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39話

父様の執務室に入り、茶器が置いてある所に向かいお茶の準備をします。

今日は朝からいろいろあって、少し疲れたので自家製のハーブティーにしましょう。

私がお茶を準備していると、ノックの音が聞こえ誰何する前にドアが開きました。


「…オルデン、一応こちらが応対してから入室してくれないか?」

「いつもの事でしょう。

それにさっきの緊急会議の時に訪れる旨を話しているのですから、構わないでしょう。」


父様とオルデンさんが応接用のソファに向かい合わせで座ります。

取り敢えずお茶を出したら、隣の休憩室に移動した方がいいでしょうね。会議の続きかも知れませんし。

父様とオルデンさんに準備していたハーブティーを置き、自分の分をこっそりと持って休憩室に移動しようとした所、オルデンさんに呼び止められました。


「ミーナちゃんに用があって来たので、ハンスの隣に座って下さい。

勿論、用意されたお茶を持参されて構いませんので。」

「え…?あ、はい。分かりました。」


こっそり持って行こうとしていたお茶の存在をしっかりと把握されていました。

恥ずかしいです。

お茶をテーブルに置き、父様の隣に座りオルデンさんに向きあいます。


「お話とは何でしょうか?」

「ハンスからはまだ何も聞いてないんでしょうか?」

「えぇ、今しがた部屋に着いたばかりでして…。」

「そうでしたか。

では、私から説明しますね。」

「宜しくお願いします。」

「ミーナちゃんにはしばらく、騎士見習いとして騎士団で活動をしてもらいます。

この王都を襲撃すると言う情報により、騎士団も魔法士団も猫の手も借りたい状態になりまして、その情報をもたらしたミーナちゃんには、しっかりと働いてもらおうと言う事になったのです。

勿論、陛下以下大臣達の許可は得ていますので、安心してくださいね。

陛下達も、ミーナちゃんの実力を知っているからこその決断ですし。」

「そうなんですね。

ですが、騎士団の制服はどうすればいいでしょうか?

私の戦闘スタイルは、暗器があってこそですし、サイズの問題もあるのですが…。」

「それは問題ありません。

第3と第5騎士隊では、暗器を使用する騎士も存在していてそれ用の隊服が存在しますので。

ミーナちゃん用は、ハンスが武器の隠し位置や種類・出し方を把握していましたので、それを基準に作っています。サイズも実の父親の手にかかればすぐに分かりますので、5年前からサイズが変わるごとに作って、騎士団で保管していましたから。」

「………。」


何を突っ込めばいいのでしょうか?

父様をジト目で見つめます。何故父様がそんなに積極的に手を貸しているのですか?

私は一度も騎士になりたいなどとは言っていないのですが…。どちらかと言うと、今のデザイナーとお針子の仕事が気に入っているのですよ。知ってますよね、父様。


「…騎士団からの要請とミーナの実力を知っている陛下とイヴォール大臣、パトリック王太子殿下からの要請が強かったから、な…。」


父様が目を逸らしながら言い訳を言っています。しばらく、ドライフルーツは父様には配分しない様にしましょう。

その分を、お店のお得意様に回す分にしましょう。

そう言えば、伯爵邸の別宅の側に植えてある木々の一部がちょうど収穫の時期になっていましたね。

2年前のお引越しの時に、ダメになってしまうかと思っていましたが強く育った様で何よりです。あの事件の後は、家族で過ごした家を手放し、シュテルネン伯爵家の敷地内に私と父様が住む別宅を建ててもらいそこに移り住んでいるのです。

今日は、カール兄様の奥様になったシャルロッテ姉様と一緒に赤ちゃん用の服のデザインを考える予定だったのでしたね。身重の姉様に心配を掛けてしまったでしょうか?


「ミーナ、何か言いたいのは分かるが、今は緊急時だ。

そのもの言いたげな目をしながら、こちらを睨むのはやめなさい。この騎士団の隊服に着替えて、指示に従ってくれ。」

「…分かりました。では、着替えてまいりますので失礼します。」


どうやら現実逃避をしても無駄の様です。私としては自ら争い事の中心に行きたくないのですが…。

いくら人を躊躇い無く殺せると言っても、殺さなくて済むのならそれに越したことはないのですから。

自身が着ていたワンピースを脱ぎ棄て、騎士団の隊服を眺めます。

暗器を元の位置でも出し入れが可能か、また、やり難くないかを確認するのは重要ですからね。

多少、位置を微調整するだけで何とかなりそうですね。

では、収納の魔法を展開して、暗器の補充合わせてしてしまいましょう。先程の戦闘でクナイを消耗してしまっていますからね。

あっ、捕縛用の鎖はどうしましょう。あれはあのリーダー格の男の捕縛に使った分しか持ち合わせが無かったのですよね。

父様かオルデンさんに確認をしてみるしかありませんね。


着替え終わり、父様達が待つ執務室へ戻ります。


「お待たせ致しました。

あの、捕縛用の鎖の手持ちが先程の取り押さえた男に使っていた分しかないのですが、戻して頂くことは可能でしょうか?」

「それでしたら、こちらに持って来ています。

後は現場に落ちていたクナイも合わせて持って来ています。どうぞ。」

「ありがとうございます。

ですがクナイは補充したので、一旦収納してしまいますね。」


収納の魔法を再度展開して、片付けておきます。

暇を見つけたら手入れをしておきましょう。


「では、ミーナ・ヴァグナーク。

貴女をプランツェ王国騎士団騎士見習いとして任命致します。

王国を守る剣と盾となり、力の限り尽力するように。」

「…拝命致します。」

「取り敢えずは、期間限定ですので安心して下さいね。

正式には学院を卒業してから、再度任命しますので。その時は、見習い卒か3級騎士になれる様に計らいますから。」

「……………。」


父様を睨んでおきましょう。私のデザイナー生活を脅かさないで頂きたいです。

強くなったのも身の安全を守るためであって、騎士になる為ではありません。


「ミーナ…その、すまん。

オルデンがこうなったら、実力行使で黙らせる以外方法が無いが…、そんな事が出来たら、今度は陛下達が黙ってないと思うから諦めて、初の女性騎士になってくれ。」

「商会での仕事はどうなるのでしょうね。ルーカス伯父様やカール兄様も黙ってないと思いますよ?

…それは、追々話し合う事にするとして、私はどなたの指揮下に入ればいいのでしょうか?

階級所属章を見ると、団長と副団長と同じもので白色なのですが…。」

「ミーナちゃんには、私とルダート副団長の直接指揮下に入ってもらいます。

準備が出来次第移動しますが、準備は整っていますか?」

「はい、団長。準備は整っております。」

「では、私の執務室へ移動しましょう。」


公私はしっかり分けて、お仕事に臨まないといけませんから、ここからはオルデンさんとリッツさんの事は団長・副団長とお呼びしましょう。

お読み頂きありがとうございます。

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