいた。
彼らの到着と同時に、王国の国民たちは一斉に道を開けてくれる。堂々と道を進む彼らに両親たちは優しい表情で微笑んでいる。
「王国の希望である両陛下」
「この度は、十七度目の記念日おめでとうございます」
「これからも末長くお過ごしください」
三人で練習した言葉に、母は涙ぐみながら喜んでくれ、父は一人一人優しい手で頭を撫でてくれた。
「兄様、姉様。僕はアルベリヒ卿のところへ行ってくる」
「あ、はーい。気をつけてね」
「ランバートももう十二歳だよ。流石に王宮の中で迷子にはならないだろう」
可愛い可愛い弟なのだから、心配して当然じゃない。
それに、王宮の中に護衛がいるとはいえ、何が起こるかわからないのが自分たちの立場だ。
「……別に、貴方に何を言っても無駄よね」
「そういえば、今日は帝国の人たちも来てるって」
話の変え方が下手くそすぎると思う。
なんて思いながらも、私はギュンターの話に優しく返事をしてあげる。
「お父様たちと仲が良いものね」
王国と帝国は友好国だ。この国にもよく訪問しているようだし逆も然り。
ただ、私は皇帝が得意じゃないので避けている。その時間があるなら、ハーゲン卿と一緒にいたいもの。
「じゃあ僕は皇帝と話をしてくるから」
ワクワクしている彼に手を振って、私はこっそりと会場から抜け出す。
ギュンターもランバートも、よくあの中にいれるわね。隣国からやってくる貴族たちが自分の娘を差し出しているのに。
愛だの恋だのは…まだわからないわ。
「…う…失礼しました」
足元を見ながら歩いていると、何かにぶつかった。
額をさすりながら顔を上げると、美しい顔立ちをした少年が立っていたのだ。
両親や兄弟、リーシュ家、そして親戚の面々は皆揃って美形だ。その美形を見慣れている私が美しい顔と判断するのだから…相当だ。
周囲のせいで美的感覚がおかしくなっているけど。
「こちらこそ、失礼しました。お怪我は…額以外にしていませんか?」
顔も良くて、声までいいなんて。思わずうっとりしてしまう声だ。
自分の思考に陥っている私は我に返る。
「いえ、私の不注意です。額も特に怪我をしていませんので、大丈夫ですよ」
顔を上げて笑顔を作ると、目の前の少年は楽しそうに笑った。
母や私と同じ銀色の髪に、海よりも深い青色の瞳の彼は、どこか誰かを思い出す。だけど、モヤがかかっている感じで、はっきりと思い出せない。
「あっ、申し遅れました。私、ニーベルンゲン王国の第一王女のヴェリーヌ・ニーベルンゲンです」
母から教えてもらったカーテシーで挨拶をすると、少年も応えるように礼をとった。
「はじめまして、ニーベルンゲンの王女様。僕はディートリッヒ帝国の皇太子である――――――」
帝国の皇太子。それを聞いてから頭の中が真っ白になる。だから名前まで聞き取れなかった。
だから…見覚えがあったんだ。
別に帝国の人間だからといって、どうということはないんだけど。
「皇太子殿下、よろしくお願いします」
「こちらこそ。そんな他人行儀じゃなくてもう少し仲良くしてくれてもいいのに」
会って初めてだし、そんなに仲良く出来ないよ。
名前も聞き取れなかったし。口から乾いた笑いが溢れる。
「ヴェリーヌ様、どうか僕のことを忘れないでくださいね」
皇太子は私の手を取りキスを落とす。
……うぅ…顔がいい。
「…努力します」
ゆっくりと微笑んだ彼に強張った笑顔で返す。
これから生涯で一生忘れないことになるだろう。
良き友人として。
まだまだ書きたいことはありますが、これでお話としてはいったん区切ろうと思います。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます(*^^*)
次回作品を投稿するまではしばらくお待ちください!!
初めてたくさんの方に読んでくださって嬉しく思っています。
これからもよろしくお願いします




