44話
残酷描写が含まれます。
苦手な方はご注意下さい。
訓練場には既に、陛下やパトリック王太子殿下方がいらっしゃいました。
慌てて父様の方を見ますが、落ち着いた様子です。
陛下方をお待たせしていて何故平然としているのですか!?
「よく参ったな。
それでは、検証を始めようではないか。イヴォール大臣説明を。」
「はっ。
ミーナ嬢、これからあそこで待機している怪我人と病人に魔法を行使して頂く。
初めに軽傷者から初めて、徐々に重傷者に移行する。その後は病人も同じく軽い症状の者から重い症状の者へとなる。
何か不明点はありますか?無ければ早速初めて頂きたいのですが。」
「…いえ、大丈夫です。」
「そうですか、では始めて下さい。まずはこの方からです。」
本当を言えば、どのように魔法を行使すればいいのか分かりません。その事を話してしまいたかったのですが、この場を混乱に陥れるだけですから諦めましたが…。
さて、どうしましょうか。魔法はイメージですが、どの様にイメージを致しましょう?そして、魔力をどれくらい練ればいいのでしょうか?
1人目の軽症者の方が目の前にやってきました。
私の考えがまだ纏まっていないので困りましたね。会話をして、少しでも考える時間を増やしましょう。…あまり意味が無いかもしれませんが。
「念のために確認なのですが、怪我は腕の擦り傷のみでしょうか?」
「そうだ。」
「どの様な状況でお作りになられたのか、差しさわりが無ければ教えて頂きたいのですが?」
「…訓練中に避けるのに失敗したんだ。」
すごく苦虫を噛み潰した様な顔をされています。すみません、今後は怪我の状況を聞くのをやめましょう。
聞いた所で考えを纏める時間が増える訳ではないですね。
もう、どうにでもなれです。前世の体の仕組みを参考にしましょう。これでも、前世での進学希望先は看護学校だったのです。一般の方よりかは、生物や保健の授業は得意だったのです。
擦り傷なので、血小板を活性化させるイメージでいいでしょう。魔力は少量ずつ込めていけばいいでしょう。過多に込めて体に悪影響を与えるかもしれませんし、適性がある系統は、適性の無い系統より少量の魔力で魔法の行使が行えるのですから。
父様達が、魔法の適性があると言っているのです。それを信じてみましょう。
目を瞑り、呼吸を整えてイメージを確かなものにします。では、魔力を少量ずつ込めましょう。目を開き、手を擦り傷の部分にかざします。
魔力を込め始めた瞬間に、擦り傷が一瞬でなおりました。
「「「おぉ――――――!」」」
検証を見守っていた人々からどよめきが起きます。
私も驚きです。本当に治りましたよ!そして、込めた魔力が少ないです。これが適性魔法の効果のなのでしょうか。すごく低コストで怪我を治せるのですね。
イヴォール大臣が目を瞠ったまま、次の方を連れてこられました。次はどうやら切り傷の様です。
「まだ、魔力は大丈夫ですか?」
「はい、今の方にはほぼ魔力を使わずに済みましたので大丈夫です。」
「そうですか、では次はこの方をお願いします。」
そう言って、先程の擦り傷の方を連れて下がられました。
擦り傷の方に何やら話しかけて、治癒された時の状況を聞いている様です。
その後、切り傷の方を細胞の活性化をイメージして治します。
魔法の行使後はやはりどよめきが起き、イヴォール大臣が次々と怪我人を連れて来ます。
打撲・単純骨折・複雑骨折・致命傷であっただろう刺し傷(危篤状態から脱出した程度の回復状態)・部位欠損・目を切られたことによる失明者など、果ては古傷のみの方もいらっしゃいました。
さすがに古傷は治せませんでしたが、それ以外は治癒致しました。しかも少量の魔力で…マジですか。
検証を見守っていた方々は驚き過ぎて言葉もない程の様です。私も、そちらの立場だったら同じでしょう。
イヴォール大臣が次の方を連れて来ましたが、怪我が見当たりません。と言う事は、ここからは病人の治癒になるのでしょうか?それにしては、色々と拘束されている様ですが…。
イヴォール大臣が控えていた騎士様の目配せをし、その騎士様が近づいてきます。
「ミーナ嬢、少し嫌な場面に立ち会わせますがご了承下さい。
大罪人を使って、瀕死の者も回復・治癒が出来るか検証致します。」
イヴォール大臣が言い終わると、大罪人の方が暴れて逃げまどおうとしていますが、すかさず騎士様が大罪人の方を切りつけた後にお腹を刺します。
=ドシュ、ブシュ=
騎士様が剣を引き抜くと血が大量に吹き出しました。
慌てて、止血と細胞の活性化などのイメージを展開して、魔法を込めて魔法を行使します。無事に治癒が出来たので、私としては一安心です。致死性の傷でも治せるのですね。ただ今回は、魔力を先程より多く使いました。現在進行形で血が溢れていたからでしょうか?
大罪人の方は、ぐったりした状態で騎士様に連れられてどこかに去っていきます。
あそこまで、ぐったりされたのは精神的に参ったのでしょうか?
ですが、命の保証の無いこの場に連れてこられる程の大罪を犯しているので、自業自得と言う事でしょう。
検証を見守っている人々が唖然としている中で、イヴォール大臣が次の方を連れて来ました。次は拘束をされていませんが、怪我も見当たりません。
「この方から、病人になります。」
「分かりました。」
病人の方にも怪我人同様にイメージを確かにしてから魔法を行使します。
怪我人の方より魔力を多く使い、軽症であれば完治しましたが、重症者の場合は完治せずに回復するぐらいでした。
それは魔力を多く込めても変わりはしませんでした。
うっ、体が怠くなってきました。そろそろ魔力切れになりそうです。
あとどれくらいの方に魔法をかけて検証するのでしょうか?
イヴォール大臣が陛下の方を見られて頷かれています。もう終わりと言う事でしょうか?
「ミーナ・ヴァグナーク。ご苦労であった。
これで今回の検証は終了だ。
今後の身の振り方は後日発表する。」
「発表があるまでは、ヴァグナーク隊長の部屋で過ごして下さい。
それでは、私達はこれで失礼たします。」
最後に発言されていた方は、確か宰相様でしたね。その発言の後、陛下達大臣の皆様と各隊の隊長が後に続いて退席されていきます。
父様は陛下達と一緒に退席されるそうで、私は父様の隊の副隊長であるケインさんと一緒に父様の執務室まで戻る事になりました。
その日、父様は私が眠りに就いた後の夜遅い時間に戻られた様です。
朝起きると、午後から謁見の間で、今後の事を発表されると言われました。
謁見の間に来て行ける様なドレスは持っていませんが、どうしましょう。
いつもお読み頂きありがとうございます。




