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重力魔術士の異世界事変  作者: かじ
第3章 ダンジョンの町ワーグナー
45/161

第45話 合流

こんにちは。いつも有難うございます。

また評価していただいた方、ブックマークしていただいた方、有難うございました。

第45話になります。宜しくお願いします。


「勝てた…………!」


 放心状態のフリー、レア、アリスの3人。


「お疲れ様」


 さすがに傷だらけだったので皆に回復魔法をかける。アリスこそ外傷はないが、レアは腕の骨にヒビと所々に裂傷、フリーは肋骨5本に全身皮下出血、言わずもがな重傷だ。


「いやー、なんとかなったねぇ」


 怪我が全快すると、フリーはごろんと大の字になって寝転んだ。


「つ、疲れたぁ……!!」


 レアは緊張が解けたのか、脱力してペタンと座り込んだ。


「フリーは魔力操作の感覚掴めたの?」


 アリスはチラリとフリーを見ながら聞く。


「あいつに殴られた時になんとなくだけどねぇ」


 フリーは右手をぐっぱぐっぱしながら答えた。


 おそらくフリーの魔力操作もレベルアップしている。もしかすると魔力操作には人によってはコツのようなものがあるのかもしれない。


 また、デーモンを倒しても3人の種族レベルは上がらなかった。ただもう一押しのような気もする。

 とりあえずその件は置いておくとして、


「こいつの角も良い素材になりそうだ」


 そう言って、踏み潰したデーモンの頭の破片の中から角を拾って空間魔法にしまった。またフィルに武器を作ってもらおう。


「ふぅ、もうちょっと進んだら今日は終わりにしましょ?」


 アリスが疲れたように言った。


「そうだな。寝床を探しながら進むか」


 まぁ今日は終わりと言っても、ダンジョン内だと日時の感覚がわからないので、おおよそだ。


【賢者】今は18時過ぎです。


 あれ、わかるの?


【賢者】はい、計算能力が向上したため可能になりました。


 いつの間に。知らない間に賢者さんも成長しているみたいだ。


 話しながらデーモンの部屋を出ると、次の階層へ降りる階段があった。


「ここからは21階層だな」


 カツ、カツ、と響く階段を下りていくと、この階からは洞窟の雰囲気が変わってきた。鍾乳洞に加えて、壁や地面の色が黒ずんできている。


「なんか、嫌な雰囲気になってきたわね。空気が重くなって来たというか。体が重くなってきたというか」


 アリスが肌で空気が変わったのを感じたようだ。


「だな。ここからはBランクの魔物が出ても不思議じゃなさそうだ」


「ちょうどいいねぇ。せっかく感覚を掴んできたんだ。忘れないうちにもう少し慣れたいよ」


 子どものようにワクワクした表情を隠せないフリー。


「私は正直、もっと役に立てると思ったんだけどなぁ……最後に良いとこだけもらっちゃったかも」


 レアはあまり活躍できなかったことを悔しがっているのか、耳がペタンと伏せられていた。


「いや、レアは一撃の威力も高くて応用力もある。吹っ飛ばされた時、ちゃんと風でガードしてただろ? レアは防御もうまいんだな」


「そうかな? えへへ」


 少し元気を取り戻した。


「アリスは魔法の発動までの時間が減ってきた。地道に魔力操作を練習してた成果だ」


「まぁね。でも一度に大きな魔力を使ったから、さすがに反動が起きたわね…………っと来たわよ」


 ベルガルだ。亜種ではないが、それでもBランク下位。上の階層であればボスクラスの魔物だ。

 すでに戦闘体制で体が燃え盛っている。それが2頭、正面から幅2メートルほどしかない狭い通路を腹を空かしているのか、猛スピードで走ってきていた。


「右は僕が行くよ」


 フリーがそう言いながら走って先頭に出る。


「じゃああたしが左を」


 アリスももう魔法の準備が完了したようだ。


「ゴー!」


 向かってくる左のベルガルに対して、アリスの氷魔法が放たれた。太い、ガチガチに固められた高魔力の氷の槍だ。それが、螺旋回転しながらベルガルに突撃する。



 ギュィンッ…………ガガガガガガ!!



「ギャンッ!」


 ベルガルは避けるのも叶わず、空中で槍に口から肛門までキレイに掘り進められ、串刺しから一瞬で大穴が空いた。そのまま地面を滑り動かなくなる。


 もう1匹はフリーの目の前まで迫った。

 フリーは身体強化した上で、武器に魔力を纏わせる。向かってくるベルガルの正面で、寸前に体をひねり、ベルガルの牙を避けながら上顎と下顎の間に刀を入れ、そのまま背骨にそるように半分に斬り分けた。


「2人ともさすがだよ!」


 レアが2人をほめた。


 そうして何度か魔物とやり合いながら、いい感じに落ち着ける広い部屋を探した。

 何日も洞窟のようなダンジョンに閉じ込められていれば気も滅入ってくる。そこで少しでも解放感のある部屋を探していると、俺達が落ちてきたような縦穴があった。縦穴の底の部分のようだ。部屋の広さは学校の体育館の4倍ほどで天井が闇となって見えないくらい高い。


 しかしそこは、体長2メートルくらいの巨大なパラライズフロッグの巣と化していた。こちらには気付いておらず跳ね回っている。



「「「「ゴアゴアゴアゴアッ……!」」」」



 かなり耳障りだ。


「ここ、いいんじゃない?」


 アリスも良いと思ったようだ。カエルはいるが、ところどころヒカリゴケによって地面や壁が黄緑色の蛍光色に照らされ、きれいだ。


「うん、今日はここで寝よう」


「そうだね! ここならユウのお城も建てられそうだし!」


「お城……いや、少しでも安全で過ごしやすい環境をと考えたら、どうしてもでかくなるだけなんだ。まぁとりあえず、あいつらを掃討するぞ!」


「「「了解!」」」


 その合図で全員一斉に駆け出した。


 パラライズフロッグは体表と長く伸びる舌の先から麻痺毒を分泌するCランクの魔物だ。皮膚は常にぶよぶよの麻痺毒の黄色く透明な液体で覆われており、なかなか厄介な特性を持つ。


 だが、いかに数が多いからと言って、デーモンに勝ったレアたちがCランクの魔物に手こずることはない。各自群れの真ん中へと飛び込むと、毒液を避け、はたまた風で弾き、はたまた凍らせることで1滴も肌に触れることはなかった。

 そうして5分もかからずに40匹のカエル駆除に成功した。死体は町の薬屋が良い値段で買い取ってくれるらしい。


「じゃ、ユウよろしく!」


 カエルの死骸が散乱する中にフリーたちが佇んで言った。


「ああ」


 俺は土魔法を発動させ、できるだけ頑丈な、寝室、見張り用の塔、風呂込みの4階建ての中世風の城を建てる。外周には高さ4メートルの城壁を作る。イメージはドラキュラ城。黒い城壁に悪魔的な雰囲気がこのダンジョンにマッチしている。

 土魔法で大質量のものを作るのに慣れてきたためか、よりディティールをこれるようになり、正直ちょっと楽しい。

 こうして俺が作った城で順番に警戒に当たりながら睡眠をとるのがここのところの習慣になりつつある。


「頑丈ではあるんでしょうけど、どうなのこの見た目」


 アリスが城を見ながら、圧迫感のある外見につぶやいた。


「このダンジョンらしさを加えてみた。強そうだろ?」


「その必要ないじゃない。もう少しこう、庶民的なのはないの?」


「それだとロマンがなぁ」


「ロマンは不要よ。できるんでしょ?」


「できます……」


 女の子たちにはウケが悪いようだ。


「しかし、あたしらもこんな縦穴から落ちてきたのね」


 アリスが上を見上げながら言った。


「よく死ななかったわ。ほんと誰かが無茶するから」


 まだアリスは根に持っているようだ。


「別に良いだろ? その方が早かったんだし」


「まぁそれを言われると…………」


 とその時、


「ん、なんだあれ?」


 何か…………真上から4つの小さな点が落ちてくるのが見える。


 それは徐々に人の形をなし…………

 




「「「「……ぅわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ…………!!」」」」




「なになに?」


 デジャブだ。これは人か…………?


 千里眼で見ると、メガネをかけたオールバックの人物が落ちてきていた。


「お、ジャンたちだ」


「ユウ、のんきに言ってないで!」


「わかってるって」


 俺は手のひらを上に向け、


「斥力!」


 ジャンたちの落下のスピードがどんどん緩まっていく…………そして重力と斥力がちょうど釣り合い、地面から少し上、俺の目の前に浮かんだ状態で静止した。

 ジャンたちは地面に平行に寝そべるような形で手足を広げている。


「やぁジャン」


「や、やぁユウ。早いね。もうこんな下の階層にいるなんて」


 ジャンが浮いたまま、ずれた眼鏡を直して返事した。


「いや、俺らも別の縦穴に飛び込んで近道したんだよ。楽でいいよなこれ」


「そうなんだ。これ、トラップ…………」


 ジャンは真顔で言った。


「俺が止めなくてもジャンは自分たちでなんとかしただろうに、すまんな。皆心配症なんだ。許してくれ」


「あ、あ、ああ。そうだね」


「ところで調子の方はどうだ?」


「ま、待って、その前に下ろしてくれない?」


「あ、悪い悪い」


 ジャンたちを地面に下ろす。


「ふぅ。ありがとう、助かったよユウ」


 ジャンはハンカチで汗をぬぐった。


「いや、いいんだ」


「で、ここはいったい何階層なんだい?」


「ここは21階層だな」


「もうそんなとこかい!? ずいぶんと落ちてきたんだな……」


 ジャンが上を眺めながら言った。


「ジャンたちはどこから?」


 アリスが尋ねた。


「僕らは10階層からだね。穴に落ちて滑り台を滑って放り投げられたあとはこの縦穴だったんだよ」


「いやいや、お前らはここが地元のダンジョンだろ? 慣れてるんじゃないのか?」


 フリーたちも頷いている。


「そう、そこなんだよ!」


 ジャンが声を大きくして言った。


「ん?」


 俺たち4人は首をかしげる。


「このダンジョン、僕らが知るダンジョン『悪魔の庭』とは違ってきているんだ」


「どういうことだ? 魔物や道が違うということか?」


「そうだよ。前までこんな縦穴のトラップはまったくなかった。しかも、ヘクターたちによれば、15階層でベルガルの亜種が出たそうじゃないか。あそこはそんな上位モンスターが出るような階じゃないんだ」


 あ、途中であいつらに会ったんだな。良かった無事みたいだ。


「へぇ。道まで違うのか」


「ちなみにユウたちは何か見つけたかい?」


「ああ。20階層のボスがデーモンだった」


「デーモンだって!!!?」


 眼鏡をずり落としそうになりながら、ジャンはすっとんきょうな声を上げた。


「デーモンってAランクじゃないか! 予想はしてたけど……たぶん最悪のパターンだね」


 ジャンがガックリと肩を落とした。


「最悪のパターン? どういうことだ?」


「…………ダンジョンボスがすげ替わったのかもしれない」


「そんな……まさか!」


 ジャンの仲間たちがざわめく。対してこっちは全然わかっていない。


「ん、ということは前のボスが倒されて、別の魔物に代わったと?」


 そういや、さっきデーモンが竜がなんたらとかって言ってたか?


「そう言うこと。まぁそれも大変なんだけど、それだけだと喫緊の課題というわけではないんだ。ただ今回の問題は…………」


「氾濫の時期が近いことかい?」


 フリーがそう聞くと、ジャンはため息混じりに答えた。


「そうだよ」


「なんで氾濫とそれが関係するの?」


 レアが首をかしげる。


「階層ボスにAランクの魔物が出たってことは、ダンジョンボスは確実にそれ以上の実力を持つ。そんな奴が氾濫を起こしたとなるとどうなると思う?」


「ワーグナーはBランクのダンジョン攻略に集まった冒険者が多い。Aランクダンジョンになって氾濫が起きたとなれば、強力になった魔物に冒険者たちが対応しきれない」


「そうだよアリスさん。まさにその通りなんだ……非常にまずい」


 ジャンが、ぐぉぉぉと頭を抱える。


 そんなことあり得るのか?


【賢者】はい。ダンジョンコアはダンジョン内の魔物が強ければ力を増します。それがダンジョンボスなら、より顕著に反映されパワーアップします。


 まじか。


「なるほど。なかなか厄介なことになりそうだな」


「なかなかじゃない。最悪だよ!」


 ジャンが頭を抱える問題は多そうだな。しかし、ここで話を続けるのはなんだな。


「お、おう。まぁここまで来るのに疲れてるだろ。話は中で聞こう」


「中? て、うわぁ!!??」


 振り返ったジャンが、圧迫感のある真っ黒な城壁に30メートルはある見張り塔を持った無駄に荘厳な俺たちの寝床を目の当たりにした。


「な、なにこれ!? これもダンジョンの異常かい!?」


「まさかこれこそダンジョンボスの城じゃ!?」


「まさか…………!」


「い、一体どんな怪物が住んでやがる…………!」


 ジャンたちは寝床に圧倒される。

 だが、疲れていたはずのジャンたちは武器を構え直し目付きが変わり、一瞬で戦闘モードになった。魔術士の男は補助魔法を発動し、ジャンたちが透明のベールに包まれる。


「いや、あのー、ジャンさん。これは…………」


 レアが言いにくそうに言う。


「まったくこんなところで談笑してる場合じゃなかった!」


「ジャン!」


「なんだい!?」


「ジャン、これ俺が作ったんだよ」


「「「「…………へ?」」」」



◆◆



 とりあえず俺の城の門をくぐり、ジャンたちを中へと招いた。

 俺たちは長テーブルのあるリビングダイニングにいる。部屋の広さは30畳以上でそのへんのホテルの一室よりも広い、光魔法で光源は補っている。さすがに土魔法でソファは作れなかったので、空間魔法に入れていたソファを置いた。天井のシャンデリアもそう、天井にフックのかけられる出っ張りを作り、そこにコルトの家具屋で仕入れたシャンデリアを引っ掻けるようにしている。いつか土魔法もレベルが上がればガラスとかも作れたらいいんだが。


「これがユウが作ったものだということは理解した。でもここまでするか!?」


 変な緊張感を与えてしまったのか、そう言いながらジャンたちはオドオドと部屋のあちこちを視線が行き来する。


「趣味で」



「「「「趣味かぁ………」」」」



 言いづらそうに頷くだけだった。


 カッコいいと思うんだけどな。でも理想と違うのは今の土魔法だと防御力を上げるために土の密度を上げると、どうしても色が黒くなってしまうことだ。だから悪魔城みたいだと言われるんだろう。そこが課題だな。


 そう考えながら魔力操作で空間魔法に保管していた食糧を皿と一緒に黒い長テーブルに配る。ジャンたちはフワフワと浮いて運ばれてくる料理を何か言いたげに無言で見ていた。


「ユウたちは毎回ダンジョンでこんな暮らしをしているのかい?」


 ジャンが注がれたスープを口にしながら聞いた。


「いや、最近だな。前は一回り小さかったはずだ」


「そう、これの一回り……」


 あはははと笑うジャン。


「で、問題はダンジョンの異変だったか?」


 俺がそう切り出すと、皆が真剣な顔になった。うちと向こうのパーティで向かい合う席の配置だ。


「もうダンジョンの異変は確定なんだろ? なら今後どうするか考えた方がいい。氾濫の時期は?」


 すると首を横に振りながらジャンが答えた。


「まだわからない。本来ならまだ数週間はあるはず。だけど今回はタイミングがタイミングだ。だからもう少し潜ってみる必要があると思う」


 それもそうか。ダンジョンボスが変わって今までと同じとは限らない。


「なるほどな。で、時期がわかったところで実際、町の冒険者で対応できそうなのか?」


「それは、正直無理だと思う。Bランクはそれなりにいるけど、やはりAランクの魔物が複数出て来ると…………」


 ジャンがうつ向いた。


「だろうな」


「そもそもオーランドがいなくなっただけでも今回はかなり厳しいんだ」


 ジャンの戦闘スタイルは見たところ近接戦だ。氾濫時はオーランドが遠距離攻撃でバランスをとる予定だったんだろう。


「Aランクに対応出来そうな人を王都から呼ぼうにも、王都だって空いてるAランクは少ないだろうし、たぶん王都からだと救援は間に合わない」


「それは困ったな」


「本当だよ。身近に戦力になる人がもっといればいいんだけど」


 と言いながらジャンと目があった。


「…………ん?」


「そういや君たちはデーモンを倒したのかい?」


「当たり前だろ。だからここにいるんだ」


「君たち4人で?」


「いや、こっちの3人だけで」


 俺は右側に座る3人を指した。


「ユウ抜きでかい!? それはすごいね」


「まぁな、うちは全員優秀なんだ」


 俺が誇らしげに答えると、ジャンがこっちをチラリと見て口を開いた。


「今の話とこの城を見て思いついたんだけど、ユウにお願いがある」


「俺に?」


「この町の外側にさらに防壁を造ってほしい。これほどの城が出来たんだ。不可能ではないよね?」


「ああ、なるほど。たぶんできる」


 でもかなり大変だろう。どれくらいの体積と質量が必要かで大きく変わってくるな。


 そう考えているとジャンがさらに続けた。


「それともう1つ頼みが」


「なんだ?」


 ジャンが緊張した面持ちで言う。



「僕たちと一緒に町の防衛戦に加わってほしい」



「ああ、そう言うことか」


 それは全然良い。アラオザルのように町が滅ぼされるのは二度と見たくない。ただし……。


「こんなことを言って悪いが、報酬は出せるのか? さすがにタダ働きはできない」


 俺たちには別の目的がある以上、少しでもプラスになることでないといけない。


「町がなくなれば元も子もない。出来ることならなんでもするよ」


「わかった。どう思う?」


 隣に座っていたアリスに聞く。


「うん、報酬次第だけど…………」


 少し皆で顔を会わせて相談する。


 ーーーー。


 ーー。


 ーーーーーー。


 ーーーー。


「…………確かにな。王都でのことを考えるなら、それが良い。そうしよう」


「ジャンさん、あたしたち王都へ行く途中なんだけど、向こうのギルド長は信頼にたる人?」


 できるだけ強く、位の高くて信用できる人物が王都で味方にいれば心強い。


「ん? そうだねぇ…………ギルマスのギネスさんは信頼できるよ。どうしてそれを聞くかは……知らない方がいいんだね?」


「そうだな。余計なことに巻き込まれたくなければ」


 さすが勘が良い。賢明だな。


「ふぅ、じゃあ聞かないよ。で、ギルマスにどうすればいいんだい?」


「紹介状を書いてほしいの」


「それくらいならお安いご用さ。彼とは友人だからね」


 ジャンは得意気に言った。


「あと、他に王都にいて信頼できる人物は?」


「後は…そうだね。これは他言無用でお願いしたいんだけど…………」


 ジャンが声をひそめながら確認してくる。


「わかったよ」


「うん、僕は幼い頃王都のスラムに居てね。その時お世話になったのが、王都の裏社会のボス、レオンなんだ。彼にも紹介状書いてあげるよ」


「えっ!? あのレオンと面識があるのかい!?」


 フリーが驚いた。


「誰だそいつ?」


 知らん。


「ユウ知らないの!? レオンと言えば、王族の次にこの国で力を持ってるとされる人物だよ」


「はぁ、王族の次?」


「彼は裏社会の怪物だからね。まさに首領さ。貴族ですら頭が上がらないんだよ」


 ジャンがそんな人物と知り合いだとは、ツイてる。


「ユウ! 絶対! 絶対にお願いすべきだよ!」


「もちろんだ」


「もし、それでも足りないと思ったら、追加でいくらでも報酬を出す。だから…………お願いだ!!」


 ジャンがテーブルにつくほど頭を下げた。


 こんな彼だから色んな人と繋がりがあるんだろう。ただ、まだ情報が足りない。本当に防衛可能なのか。それが知りたい。


「ふぅん、今町はどういう状態なの? 何か準備は始めてるの?」


 アリスがどこか冷たい目をして聞くと、ジャンは顔を上げた。


「ヘクターに言付けた僕の手紙を読んで、ギルドが動いているはずだよ。でもまだまだ情報が足りない」


「ねぇ、そもそも氾濫は、どうやって時期と規模を確定するの?」


「それは、魔物の数や魔力の高まり度合いでかな。確かなのは、氾濫の時期、ダンジョンコアのあるフロアで吐き出すように大量に魔物が生産されるんだけど、その魔物たちが最下層から駆け上がってきて、ダンジョンから溢れて氾濫になるんだよ。だからそれまでの時間を逆算するんだ」


 だからダンジョンに魔力が貯まりすぎるとよくないのか。ダンジョンコアが氾濫を起こすんだろうな。


「なるほどね。そのダンジョンコアから生まれた魔物の大群を見つけ出すためにあなたは下層に潜っているってことね」


「そう言うこと。いや、アリスさんってすごく頭の回転が早いね」


 ジャンが驚いたように言った。


「まぁな、うちの参謀だ」


「誰が参謀よ……!」


 そう言うが、アリスはまんざらでもなさそうだ。


「ねぇねぇ! 私は!?」


 レアは言ってほしそうに自分を指差して聞いてきた。


「レアは、癒し猫担当だ」


 レアが嬉しそうにグッと拳を握った。


「やたっ!」


 レアの喜ぶところは謎だが、耳がピコピコと動いて可愛い。


「ねぇねぇ、僕は?」


 フリーも自分を指差しながら聞いてきた。


「お前は変態だ」


「担当もつけてくれないのかい!?」


 フリーはガン! とショックを受けたようだ。


「それでもし、対処しきれない規模だったならどうするんだ?」


 フリーをスルーして話をする。


「急に話に戻るねぇ!?」


「フリーうるさい」


 フリーはアリスに睨まれてシュンとした。


「その時は、町を捨て……うん、捨てるよ。町の人を皆連れて王都へ逃げ込むんだ」


 ジャンは苦しそうに言った。


「あはは、めちゃくちゃ嫌そうだよ」


 レアが眉を潜めながら苦笑いをする。


「当たり前じゃないか! 僕はこの町が大好きなんだ!」


 ジャンがムキになって手のひらでテーブルを叩く。


「だから皆ジャンが好きなんだろうねぇ。羨ましいよ」


 寂しそうな顔でフリーは呟いた。


 お前は女子に逃げられる側だもんな。


「…………ジャンは本当に真っ直ぐな性格をしてるよな」


「ただ嘘が付けないだけだよ」


 謙遜するジャンにアリスは言う。


「ふん、人から好かれるなんて羨ましいわね」


「アリスちゃんはもっと人を信用しないとね」


「う…………わかってるわよ」


 アリスはレアに痛いところを突かれたのか苦い顔をした。


「ジャン」


「な、なんだい?」


「いや、良い奴だなって思ってよ」


 ジャンの仲間たちも皆腕を組み、ニコニコしながら頷いている。


 だからこの人たちもジャンに着いてきたんだろうな。


「ジャンは町を守るためにどこまでできる?」


「なんだってできる。あそこが僕の帰る場所だからね」


 ジャンはためらいもせずに答えた。


「死んでもか?」


「死ぬことなんて恐くないよ。僕が本当に恐いのは大切な人が泣いてる姿ーーーー。泣いてる姿なんて死んだって見たくない。それが死ぬよりも恐ろしい。笑っててほしい。だから、お願いだ! 僕に力を貸してくれ!」


「へぇ…………」


 アリスが不思議な生き物を見るかのような目でジャンを眺める。


「嘘だと思うか?」


「いいえ。始めは、こんなの皆の前で良い顔するための表向きの顔なんだと、そう思ってたわ。だから、またかと思って…………」


 アリスが申し訳なさそうにする。


「それでお前、ジャンのことになるとちょっと機嫌悪かったのか」


「そ、そんなんじゃないわよ」


「レアにも見透かされてたしな」


「そうだよ?」


 レアはじーっとアリスをニコニコしながら見る。


「あぁもう! わかったわよ」


「ジャン俺らは、お前を助ける。是非、ワーグナーを守る手伝いをさせてくれ」


 レアたちもニコニコしながらジャンを見る。


「ほんとかい!? やっと…………やっと、これで希望が見えたよ!」


 ジャンの目が涙で潤んできた。だがジャンは続けた。


「でも、死ぬかもしれないよ? それでもいいのかい?」


「俺らは簡単には死なんよ。それに死んだら死んだ奴が悪い」


「ははっ、なんて自分に厳しいんだろうねユウは」


「いや、お前ほどじゃねぇよ」


「どういう意味だい?」


「わかってないのか」


 俺は頭をかいた。


「とにかくだ。正式にワンダーランドは町の防衛に参加させてもらう。宜しくな」


「うん、ワーグナーを宜しく頼むよ……!」





「「「「任せとけ……!」」」」





こんにちは。

読んでいただき、有難うございました。

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