43話
「っ!どうぞ。」
父様の顔色に緊張の色が一瞬走りました。
そして扉が開き、部屋へ入室してきたのは、パトリック王太子殿下とフランツ様とシルバ兄様のご友人のベルンハルト様でした。
慌てて立ち上がり、最上級の礼を取ろうとしたのですが、パトリック王太子殿下に手で制されてしまいました。父様は、殿下達が入室された時から騎士の礼を取り続けています。
そんな父様に恨みがましい一瞥を贈ります。
父様、入室の返事の前に私にも、誰が来たのかを教えておいて欲しかったです。
「ミーナはまだ目覚めたばかりなんですから、そのままでいいですよ。様子を見に来ただけですから。
それにしても久しぶりですね。5年前の模擬戦以来ですか。」
「はい、お久しぶりでご座います。わざわざ私の為に来ていただきありがとうございます。」
「いいえ、此度の一番の功労者が目覚めたのですから、来るのは当たり前ですよ。
それに、私個人が会いたかったのもありますから。」
「殿下、それくらいにしたらどうだ。
ミーナが困ってるぞ。」
「フランツはいいですよね?ミーナが魔法士団に訪れた時にタイミングを合わせて会うことが出来たのですから。」
えっと、何でしょうかこの王子様の口ぶりは。
5年前と似た感じがするのですが…私は今度は何を試されるのでしょうか?
父様は殿下からの許可が出ていないので、未だに騎士の礼を取ったまま無言を貫かれています。
私もそちら側に回って、当事者から外れていたいのですが。
「ヴァグナーク隊長、ミーナの体調はどうでしょうか?
もし平気な様であれば、明日にでも検証に入りたいのですが。」
「目覚めてからの状態も安定している様にですので問題ないかと。
念のため、この後にシュテルネン魔法士団団長とマーギナ魔法士団副団長に診察をして頂きます。」
「そうですか。
では、その結果が分かり次第報告と、検証を行う準備に取り掛かって下さい。
フランツ・ベルンハルト行こうか。」
ベルンハルト様は一言もしゃべらずに、殿下とフランツ様と一緒に退出されて行きました。
シルバ兄様といる時はもっと明るい方でしたが、お仕事中は寡黙な方になっているのですね。
その後、お祖父様とヘレンさんが来られて、私の魔力回復のお墨付きをもらい、翌日に検証を行う事が関係各所に通達されました。
本当に私に回復・治癒系の魔法が使えるのでしょうか?
明日の検証には、陛下やパトリック王太子殿下そして宰相以下の大臣の方に各隊の隊長などの王国の重鎮たちが集まるとの事です。
その中で、魔法が使えなかった時に起こりうる混乱が怖いです。
そんな事を思いながら、眠りにつきました。
ナディエージ様、私はこれからどうなるのですか?
転生時に特別な力かつけられないと言われていたのは嘘だったのでしょうか?
翌朝、父様から声を掛けられて起こしてもらいましたが、あまり眠れませんでした。
と言うか父様、私に休憩室のベッドを使わせていて、父様はどこで寝ていたのでしょうか?父様も隊舎に泊まり込みだった様なのですが…。
私が昨日家に帰れればよかったのですが、私の身の安全の為に暫くは隊舎で生活する様に言われました。
父様のベッドを使わせてもらっているのが心苦しいです。健康を害さなければいいのですが。
「あまり寝れてない顔をしてるな。
緊張してるのか?」
「緊張と言うよりは、不安が大きくて眠れませんでした。
錚々たる方達の前で、自分でも未確認の力を使おうとするのは失敗するのではないかと怖いです。」
「大丈夫だ。たとえ失敗したとしても、ミーナは何も変わらない。
俺とマーガレットの大事な娘に変わりはないんだからな。」
「はい、父様。ありがとうございます。」
何故でしょう?今までこの様な事を言わなかった父様が積極的に言っています。
どの様な心境の変化があったのでしょうか?
その後、父様が家から持って来ていた私のお手製のワンピースに着替えて、洗面を済ませ身支度を整えます。
朝食を、隊舎にある食堂で父様と夜番の任務明けのシルバ兄様と一緒に朝食を食べます。
しかし、周りの方の視線が多く気になって、あまり食べる事が出来ませんでした。
それもこれも、シルバ兄様が甲斐甲斐しく私の世話をされようとしているからでしょう。
ちらほらと、‘あのシルバ・ヴァグナークが…’とか聞こえて来ていますからね。
公開で羞恥プレイはやめて下さい。こうなれば後で、シルバ兄様にドライフルーツを分けてもらって、それを食べて昼食まで我慢しましょう。
予定通り、シルバ兄様からドライフルーツを頂きました。シルバ兄様の目に涙が溜まっていたのは気が付いていませんよ、えぇ。
シルバ兄様は検証の場に入れる身分に無いとの事なので、寮に帰られてひと眠りするそうなので、シルバ兄様とは食堂で分かれて、父様と検証を行う訓練場に赴きます。
また、緊張と不安に押しつぶされそうです。こんな時は、ダンさんに頭をポンポンとされて癒されたいです。
そんな事を思っていると、父様から頭をポンポンとされました。
「ダンじゃなくて悪いが、我慢してくれ。」
「…心の中を読まれたのですか?
ありがとうございます。父様。」
もう一度、頭をポンポンとされました。父様の照れ隠しでしょうか?
気を引き締めて、訓練場に入ります。そこに広がっていた光景は、軽症者から重傷者、見た目では怪我をされている様子の無い方もいらっしゃいます。
この方達全員に、魔法を試すのでしょうか?
お読み頂きありがとうございます。




